イベント/ジュノ、擾乱

Last-modified: 2011-12-25 (日) 09:59:21

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


ジュノ、擾乱

覚悟の時

どうにかジュノの目前まで戻ってきた三人。だが、もう遅かった。
「……見て!」
ヒナが街の外を見て驚く。
先ほど自分たちを追ってきたのよりもずっと多い数のクゥダフが、巨人たちも引き連れてジュノに迫っていたのだ。しかも、対城砦兵器、投石器【カタパルト】も用意してある。主人公たちがバストゥークまで足を運んでいる短時間に、これだけ状況が変わっていたとは。
「準備万端ってわけか」
見ると、ジュノ側でも弓や銃、または杖を構えた兵士たちが集まっていた。戦が始まるのは時間の問題と思われた。
「なんて数なの……今は、こう着状態みたいだけど……このまま、降伏を待って雪崩れ込むつもりかしら?」
「でもよ、ここの連中、もうあまり保ちそうにないぜ」
ギルガメッシュの言う通り、ジュノの兵士たちはみな傷を追っていたり疲労が隠せなかったりしている。獣人の軍勢と比べても、あまりに弱々し過ぎる。
「急いで大公に会いにいきましょう!」

 

「この先は秋穣子大公殿下の治めるジュノ大公国です。……このような状況下で何の用かしら」
一行はジュノを守る城壁を守るレティに会っていた。
「我々は貴国の降伏をなんとか回避せんと奔走しております。どうか、協力させていだたきたく……」
「……分かったわ。ご助力、感謝。こっちよ」

 

「……ひでえな」
さしものギルガメッシュも呻いた。それだけ、ジュノ内の惨状は、想像以上だった。
あちこちに傷ついた兵士が倒れ、それを介抱する者さえ数が足りていない。
だが、自分たちにはどうすることも出来ない。これだけの数がいては、ヒナが白魔法で治す前に彼女が力尽きてしまうだろう……。

 

「……待たせたな。冒険者支援ギルドのアヤネは所用で席を外している。俺が代理のクラウドだ。用件は俺が承る」
「はい」
奥まで通された一行を出迎えたのは、顔なじみだった。これで少しは気も休まるというものだ。
「ジュノの周辺は見ただろう?醜態を晒すようで忍びないが……これが現状だ。……降伏を装って奇襲する……そういう作戦だったんだがな、獣人たちには見抜かれていたようだ。これでは、本当に降伏しなくちゃいけないだろうな」
「そんな……!もう少し耐えれば、きっと各国からの援軍も来るわ!それまでは……」
「いいや……間も無く、ジュノは陥落する。他国の連中まで巻き込む必要は無い。悪いことは言わない。早くこの国から立ち去るんだな」
「なんでだよ!?そんなんでいいのか!?最後まで頑張ればいいだろ!なに諦めてんだ、おまえら、馬鹿じゃねえのか!?」
耐え切れず、ギルガメッシュが吠える。自信家な彼にとっては、潔すぎるジュノの対応は我慢ならなかったのだろう。

 

「……私たちだって!」
「!?」
クラウドは黙っていた。声を上げたのは別の人物……レティだった。
「この剣が折れるまで戦うつもりだったのよ!たとえ私一人になったってね!最後の時まで戦い続けるのが傭兵の誇り、そして正義だって、そう思ってた」
「だったら……だったら、一緒に戦おうぜ!気持ちは同じなんだろ?」
主人公もヒナも、ギルガメッシュと同じ気持ちだった。そして、恐らくはジュノを守る彼らも、また。
「……命を掛けることだけが、正義じゃない。ここで抵抗を続ければ続けるほど、みんなに長く過酷な戦いを強いることになる。ジュノだけじゃない、アルタナ連合軍は日に日に消耗し、兵も市民も問わず全世界に犠牲を払うことになるのは間違いない……それは、人間の未来の終焉だ」
クラウドの言葉に、返す言葉を持たなかった。レティが続ける。
「仮に一度、本当に降伏を受け入れても、人が生きていれば……それは、負けじゃない。国なんかなくたって、何度でもやり直すことができる。機を待って、一矢報いることができるかもしれない。穣子大公は、そう言ったのよ。そして私たちはそれに従った」
「で、でも!もしかしたら、各国の援軍が来るかもしれないわ。せめて、もう少しだけ降伏の調印式を待つことはできないの?」
「……出来ない。大公の意思は変わらない」
重い、沈黙。
「……分かって。私たちとしても、苦渋の決断なのよ」

