イベント/人を導くもの

Last-modified: 2012-01-21 (土) 10:19:15

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


人を導くもの

もう死ぬのはいいです飽きたんで^^;

……-い。

 

「……んあ?」

 

……きろー。

 

「……ええ……」

 

「こいつら起きないよ。食べていい?」

 

!?!?

 
 
 

ガバッと起きた一同はすぐさま後ずさりした。
「あ、起きた。なんか怯えてるけど」
「主に貴方のせいよ、ルーミア」
「そーなのかー」

 

……だが、聞こえてきたのはそんな暢気な会話。

 

見れば、周囲はあの紅い世界ではなく、緑豊かな、いかにも平和そうな場所。
ここは……。

 

「幻想郷……紫、あんたが?」
「まあね」

 

幻想郷。
この戦の絶えない世界にあって、平和の象徴の如き国。
と言う事は……。

 

「……勝った、のか」
「ええ……きっと」

 

「……ぃやったー!!」
ユメミは叫ぶと同時に、眠っていた草原に再び寝転んでしまった。
「ああ、もう死ぬのは御免だからね……次に死ぬのは寿命が来てからにして欲しいわね」
「全くだな」
「終わったのか、本当に……ふぅ」
「やってやったぜコンチキショー!人間様舐めるんじゃねえってんだ!」

 

徐々に、皆も戦いの終わりを実感しているようだ。
「そうだよ!キミたち、本当によくやってくれたね!」
カーバンクル!無事だったのか!?
「何のことかな?少なくとも、キミたちほど危険な目には会ってないからね。ボクは大丈夫さ」
そうか……。他のみんなは?
「わらわはここにおるぞ。幻想郷在住じゃからな。バハムートとヴリトラ、ティアマットは帰って行きおった」
そうか……別れの挨拶くらいはしておきたかったんだけど。
「ああ見えて、シャイな奴らじゃのう」
「別に恥ずかしくて挨拶しなかったわけでは無いと思いますけどね」

人の強さを知っていた者

「これは、興味のある人だけでも聞いてもらいたいことなんだけど……」
もうみんな、すっかり宴会の準備を始めている横で、カーバンクルが切り出した。
「ほう。如何様な話でござろうか?」
「普段メイドなんかやっていると、突然仕事がなくなるととても退屈でして……。私も聞いてもいいかしら?」
集まったのは、主人公とゲッショー殿とサクヤさんだけだった。後のみんなは宴会の準備か、他の話に夢中か、後は早くも呑み始めた連中だ。

 

「うん……ルルサスのことなんだけど」
ルルサスの名を聞いて、三人の温度が少しだけ下がる。
「ルルサスは倒れた……ですよね?でしたら、なんで今更そんな話を?」
「ルルサスの出生についての話だよ。だから、興味のある人だけ呼んだんだ」
「ふむ……聞かせてもらいとうござる」

 
 
 

彼は、大天才だった。
勉強は大人顔負け。剣の腕も達人並み。頭が良く回り、口喧嘩でも敵う者はいなかった。
そして何より、生まれついてのカリスマの持ち主でもあった。
これほどの完璧超人でありながら、彼を妬み嫌うものはいなかった。むしろ、彼に近付けば近付くほど、その魅力にどっぷりと取り付かれてしまうほどであった。
そんな彼は、いつしかこう考えるようになっていた。

 

『大地は神代より姿を変えず、海は水を湛えている。何故、人間だけが死ななければならないのだろう』
『何故、神などという不確かな者のために、人は生活を、食事を、習慣を、結婚する相手まで制限するのだろう』
『何故』

 

その漠然とした疑問と不信感は、やがて神という存在への深い憎悪へと変わっていった。
彼は、知っていたのだ。
そんな不確かなモノに頼らずとも、人間は人間だけの力で十分に生きていけることを。

 

やがて、彼は自らを救世主アギトと名乗り、軍を結成して、当時の大多数の人類と、霊獣たちに戦争を仕掛けた。
彼自身は、神と同様、アギトなどという存在も信じていなかったが、民草を扇動するため、利用できるものは何でも利用した。
ルルサスが真世界を目指したのは本当のこと。
だが、それは真世界に救いを求めてではない。逆だ。

 

真世界と神など実在しないことを証明するために。
あるいは、実在したとしても、そんなものは人間の世界には必要ないのだと、証明するために。

 

結果として彼は敗北し、万魔殿へ封印されることとなった。

 

死よりも重い罰を受けて。

 

誰よりも神を憎み、殺したがったその男を、誰よりも神に充実な僕として、審判者の役目を与えたのだ……。

 

ルルサスはやがて『命の終わりを迎え』、その意思は消えた。あの審判者は、既にルルサスの意識など微塵も無い。
ただひたすら、『アギトを捜す』。
どうしてそんなことをするのかという理由すら失っても、なお……。

 
 
 

「……なんと、酷い……」
ゲッショーが、噛み締めるように呟いた。
「望まぬ主に仕え、望まぬ命を与えられる。忠節に生きる武士にとって、これほど辛いことはござらぬ……」
その言葉に、サクヤは戦慄を覚えた。
ルルサスと神、という関係は、スケールこそ違えど、自分とレミリアの関係にそのまま当て嵌まると気付いたからだ。
もし、自分がもっと深くレミリアを憎んでいたら。
もし、レミリアが確かな悪意を以って自分を傍に置いたのだとしたら。
そう考えるだけで、サクヤは恐怖した。
だが、同時にルルサスに憐れみの情も抱いた。惜しい人生だった、と思えるようになった。
だって、今の自分は……。

 

「……それだけ。話に付き合ってくれてありがとう」

人と、人であろうとする者

太陽は地平線の彼方へ沈み、静かな月だけが夜を照らす。
幻想郷では、異国の客も交えての大宴会が開かれていた。
旨い食事、交わされる酒、語らえる仲間。
生の喜びを思い出すのに十分な時間だった。

 

「紫」

 

宴会を見守る優しい妖怪の名を呼んだのは、カーバンクルだ。
「霊獣が何の用でしょうか?」
「冷たいなぁ、お礼を言いに来ただけなのに。崩壊する万魔殿からみんなを助けてくれたお礼」
「霊夢は失うのは嫌だから。一度死んでいるしね……他も運んだのは、ついで」
「ふぅん……そういうことにしておこうかな」
「何様のつもりですか……」
「ボクはただの獣だよ。ただの」

 

「……人を導くのは、ボクら……ううん、人自身でなければならない……」
「何の話?」
「フェンリルの言っていたことを思い出したんだ」
人の大好きな霊獣の言葉。カーバンクルはその通りだと思っていたのだが……。
「それは間違いね」
「え?」

 

「人を導くのは人ではない。『人であろうとする者』よ」
紫は知っている。
大事なのは、生まれなどではない。
先に進もうとする姿勢なのだと。
「……そうか。ボクはまだまだだね」
「反省は良いことです」
「でも、紫?それなら、紫は人を導く者ではないということになってしまうよ?」
「みんなが勝手に付いてくるだけよ」
「本当に~?」

 

「……」
「……」

 

元より騒がしい宴会だ。
二つ分くらい笑い声が増えても、誰も気付きやしなかった。


  • クリア報酬
    両手棍「万魔殿の審判者」
    首装備「アギトの証」
    消耗居「金の砂時計」×3
    スキルエクステンド×3