【古き生き物】

Last-modified: 2020-07-16 (木) 16:33:36

古き獣たちの多くは、世界が二つに分かれた際に神々と共にこの世界を去った。
だが、そちらへ行かなかったあるいは行けなかった者たちが幾ばかりか、現世に残った。
彼らは大いなる力を残しながらも、世界に満ちる「死」の影響からは逃れられず、
徐々にその数と力、知性を減じていった。


現世に残った古き獣たちの大半は、様々な生き物の太祖となったが、彼らを祖に持たない生き物も存在する。
そのどちらも等しく地に満ちた蛇の子らである。
だが、古きものほど大きく強く、また知性を称えた眼差しを持っていた。


暗き時代を過ぎてから、人の住む世では古き時代の生き物たちを見ることは少なくなった。
里に彼らは姿を見せず、辺境の地でさえもその姿は稀なものとなった。
古き命は、伝説となった。
 
だが、それでもまだ「死」の満ちるこの世界に息づくものたちは残っていた。

 

一覧

古き生き物はいくつかの種に分けることが出来た。
あるいは、たった一匹しかいない種族も存在した。それらは等しく、神々の時代から生きるものである。
すでに姿を見掛けず久しくなっているが、それでも、人々の記憶には刻まれている。

“世界の蛇”が生み出した、最強の子供たち。うねる番人。
【竜】を参照。

クラウケン

海の底から生まれたという、自在な進化を遂げる理不尽なる捕食者たち。
【クラウケン】を参照。

末裔なる蛇

“世界の蛇”に最も近しい姿を持つとされる生物、蛇たちの始祖。
竜たちの祖先であるとも語られる古く巨大な生き物であるが、今ではまず目撃されることがない。


大半は強力毒と呪いの力を扱う優れたまじない師だったとされる。
だが、彼らの多くは魔鬼との争いで犠牲となり、ほとんどが失われてしまった。
残るもののほとんども神々と共に隠遁することを決め込んだ。
そのため、現世に残る古き蛇はあまり知られていない。
唯一、“果ての峰の賢者”スミノールだけが存在を知られている。

輝ける鳳禽

かつて古き竜と覇を競ったと伝わる、もう一つの守護者。
「火」のように眩く輝く羽毛を備え、その熱と輝きで世界を照らしたとされる、尾羽の長い巨大な猛禽。
様々な戦いで大きな活躍を見せたが、勇猛さ故に都度数を減じていってしまったとされる。


彼らは羽毛を散らせ、それを嘶きで震わせることで強烈な熱と光を生む。
その力はあの魔鬼どもを焼き、時に争った古き竜を滅ぼすほどの威力を生み出した。
それ故に、彼らは竜と並ぶいにしえの得守護者として君臨することが出来た。
“太陽”が現れるまでは、彼らこそが世界の灯りを務めていた。


ほとんどの鳳禽たちは神々の世界にとどまった。
彼らの多くは地上の毒素に耐えるだけの頑丈さを持っていたが、守るべきものを宿敵である竜に託し、
広く高い空の御園を守ることに徹する決断を下した。
しかし、幾ばかりかの個体は天に近しい高山に居を構え、かつての好敵手と共に世界を見守ることとした。
その理由は諸説あるが、古き竜たちでは噛み合わぬ敵に備えてとの声が一般的である。


なお、現世に残った彼らの内数羽は、“眩き王冠”のルーヴィンに付き従ったとされ、今では彼の象徴の一つとして知られる。

城象

その名の如き、城塞ほどに巨大な象のような生き物。
ただし、その身体は長毛に覆われ、前脚は腕に近い形と変わっている。彼らは長い鼻と牙を持ち、それらを器用に操った。
彼らはその巨大な姿に反して大人しく、また臆病な気質を持っていた。それゆえに、好んでよそ者相手にを晒すことはない。
だが、不用意に近付く無礼者に気後れするほど、温情でもなかった。


古の時代、巨人たちのいくつかはこれを飼い慣らし、人が馬を扱うように乗りこなしたという。
訓練された城象は元来な大人しさが嘘のように荒々しく、獰猛な性格に変わったとされる。

鋼亀

その背を鋼のように硬質な金属の殻で覆う、亀にも似た巨大な生物。
数ある生物の中でも際立って巨大であり、中には本当に山となってしまった個体がいるという伝説まであるほどである。
だが、それもおかしな連想ではない。彼らの体は豊富な鉱脈でもあるからだ。
数十年眠りかける彼らは、確かに歩き回りはすれども豊かな資源を眠らせる、山であった。


今、ほとんどの鋼亀は目撃されることがない。
大陸を放浪するのをあきらめたのか、あるいは海にでも行ってしまったのか、定かではない。
ただ、極稀に見つかれる鋼の豊富な鉱脈は、彼らの遺骸ではないか、と冗談交じりに語られることがある。

知恵ある大樹

言葉を知るいにしえの樹木の一種。森の巨人、とも。
彼らは神々と語り合う程に高い知性を持ち、また神々よりもはるかに古き生き物故に、知識の広さと見識の深さは頭抜けていた。


