Seed+Ace_588氏_02

Last-modified: 2013-12-26 (木) 00:30:36

部屋にあるベッドで悩んでいる男が一人
「僕は……真っ先に落とされてしまった」
元の世界なら、男はこんな目に遭う事は無かった
男は相手の攻撃を受ける事も無く
逆に相手の戦闘能力だけを取り除いてきた
「だけど僕は落とされてしまった…しかも戦死扱いになるなんて……」
男は何を思ったのかベッドから立ち上がり、洗面所にて顔を洗い始める
「もう…落とされるものか!」
「今度は…今度はみんなを守って帰還してみせる!」
頭をタオルでがむしゃらに拭く茶髪の男
男にとって、この敗北は大きな一歩となるだろう
その男の顔にもう迷いは見られない
男の名は、キラ・ヤマトである

ここはサンド島、アンドリュー・バルトフェルドはネオ・ロアノークもといムウ・ラ・フラガから
ファントムペインと言う名の新三馬鹿のお守を頼まれ、渋々承諾した事から話が始まる
「僕もコーヒーの新たな可能性を模索しようとしていた時になぁ……」
バルトフェルトの脇から水色の髪を持ったいかにもやんちゃ坊主を思わせる青年が話し掛けて来る
「ねえねえ、ここって面白い物がありそうじゃね?」
「アウル君、確かに面白い物はあるけど、勝手に動かすような真似はしないで欲しいなぁ」
「ちぇ、つまんねぇの…」
アウルと呼ばれた青年「アウル・ニーダ」は残念そうに持っているバスケットボールをバウンドさせる
隣にいる金髪の女の子はだんまりとしたままだが
何かきっかけがあればはじける可能性があるとムネオから言われている
ムネオ曰く、この基地に好きな人がいるらしい
その好きな人のためにムネオは撃墜されたデストロイ周辺をくまなく捜査したとか
そして必死の捜索劇の末にもう虫の息だったデストロイのパイロットである
この少女「ステラ・ルーシェ」を発見したらしい
今ではこの様に元気だから良い物だ
今度はリーダーシップを持ち合わせていそうな緑髪の青年が話し掛けて来る
「おい、虎さんよ、ここで暇つぶしするとしてこれからどこへ行くんだ?」
「ああ、これからラーズグリーズのコレクションを見に行くんだよ」
コレクションと言う言葉にステラが反応する
「…コレクションって……なに?」
「ああ、ステラ、コレクションと言うのはな、例えばネオが何回もガシャポンを回してるだろ?」
「…うん」
「そういう人形を集めたりするのがコレクションなんだよ」
緑髪の青年「スティング・オークレー」がステラにコレクションについて教えている間に
アウルは面白そうな物を見つけてしまった、乗られたら本当にまずいもの、戦闘機の類である
「あれ乗ってみたら面白そうじゃね?」
アウルが指差す方向には水色のカラーリングを施されたMig-31Mがあった
「おい、冗談言ってんじゃ無いぞアウル…ってあれは!」
スティングも緑色のストライプが気に入ったのかアウルを引き止めるのも忘れてMig-1.44ヘ向かう
「スティング、何をしてグハッ!……」
「ハハッゴメンネ、やんちゃ坊主でさぁ!」
アウルが虎を気絶させ、Mig-31Mに乗り込む
ステラも二人に乗せられるがままにラーズグリーズカラー(つまり真っ黒)のX-02に乗り込む
ファントムペインの復活である

同時刻、八人程のグループが受付にやって来る
「アントン・カプチェンコ」だ、ドクターと言えば判るか?」
ゴルト隊のお出ましである
受付を通ったカプチェンコはある事件を目撃した
ファントムペインの三人がそれぞれ機体に乗り込んで行く姿を
「ふむ…こいつは面白い事になりそうだな……」
カプチェンコはこの後の出来事に期待しつつその「事件」を見なかった事にした

午前九時、突然警報が鳴る
たまたま基地に居合わせた「アスラン・ザラ」は手ごろな機体を駆り、出撃する
「クッ…こんな機体で勝てるのか!?」
だが…お気に入りの機体を手に入れた三人に敵うはずも無く
アスランを乗せたMig-21bisは落ちて行く
「まずい…イジェークト!」
炎に包まれるMig-21bis、なんで俺はこんな機体に乗ってしまったのだろうか
「君は良い人材だ、ぜひ我々の部隊に入隊してくれ!」
何か幻聴が聞こえてきたような気がするが気にしない
アスランは溜息を吐き、独り言を呟いた
「隣にあった戦闘機(F/A-22A)に乗るべきだったのかな……」

僕達はそれぞれの機体に乗り込む
隊長である、シン・アスカ中尉からの通信が入って来る

Destiny《各機、準備は良いな?》
Destiny《特にフリーダム、アンタには重要な任務が有る》
重要な任務、汚名返上のチャンスでも有る
Destiny《これから俺達は分散して強奪機の撃墜に当たる》
Destiny《苦戦していると思われるメンバーの援護にあたってくれ!》
隊長機から順番に滑走路に着く
Destiny《シン・アスカ、デスティニー、出るぞ!》
もうあの時のような悲劇は起こさない
Legend《レイ・ザ・バレル、出撃する!》
何故だろう…こんな状況なのに落ち着いている……
Impulse《インパルス、行くわよ!》
もう…迷いは無い!
Freedom《キラ・ヤマト、ストライクイーグル、行きます!》

