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Backstory/FASTER_THAN_LIGHT_COMMUNICATION

Last-modified: 2010-06-20 (日) 22:34:36

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FASTER THAN LIGHT COMMUNICATION
超光速通信

 

ワームホール生成技術の習得後、距離については完全に制覇されたと考えられた。にもかかわらず、通信は依然光速で伝送されなければならず、遠く離れた領域の距離はワームホールにより近くなったのに、双方向通信は不可能なままだった。この問題はすぐに、深宇宙探索の最も重大な障害の一つとして認識された。

 

Amarr人は最初にジャンプゲート技術を習得したので、この問題に最初に直面した。Amarr人は国費で大規模に研究を始め、さまざまな抜本的解決策を試したが、成功することはなかった。ついに、彼らはすべての研究をやめ、超高速通信は実現不可能であるという事実を受けいれた。

 
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何世紀か後、Gallente人とCaldari人がSotiyo-Urbaata間(ジャンプ)装置構築によって同じ問題に直面することになる。装置によりGallent人とCaldari人の居住星系内での超高速航行が可能になり、ドライブを使った船での通信はできたが、それは当然便利な通信機器ではありえなかった。これを解決する研究に対する振興として、GallentもCaldariも、この問題の何らかの解決策をもたらした者に莫大な賞金を約束したが、科学史に愚かな研究のひとつとして刻まれることになった。

 

Amarr人と同じく、多くの解決策がためされたが成功しなかった。ついに、若きGallente人であるLi Azbelが、シンプルだけれども、難解な物理学に根差した解決策を思いつくことになるが、当初はでっち上げだとして無視された。

 

有名なAzbel-Wuthrich実験により、その機能性の証明が成功した。産業化はすぐに追随し、結果、何千もの企業が既知宇宙の範囲を拡大させ、最大の株式相場急騰をひきおこした。

 

解決策は古来のパラドックスに根差している。しばしばEPRパラドックスとよばれこの名前は謎に包まれている。(訳注: 現実世界用語, アインシュタイン他2名によるEPR論文より.)
EPRパラドックスは、いくつかの非常に重要な点における量子物理学の矛盾として有名である。具体的には別の古来の物理理論であるハイゼンベルグの不確定性原理が不正確であることを示すものである。ハイゼンブルグの不確定性原理、この名前は場所か人からきているとみられているが(訳注:人名)、これにより、たとえどんなに精度のよい計測装置をもってしても、量子レベルの粒子の正確な状態を、完全な精度をもって決定することはできない、ということが述べられている。
伝統的に、単体粒子の速度と位置の計測の例が用いられる。粒子の位置を計測するためには、それを'見る'ことができなくてはいけない。これの意味することは、少なくとも1つの光子を使い、粒子を照らすということである。しかし、光子と粒子との衝突によって粒子の速度が変化し、位置を測定される前の速度がなんであったかを決定することが不可能になる。

 

EPRパラドックスでは、量子状態が双方のミラーとなるようにもつれた粒子ペアを作ることのできる可能性を論じている。たとえば、位置と速度が (x0,v) , (x0,-v) であたえられた粒子ペアがあったとする。これはすなはちある時間で同じ場所にあるが正確に反対の速度ベクトルを持っているということだが、時間がたつと2つの粒子は遠く離れそれぞれ独立に計測できるようになるはずである。今、例えば粒子Aの位置と粒子Bの速度を計測することにより、EPRパラドックスは2つの粒子の完全な状態を決定できてしまうことになることを指摘する。これはハイゼンベルグの不確定性原理に反する。

 
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しかしのちの実験はハイゼンベルグの原理を裏づけ、従ってEPRパラドックスを無効にし、多くを驚かせた。数学的には計測による波動関数の崩壊は一瞬の出来事であるのでこれは問題にならなかった。物理学的な視点からは、より理解困難になった。というのは、これは状態の変化が一瞬にして2つの粒子間で伝搬されたことを暗に意味するからである。これはすぐに超光速通信の方法として提案された。ある粒子の計測をすることにより、離れた粒子の状態を一瞬で変化させることになり、1 bitの情報を送信することになる。この筋書の詳しい数学的解析では、量子力学的な粒子の統計性質により、ノイズのみが伝送されることがわかり、これらの思索は何千年の間埋没することになる。

 

