シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。
オ支払イハ、ゴ一括デ?
- 「闇の牙城」をクリア、主人公のレベルが75以上でフランを尋ねる。
折れた炎剣
某日某日
大きな唐草模様の風呂敷包みを抱えたフランを見かけた。
そんな恰好のままにそわそわしていて、その姿は少しどころではないくらいに怪しい。
ここがひんがしの国なら怪盗ナントカ呼ばわりされて番屋に放り込まれるくらいに。
どうしたのかと声をかけてみると、
「……壊れモノが出たから、直してもらおうと思って」
その風呂敷包みに入っているのは壊れモノか。
……ところで壊れモノというのは、高価な壺とか?
「ううん、」
フランは首を横に振る。
「わたしの剣」
フランが言うには、少し前に姉妹喧嘩をやらかして、その時に剣を壊してしまったらしい。
直そうにも彼女が使っている剣はドゥエルグ族が作り上げた特注品で、修復には彼ら以外には出来ないのだとか。
「だから、この剣を作った本人……ドゥエルグ族の王様に逢いに行くんだけど……あまり気が進まないの……」
面倒でもあるのか? 基本的に人が良いフランがここまで弱った顔をするのも珍しい。
「……なんというか……その人、キング・ゴルデマールって言うんだけどね……?」
「……あまり関わりたくない種類の変人なの」
地獄の三丁目へ
フランが空を高速で飛ぶ。
主人公はその背におぶられる様な形で、ひっついていた。
好奇心と純粋な厚意から同行を申し出てこうして空を飛んでいる訳だが、やはり気恥ずかしい。
もし知り合い周りに見られたら半目の視線が弾幕の如く突き刺さる事請け合いだろう。
口を開こうとすると舌を噛んでしまうが、徒歩よりもずっとずっと早い。サラマンダーよりはやーい!
しかし……変人か。
フランもフランで相当(自覚なさそうな)変人だと思うのだが。
……というかこの世界の知り合いの大部分が変人しかいない不具合。
そう思っていると、高度が下がってきた。
どうやら目的地に辿り着いたようだ。
地に降り立ち、周囲を見回す。ここは……
「ゼオルム火山、だね。ここから、キング・ゴルデマールの工房の入口に通じてるの」
ゼオルム火山って、確かトロールの領地内じゃないか?
「そうだよ。ここはハルブーン領内だから、気をつけて。
もしトロール達に見つかって皇国兵だと勘違いされたらすごいややこしい事になるよ」
その言葉に思わずゾッとした。
あの悪名高き関☆羽……もとい脅威のグーフールーを初め、トロールの猛者の恐ろしさはよく聞いている。
……気が進まないといった理由は、キング・ゴルデマールの人柄だけではなさそうだ。
引き締まった主人公の顔を見て、フランはにこりと微笑む。
「よろしい。……それでは行きましょうか」
フランの案内でゼオルム火山の火口に侵入し、先へ先へと進む。
途中、モンスターがちょっとわずかに現れたがなんてことなく斬り伏せられた。
「もう少し、だね。熱そうだけど頑張って」
……溶岩熱に平然としているのは彼女が炎系の技を使い手だからなのか。
そして、広い洞穴に入る。
入った瞬間に、ひんやりした空気がこちらを出迎えてきた。
「ここがキング・ゴルデマールの工房だよ。……でも、やけに静かだなぁ。
いつもなら、変な発言しながらやってくるのに。
定例のブラックマーケットは大分先だから留守にしていないと思うけど」
と、奥から囁くような声が聞こえてきた。
「……!」
「……、……」
「……!? ……!」
なんだか工房の奥で誰かがゴニョゴニョしている感。
「ん。行ってみようか」
奥まで行ってみると、ドゥエルグ族が複数囲んで何やら熱く語り合っていた。
どうしたのだろうかとフランが声をかけようとして、
「ミルキーエイキーニ決マッテイルデショウ!?」
沈黙した。
「ミルキーエイキーデス! 魔法裁判官少女ミルキーエイキーガ一番ニ決マッテイマス!
シッカリ者ナガラ、ドジッ子キャラ…………最高ジャアリマセンカ……!」
「同志、ミルキーエイキーモ素晴ラシイモノデスガ、ミスティーコマチモ忘レテハ困リマス……!
一見飄々トシタキャラデスガ時折見セル『きゃん!』ヲ初メトシタ可愛ラシイリアクション! ソシテビッグバン的ナアノバストッ!」
「……否否否! 同志、残念ナガラ退ケヌモノガゴザイマス。私ハアノ慎マシイ地平線コソガ至高ト考エテオリマスノデ……!」
「「……」」
「「ヤハリ、貧乳派ト巨乳派ハ争イ合ウ宿命……!」」
「アイヤァ、皆サン! ソンナ事ヨリモ御用命ノ品物ガ出来マシタゾ!」
「「!」」
「同志キング・ゴルデマール、ソレハ真デ……!?」
「イカニモ~! ミルキーエイキー&ミスティーコマチノ1/1フィギュア(キャストオフ機能搭載)! タダイマ完成デゴザイマス~……!