 

と、扉を開くものがいた。
「アヤネさん……」
「……今から、降伏の調印式が執り行われます」
【えっ!?】
「場所は地下……ヘブンズブリッジの真下です」
アヤネさん自身、悔しい思いで一杯なのだろう。いつもの笑顔はなかった。
「主人公さん、みなさん……ご苦労様でした。せめて、ジュノという国の有終を見届けましょう……」

 
 

どうしよう……このままじゃ本当にジュノが降伏してしまう。そうなったら連合の各国が陥落するのは時間の問題だ。なんとか出来ないだろうか……。
「余は諦めるつもりはないぜ」
「ギルガメッシュ……?」
「なんとか、時間を稼げねえか?調印式は地下って言ってたよな?入り口はどこだ……?」
三人が悩んでいると、扉が開いてレティが話しかけてきた。
「わざわざ来たのにこんな結果になって悪かったわね」
「いいえ……私たち、地下に行ってみようと思うの。どうなるか分からないけれど、何か出来るかもしれない……」
「そう……ジュノ地下への入り口は、バタリア丘陵の防壁の上の開き戸よ」
え?と思う間もなく、彼女はウィンクしながら何かを手渡してきた。
「で、これがその扉を開ける鍵よ」
「あ、ありがとう……!」
「貴方たちの熱意に、なんだか……渇を入れられた気分よ。……我々も諦めきれない……の。最後の望みを、貴方たちに託すわ。私の傭兵仲間は、頭が固くて、意固地で、諦めが悪いのよ」
自然、こんな状況だというのに、誰からともなく笑いがこみ上げてきた。嵐の前の、穏やかな時間なのだと、誰もが理解していた。
「地下での作戦決行に合わせて、私たちも最後の攻撃を仕掛けるわ」
「おう、任せろ!よーし、主人公、ヒナ。地下に乗り込んで、ひと暴れしてやろうぜ!」

地の底の死闘

「……いた!あそこよ!」
ヒナの指差す先には、オークたちとアヤネさんの後姿が。
「準備はいい、ギルガメッシュ」
「無論。さ~あ、行っくぜ~!」
気合十分なヒナとギルガメッシュ。
……ところで、何をするつもりなんです?
「あん?決まってるだろ?」

 

「美しく!」

 

「勇ましく!」

 

「愛らしく!ヒナとギルガメッシュ、ダブル・アクト・ステージの始まりよ!」
……何をするかは大体分かったけど、ヒナさん戦えないんじゃあ?
「女神の祝福があれば、ちょっとくらいは大丈夫よ」
闇の血族も分け隔てなく助ける女神ェ……。

 
 
 

アヤネさんと対峙する二体のオーク。内一方は、隻眼のグワッジボッジ。サンドリアの騎士に魅せられ、オークだてらに騎士道を学んだ謙虚な奴。だが、今は感心している場合ではない。
グワッジボッジが口を開いた。
「話が違うようだ。穣子殿は如何致した?」
「……大公さまがわざわざ出向く必要はありません。私が、代理で執り行います」
「愚かな……最後の最後で悪あがきをするづもりか。兵は、引き際が肝心である。弁えよ、貴公らは、終わりを待つのみだ。さあ、これに調印されよ……!」
グワッジボッジの部下が、調印状をアヤネさんの目前へ差し出す。

 

