Backstory/Chronicles/The vicious cycle

Last-modified: 2009-01-04 (日) 16:19:49

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初出

 
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The vicious cycle
悪循環

 

それが一巻の終わりだった.カプセルが壊されて割れると,恒星光の直射に曝(さら)された皮膚は即座に燃え上がった.痙攣しながら身体は膨れ上がり,唾液は乾いて口の中で沸騰し,意識が薄れ,あっと言う間に死が訪れたってわけ.そして遺体はフリゲートの瓦礫と一緒に宇宙空間を漂うことになっちまった.殺った方の当人は,その時まだポリス艦とチェイスしてたけどね.

 

ことの始まりは他愛も無かった.連邦領を航行中のGallenteのフリゲートが二隻,たまたま出会ったんだ.二人は最初は愛想よく駄弁ってた.一人は無邪気な新米(rookie)で,もう一人はもう少しベテランっぽかった.そして惨事は唐突に起こった.二人はいつの間にか口汚い口論になっていて,脅しと罵り合いが繰り広げられた.やがて口論が止み,それは武器での「語り合い」になったのさ.こうなりゃもう新米君に勝ち目は無かったね.けれどここは連邦領内だってことを忘れちゃいけない.当然ポリスがすっとんで来たんだが,残念なことに新米君を救うにはちっとばかし遅くてな,上の通りさ.でもまぁ,警察ってのは至って厳格だ.領内の犯罪者は見逃しちゃくれない.法の裁きの下,目には目を,歯には歯をってね.新米君を殺ったベテラン氏もまた,結局は彼と枕を並べて,いや遺体を並べて,星屑の一つの仲間入りをする破目になったってわけ.

 

さて,それでも彼等は二人とも生きている.まさしくこの瞬間に,彼等はそれぞれ真新しい身体の中で「お目覚め」なこったろう.彼等はまたいずれ宇宙のどこかでばったり出くわすかもしれないが,その時は新米君も今よりはもうちょっと権謀術数を学んでることだろうな.

 

それに...実は話はこれで終わりじゃない.世の中ってのは上手く出来ててね,二つの遺体を見捨てちゃ置かない.彼等の氷付けの遺体はもう一度,ちゃんと無限の輪廻の環に戻されるんだ.
ほら,警察艦隊が星々の彼方に消え去るや否や,現場に一隻の不審船がにじり寄って来た.不審船は素早くサルベージドローンを展開して,もはや命の宿っていない凍てついた遺体を引っ掴んで「誘拐」すると,足早に現場を離れて行った.分かっちゃいると思うが,警察に撃墜された犯罪艦の残骸を,しかも遺体を盗むなんてそりゃ重大犯罪だ.でもまぁ,今頃,奴は二体の「お宝」を積んでとっとと連邦領をワープで脱出しているだろう.行き先は外宇宙のどっかにあるはずの非合法クローニング施設だ.そこじゃ高級な「Aグレードバイオマス原料」がどんな不正な手段で運び込まれたかなんて,誰も気にしないだろうからな.

 

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