Tradition/セレネ

Last-modified: 2022-06-07 (火) 09:57:26

基本情報

  • イデア名:Selene(セレネ)
  • 身分:巡礼者

聖剣フェルヴェールを用いて、悪魔を封印してきた巡礼者。聖剣の名前は、「魔女の剣」での技名からわかる。
後に聖剣は、ミルドレッドの下に渡ったようだ。

収録弾

Tradition

No.40 静寂のクリスタル(セレネ)

 

打倒されてなお忌まわしき呪力を発する魔王の遺骸は、巡礼者セレネによって封じられる。彼女は自らの身を投じて秘法を発動し、魔王の心臓に打ち立てられた聖剣を中心にこの地を浄化した。奈落に溢れかえっていた穢れは、いまや清浄な祈りで塗り潰されている。もはやどれだけ強力な悪魔であっても、この地に踏み入ることはできないだろう。魔王の力を利用しようとする者が現れるその日まで、封印はこの土地の静寂を守った。

No.58 聖域のフローライト(セレネ)

 

どのような不浄の地にあるときでも、巡礼者セレネの心は揺らがない。その秘密は啓示にあった。セレネの人生は啓示で示されている。母胎内で一生分観たのを、すべて記憶しているのだ。すなわちセレネにとって、生きるとは記憶を追認することだ。もしかしたら自分はまだ胎内にいて、夢で観た未来を追認する夢を観ているだけなのかも知れないが、やるべきことが変わるわけではない。迷わない心は環境に従うどころか環境をも従える。悪魔のはびこる庭園も、セレネの祈りの前では聖域と化す。屋敷までの道のりなかばにある東屋に拠点を置き、祝福を与えるべき勇者が来るのをセレネは待っている。

詩聖世界のセレネ

 

朝がた街に出ると、子どもたちが石畳で水晶を弾きあっているのを見かけた。美しい石だが、今や高価なものではない。その原因はセレネにあった。魔王の墓所に溢れかえる水晶は、彼女が生み出したものだからだ。喜ばない商人もいただろう。
教会に赴いて帯剣証の更新を済ませ、夕餉の材料を買って帰る。今日は香草が安かった。轍の上を歩く。
馬車と出くわすたびに道を逸れて待つ。セレネの住まいは郊外にある。彼女は静けさを好む。
家事と夕食を済ませて寝室に戻ると、壁に光の綾ができているのを見た。ゆっくりうねっている。水辺を這う蛇のように。その正体は夕日だ。揺れる木の枝から漏れた光列が、窓際に置いたいくつかの水晶で屈折していた。
書棚から一冊抜き取って机に座る。香草の群生地について調べる。
異国の山麓を想ってひとかたまりの着想が降りてくると、彼女はペンを取って詩に変換した。コトコトと音がする。
飼っている猫が階段を降ったようだ。暗くなったのでランプに火を灯す。形が粗くざらざらとした出来栄えだったが、原石を得たことに満足してペンを置く。
折よく眠気を自覚して、今日が去ってゆくのを受け入れる。灯りを吹き消す。