基地から四機のF-15Eが飛び出す、SEED隊である
Thuderhead《各機に告ぐ、強奪機の名称はそれぞれカオス、アビス、ガイアとする!》
Destiny《フリーダムは各機体の援護に回ってくれ、デスティニー、交戦!》
Legend《敵機は三機だが気を抜くなよ…レジェンド、交戦》
Impulse《何だって言うのよこんな時に…インパルス、交戦!》
Freedom《僕は決めたんだ……もう誰も落とさせはしないって……フリーダム、交戦!》
シンがX-02へ、レイがMig-1.44へ、ルナマリアがMig-31Mへそれぞれ向かって行く
まずは隊長であるシンに付いて行くことにする

一方、ファントムペインの方は増援を確認した所であった
Chaos《クソッ…あのオンボロ飛行機の次は精鋭部隊と来やがった》
Abyss《ステラの方に二機向かった!各個撃破するつもりだぜ!》
確かにステラの方に二機向かって行く
Chaos《こいつは俺が相手をする、アウルとステラは自分に向かって来る敵を迎撃しろ!》
Abyss《兄貴、了解っと!》
Gaia《わかった……》
二機向かって来るようだがステラの能力なら先ほどのオンボロ戦闘機の二の舞にする事ができるだろう

Gaia《怖いやつ…落としてやる!》
Destiny《ステラ!?生きていたのか!?》
明らかに動揺しているシン、付いて行って正解だった
ステラと対峙した事によって今、シンの精神状態は不安定になっているだろう
そう考えている中、通信が入る
Destiny《ちょいと手伝ってくれ、アンタのやり方で行く!》
急にどうしたのだろうか、やっぱり相手がステラだとわかったからだろうか
Freedom《わかった、手伝うよ!》
僕達は何とかX-02に接近し、説得を試みる
Destiny《ステラ!俺だ!シンだよ!》
Gaia《え…シン…?》
シンが説得を開始した時にルナマリアからの通信が来る
Impulse《あの機体速すぎるわ、手伝って!》
隊長とステラはあのままにしておいても平気だろう
僕はルナマリアの方に機体を飛ばす

ルナマリアはMig-31Mの機動性(最高速度と言う意味)に振り回されている所であった
Abyss《ヘッ…俺にもう一機来やがった……まとめて落としてやんよ!》
Impulse《来てくれたのね!こいつ、直線的なスピードは速いわ!》
相手は調子に乗っている、そしてパイロットの訓練を受けた訳でもない
それならあの作戦が通用する!
Freedom《あの作戦で行くよ、作戦7だ!》
Impulse《了解!あれなら落とせるわ!》
ルナマリアも僕の意図を読んでくれた様だ

Abyss《どうしたんだよ、俺様に追い付く事もできねぇのか?》
Freedom《クッ…これでも食らえ!》
僕は熱くなるふりをし、ミサイルを二発放つ、ミサイルはアウルのMig-31Mに追い付こうとしている
Abyss《そんなもんに当たるかよ、これくらいならゲームの方が難しいね!》
アウルは機体をインメンマルターンさせ、ミサイルを躱す、作戦7の肝はここにあった
Impulse《こんなお馬鹿さんに振り回されていたと思うと悲しくなっちゃうじゃない!》
アウルの正面には急降下して来るF-15Eが一機、ルナマリアの機体である
Impulse《きっつーいお灸をすえてあげるわ、これでも食らいなさい!》
Mig-31Mに無数の銃弾が襲い掛かり、銃弾は無惨にも主翼を砕く
Impulse《やった!これで一機撃墜…きゃあ!?》
ルナマリアの機体の主翼もミサイルによって砕かれる
アウルの精一杯の反撃であった
Abyss《高低差を利用した上手い挟撃じゃねえか…これが敵じゃ無かったらなぁ……》
Impulse《まさかね…これじゃあ引き分けじゃないの!》
Abyss《あとそのミサイルは挟撃のお礼さ、これで引き分けだな、ザマー見ろ!》
いつの間にかベイルアウトしているアウル(いつ習ったんだ?まさか直感?)、ルナマリアもべイルアウトに成功していた
結局、僕はルナマリアを守る事ができなかった、僕は拳を操縦桿に打ち込みそうになる
これでは先程覚悟を決めた意味がない、気を取り直して状況を確認する
ステラはシンが説得に成功し、シンと共に滑走路に向かっている
アウルはさっきルナマリアと協力してベイルアウトに持ち込ませる事に成功した
後はスティングの方か……僕はレイが戦闘している方に機体を向ける