その時、虚空から短剣が目にも留まらぬ速度で飛んできて、部下オークの手に突き刺さった。
痛みに吼えるオーク。そこへ、飛んできた短剣にも劣らぬ勢いでヒナが駆け込み、オークの顎を、それはもう見惚れるくらいに見事に蹴り上げた。スカートが大きく翻っているが、気にしてはいらなかったようだ。
蹴りの威力は相当だったようで、オークが低く飛び上がり、きりもみ回転しながら落下した。深く刺さった短剣も抜けてしまうほどだ。
さらに、ヒナは間髪いれずグワッジボッジに飛び蹴りを喰らわそうとするが、そこは流石というべきか、盾で防がれた。
「何奴かッ!?」
グワッジボッジの咆哮に応えるように、続々とオークの大群が押し寄せてくる。
グワッジボッジが唸り、剣を振る。だが、ヒナは低く飛んで彼の股下を潜り、地面に突き刺さっていた短剣を手に戻した。
そして、迫り来るオークたちに向け再度駆け出す。
ひとつ、またひとつ。
ヒナが舞うたび、オークたちの体には傷が付き、誰も彼女に触れることはできない。まるで、この一連の攻撃のすべてが一つの舞踊であるかのように……!
オークの頭を踏み台にして、回転をかけつつ空中へ飛び上がる。驚いた別のオークの首元を、短剣が交差した。
ヒナが余裕を持ってポーズを決める頃には、あれだけ居たオークが半分ほどになっていた。
「グ……オオオ!」
生き残りのオークが吠えヒナに掴みかかろうとするが、その背後に立っていたギルガメッシュがトドメを刺した。
さらに、別方向から来ていたオークたちも、全てギルガメッシュが倒してしまっていた。
「へっ、やるじゃねえか、ヒナ!」
「あなたもイケてるわ、ギルガメッシュ」

 

「……クッ、何事か?この者共ッ!」
「申し訳ありません、勇者様が紛れ込んだようで」
「貴公……!」
アヤネさんがあんまり申し訳なさそうじゃない顔で謝った。

 

しかし、二人の活躍によっても、オークの全てを倒しているわけではない。倒し損ねた者が起き上がり、クゥダフやヤグードの増援もまだ止まない。
だが、起き上がろうとしたオークを、飛来した剣が刺し貫いた。
剣を投擲したのは……。

 

チルノ!?居ないと思ったら!

 

「誰かと思えば……お前か。見ない顔も混じってるけど」
「助けに来たぜ。気は進まなかったんだが、追加報酬もあるっていうしよ」
汚いアサシンも!
「チルノ……?汚いアサシン?ほお、あいつが噂に聞く傭兵か。こんな時でなけりゃ手合わせ願いたいんだがな」
「チルノさん、カサマツさん、来てくれたんですね!」
「名前で呼ぶな!」
「正義の味方はピンチには必ず駆けつけるものだからな」
どうやら、チルノや汚いアサシンを呼んだのはアヤネさんだったらしい。GJと言わざるを得ない。

 

忌々しそうに、グワッジボッジが唸った。
「見上げた心意気だ。敬意を表し、我らの歯牙に……」
と、そこまで言いかけたところで、彼の部下が回転しながら吹き飛び、壁に叩きつけられた。
「今度はなんだァッ!?」

 

「へっ、準備運動にもなりゃしねぇな。物足りないぜ」
「遅くなってごめんなさい。なにぶん、獣人の数が多かったもので」
「どうやら、間に合ったようだな」
そこにいたのは、バストゥークのジェクト、ウィンダスの星、サンドリアのカインだった。オークを吹き飛ばしたのはジェクトのようだ。
「でめえらッ……!グワッジボッジ様、こいつら、『切り裂き団』の名のもとに、木っ端微塵にしてやりましょうぜェッ!」
「獣は獣らしく吠えていればいい。これ以上、人間を舐めてもらっては困る」
「ここはひとつ、俺たちが教育してしてやるとしようか」
「人間の底力、見せ付けてやりましょう!」
オークの部下の言に、三国の援軍が対抗する。心強い限りだ。
「あはは……無謀な作戦だったはずなのに、今はもう負ける気がしないわね」
ヒナが笑いを隠せないといった風に呟いた。同感だった。

 

「……騎士道にのっとり、紳士的に事をなすつもりであったが、こうなっては仕方あるまい。少々荒っぽい方法で行ぐぞッ!……交渉、決裂ッ!!一人残らず引導を渡してやろうッ!!」

 
 
 