当然組立、塗装済ミ! オマケトシテ、アヤシイ触手モ付属……!」
「オオ! コレハ!」
「真世界……!」
目の前に出されたフィギュアの完成度を目にしたドゥエルグ達が神像でも拝むかのようにその場にひれ伏す。
その時、ドゥエルグ達は此方に突き刺さる視線に気が付いた。
ハッ、と振り向く。
そして見た。
自分達にアワレなモノでも見るかのような目線を向けているフラン達の姿を。
「……お取り込み中みたいだね?」
帰ろっか。
「うん」
そうしよう。
「そうしよう」
「「「待ッテ! 待ッテェエェ! 話ヲキイテェエ!!;;」」」
こっちくんじゃねぇ……!(切実)
- 大規模戦闘
♪紅夜の黙示録
勝利条件:敵の全滅
敗北条件:主人公、フランドール・スカーレットの戦闘不能
雑魚ドゥエルグはそれほどでもないが、キング・ゴルデマールがとても強い。武器を召喚してきたり、魔法関連のステを下げる技「カックル」の後に精霊魔法ぶち込んできたりとかなり凶悪。
このイベントが発生する時点でこちらのレベルやステはとてとて高めだろうが、敵の方も強い部類、それが4体もいるため油断しているとあっさりやられる事がある。
なにより、此方の戦力が主人公とフランしかいないのが痛い。ドゥエルグ族には魔法攻撃がほとんど通用しないので主人公のジョブによっては戦闘要員がフランしかいないという状況にもなり得る。
ふざけた開幕の割にかなり難易度が高い戦闘である。
追いすがるドゥエルグがぶちのめされる中、フランが地面を蹴り、飛翔した。
そのまま月面宙返り気味に空中で身を捻りながら、二人に分身、足のつま先に炎を宿し、残るゴルデマールに叩き込まんと振り下ろす。
ゴルデマールはつま先を振り下ろすフランを上から見上げ、
「――黒デスカ!!」
その顔面につま先が容赦なくぶち込まれた。
「コ、殺スツモリデスカナー! アヤウク、ヴァルハラノ入口ガ見エカケマシタヨ!?」
「……それはそれは。で、頭は冷えたのかな? 変態さん」
「変態デハナイデス! コノゴルデマールハ、アクマデ、紳士! デスヨ!?」
「うんわかったから……死ねもしくはくたばれ」
……だんだんサクヤさんに似てきたなぁフラン。
「ウオゥ!? 見下スヨウナ視線ガタマリマセンネ、社長サン!」
「へぇ、変態に付け加えてマゾヒスト? ――救い様がないね?」
「ウフウウウゥウ! ゾクゾクガ止マリマセン……! コレガ吸血鬼ノ魔眼……!」
「ごめん見るに堪えないから視界に入れてない」
呆然とする主人公に、フランがこちらに心配そうに視線を遣る。
「……大丈夫? あの変態の毒気に充てられていない?」
……毒気に充てられてはにい。しかし大丈夫じゃない、問題だ。
フランが諦観した表情で溜息を吐いた。
「……あまり関わりたくないって言った理由がわかったでしょう? キング・ゴルデマールはね、こういう人なの」
……嫌というほどわかった(戦慄)
「ド、同志キング・ゴルデマール、彼女ハ一体……」
「ハッ! モシヤ新タナ魔法少女……!?」
「エエト、彼女ハビジネス関連ノオ得意様デスネ。トイウカ少女ッテ年齢ジャ……」
次の瞬間、フランが腰の入ったアッパーカットをゴルデマールに放った。
顎に喰らい、空中にうちあげられたゴルデマール。
そして4りに分身したフランが、飛び蹴りを様々な角度からゴルデマールにぶち込んだ。
分身が消え、フランは地面に着地、ゴルデマールは何故か空中に停滞し、数秒後に爆発。
黒コゲになって地面に落ちた。
「「「ド、同志ーッ!?」」」
……本当に碌でもない。
破損原因:姉
閑話休題。
フランにフルボッコにされたキング・ゴルデマールであったが、数分後には何の問題なく復帰していた。
変態ともなると生命力もおかしくなるのだろうか。
まぁ何はともあれ。
「エー、本日ノ要件ハ……武器ノ修復デスカ。デ、ソノ武器ハ以前私ガ社長サン専用ニ作ッタ両手剣デス、ト」
ゴルデマールがメモ帳の様な冊子に骨でできたペンを走らせる。簿帳みたいなものか。
「うん。派手に壊しちゃったけどできるかな」
「ウーム、実物ヲ見セテクダサレバ」
言われて、フランが羽根からいきなり風呂敷包みを取り出した。
原理はよくわからないが羽根の裏側がベクタートラップ(四次元ポケットみたいなの)になってるんだそうな。
そしてフランが風呂敷包みを開けると、中から二つにへし折られた両手剣が出てきた。
「……ハハァ、派手ニヤリマシタナァ、社長サン。一体、ドンナHNMト喧嘩シテキタンデスカ?」
「お姉さま」
「……エ? ……社長サンノ、オ姉サン?」
「ええと、お姉さまと喧嘩してる最中に壊されちゃって」
「……モシカシテ、社長サンノオ姉サンハ、キングベヒーモス カ オメガ カ メガデウス ナンデスカ?
