イベント/八叉の吠声

Last-modified: 2012-01-30 (月) 09:14:11

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


八叉の吠声

思念1

『それ』は、不快な気配を感じ、意識を覚ました。

 

神代より、完全なる世界にて生まれ、しかし永世の時を生きることに飽いた『それ』はこの地の下に根付き、眠る事にした。
たまに起きて、悲喜こもごもの出来事に心を曇らせたり、晴らすこともあった。
しかし、大半は揺りかごのような微睡みに己を委ねることがほとんどだ。

 

覚醒と同時に『それ』は気配に嫌悪の念を覚えた。
何者かが己に干渉をしようとしてくる。
…………『それ』にはそれが、堪らなく不快なモノに感じた。
誰だ? ……識ろうと思っても、此処ではよくわからない。
仕方がなく『それ』は眠気ではっきりしない意識を、不快なモノへと向けることにした。

龍に牙を剥くモノ

姫の命に従い、ゲッショー殿と共に各地の龍穴を探索する。
しかし、これといって異常といったものは見受けられなかった。
最後に残こすところのは、ひんがしの国の北にある龍穴唯一つのみ。

 

「その伝言の真意が気になるところでござるな……麟殿に話を聞ければいいのでござるが……」
永淋が「治す」と言った以上、彼女はいつもの姿で帰ってくる筈だ。そう、信じている。
だから麟が治っていつもどおりに戻ったら、その時に聞いてみよう。
「……そうでござるな」

 

そして、龍穴があるという場所に辿り着く。
……やはりなにもないか。

 

そう、思ったが、

 

一つの気配が場に生まれた事に気が付いた。
それは体全体にのしかかってくる重圧のような気配だ。

 

そして、気配はおぞましい咆哮の形となって場に弾けた。

 

黒板に爪を立てる音が一級音楽に聞こえてきそうなくらいひどい音だと思った。

 
 

耳を抑え、涙目の視界の中、音源の正体を探り、そして間もなく見つける。
それは巨大故に特定が簡単だった。
黒い山だ。目の前に黒い山のように巨大なものが屹立している。

 

長い紐の様な形状の影がその山の中から生え、くねくねと蠢き、先端には赤い光が二つ灯り、禍々しく輝いていた。その数は八つ。

 

まるで……

 

「龍の頭にござるな……!」

 

そして、龍の頭と評された八つの影が叫びの声を上げた。
……もしかして、こいつがオロチなのか……?
「来るでござるか!?」

 
  • VS.????
    燃焼回廊
    ゲッショーと主人公(他にPTが居ればそれも含め)とで巨大な影と戦闘する。
    影は巨体にも関わらず回避率が高く、思う様に攻撃が当たらない。
    しかし、影はこちらに攻撃せず、何故か辺りを見回しているだけ。
    実はこれはほとんどイベント戦闘。
    3ターン経過すると、戦闘が強制的に終了する。
     

影は敵意を撒き散らし、吠声を上げる。
しかし、その敵意の対象にこちらは含まれてはいなかった。
武器を当てようが、まるで歯牙にもかけず、そして目もくれない。

 

「この影は、一体何に害意をむけているのでござるか……!?」

 

そして影は虚空に首をもたげ、眼の様な赤い光を線上に細める。
一声長く吠えると、影はその場に溶ける様に姿を消してしまった。

 

……なんだったんだ、一体……。

 

「ひんがしの国の滅びが始まるのだ」

 

声が聞こえ、目の前の地面からデーモンが姿を現した。
……はい、電波発言貰いましたー馬鹿ですかそんなにそっ首跳ねられたいんですか。
臆面なく滅びる(キリッ とか中学時代の黒歴史級の爆弾発言だと思うのですがそこんとこどうなのでしょうか貴様。ほら何か言ってみろよおう。

 

主人公の罵倒に堪えた様子もなくデーモンは声を張り上げた。

 

「……貴様らは輝夜姫の命を受けてきたのだな? ……ならば、姫に伝えおけい、ドウマンが帰ってきたと!
忌々しき冴月は死んだ……! 後はオロチを従え、雪辱を晴らしに来るのみ!」

 

……oi miss おい それは一体どういう事だ!

 

「……今にわかるとも」
嘲る様に言うと、デーモンは主人公達の前から姿を消してしまった。

 

「……一度、姫の下へ戻るべきでござろうな」

思念2

久々の覚醒で曖昧な状態だった『それ』の意識が最初に感じたのは、夜の空気と血の匂いだった。
最初はあまり愉快なものではないなと思ったが、やがて『それ』は血の匂いに混じって懐かしい匂いを感じ取った。

 
 

ああ、この匂いは良く覚えている。

 
 

数百年前、『それ』がこの地を焦土に変えようとしたあの時。
『それ』にたった一人で相対し、理解を示した人間の匂いだ。
自らを生贄だといって、死への恐怖を押し殺して、『それ』と対話した人間。
『それ』の事を唯一理解した人間。ある約束と引き換えに『それ』を再び眠りに付かせた人間。

 

冴月の匂いだ。

 

見下ろせば、己のすぐ下に、あの人間と瓜二つの人間がいた。
地面に寝ている。大丈夫だろうか、寒くないのだろうか。
その髪は麦の稲穂のような金だが、それと背丈と一部分の大きさ以外はあの人間にほとんど同じだった。

 

なつかしいな、なつかしい。そして嬉しくなった。
未だにあの時、冴月と交わした約束は果たされているのだ。

 

今日は機嫌がいい。あの不愉快な気配も、この時だけは見逃してやろう。
『それ』はそう考え、己の意識を元の場所へと戻した。

 
 

意識が戻る瞬間、血の匂いがより濃くなった気がしたが、余り気にはならなかった。