イベント/ウドンゲインに花束を

Last-modified: 2011-11-29 (火) 04:51:25

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


ウドンゲインに花束を

  • 蓬莱の国、不死の軍団をクリアして永淋の下を訪れると発生。

はぢめてのおつかい(ひんがしの国編)

穢れに触れ、暴走した麒麟と死者の軍団との戦いを終え、再びひんがしの国を訪れた時のこと。

 

永遠亭を訪れると、珍しく客足もなく静かな空気を漂わせていた。
受付を見ると永遠亭の薬師兼医師兼輝夜姫の従者である永淋が何かの簿帳にすらすらと筆を走らせている。
俯く横顔。その口角に銀糸のような髪の毛が挟まっているようだが気付いていないのか知っていて無視しているのか、永淋は気にしてはいない。

 

ぼうっと観察していると、ちらりと視線を向けられた。
……こちらに気付いたようだ。

 

「あら……丁度よかったわ」

 

開口一番にそう言って、永淋は椅子に身を傾ける。
丁度よかったとは何のことだろうか。

 

「ええ、あなたに頼みがあって」

 

頼み?
疑問形で返すと、永淋は受付越しから身を屈ませると、受付の下から片手で抱えられる程度の大きさの葛篭を取りだした。

 

「これをアトルガンに住んでいる私の弟子に渡してほしいのです。自由な足を持つ貴方ならアトルガンにも詳しいと思いまして」
なんと。弟子とな?
「そうです。……といっても随分前に私の元から逃げ出してしまったんだけどね」

 

なんでも今現在、彼女の弟子はアトルガンで傭兵稼業をやっているらしい。
逃げた先がひんがしの国と敵対関係だったアトルガン皇国のため、永淋がその事を知ったのは和平が結ばれた直後だったとか。
その話を聞いた主人公の頭の中に、ブーメランセンチネルの同僚である彼女の姿がまず最初に思い浮かんだ。……おそらく間違ってはいないと思う。

 

……永淋さんは、そのお弟子さんの事をどう思っているんですか?

 

故国を捨てた鈴仙を、永淋は今でも怒っているのだろうか。そんなことをふと考え、訊ねる。
仮にもそれなりの苦難を共にした仲である。もし、悪意のある依頼なら断らねばなるまい。

 

しかし、それを聞いた永淋はきょとんとした表情を見せた。
「…………もしかして、私があの子に怒ってるとか、届け物に何か仕込んでいるとか考えてる?」
少しは。
即答を聞いて永淋は苦笑いを浮かべた。
「私も結構信用ないものね……。
『手のかかる弟子だ』逃げられた時にはそう思ったけど、だからといって怒ってはいないわ。
前から私の無茶を一人で聞いてくれてたからね。厳しく接しすぎた私にも責任がある」

 

「私にできることは遠くで元気にやっている弟子の帰りを気長に待つことくらい、あとはお節介焼いたりね」
そう言うと永淋は葛篭の蓋を軽く撫でた。

 

「そう言う訳で……この葛篭を弟子のところまで届けてもらえるかしら?」

鈴仙、慟哭する

「あら、主人公じゃない。また社長に何か……え、私に届け物?」

 

ブーメラン・センチネルにて、目を丸くする鈴仙にずいっと届け荷である葛篭を渡した。
差し出し人が八意永淋であることを伝えると顔色がさぁっと蒼くなった。
「……師匠から?」

 

ついに自分の居所がばれたか、それとも彼女の怒りが自分の下へと向けられたと思っているのか。
震えながら、鈴仙は葛篭を開ける。蓋が開いたかと思うと芳しい薬の匂いが周囲を包んだ。
葛篭を覗きこむと、中には大きな包み紙と手紙が入っている。

 

鈴仙はおそるおそる手紙を手に取り、目の前に広げた。

 

鈴仙へ。

 

私の下にいた時はあんなに怯懦な性格の兎が今ではアトルガンで戦争をやっているなんて、知った時は目を見張ったわ。
貴女はとことん臆病だから長生きするとは思ったけど、戦火で上手いことやってるなんてね。
私の弟子をやっていただけはあったってことなのかしら?

 

さて、前置きもそここそに結論から述べますが

 

貴女が私の下から逃げ出したことについて、私は一切責めるつもりはありません。
思えばあの頃は姫様にかまけて仕事を貴女一人に色々押し付けてしまったからね。私も反省しているわ。
……といってもまさかよりにもよってアトルガンへ逃げ出すとは思いもしなかったけど。

 

そんなわけです。私は姫様の世話をしながら貴女の帰りを待ち続けることにします。
貴女は貴女の気が済むように、好きにおやりなさい。くれぐれも獣人料理の材料にならないようにね。

 

その葛篭の中に薬を入れておきました。
傭兵稼業なんてやってたら傷や病気が絶えないでしょう。仕事仲間にも遠慮せずに使ってあげなさい。

 

ああ。そういえば姫様もたまにあなたのことを思い出しては寂しがっているようです。
気が向いたなら顔だけでも見せにいらっしゃい。
そっちでできた友人も一緒にね。

 

それでは。

 

八意永淋

 

包み紙の中にはたくさんの薬が入っていた。
薬紙の質といい、容器に彫刻された金の鳳凰の紋様といい、たとえ素人目だろうとも、それが高価な代物だということがわかる。
「……師匠」

 

感極まった様にぽつりと呟いた鈴仙であったが、

 

「ん?」

 

途端にその眉をひそめた。

 

「ついしん……?」

 
 

追伸
そういえば貴女が永遠亭を出て行った間に溜まった仕事の総量についてだけれど。

 

診療のお手伝いが1840時間分。

 

薬棚の整理が1659時間

 

薬の調合が1065時間分。

 

玉兎達の世話が890時間分。

 

謙☆信さん含めたお得意様への薬の調達が578時間分

 

それ以外諸々含めて1621時間分……

 

「……………………………………」
文を読むにつれ、鈴仙の顔から表情が消えていく。
その代わりに凄まじい量の汗がまるでナイアガラの滝の様にズザザザと流れ、彼女だけがマグニチュード7の地震に遭遇したかのようにガタガタ震える。

 

私、今にも死にそうです。
そう全身でアッピルしている姿だが一見するとまるでギャグか何かの様に見える不思議がそこにあった。

 

累計6653時間分。日にち換算で277日。(端数は切り捨てね)
さて、溜まりに溜まったこの時間、今も絶賛貯蓄中よ。
もし帰ってきたら、しばらくは休みなしになりそうね。
長休みもほどほどにね、うどんげ。

 
 

ぐしゃりと紙を握りつぶすような音が鳴った。
手紙の内容を最後まで読み終えた鈴仙がその手紙を万力込めて握りしめたのだ。
そしてドドドドドドドドと擬音つきで凄まじい気迫を纏う。

 

「し」

 

し?

 

得体の知れぬ気配を感じ身構える主人公を前に、滂沱の涙を流しながら、鈴仙はひんがしの国の方向目掛け思いきり叫んだ。

 
師匠ぉおー!.jpg
 

「師匠のアホおおおおおおぉぉぉぉぉおお!!;;;」

 
 
 

彼女がひんがしの国に顔を出す日は未だ遠い……。

 

報酬
侠者の薬×1コ
ルシドポーションⅡ×3コ
ルシドエーテルⅡ×3コ
ルシドエリクサーⅠ×2コ
 
永遠亭で上記の報酬も含めた薬が販売される様になる。