イベント/すれ違う思いの波の中で

Last-modified: 2011-11-08 (火) 01:18:30

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


すれ違う思いの波の中で

黄泉返りの海賊

「ドンブラコッコー!ドンブラコーッ!!」
「お船は進むよどこまでも~♪」
「ドンブラドンブラブラブラブラコーッ!」
「……お前たち……。落ち着きが無いにも程があるぞ……」
幽霊船、ブラックジャック号。
墨樽の魔法によって飛ばされた先。
そこでコイシとアヴゼン、メネジンはようやくの再会をしきりに喜んだ後、初めて乗る船に最高にハイッ!ってやつになっていた。はしゃぎまわるコイシとアヴゼンを見て、メネジンがほとんど諦めたような口調で諭す。もちろん聞かない。メネジンが人間なら溜息を吐いていたところだ。
ふと、メネジンが奇妙なものを見つけた。
「……コイシ」
「なぁに?」

 

メネジンが見つけたのは、絵画だった。
「なんダカ、ぶきみナえダナ……」
「お城と街が燃えてる……どこなのかしら?この巨人みたいな塔は、なんだか動いてるみたいだし……」
「……槍を構えている騎士なぞ、空に浮いておる馬に跨っておるしな……」
巨人、騎士……。コイシは、自分の呟きではっと閃いた。
「……もしかして、『鉄巨人アルザダール』と『冥路の騎士』……?」
「デハ、モシカシテ、モシカスルトコノえハ!?」
「多分……審判の日《ラグナロク》……」
その時、不意に扉が開き、痛風が部屋に入ってきた。
「驚いたなwwwwwその絵の主題を知ってるなんてなwwwwww」
「痛風提督!」
「お前の言う通りwwwwwwその絵は900年くらい前にこの辺で起きた審判の日を描いたものなんだよwwwwww西方じゃ超新星ゴルディオスで夜がなくなった年wwwwwwつまり、天晶暦元年として知られてるなwwwwww」
「『お前』は止めて」
コイシの強気な口調に乗っかるように、2体のオートマトンも口々に続ける。
「……無礼な!」
「ソウダ!こいしサマトよベ!」
「え?w……あ、ああ、悪かったな……www」
さすがの海賊も、この態度のコイシには調子を狂わされた。
「……で、痛風よ。我々をどうするつもりだ?」
「おいおいwwwww勝手についてきたのはお前らwwwwwww」
「…………」
「……コイシたちだろwwwwww」
既に会話のペースはコイシたちが握っていた。情けない海賊だった。
「じゃあ、ここで下ろしてよ」
「そういうわけにはいかねぇよwwwwwその双人形には用があるからなwwwwwその人形たちを操ってるコイシも無関係じゃねーしなwwwwww」
「いイゾ!ドウセ、こうきゅうニハ、もどラヌツモリダカラナ♪」
「!ww皇宮の関係者なのかwwwwwまぁいいぜwwwwwwこの船の中なら好きに遊んでろよwwwww」

逢魔ヶ時

マムークから命からがら逃げ延びた主人公。その後ろに不滅隊アミナフが現れた。
「遅かったわね。最初の任務は失敗よ。リシュフィーなら……死んだわ
!!…………。
「彼とは同期だったの。子供の頃、不滅隊に拾われてからずっと一緒だった……。けれど、彼……青魔道士になるには人が良すぎたから……。どっちにしても長くはなかったわ。だから、気に病むことはなにもないのよ。そう、何も……」
彼女なりに慰めてくれたのだろう。今は立ち止まっている時ではない。リシュフィーにも、コイシを頼まれたのだから。
「ブラックジャック号は足が速い。そう簡単には捕捉できないわ。だから、引き続きあなたにも協力してもらうわ。不滅隊隊士アミナフの名によって新たな任務を与える……。これより『ペルキア』に赴き、コイシさまを捜索せよ。……以上。必ず、コイシさまを見つけ出しなさい。あなたのためにも……志半ばで倒れたリシュフィーのためにも……」

 