その頃、地上のジュノではクゥダフが城壁を打ち破り、巨人族たちの投擲する巨大な岩が街を蹂躙していた。
その巨人の足を切り裂く者がいた。……クラウドだ。続いてレティが倒れ掛かる巨人の首を斬り払った。
「……始まったわね」
「……レティ。地下への鍵を渡したな?」
「さあ、何のことだか」
クラウドがレティに問う。だが、彼女は涼しい顔でやり過ごす
「クラウドこそ、保管庫から鍵が無くなっていたらすぐに気付くだろうに、どうして放っておいたの?」
「……ふっ。こうなった以上、後には引けないな。俺も、意固地で諦めの悪い傭兵の一人だからな」
「……剣を抜きなさいッ!敵の矢も砲台も、恐れるに足りない!まとめて斬り伏せてやりましょう!傭兵は何者にも屈しない!行くわよっ……!!」
傭兵たちの身体を暖かい光が包み込んだ。
「ん?プロテス?」
「……援護します!ウィンダス連邦、ティナです!さっき、ウィンダスの傭兵も地下に向かいました。あと少し堪えればきっと、活路を開けます……!」
「御助力、感謝!クラウド、各国の兄弟たちに恥ずかしくない傭兵の武勇、見せ付けてやりましょう!」
「期待には答えるさ」

 
 
 

地下では、地上からの振動が伝わってくる。
「上の連中も始めたみたいだな。俺らも派手にやるか」
「我が団の恐ろしさ、奴らの骨の髄まで染み込ませてやるぞッ!」
「いい、皆!私とノブオ、それから……サンドリア部隊、バストゥーク部隊、ウィンダス部隊で、4手に分かれよう!しち面倒くさい作戦は抜き。各個撃破!殲滅あるのみ!以上!
何でチルノが仕切っているのかは分からないが、誰も逆らわなかった。
「主人公と、えーと、そこの二人は状況を確認しつつ各隊を回って。分かった?」
「敵に不足は無い。竜の力を見せよう」
「早く始めようぜ。拳が熱くてかなわねえ」
「各個撃破は得意分野です。任せて下さい!」
カイン、ジェクト、星、皆気合は十分だ。
「頼んだよ!」

 

「主人公……頑張りましょう!」
「途中で倒れたりしたら承知にねえからな」
ヒナとギルガメッシュに励まされ、一層やる気が溢れてくるようだ。
……負ける気がしない!

  • 大規模戦闘
    ビッグブリッヂの死闘(原曲)
    勝利条件:隻眼のグワッジボッジの撃破
    敗北条件:味方が一人でも戦闘不能になる
     
    敵はグワッジボッジ率いるオークの他、クゥダフとヤグードも集まってきた。各獣人はタッグで5ユニット、グワッジボッジを合わせて31体。脅威の数である。
    だが、味方にはギルガメッシュ、チルノ、汚いアサシン、カインとサンドリア騎士部隊、ジェクトとバストゥーク銃士部隊、星とウィンダス魔法部隊と層々たるメンバーが集まっている。
    オークが北、クゥダフは東、ヤグードは南に位置し、味方は中央。
    味方をバラバラに進軍させず、移動力の高い汚いアサシンを使って各獣人を『釣って』来よう。味方全員で叩けば全く怖い相手ではない。
    グワッジボッジはナイトで、HP、防御力共に高い上、範囲攻撃のバトルダンスを連発してくる。防御の優れたギルガメッシュと汚いアサシンを盾に味方に一斉攻撃してもらえばボスであろうとも長くは保たないだろう。

「兵は、引き際が肝心……。ぐぅ……ッ!退け!」
グワッジボッジの号令が発令されると、わずかな生き残りの獣人たちが撤退していった。
「……これで終わりか?」
周囲への警戒を怠らず、チルノが呟く。どうやら、獣人の増援はようやく止まったようだ。
「大丈夫だった?怪我は無い?」
へーきへーき。これくらいどうってことはないって!
「ふふ、そうね……」
元気に身体を動かすと、ヒナも安心したようだった。

 

「さても威勢の良い、みなさん、凄かったです!」
拍手と共にアヤネさんが傷ついた各国の隊員たちを介抱し始めた。
「出過ぎた真似をしたかもしれないけど、これで降伏は白紙でいいよね?」
チルノの言葉に、アヤネさんは笑顔で頷いた。