【ドラゴンクエストゲームブックシリーズ】

Last-modified: 2024-02-11 (日) 03:20:38

概要

ドラクエシリーズのゲームブック。【エニックス】刊行のエニックス文庫「エニックスオリジナルゲームブック」シリーズの一環として発、DQ1~DQ6および『トルネコの大冒険』が発行された。
最初にDQ3のもの(3巻構成)が刊行され、その後にDQ2、DQ1(各2巻)の順に刊行された。【天空シリーズ】は原作ゲーム発売から概ね1年以内にそれぞれ4巻構成で出ている。これらは途中の巻から始めるためのデフォルトデータが用意されており、全巻揃っていなくても楽しめるようになっている。
DQシリーズの他にエニックスは同社作品の『ジーザス』『ワンダープロジェクトJ』『天地創造』、任天堂作品からは『ファイアーエムブレム』『MOTHER2』、さらには【月刊少年ガンガン】の連載作品『魔法陣グルグル』『ハーメルンのバイオリン弾き』のゲームブック化も行っている。
 
なお、これらに先駆けて双葉社からもDQ1とDQ2のゲームブックが発売されているが、そちらの詳細は著者である【樋口明雄】の項目を参照のこと。

基本的なシステム

ゲームブックとは小説とゲームが融合したようなものである。
文章がシーンごとに分割されており、各シーンには番号が振られている。最初はプロローグを経てシーン1から始めるが、普通の本のように順番通りにページをめくるのではなく、1シーンを読み終わったらシーンの最後にある「◯◯へ」という指示に従ってその番号のシーンに飛ぶ。
ゲームというだけあって、時には読み手が次の道を選択しなければならない。
 
ストーリーを進めながら、【冒険の書】と呼ばれるチェックシートに記号や所持アイテム、パラメータ等の情報を書き込む(利便性や再使用のため、冒険の書はコピーして使用することが推奨される)。
時には戦闘が発生することもあり、その場合は状態や選択肢のみならず乱数が必要となることも。ビデオゲーム版と同じく、モンスターを倒すと経験値が加算され、レベルが上がっていく。
特にロト編は戦闘のランダム要素が強く、Lvが高くても運が悪ければ全滅するなど難易度が高く緊張感がある。計算がめんどくさく手間暇がかかるので電卓(現代ではスマホでもOk)とメモ用紙がほぼ必須だが、ゲームの自由度は高い。
 
各作品とも巻頭にルール説明があるが、その最後は必ず「では、◯◯に光あれ!」で締めくくられた。

特徴

DQ4までのゲームブックではストーリーにアレンジが加えられており、特にDQ3の海賊のお頭やDQ2の【ルプガナ】の少女のように、原作ではただの町の人に過ぎなかったキャラに名前が付けられて重要な役割を持たせられることも多かった。
さらにDQ2やDQ1のゲームブックではDQ3の原作より後に発売されたこともあって、DQ2やDQ1の原作で未登場だったDQ3の呪文(主人公や仲間は使えない)やアイテムが登場していた。
DQ5以降のゲームブックは原作重視の傾向に変わったが、それでも当時のゲームにはほとんど無かったパーティ内の会話がゲームブックでは当然多く、原作ゲームでは味わえない醍醐味の一つであった。
 
DQ4を除いて文章は【主人公】の語りで書かれている。一人称はDQ3までとDQ5の幼年時代では「ぼく」、DQ5の青年時代とDQ6では「僕」。DQ2ではカインは「おれ」、ナナは「あたし」となっている。
登場人物の性格はゲームブックの性質上、主人公をはじめやや三枚目な性格に傾くこともあるが、決めるところは決め、小説版の改変振りに比べればまだユーザーのイメージと合致している。

DQ1

DQ3、DQ2に次いで発売され、ロト編で最後発となった。
上下巻構成。上巻は【ローラ姫】救出まで。
乱数としてサイコロを2つ用いる。各ページの隅にサイコロ2つの図があり、手元にサイコロがない場合はページをパラパラとめくってサイコロの代用とすることができる。
巻頭に折込としてボードゲームのようなフィールドマップがあり、町を出た後は目的地に向かってそのマップ上を1マスずつ移動していく。各マスではサイコロの目の合計が偶数か奇数かによってイベントや戦闘が発生する。
ダンジョン内は【たいまつ】は不要だが迷路になっており、マッピングが推奨されている。
 
パラメータは【レベル】【経験値】【ゴールド】【HP】【MP】がある。【攻撃力】【守備力】はDQ2と同じくレベルと装備品の合算。
主人公アレフはレベルアップによって呪文を覚えていき、呪文を唱える際にはMPを消費する。
HPの回復手段はビデオゲーム版と同じく薬草と回復呪文があり、宿屋に泊まればMPも回復できる。
またDQ3と比べると少ないものの、アルファベットのフラグチェック欄も存在する。
 