幽霊船ブラックジャック号船上。
水平線を見る痛風に、コイシたちが訪ねていた。
「オイ、ていとくトヤラ!コノふねハドコヘむカッテイル?」
「ドゥブッカ島のwwwwwwペリキアだwwwwww」
「ホーゥ♪ドンナところナノダ?」
「……聞いたことあるわ。昔、この近海で商船を襲ってた恐ろしい海賊……イフラマドのコルセアの根城だったって。それで、ある日、嵐が起こって、イフラマドのコルセアはみんな海の底に沈んじゃったって」
「wwwwwww……みんながみんな沈んだわけじゃねぇよww」
一瞬、痛風の顔に寂しげなものが宿った気がしたが、アヴゼンの声にかき消された。
「デハ、いまノぺりきあハドウナッテオルノダ?マサカ、めいかいノ、ものドモノそうくつ……」
「へっwwwwwwだったらどうする?wwwwww」
「たのシミダゾ!」
「そうね、楽しみよ!!」
予想外の言葉に、痛風は純粋な疑念に囚われた。
「なんでだよ?wwwww死ぬかもしれねーぞwwwww」
「だって、亡者だからって、海賊さんにも家族や友達がいる人間だったんでしょう?悲しくて、寂しくて、会いたくて……長い間ずーっと苦しんできたんじゃないかな?だから、反省して、もう悪いことなんてしないと思うの」
「www……コイシ」
「それに、この船の人たちだって、とっても優しくしてくれたもの!」
「さいしょハおそロシカッタケド、ナー」
「……だが、かぶとの金具が軋んでいたら……油まで差してくれた……」
「あいつらwwwwwそんなことしてたのかwwwww」
コイシたちの言葉に、痛風の心は確実に揺れた。彼の心の奥の奥にあるものが……。

 

ふと、笛の音が聞こえた。
コイシたちはなんだろう、と疑問に思ったが、痛風の顔色がすぐに変わった。
「……痛風?どうしたの?」
「www……この音、間違いねぇw……ラミアだww皇国軍がラミアを操るための笛の音だ」
「……何を言うか。ラミアは皇国の敵ぞ……?」
「ぬかせwww200年前、俺たちコルセアの隠れ家を一掃しようと皇国軍がペリキアに送り込んだ兵器……それが、合成獣ラミアだwwww」
「嘘!!だって、あいつらは皇都まで攻めてきてるのよ!?」
「へっwwww飼い犬に手を噛まれたなwwwwww……いいぜ、見せてやるwwwついてこいwww」

 
 

主人公は見た。
笛の音に導かれ、ラミアが人間の思い通りに動く場面を。それを指揮していたのは宰相サトリだったのを。
「……まだ、見つからないの?貴方たちがラミアの嗅覚ならば、というから、諸将の反対を押し切って禁を破ったのよ。陛下を無事に保護するまで帰らせないわよ」
「ご安心下さい。このラミアは、我らが錬金術の粋を集めて改良を加えたもの……必ずや御期待に応えましょう」
サトリは目ざとく主人公を見つけると、咎めることなく声をかけた。
「……驚かせてしまったようね。とんだ失態を見せてしまったわね。まさか、貴方がここまで足を伸ばしているとは思わなかったから」

 

「……見えたぜ、これで分かっただろ?wwwww」
一方、コイシと痛風たちもラミアを連れたサトリを確認していた。
「……そんな、嘘よ……」
「どうした?wwww自国の連中がラミアを馴れ合ってるのを見てショックだったか?wwwwwそれとも、あの赤い服の奴、知ってんのか?wwwww」
「……ええ」
「だろうなwwww何たってあいつは皇国の……」
「姉……です」
「wwwww……え?w」
コイシも驚いていたが、痛風も驚いた。
「……あ、傭兵さんもいる。……きっと何か事情があるのよ。聞けば分かるわ!お姉ちゃん!!」
言うが早いか、コイシは一目散に駆け出した。
「……やれやれだぜwwwwおい、墨樽wwwwww」
「人使い荒いなテメーはwwwwww」
ふわっと、コイシたちの身体が空中に浮かび上がる。痛風の命令を受けて墨樽が空中浮遊の魔法、レビテトを唱えたのだ。