これがまさにLi Azbelが問題を取りあげた点で、稀有な洞察により突破口へと導かれた。彼女は、伝送の結果が純粋にノイズしかなかったとしても、ノイズの構造が情報の符号化に使えると論じた。事実、純粋なカオス時系列に至る分岐カスケードがファイゲンバウム定数により記述できる普遍的構造をもつことはよくしられていた。ロジスティック写像とよばれる領域[0,1]で定義されたパラメータ族をとると、任意のランダム配列を生成するような写像のパラメータと初期値が存在する。Azbelは問題を別の側面からみた。すなはち無限のカオス配列があたえられたら、どうしたら初期状態までさかのぼることができるだろうか?信号のもつシャノンの情報エントロピーに最大エントロピー解析を使い、彼女はこの逆問題をとく方法を発明した。
さらに、注意深くもつれた量子状態の測定を調節することで、測定過程で基本的には故意にはいりこませた特殊なノイズの構造が、もう一方の粒子の測定にもちこされるということを実演した。

 

その過程は以下のようだった。1バイトの情報をカオス的アトラクタに至るロジスティック写像の初期状態にマップする。このノイズ配列はもつれた粒子対配列の測定の調整につかわれる。同時にもう一方では粒子の測定が行なわれ、ノイズ配列がひきだされる。最大エントロピー解析を行ない、この系がどんな初期状態から生成されたかを決定し、写像し戻し、情報のバイトを得る。この場合送られたノイズ配列は測定される者とは完全に相関がないことに注意。共通点は同じカオス的アトラクタからのものであるということで、それが、実際に距離にかかわらず一瞬で伝送される情報である。

 

前に述べたとおり、この理論的な結果は当初は信じ難く真実ではないと考えられた。Azbel-Wuthrich実験は古来のアスペの実験*1ととても似た設定を使い、このチャンネルを通じ、最初の顔文字 :-) が送られ、歴史的瞬間となった。これに続き、誰がこれを産業化するかのゴールドラッシュが始まった。

 

このラッシュの結果が、見なれたFluid(固有名詞? 液体)ルータで、今日我々が知るように、全世界通信の基礎単位を形成した。数学的な複雑さを無視するとこれらルーターの構造は詐欺的に単純である。製造の最初の段階は、もつれた量子状態を作ることである。これは超流動体の4-ヘリウムで、基本的に全ヘリウム原子がボーズ凝縮により1つの量子状態にもつれさせらてたものを使う。
そのような液体4-ヘリウムの液滴が注意深く2つにわけられる。この点から、2つの液滴、もっと具体的には液滴の中のヘリウム原子は本質的にもつれている。それぞれの液滴が、バイト列を液滴の量子状態測定に符号化復号化する装置を供えた別々のルータボックスに配置される。
この時点からこの2つのルータは距離に関係なく相互に接続される。そして通常、宇宙船がルータペアをネットワークプロバイダから購入する。ボックスの1つは宇宙船に配置され、もう一方は他のルータとの接続をもつネットワークプロバイダの基幹にのこされ、これにより効果的に分散的なネットワークが構築される。ここでメッセージは多くのルータとプロバイダを経由する。この構造は古来のインターネットに似ている。

 

この通信システムの唯一の制限はチャンネルのキャパシタである。実際にはもつれた4-ヘリウム超流動体の生成は高価である。さらに統計的に適切なカオス列が作られる必要があるので、非常に多くの原子がそれぞれのバイトにつかわれる。配列により帯域幅が制限され、1秒間にxバイトの伝送のみが許される。送られたデータの量が利用可能なもつれ原子のプールを使いつくすので、あるルータペアで送ることの出来るデータの総量は制限されている。

 

超高速通信サービスは数世紀前に最初登場してから、EVE世界のすみずみまでいきわたった。サービスとルータは独立企業により所有され運営されているのだが、通信チャンネルの安全性とプライバシーを強化し、企業が正しくそのサービスを提供しているか確かめるため、CONCORD 分科委員会により常に監視、制限されている。通信市場の熾烈な競争により、何光年もはなれた人々の間の会話、データ転送、さらにはビジネスが、安価に効率的に、信頼性が実現されている。

 

 

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*1 註: 実在するフランスの物理学者アラン・アスペ (Alain Aspect, 1947-)。編者は阿呆なので彼の実験の意義はよくわからないが、超光速ネタでよく引用される人物の一人。