ザコ戦は簡略化され、攻撃力とサイコロの値を足した数値が一定値以上ならダメージを受けずに相手を倒せるが、そうでなければダメージを受けてしまう。
武器で戦う前に戦闘呪文を唱えることもでき、特に相手が呪文の使い手の場合は【マホトーン】で封じないと呪文を必ず食らってしまう。
死んだ場合は原作と同じくゴールド半減で城に戻される。
 
DQ2と同じくシーンの途中で◆印による指示文が出るようになっており、戦闘以外でHPが減少することもある。
 
ストーリー面ではDQ3のゾーマの名前が【プロローグ】や会話で登場し、DQ1原作には登場しなかった【ルビス】の声も出てくる。
通常戦うモンスターはDQ1のもののみだが、アイテム面では原作に出てこない【ロトの盾】【ロトの兜】が登場する。
なお【ゴーレム】はメルキドの町の入口ではなくその南の沼地に出現する。どうやら同社ゲームブック同士での整合性は考慮されていないようだ。
 
ゲームブック版には珍しく、主人公に「アレフ」と固有名詞が存在しているが、当時は小説版など、他の派生書籍とのリンクを重視する方針が強かったためであろうか。

DQ2

DQ3の次に発売された第二弾。これによって先に出ていた双葉社版のゲームブックDQ2と競合することになった。
上下巻構成。上巻はアレフガルドを訪れ【大灯台】での【妖術師】との決戦まで。
上巻では【風の塔】、下巻では【ロンダルキアへの洞窟】が、それぞれ巻末のマンガ風「コミックシーン」で扱われている。
また下巻では【サマルトリア】がハーゴン軍に侵攻される場面があり、【サマルトリアの王子】カインが祖国を救うため単独行動を取る。この場面では【ローレシアの王子】とカインのどちらのシナリオで進めるかを選択でき、選ばなかった方は自動的に冒険が進んでいく。
 
パラメータはレベル・経験値・ゴールドとHPがある。
DQ3と異なる点として今作はパーティ3人全員が戦闘の対象となる。装備品も各キャラそれぞれ専用のものがあり、攻撃力・守備力はレベル数と全員の装備品の合計で算出する。またカインと【ムーンブルクの王女】ナナはストーリー進行で呪文を覚えていき、進め方によっては覚えられない呪文もある。
状態異常もあり、【死亡】【眠り】などで行動不能なキャラの装備品の威力は加算できない。
今作はフラグのチェックが無く、代わりに多数のアイテムチェック欄が用意されており(リストに無いアイテムは自分で書き込む)、アイテムの有無による分岐判定も多い。
 
戦闘のシステムはDQ3とほぼ同じだが、今回は特定の乱数値が出ると相手の特殊攻撃や呪文で無条件にダメージを受けたりする。仲間の呪文が使える場合は事前の選択肢で呪文を唱え、成功すれば有利な状態で戦闘に入れる(逆に不利になってしまうことも)。
回復は宿屋や薬草(複数個まとめて使うことも可能)で行えるほか、項目番号に「!」マークが付いた戦闘場面ではカインやナナが参加していれば回復呪文を1戦闘に1回ずつ使える。
DQ3では負けると即ゲームオーバーだったが、DQ2はラスボス以外は負けてもペナルティ(仲間の死亡など)付きでそのまま続行する。
逆に明らかな負けバトルが2カ所あり、戦闘の手順を無視して勝ったことにして進むと不正行為としてゲームオーバーになってしまう。ちなみに上巻では100、250、400というキリ番シーンがゲームオーバーシーンに充てられている。
 
他にDQ3と異なる点として、指示文が◆印で示され、シーンの途中でも表示されるようになった。戦闘システム以外でHPが減少することもあり、HPが0になったらそこで即、指示通りのシーンに飛ばなくてはならない。
戦闘は★印、分岐なしで単純に次のシーンへ飛ぶ指示は印が付くようになった。
 
このゲームブックでもオリジナルキャラが多く登場し、パーティの冒険に同行することもする。モンスターはDQ1やDQ3のものがDQ2のものに混ざって登場しており、さらにオリジナルキャラの「海賊バール」「戦士ガルダー」、選択によっては【ムーンブルク】の兵士や【デルコンダル王】といった人間を相手に戦うことにもなる。
町では各店・施設に独特な名前が付いていることが特徴。中には【魔法を売る店】と名乗る道具屋など深い意味を持つ店名もある。
FC版で有名なバグ技【はかぶさの剣】【デルコンダルにシドー召喚】の再現や、【モンスター物語】など関連書籍のネタが登場するなどファンサービスも随所に入れられているが、一方で「【ルーラ】で移動したはずなのに次のシーンでは船に乗っている」など矛盾点も見られる。
 
