シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。
使命の終わり
ラストバタリオン
「ゲミニやキャンサー達が只の人間に撃破された時点で……。
いや。ロードランと異なるこの世界で、不死の呪いが発揮しなかった時点で、我らは詰めを誤っていたのかもしれん。
戦局は芳しくない。最早壊滅状態というべきか」
「……アンジー、一つ訊きたい」
レオは空間の最奥に目を向ける。
そこにいたのはアンフィプテレ……この世界ではそう呼ばれていた飛竜のような生物……ではない。
アレは迅速な行動・威力偵察のためにアンジーが意識を移した人形に過ぎない。
「どうぞ。レオ」
答えるのは、どこか空ろな目の女性。
黄道十二星座騎士団結成のきっかけとなった中心人物。
自分達が心から敬愛し、今に至るまで従事してきた女性。
朝靄のように幽かで、なけなしの情報ではあるものの、レオはそう記憶している。
「……我らが全ていなくなった時、お前はどうなる?」
「――――」
「最早、味方などいない。そうなった時、ともに戦い続けたお前は……一体どうなるのだ……?」
発言の意味が不明です。そう切り捨てるであろう発言は、しかしアンジーの口から出ることはなかった。
感情が抜け落ちた様な表情。それが斜め下に傾き、何かを思考する様に沈黙を続けている。
レオの記憶に残るそれは、確か彼女が思案する時にしきりに行う癖だった。
「――――っ」
途端、アンジーの顔が跳ね上がった。
眉尻はきつく、空ろな目は僅かに生気を湛えて、彼方へ鋭い視線を向けている。
「敵です。アクアリウス、レオ」
「……アンジーは、アンフィプテレじゃないのか?」
……まるで意味がわからん。
ロードランといい、不死の呪いといい、異世界の常識を持ち出されて話されている様な気分だった。
聖石とか、ルカヴィとかはどうなったのか。
「……あのボロ本の著者、脚色かけすぎね。フィクションとノンフィクションの区別はキッチリ付けるべきだと思った」
「行くぞ、レオ」
アクアリウスが敵へと踏みだした。
これまでの黄道星座騎士団の団員は彼らに敗れた。
異形へと変貌したタウルスも、相討ち覚悟で挑んだアリエスも、手負いの隙を狙ったウィルゴ達も、勝利を得ることは敵わなかった。
此処にいるのは、アンジーを入れてもたったの三名。黄道十二星座騎士団は、ほぼ壊滅状態にある。
しかし、
「我らに勝るものなど、この世にあってはならない」
「……知っているさ、そのために我らは不死の呪いを受けたのだ」
「……言葉は不要?」
フランドールが尋ね、レオが頷いた。
「語るに及ばす。……勝つことのみが、我らの存在する意義。我らには戦う事しか残されていない。
ならば、我らがお前達に勝利するか、お前達が我らを乗り越えるか、……二つに一つだ」
「だったら……」
「始めよう。我々の使命を」
「終わりにしましょう」
- VS.アクアリウス&レオ
βios
勝利条件:敵の全滅
敗北条件:主人公の戦闘不能
黄道十二星座騎士団との最後の戦いとなる。
随伴する雑魚にキマイラとエレメンタル(水)がそれぞれソロで1ユニット。
アクアリウスとレオは戦法こそ以前戦った時と同じだが、能力値が強化されている。
アンジーは回復魔法で二人を援護する他、ホーリーやバニシュで攻撃してくる。また、アクアリウスとレオのどちらかが瀕死に陥ると一度だけ女神の祝福を、撃破されるとカウンターでアレイズを使用する。
彼女を倒さない限り、戦いにケリが着かない。最優先に狙おう。
「アンジェリカ」
「……勝つことのみが我らの使命」
「……」
「…………その勝利も、我らの……いや、お前の望みを果たす為のものだったな」
「…………」
「それが何だったのか。
覚えているか、アンジー。
思い出そうにも我らは最早、戦うだけの人形に過ぎん」
「………………」
「……誰かを、護る為に。そして、これ以上喪わない為に。
……私には、これ以外の記憶は残されてはいません」
「その護るべき者は……」
「貴方の言う通りです、レオ。
喪いました。
友軍も、仕えるべき者も、全て」
「それでも戦い続けていたのだな。我らは……」
「はい。ですが……」
「私は、此れ迄の戦いが全て無駄なものだったと、考えてはいません」
「……」
「変わっては、いなかったのだな。アンジェリカ」
「発言の意味が不明です」
使命の終わり
各地に出現・戦闘行為を絶え間なく繰り返した星座の騎士は遂に全て討ち果たされた。
闘いの後、ズヴァール城を脱出すると、城の入り口を覆う光の靄は晴れ、城の内部はうち棄てられた元の廃墟へと戻った。
それでもティアマットは城門へ不審を剥き出しに唸り声をあげていたが――。
これ以上の探索は意味を持たなさそうだった。
ようやく、一行は帰路に着くことになる。
滅ぼした相手への、釈然としない、悶々とした疑問を抱えながら。
結局、過去の文献の中の存在である彼らが何故、この時代に現れたのか。そもそも当人なのか。
他には不死の呪いだの、ロードランだの。
最終回の筈なのに、打ち切りもいいところで「続きは劇場で!」などと丸投げを食らったかのような心地であった。
……仮に彼らの正体やロードランについて知ろうとすれば、彼ら同様に、悲惨な末路を迎える予感もしたが。
しばらくして、パチュリーから連絡が届いた。
「ロードランについて調べてみたんだけど」
パチュリーも気になったのか、あの後書物を片端から調べていたらしい。
古の王の地。
ある古典にてロードランはそう喩えられていた。
不死なる者の中で、許された者のみが巡礼することができる地だと。
あの騎士達が生きたとかいう「火の時代」なる話に、古の時代、王のソウルといった単語が散見されていた。
ロードランとはこれと関わりのあるものなのだろうか。
「あと、ルカヴィ云々についてもわかったわ。この話と混同してたのね」
そう言われてひとつの本を渡される。
歴史書のようだが、恐ろしく分厚く、とても読む気にはなれない。
「ネ・ジツ大陸とは別の、遠い地の歴史書よ」
パチュリーの手前、軽くパラパラとめくると『ムスタディオをやっつけろ♦』なる一節がたまたま目に入った。
……なんだ最後のハートマークは。
「その本にルカヴィと聖石についての記述があった。
けど……」
けど?
「半数近くが既に滅ぼされている」
……聖石とやらがひとつでも欠けている時点で既にあの話と合わないな。
「だから言った。混同してたと」
しかし、とパチュリーは続ける。
「混同している聖石やルカヴィが何かの暗喩になってそうな気がするの。
あのタウルスって騎士が巨大化した事とか、不死の呪いとかね」
「でも、これ以上は調べてもわからなかったわ。
……本だけじゃ事実の判明には限りがあると言うことね。悔しい話だけど」
- 報酬
盾「ゾディアック」