Tradition/ミルドレッド

Last-modified: 2022-07-13 (水) 14:20:29

基本情報

  • イデア名:Mildred(ミルドレッド)
  • 身分:吸血鬼

大聖堂の完成を目の当たりにするために、吸血鬼になる選択をした少女。

 

その後、ハイドレーヌの代に教会に所属し、セレネが所持していた聖剣フェルヴェールを使って悪魔を討伐している。

収録弾

Tradition

No.28 ブラッディダリア(ミルドレッド)

 

ミルドレッドは美しい青年に声をかけられた。街灯の明かりが川の水面に揺れていた。青年は吸血鬼だった。承諾なしに血を奪われることはなかったが、若い彼女は喜んで身を預けて吸血鬼となる。この決断には目的があった。二百年後に完成する大聖堂をどうしても見たかったのだ。彼女の心は芸術とともにあった。不老を家族に訝しまれる前に故郷を離れ、太陽を確実に避けながら諸国を回る。神は不浄の自分を嫌うだろうか。それとも渇きに耐え続けた自制心を祝福するだろうか。やがて完成された奇跡を目の当たりにした時、ミルドレッドは膝をついて涙を流し、このまま朝を迎えてもいいと思った。

No.87 秘蹟剣(ミルドレッド)

 

お嬢さん、と呼ばれてもミルドレッドは訂正しない。過ちに気づいていないのは五十か六十かという所の若造だったが、いちいち訂正するのも無粋だ。初老の男は肩口から黒い煙を発していた。ミルドレッドが斬ったからだ。悪魔は彼女の敵だった。

 

「聖剣? 吸血鬼が? お前は教会の手先なのか」

 

「言い草は気に入りませんがその通り。真に尊いもののしもべです」

 

悪魔たちの現象否認防御を紙のように破る聖剣フェルヴェール。それは吸血鬼のからだも灰に帰す危険物だったが、右手のガントレットが祝福を遮断せしめていた。悪魔は大きな黒鳥のような正体を見せて飛翔する。ミルドレッドは川に遮られるまで執拗に追撃した。彼女は吸血鬼でありながら教会に仕えている。美しいからだ。荘厳な美を芸術家たちに紡がせた営みに心から感謝をしている。かつては理解のない教皇に拒絶されたものだが、ハイドレーヌの代になって遂に帰依を認められたのだ。