余談ながら、SFCDQ2にて仲間の名前を本書と同じ「カイン」と「ナナ」にするにはローレシアの王子の名前を「ドラクエ」もしくは「アベル」にすれば良い。前者は当然として、後者は旧約聖書のネタであろう(時期的にはアニメドラゴンクエストの企画もそれなりに進んでいただろうが)。

DQ3

エニックス初のゲームブック。
上中下巻の3巻構成。上巻は【船】を手に入れたすぐ後まで、中巻は【バラモス】戦まで、下巻は【アレフガルド】編。
パーティは4人または3人で、【勇者】【僧侶】ゼブル+【魔法使い】マニィは固定、4人目を加える場合は【戦士】ハルク・【武闘家】チェン・【商人】トラン・【遊び人】ラルフの中から選べる。
 
パラメータは【レベル】【経験値】【ゴールド】【HP】【攻撃力】【守備力】がある。
原作同様に戦闘で勝利すると経験値とゴールドが得られ、一定値を超えるとレベルアップしてパラメータが上がっていく。ゴールドは町の【宿屋】や店を利用する際に必要。
この他にストーリーの進行状況を示すフラグチェック(ポイントチェック)がある。フラグの記号には上巻はアルファベット大文字、中巻は小文字、下巻はカタカナが用いられ、中巻以前のフラグは後の巻にも引き継がれる。
フラグによっては仲間にしたキャラや行き先によって異なる数値を書き込む場合もあり、示された数値にフラグの数値を足した番号のシーンに飛ぶことで分岐する場面が多い。例えば上巻の「B」は4人目の仲間が誰かを表すフラグ(ハルク→10、チェン→20、トラン→30、ラルフ→40。いない場合はチェックなし)であり、下巻の最後まで頻繁に使用することになる。
アイテムも多数登場するが、今作でメモする必要のあるものは薬草類と武器・防具ぐらいであり、キーアイテムは別にメモしなくても進められる(文中でアイテム所持を問われることは無い)。
 
戦闘は勇者とモンスターの1対1で、交互に行動していく。したがって武器・防具も基本的に勇者のもののみ考慮すれば良い。
他の仲間は勇者とは別個に戦うが、勇者が戦い終わった後に仲間がピンチに陥っていると援護が必要になることもある。
ボス戦では勇者だけがボスと一騎打ちで戦い、仲間は無数に湧いてくる手下の魔物を相手にするという形になる。
戦闘シーンではまず装備している武具とレベルに基づいて主人公側の攻撃力・守備力を算出、さらにそれと相手の攻撃力・守備力と乱数(無作為にページを選んで隅に書いてある数字を使う)に基づいてダメージを算出してその分だけHPを減らすといった複雑な計算が必要となる。
なおこのゲームブックの勇者は呪文を一切使えないため、回復は薬草類のみが頼り。薬草類は4種類あり、それぞれ回復量が異なる。
 
負けると即ゲームオーバーになるほか、誤った選択肢により死んでしまうこともある。
その場合は以前のマル冒マークのシーンまで戻ってやり直しとなるが、各種データもその時点のものまで巻き戻さなくてはならない。
従ってマル冒マークのシーンでは、バックアップ用のデータを通常の冒険の書とは別にメモしておく必要がある。
 
プレイヤーへの各種指示は必ずシーンの末尾に表示される。フラグやアイテムなどの指示は※印、戦闘は印、分岐は●印が使われている。
 
ストーリーや設定については、ラスボスや世界観の改変こそ無いものの、細部で原作と異なる部分が多く、オリジナルキャラも多数登場している。
中巻以降ではゲーム版に登場しないオリジナルのモンスターとして「モービーディック」「腐りかけの死体」「真新しい死体」「スウィムキラー」が登場し、特にモービーディックは中巻と下巻の2度登場する。
下巻ではDQ1やDQ2のモンスターも登場し、特に原作のロト編ではDQ1にしか登場しない【ダースドラゴン】【ストーンマン】は本作とDQ2ゲームブックの双方にも登場し、ロト編ゲームブック皆勤となった。
中巻ではゲーム版でボツになっていた【死のオルゴール】がキーアイテムとして登場を果たした。
また下巻では条件によっては後の【ゴーレム】の誕生や【デルコンダル】建国に繋がるオリジナルエピソードも見られる。
ラストはマルチエンディングであり、上中下巻全てプレイして多くの条件を全て満たした場合のみに【上の世界】に帰ることができる。
 