飛び交う真実は

墨樽の乱暴なコントロールのせいで、慣れている痛風以外はみな着地に失敗した。
痛む尻をさすりながらもコイシが立ち上がる。
対峙する、コイシとサトリ。
「お姉ちゃん……」
「さらわれたと聞いたわ……大丈夫なの?」
「……見ての通りよ」
コイシが無事なのを確認したサトリは、次に痛風に向き直った。
「貴様か?コイシをかどわかして……」
「違うわ!私が勝手についていったの!」
「何ですって?どういうつもり!?見ず知らずの男について行くなんて……貴方は自分の立場を分かっているの?」
「なによ、お姉ちゃんこそ……こんなところで、皇国の敵の獣人なんかと仲良くして……」
「分からない?貴方を探すためだったのよ」
「だからって、そんな……ラミアは敵よ?邪悪な蛮族なんでしょう!?」
姉妹が段々とヒートアップしていく。ちょっと肩身が狭い。
「落ち着きなさい、コイシ……」
「誤魔化さないで!」
「……答えぬということは、答えられぬということか?」
「そうじゃない。いい、コイシ……彼女たちは貴方の憎む狡猾なラミアじゃない。我が軍を助けてくれている、人間の味方なのよ。そう、ここにいる、貴方の傭兵みたいにね」
「私の傭兵みたいに……?ほんと?」
ラミアと同系列に語られてちょっぴり傷心の俺のことも気遣ってくだしあ;;
「へっwwwww笑わせんじゃねーよwwwwwwラミアを作り出したてめぇらにとっては、だろうがwwwwww人間の味方だって?wwwww半死半生の俺の仲間を弄んだ挙句、食い殺したこいつらがか!?」
「貴様、何者だ?何を知っている?」
「……全部だよwww」
「ふん。狂信者の戯言ね。その身なり、コルセアの末裔か?いや、違うわね。貴方の心は漆黒で塗りつぶされ読めない……噂の亡霊ね?」
全てを見透かしたような目で、サトリが痛風の素性を言い当てた。
「だったらどうする?wwwwそいつらをけしかけるか?wwwwwてめぇの爺さんがやったみてーによwwww」
「そんな……」
「宰相……提督の言っていることは本当なのか?……宰相、答えよ」
「……コイシ。おじい様の末期の言葉、覚えているかしら?」
コイシは、黙して答えない。何か声を出そうとは思うのだが、喉でつっかえて出てこないのだ。
代わりに、メネジンが答えてくれた。
「……我は聖皇……聖皇は国家なり……」
「!ww」
「貴方も好むその言葉。単に聖皇の絶大な権力のことだけじゃない……。東西内外に数多の問題を抱えるアトルガンの広大な領土……そしてそこに暮らす一千万の皇国民の命を護らねばならない聖皇の、重大な責任をも意味しているの。そのためには、時に非情に徹しなくてはならない」
「……でも、お父さんはこうも言ってたよ。皇国を治めるには覇道はいらない。王道を持って治めよ……って。ラミアを使うことは誰の目から見ても正道ではないわ。お父さんの教えに反してる……違う?」
コイシの言葉が少なからず痛かったのか、一瞬だけサトリが口を閉ざした。一瞬だけ。
「……コイシ、今に分かる時が来るのよ」
「お姉ちゃんはいつだってそう……私を子供扱いするの。ただ、言うことを聞いてろって……。それなのに、聖皇の責任は押しつけるなんて……」

 

「ナシュメラッ!!!」

 

「!!?」
「お前には、聖皇としての覚悟が無さ過ぎる。いかなる王といえども、己が手を、己が心を汚さずに臣下に血を流させることはできないのよ。どうして、それが分からない?」
この流れは……まずい……。
「……知らない。そんなの関係ない。だったら……だったら……お姉ちゃんが聖皇になればよかったじゃないっ!」
ふざけるなっ!いい、聞きなさい!……私はかつて、第一皇位継承者だったのよ……。だけど、お父様がいまわの際に後継者として口にされたのは貴方の名前だった……」
「……そんなの知らない。私は……私は……」
「どうしてだか、分かる?」
「……知らない。知りたくない。だって、私は……私は……聖皇になんてなりたくなかったんだものっ!!

