イベント/つわものへのフリージア

Last-modified: 2012-01-11 (水) 03:14:11

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。

つわものへのフリージア

  • 「凍月」をクリアし、サーシャをPTに入れた状態で太陽の畑の幽香の元を訪れる。
     

太陽の畑。
色彩鮮やかな花々が彩る幻想郷の名観光スポット。
幻想郷でしか見られない四季の花々を心行くまで眺められることから、国外から植物好きな観光客が良く訪れる。
昼は明るい陽光を受けて輝く美しい景色を、夜は月光に照らされた幻想的な風景を見せる名所だ。

 

……そんな名所であるこの畑。ここでは暗黙の決まりごとがひとつだけある。

 

決して畑の管理者である妖怪を怒らせないこと。

 
 
 

「ほほー、風雅じゃー」

 

そんな太陽の畑を訪れた主人公。その後をサーシャが目を輝かせて付いてくる。
「以前に幻想郷に住んでいた時もここまで大きく広がってはいなかったが、少し見ないうちに大分育ったものよな」

 

サーシャは感慨深げに風を受けて靡く花々を眺めていたが、鼻に花粉でも入ったのか、大きくくしゃみをした。
「しかし、花が美しいのは結構なのじゃが、この"かふん"とやらはわらわは好かぬ……」
……まぁ、花粉症の人にとっちゃ地獄の宴だよなぁこの辺りは。

 

「花と言えば……ふぅむ。そういえば昔、この辺りに花が好きな妖怪がおったな」
花が好きな妖怪……? 
「うむ。やけに勇猛で血の気の多い輩じゃった……あやうく尾先をチリチリにされる所だったのじゃ……」
……該当する人物がいるけど、思い浮かべた途端にひややせが湧いてくるんですがこれはどういうことか。

 

「ええ、と、名は確か……かざ、かざみどり……?」

 

「風見幽香」

 

「そうそう。そうじゃ、そうなのじゃ! そんな名前じゃった!
……うん? ど、どうしたのじゃ主人公よ。まるで生まれたての小鹿の様に足ががくがく震えておるではないか!?」

 

さーしゃ、さーしゃー 後ろ後ろ―

 

「後ろ……?」

 

振り向く。
振り向いた先には緑髪の女性がサーシャの目の前で穏やかにニコニコ笑っていた。

 

「おおうっ!?」

 

飛びのいたサーシャを見て、当の風見幽香は目を丸くして三回連続で見つめてきた。
「あら、誰かと思えば懐かしい顔! ……そういえば帰ってきたんだっけ?」

 

「うむ、その通り。ウルガランが急に棲みにくくなっての。少し前に返り咲いたという訳なのじゃ」
サーシャが幽香の顔を見ながら……ちんまいので彼女を見上げる形になるが……答える。
お互いにそのままズズっと近寄ると
「あの時は世話になったの。集光れーざーとは恐れ入った。危うく火だるまになるかと思ったぞ」
「あらあら、それはごめんなさい。……でもこちらはうっかり氷像になるところでしたわ?」

 

「ははは、こやつめー」
「あらあら、うふふ」

 

……おかしい。笑顔が絶えない和やかな状況の筈なのに、震えが止まらないんですけど……!?
つーか、何があったのこの二人。
「なに、ちょっと喧嘩を売られただけじゃ」
「同じくちょっと喧嘩を売っただけよ。ああ、あの時は中々面白かったなぁ」
……頼むからこのまま、思い出話のままで昇華してほしいところである。

 

「そういえば」
と、幽香が主人公の方に目を向けてきた。深紅の瞳に射抜かれ、主人公の頬に冷たい汗が伝う。
幽香はサーシャの髪を一房弄びながら、
「こちらの方は何方? ……こんなのを隣に連れてるってことは只者じゃなさそうだけど。そのままの意味でも、アブノーマル的な意味でも」
なんぞ。自分がロリコンと申すか。
どう言えばよいものかと言いあぐねていると、

 