彼らのほとんどは愛した土地から離れることを厭った。
「死」の満ちる世界に根を張っていたものたちは、世界が分かたれた際に、移り住むことを断り、現世に根を張り続けた。
また、それは人への慈悲でもあった。
取り残される哀れな神々の末裔に、彼らは寄り添うことを決めたのだ。
だが、その温情を忘れた人は、都の炉を燃やすべく森に踏み入り、木々を切り倒しては持ち帰った。その中には、古き賢者たちも混じっていた。
恩知らずのものどもの行ないにより、多くの切り開かれた森からいにしえの知恵ものたちは消えてしまった。
僅かに残る森の賢者たちは、人知れぬ深き秘境の奥か森の人が住む静かなる王国にのみ、残るとされる。

聖なる獣ダールキーン

長大な体毛に覆われた、四肢にて地を駆ける肉食の獣。
鈍重そうな体躯に反し、彼らは極めて俊敏な生き物であったと伝わる。
かつては楽園の端々を巡回していたとして、人々の間では世界を見回る巡回者として語られた。


彼らの牙には聖なる力が宿っていた。
それは、大いなる蛇の加護が濁り、淀み、溜まるのを防ぐ力である。
それにより、彼らは楽園の管理を担っていた。
「死」の満ちる世界においても、その力は衰えることがなかった。彼らは魔鬼とすら戦った。
だが、その力に目をつけた愚かな人の末裔により、彼らは次々と狩られ、もはや辺境にさえどれほど残っているか、定かではない。

夜の牙狼

野山の闇夜を支配したという、伝説的な狩人たち。
漆黒の体毛に覆われた巨大な狼であり、魔鬼の猛毒さえも恐れず突貫する命知らずの牙獣。


彼らは生きた呪いのようなものであり、時にその身を闇に溶け込ませた。
彼らは音もなく獲物に忍び寄り、その命をたやすく奪い去る。
それゆえに、人は彼らを恐怖し、魔鬼の一種とさえ勘違いした。
だが、彼らは古き陰間の神々の友である。

大鷲

輝ける鳳禽ほどではないが、巨大な体躯を持つことで知られる猛禽類。
薄暗い茶色の羽毛と強烈な黄色の嘴を持つ。
人里に現れることは稀であるが、辺境の地では時折姿を見受けられることがある。

カートゥース

海原に住む、鱗を持たぬ巨大な獣。
時折海上に姿を見せることがあるが、際立った凶暴さなどは見せない。だが、その体躯は古き竜に匹敵する。
彼らは海の中で歌い、世界を知るとされ、その歌声は時に海中の邪悪なクラウケンを叩き潰す、鉄槌となる。

シュロブの母

伝説に語られる、巨大な糸紡ぎの八つ脚の怪異。
秘境の谷間、地下洞穴などに今も生き残るという、蜘蛛に酷似したいにしえの生き物である。


神話の時代は神々のために様々な糸を紡いだとされるが、「死」の満ちる世界に取り残された末裔は、最早卑しい肉喰らいの蟲に堕落した。
彼女らは住処に近づくあらゆる血液を見逃さない。
獲物に静かに忍び寄り、紡いだ網で捉え、谷間に張り巡らされた巣へと狩りの成果を持ち帰る。

啼きの獣

獅子にも似た長い鬣を備える藍色の獣。
大柄な肉食獣の姿をしているが、前足は鋭い爪と皮膜を備えており、翼としても機能する。
国の端から端までといった長い距離を飛ぶことは出来ないが、一つの都市を回り切るくらいの飛行は可能である。


その最大の特徴は、名前の通りの強烈な啼き声だろう。
山の峰を飛び越えて届くその声は雷鳴と勘違いされるほどであり、彼らはその声で獲物を捕らえ、天敵に立ち向かう。

渦の大虫

海や砂漠に生息するという、巨大な口を持った蟲。
渦を作り、獲物を引き寄せて何でも飲み込んでしまうため、船乗りや砂漠渡りに怖れられる。

ヴァールの大樹

天まで届くかというほどに高い、巨大な大木。

裁きの角

雷のような枝分かれした角とを持つ、蹄のある獣。野山を駆け、各地を広く放浪している。
大柄で屈強な生き物で、前足は腕に近い構造を持つほか、頭は角と同じ材質の甲殻が仮面のように覆う。
全身を流れる紫紺の長毛は寒さを退けるのみならず、青銅の刃を弾く。


伝説によれば“並ぶものなき”アルヴィンが人の罪を裁くために遣わした比較的新しい古き獣だとされる。
それを証明するように、その角からは輝く雷光が放たれる。
 

嵐の軍馬

青黒い肌と漆黒の鬣を持つ馬に似た生き物。
頑強屈強な肉体に驚異的な脚力と体力を備えており、万里を休むことなく数日にて駆け抜けるという。
それ故に古き時代、神人たちが旅や戦いの供に用いた。


彼らは空に漂う風の力を味方につける。
それにより、彼らは岩のように重く頑丈ながら、羽のように軽やかに宙を舞う。
同時に、彼らの蹄には神々の籠がある。
彼らが地に強くその脚を叩きつける時、小さくも確かな雷が大地を揺らす。


非常に優れた生き物であるが、今では蛇の加護豊かな高山地帯や高地にしか姿を見せない。
人の世に嫌気が刺したのか、あるいは高き故郷に少しでも近づこうとしているのか。
それは定かではない。