 

わずかな、沈黙。誰もが驚き、状況を冷静に分析できている者は、当事者の姉妹含めて誰一人いなかった。
だが、もう後戻りはできない。無常にも、驚愕の真実の暴露は、まだ終わらない。

 

「理由を教えてあげましょう。そのとき、私の身体には……このラミアと同じ、魔物の血が流れていたからよ……。貴方が嫌い、お父様も蔑んでいたラミアと同じ、青い血がね……」
「!!」
コイシにとっては、今日で最大の驚きだった。
「これだけは、言いたくなかったけど……。貴方が寺院に預けられた後。私は東方戦線でお父様の命に背いて前線で戦い、瀕死の重傷を負った。一か八か、再生力の高い魔物の血を輸血するより他に助かる術はなかった……」
「……そんな」
「もう、分かったわね?なら、大人しく皇宮に帰りなさい」
「……うん。でも、おねえちゃ……」

 

「いい加減にしろッ!」

 

突如声を張り上げたのは、痛風だった。
「このまま帰すと思ってんのか?アトルガンの皇族さんよwwwwおい、冥路の騎士wwwww礼を言うぜwwwwついにここで、イフラマドの、仲間の仇を討てるwwwwてめぇらを根絶やしにしてなぁ……!?」
痛風の身体から、禍々しい気が生じる。
黒い煙が立ち上り、段々と形を作っていく。

 

誰もが始めてみる幻影。
だのに、誰もが一目でそうだと分かった。
あれこそが、冥路の騎士オーディンの姿だと。

 

「……くっ!死に損ないの魔物めっ。ラミア、かかれ!」
サトリの号令を受けて、慌てて笛の音が奏でられる。
3体のラミアたちが黒い幻影に向かって吼える。
そしてそれは、幻影の放ったたった一撃で消滅した。
「お……おいwwやべぇぞwww」
墨樽が身の危険を感じ、避難しようと提案しようとしたが、それを遮ってコイシが叫んだ。
「痛風、止めて!!」
その声を聞き、黒い幻影は戸惑ったようにたじろぎ、やがて消え失せ、痛風も気を失い倒れた。
「お、おいww痛風www」
「!墨樽か!?」
「はやク、われわれヲ、ふねマデ、つレテゆケ!」
「ああ?wwwww俺様に命令するなんざ100年はえーんだよwwww」
「いいから、はやく!」
「チッwwwwうっせーなwwwwww」
急かされ、仕方なく墨樽がもう見慣れた魔法の詠唱を始める。
「ま、待ちなさいコイシ!何をしているの!?」
「ごめんなさい、お姉ちゃん。私は今は、この人たちと一緒にいたいの。……さよなら」
「しんぱいスルナ」
「……さらばだ」
「主人公!貴方だけは私の味方でいて!せっかく来てくれたのに……ごめんね」
墨樽の詠唱が完了し、コイシたちの姿は消えていた。
「……コイシ。私は、貴方を……」
拳を硬く握り締めるサトリの元に、セフィロスが姿を現した。
「サトリ様。耳に入れたい報が」

 

「本当なの?」
「御意。至急、お戻りを」
慌てた様子の報告だ。サトリは主人公に向き直ることなく声をかけた。
「……コイシ捜索の件だけれど……痛風の関与がはっきりした以上、もう傭兵の身には余る。貴方の任務は、これで解かれた」
「分かっているだろうが、この件については他言無用だ。無論、貴様の会社にもな。報酬は送る。社長には、無事皇宮の任務を完遂したと伝えるがいい」
納得いかないことはいくつもある。
だが、今の自分にはそのうちの一つだって解決することが出来ない。
歯がゆい思いを抱きながらも、主人公はその場を去った……。