「……ですか!大丈夫ですか!起きて下さい!」
ん…確か…僕はアウル君に後ろから殴られて……
気絶から回復したのか、僕は身を起こす
「よかった…起きなかったらって…え?」
「ありがとう、だが僕は急いでいるんだ!」
僕は助けてくれた二人の整備員に感謝しつつ手ごろな機体に乗り込む
しかし……この機体、何て言う名前なんだ?
「何乗り込んでるんすか!これじゃあ俺達、マッドのオヤジに怒られるじゃ無いですか!」
「そこの中途半端な赤髪の少年!この機体は何と言う!」
「えっ?…確か…F-5E、タイガー・だったはずですけど」
「ほう…僕の名に相応しい機体じゃないか、ありがとな、少年!」
飛び立つF-5E、虎は再び咆哮する
「戦闘機なら得意分野だ!…とはいってもアイシャに付き合わされてるゲームの話なんだがな……」
飛び立つ虎を見守る二人の整備員
「なあ、ヨウラン…マッドのオヤジへの言い訳はどうする?」
「オヤジに嘘は厳禁だろ、本当の事を言うしかないよな……」

レイはスティングに追い回されているところであった
F-15EとMig-1.44では性能に差があった
しかし、二機でかかれば一機では落とせないものも落とせる
Freedom《レイ、援護に来たよ!》
Legend《コイツを引き剥がす、手伝ってくれ!》
僕は機体をMig-1.44の後ろにつける
幸いにもミサイルはロックされている、撃てば誘導が起こり追跡もままならない筈だ
Freedom《そこの君、もうやめるんだ!》
僕はミサイルを一発発射し、機体を加速させる
Chaos《クソッ…もう一機来たのか!》
僕の予想通り、Mig-1.44は機体を急旋回させ、ミサイルを回避する
Legend《助かった……今度はこちらの番だ!》
レイが本命のミサイルを発射する
Chaos《こんな所で捕まって叱られる訳にはいかねぇんだよ!》
MIg-1.44はさらに急旋回し、ミサイルを躱す
Chaos《さぁて、今度はこっちの…何!》
Mig-1.44の脇をF-5Eが掠める、レイはこっちにいるしシンは基地にいる、としたら誰なんだ!?
???《さ~て、遊びの時間は終わりだ!》
キラはその声の主を間違えるはずが無かった
声の主はかつて、敵としてキラと戦い、そしてキラと共に戦った男だった
Freedom《バ…バルトフェルドさん!》
Tiger《よう、元気か?キラ!》
Freedom《そういった話は後にしましょう、今は現状の打破が先です!》
Tiger《わかったよ、僕がいたずら坊やを引き付ける、二人で坊やを落としてくれ!》
Freedom《わかりました!》
Legend《あの男…どれだけの技量か見せてもらうとしよう……》

Chaos《そんなしょぼい機体で俺を止められると思うなよ!》
スティングがミサイルを二発放つがそれを虎は容易く躱す
Tiger《こちとら難易度ACEを攻略したんだ、そんなしょぼい弾に当たる訳ないだろ!》
実際にACEを攻略したのはアイシャなのだが(本人はEASYまで)
「流石に苦しいな……やはりゲームと同じようには行かないか……」
回線を切り、虎は一人呟く
「だが…こんなのはラゴゥと比べたら軽いもんだ!」

Chaos《このオッサンもちょこまかと!》
Tiger《お兄さん悲しいな~もうそんな年になっちゃったのか……》
Chaos《テメェはもうオッサンだろってウォアァ!!!》
突然Mig-1.44をミサイルが直撃する
熱くなっていたスティングの耳にはミサイルアラートは届いていなかったのだ
Freedom《やった!》
Chaos《チクショウ!イジェークト……これだ!》
Mig-1.44からスティングが打ち上げられるのを確認したキラ達は勝利の喜びを分かち合う
Legend《…やったのか……》
Freedom《うん、やったんだよ…僕らは……》
Tiger《お前さん達も初陣か?俺も初陣(無断)でな!》
結局、基地所属機に攻撃を仕掛けた三人はたっぷり絞られた(虎も、何故かヨウラン&ディーノも)
ステラは素直に着陸したためか(シンが相手であったため)他より軽い罰で済んだようだ
撃墜され、見事に脱出したアスランはその腕を買われ、ISAFのオメガ大隊に所属が決まったようだ
本当はメビウス中隊に所属したかったようだがそれは仕方の無い事である

「まただ、また全員で帰る事ができなかった!」
がっくりとする僕の肩に誰かが手を乗せる
「まだ始まったばかりだ、気にするなよ、少年」
ラーズグリーズの英雄と呼ばれた部隊を率いた男、ブレイズだ
「俺が所属していた部隊の隊長が言っていた言葉なんだがな…え~と…確か…」
「機体は消耗品だ、全員生き残ればバンバンザイだ……だったっけ、まあ死人は出なかったんだ、落ち込むな!」
そう言われると何だか吹っ切れたような気がしてきた、確かに死人は出なかったんだ、それだけでもいいじゃないか
「何だか吹っ切れました、ありがとうございます!」
「ま、これからもがんばれよ、俺は見ているぞ……」

その光景を見つめる男が一人、アントン・カプチェンコである
「さて、お前はあいつらと戦う訳だな……君の手腕を見せてもらおうか、ドクター……」

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