……一応、コレ特上品中ノ特上品ナンデスケド」
「あ、あはは……HNM並なのは否定できないかも……」
「マァ、三日モアレバ修復ハデキマスナ。高級品ナノデ、少々、オ高クナリマスガ」
「どれくらい?」
「エー……ア、ハイ。合イマシタ。
シメテ、輝金貨999,800枚ニ、ナリマス。 オ支払イハ、ゴ一括デ? ソレトモ、ゴ分割デ?」
oi miss 甥 みうs 笈 おい 少しってレベルじゃねーぞ紀伊店のかぼったくりじゃねーかそれ。
「あ、一括でお願いします」
……しかも払えるのかよ。
「といっても輝金貨999,800枚なんて持てないから、等価交換っていうのかな?
代わりの品物でやりとりするんだけどね。今までもそうしてきたし」
「今ナラ社長サンノスリーサイズ計測ダk……御免ナサイ冗談デシタ御免ナサイ暴力ヤメテヤメテ」
「……うふふ。お互い、いい感じに血圧上がってきたね?」
「私ノ方ハ血ガ止マリマセンガナー!」
「それで代わりの品物だけど……これでどうかな? 貴方達が好きそうなものだと思うけど」
フランが取り出したのは文字が書かれた二枚の厚紙。
「コレハ……」
「魔法裁判官少女ミルキーエイキーと謎の死神少女ミスティーコマチの直筆サイン」
「「「!!」」」
いきなり空気が震撼した。
……というか何故フランがそんなの持ってるのだ。
「本人から貰ったの。まだ鎧に引き篭もってた頃のことだけど」
しっこくさんの時に面識があったらしい。ショーの観客席に座る漆黒の鎧を想像して、何とも言えない気持ちになった。
しかし、流石にこいつらがそういう趣味だからって、それだけじゃどうなのだろうか。
とても輝金貨999,800枚分の価値があるとは……
「他ニ御用命アレバ、ナンナリト」
わぁい、つり合っちゃったよ。他のドゥエルグも一緒に跪いてる有様。
「……よくわからないんだけど、大丈夫、なのかな?」
「勿論! 勿論! オカゲデ、他ノ同志ニモ自慢デキマスヨ~!」
何はともあれ、取り引きは完了したらしい。
修復完了
それから三日後、ゴルデマールの工房にて。
「約束通リ、直シテオキマシタヨ! 社長サン!」
そう言うゴルデマールの手には、完璧に修復された両手剣が!
折れていた部分に修繕跡は全く見当たらず、新品同然の状態にあった。
「……相変わらず凄い仕事だね」
「イヤァ、フィギュア製作ノ時ニ比ベレバ、コノクライ、チョロイモンデストモ!」
技術の無駄遣いという言葉をこのドゥエルグは知っているのかというか鬼なる。
フランもゴルデマールに対して微妙な表情を浮かべていたのだが、両手剣を見て、何かに気が付いたかのように声を上げた。
「……もしかして、これって改修されてる?」
そう言われると、刃の輝きだとか、細かいデザインだとか、全体的なクオリティが上がっているように見える。英語で言うとHQ。
それを聞いたゴルデマールは前歯を剥きだす様に笑い、親指を立てた。
「アノ時請求シタ輝金貨999,800枚ニハ、修繕費ダケデハナク改修費モ多分ニ含マレテオリマシタノデ。オ気ニ召シテ頂ケマシタカナ?」
そしてフランは一瞬きょとんとした表情を見せると、
「Herrlich。最高の仕事よ、ゴルデマール王」
微笑んでサムズアップで返した。
いわゆるプロ意識というやつなのだろうか。
正直、変態だの関わりたくない人種と内心では散々な評価だったのだが……
さっきので、このドゥエルグの事をほんのちょっぴりだけ見直してもいいと思った。
……輝金貨999,800枚は流石に多すぎると今でも思うが。
「実ハデスネ、今回作ッタノハコレダケジャナインデスヨ」
ほう?
「ジャジャジャジャ~~~ン! 来テ、見テ、触ッテッテ~!」
そうして、ゴルデマールが取り出したのは、
「わたしの……人形?」
「ソノ通リ! 社長サンノ、1/8全可動式フィギュアデス!
ホラホラ、コノ通リ、御召シ物ノ色モバッチリ再現シテマス!」
蹴りが飛んだ。
「赤白ストライプッ!?」
そして次の瞬間、ゴルデマールは己が改修した両手剣の威力を身を持って味わうこととなったのである。
……前言撤回。
変態はどう転んでも変態であった。
- 報酬
- 両手刀「七枝刀」
- フランの装備が「スルトの魔剣」に変化。
- 「ゴルデマールの工房」を利用できるようになった。
アイテムの売買の他、法外な量のお金、もしくは素材と引き換えに武器を強化できる。
また、次週以降イベントを経ていなくても変わりなく利用できる他、本編でも利用できるようになる。