またこのゲームブックDQ3の下巻は、当時の【公式ガイドブック】などでは一切見られなかった 「DQ3のアレフガルド」の地図を初めて掲載した公式書籍でもある。

DQ4

4巻構成で1巻は【第一章】【第二章】、2巻は【第三章】【第四章】、3巻は【第五章】【バルザック】戦まで。
 
HP・MP・攻撃力・守備力やゴールドが廃止され、ロト編のような複雑な計算が不要となった。
敵を倒すたびに経験値チェック欄を得られた分だけ塗りつぶすという簡単なルールになり、難易度は大幅に低下。ライトユーザーも楽に進められるようになった。経験値には各章ごとにユニークな名称がつけられている。
ロト編に比べ自由度が少なく、文章を読んでいれば何もしなくてもストーリーが進んでいく。
フラグチェック欄は大幅に増え、DQ3のように数値で分岐する方式も登場。アルファベットのフラグは全巻共通で、カタカナのフラグは各巻で別々になっている。
また戦闘システムが無くなった代わりに、レベルによる分岐判定が導入された。
各種指示はDQ2・DQ1と同じく◆印で示されるが、タイミングはDQ3と同じシーン末尾に再び統一された。なお分岐で選択肢を選ぶと同時にフラグをチェックする場面もある。
 
ストーリーはロト編ゲームブックのように原作と異なる部分が多い。
 
主人公の名前に関しては、2巻・3巻の次回予告や3巻の【山奥の村】の人々は「ユウ」と呼んでいる。それ以外では一貫して「勇者」と呼ばれているが、DQ1ゲームブックと同じく固有の名前持ちの主人公である。

DQ5

4巻構成で1巻は幼年時代、2巻はルーラ習得まで、3巻は【デモンズタワー】まで。
ルールは前作と変わらないが、今回は【仲間モンスター】のチェックと【ちいさなメダル】のチェックが追加された。フラグチェックは全巻共通のものが無くなり、巻別のカタカナフラグのみになった。
獲得経験値は雑魚敵が1、ボス敵が3(前座ボスなどは2)に統一されている。
 
前作までのようなオリジナル展開は無くなり、概ね原作に沿ったストーリーとなった。3巻にある【結婚】イベントでも【ビアンカ】【フローラ】のどちらかを選ぶことができる(4巻から始める場合は予め妻を選んでからスタートする)。ただし妻は最終決戦には参戦せず、グランバニアで待機することになる。
子供の名前は【男の子】がクリス、【女の子】がフィラ。【キラーパンサー】はプックル。
仲間モンスターは必ず仲間になるものと任意で仲間にするかを選べるものがある。ただしプックル以外はその巻限定となっており、巻が変わるといなくなってしまう。4巻ではモンスターとは別に【サンチョ】を任意で連れて行くことができる。
ダンジョン潜入時は連れて行く仲間を読み手が選択する場面がある。

DQ6

4巻構成で、1巻は【ムドー】戦まで、2巻は【水門の鍵】を入手してもう一人の自分と融合するまで、3巻は伝説の武具が揃うまで。
本作では表紙や挿絵を4コマ作家であった【村上ゆみ子】が担当しているが、4コマと比べると顔つきが公式イラストに近くなっている。
 
前作に加えてバトル対戦表とHPが追加された。
バトル対戦表はあらかじめ5つの数値欄に1~5を決めておき、戦闘の特定の場面で、指定された2つの欄の数値を比較してその結果で戦闘の有利不利が変わっていく。
HP増減の指示は文中に括弧書きで表される。HPは0まで下がらなくても一定値以下になると敗北判定されることが多く、その場合は少し前の場面から出直しとなる。
1巻ではストーリー進行で呪文や特技を覚えていき、2巻以降はレベルが上がると就いている【職業】に応じて呪文や特技が増えていく。【主人公】【ミレーユ】【アモス】のみ途中の職業を2つの中から選択でき、他のキャラの職業は固定。
ちなみに【テリー】は主人公やハッサンと被るバトルマスターではなく、パラディンになっている。
 
概ね原作に沿ったストーリーだが、【ホルストック】は丸々省略されておりゲームブックには登場しない。
2巻ではアモスが必ず仲間になる。さらに彼が【魔物使い】に転職すると【スラリン】【ホイミン】の2匹を任意で仲間にでき、両方とも仲間にすると最終的には9人パーティになる。
【エンディング】では【バーバラ】との別れシーンが原作とは若干異なる。