「ふふん、主人公はすごいぞ? なんせわらわを倒したのだからな!」
横からサーシャが平坦な胸を張って誇らしく言ってきた。……何故お前が威張るんだ。

 

「……へぇ? 貴方が?」
それを聞いた幽香の眼がアブナイ感じにギラリと光る。
……その瞬間、抗いがたい悪寒が主人公の第六感を通じて脳髄を走り抜けた。
幽香は主人公の顔を興味深そうにまじまじと見つめていたが、

 

「少し用があるのだけれど。ちょっと付いてきてくれる?」

 

ああ、呼び出し入りました。呼び出し先は体育館裏か地下駐車場か。いや、この世界観なら太陽の都とか巨人墓場だろうか。
返事も待たず、幽香はさっさと行ってしまった。……ついて行かなきゃ不味いよねコレ。
サーシャと言えば主人公の服の端をぎゅっと掴んでいた。
「幽香は意味もなく問答無用で暴虐を振うような輩ではない。わらわも付いて行くから安心するのじゃ」

 

……腹をくくって幽香の後を追う。

幽香の後に続いて花畑の道を進むと、開けた広場に入った。
周囲にはやはり花が咲き乱れ、真ん中には看板が立っている。
ここでバリスタでもするのかと思ったが、幽香はそのまま看板に近寄る。

 

「こっちよ」
急かされ、看板の前に立つ。
看板には血文字「おはなはたいせつにしましょう」とかわいらしく書かれていた。
……やけに重たい一文である。

 

一体どうしたのかと尋ねると、
「少し待ってなさい」
そう言うと幽香はおもむろに看板の柱を掴み、そのまま力をこめて引っこ抜く。
そして主人公は引っこ抜かれた看板から下を見て大いに度肝を抜いた。
土の下から現れたのは杭の先端ではなく巨大な金鎚だったのだ。看板の柱だと思ったのは巨鎚の柄だった。
幽香が引っこ抜いた鎚の先端を地面に置くと、それだけで軽く地面が震える。
「ここ、これ……これは……!」
その地面に置かれた巨鎚を見て、サーシャがあわわと口をパクつかせた。
「こいつは、以前わらわがおぬしに渡したミョルニルではないかぁあぁー!? な、なな、なんて、なんてもったいない使い方をするのじゃ……!」

 

ミョルニルって……レリック武器じゃねーか!
一品物へのあまりにぞんざいな扱いに思わず戦慄を覚える。金をドブに棄てるようなもんだぞ……!

 

「……だって使い道に困るんだものこれ。工具として使うには大きいし威力があるし」
「そもそもそれ以前にレリックを工具扱いする馬鹿がどこにおるのじゃ!?」
「そうねぇ、私が初めてかしら?」
「……っ ……っ しゅ、主人公~!;;」
しばらく絶句ののち、サーシャが泣きついてきた。お前は子供か。ええい、顔を擦り付けるな。
サーシャを押しのけ、幽香に尋ねる。
……ところでこれを引っこ抜いて、一体どうするつもりで?

 

「貴方にあげる」
mjd?
「ええ、あげるわ。そいつをやっつけられるくらいの腕前なら問題なく扱えるでしょう。
これも看板として地面に埋まっているよりも、武器として振って貰った方が幸せだろうから」

 

▼ミョルニル-1を手に入れた。

 

「さて、と。預かりモノを返したことだし、私はそろそろ帰るわ」
最後に好戦的な笑みを浮かべて、
「貴方とは是非、一体一で戦ってみたいものね?」
そう言うと幽香は立ち去っていった。

 
  • ミョルニル
    レリック武器が一。
    ドゥエルグ族が作り上げたと言われる雷神トールの鉄槌。トールハンマーとも呼称する。
    以前はサーシャことヨルムンガンドが所持していたが、幻想郷を去る際に幽香に譲った模様。
    しかし当の幽香が持て余し気味だったため、看板として生まれ変わり、太陽の畑の地面に埋まっていた。
    土の中で長年そのままだったため、その威容もすっかり錆びてしまっており、戦力として使うにはもう一度磨き直す必要がある。