イベント/再会の姉妹達

Last-modified: 2012-01-04 (水) 18:48:35

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


再会の姉妹達

朝飯を抜くと体に悪い(リアル話)

獣様がその場を発ってからしばらくして、フランが目を覚ました。
最初は起こしてくれなかったことに不満げだったが、すぐに機嫌が直った。
小腹が空いたので朝飯を取っていると(フランはタイムマシンの備品にあった輸血パックを啜っている)フランがおもむろに切り出してきた。

 

「主人公」
何かな?
「主人公はこれから、仕事の報告で所属している国に帰るんだよね」
うむ。
「それが終わったら……もう少しわたしにつきあってくれる?」
別に構わないけど、何かあるのか?

 

「人に会いたいの。でも場所が場所だから、私だけじゃ少し心もとなくて」
場所って……ゼオルム火山の火口とか、アンティカ共のアジトとか、そんな?
「ち、違うよ。そんな物騒な場所じゃなくて……単に大きな街だから、人混みが多いの」
ふむ……それで、会いたい人というのは?
「私の姉……レミリア・スカーレット。知ってるよね? "サンドリアの吸血鬼"だよ」

 

「サンドリアまで行きたいんだ」

この妹にして…

「で、こうしてホッカイドゥにやってきた、と。……なぜか窓から忍び込んで
サンドリアがホッカイドゥ領主の城の一室。
目の前にはレミリアがジト目でフランを見ている。
折角の再開の空気もあったもんじゃねぇ。

 

「だ……だって、門前払いされるかもしれないじゃない。わたし、これだし!」
フランはそう言って羽根をピコピコ動かす。
「不法侵入した方がずっと怪しいだろうがー!」
しかしレミリアは言うが早いか首根っこ引っ掴んで縦にガン振り。いかん、音速突破してる。
「あう~!」

 

「そこまでにしておくべき。ただ認めて、次への糧にすればいいと全裸も言っているからな(ここらへんの気配りが人気の秘訣)」
「むぅ……」
レミリアをブロントさんが嗜める。ナイスフォローです。
「でもフランと主人公が知り合いだったなんてね……アトルガンの聖皇といい、あんたどんくらい人脈広いのよ」

 

「あ、そういえばお嬢様は知らないんでしたね」
「何がよ」
「お嬢様がブロントさんの事で紅魔城を離れていた時、一度妹様が来たのです」

 

「本当なの?」
「う、うん。たまたまきたらヴァンピールやタウルスが城を襲ってたから加勢して……」
「え? ……私がいないうちにそんな素敵イベントが?」
あれを素敵イベントで片づけるか。こっちはあやうく死にそうだったんだぞ。

 

「ええ、デーモンの大群を、私とスカーレットスウェアとブロントさんとベヒんもス様と妹様、あと主人公様とそのツレとで迎撃しました。
……対処や後片付けで大変でしたわ」
「なにそれ楽しそう。いいなぁ」
あ、サクヤさんの目からハイライトが消えた。

 

「でも来るなら連絡くれれば良かったのに。ホッカイドゥ……というかサンドリアはなんにもしなけりゃ、吸血鬼にもオープンよ?
……前に馬鹿な吸血鬼が騒ぎやらかしたから少し気が狭いけど」

 

それに対してフランはごめんと謝り、
「ようやく探し物を見つけたの。それで一先ずお姉様のところに戻ろうかなって」

 

探し物? 知らない単語に思わず眉をひそめるが、レミリアやサクヤは事情を知っているらしく、おおー、と声を漏らしていた。
「少なくとも、あちこちぶらつくことはなくなったわけか。
ま、『おお、勇者よ! 遠方からよくぞ戻って来た!』ってところね。
目的も済ませたなら、ここに住めばいいんじゃない?」
「いいの?」
「現状、ここが紅魔城の代わりだしね。それにさっき吸血鬼にもオープンっていったでしょ。
事情については私とブロントさんが話すから気にしなくてもいいわ」

 

……よくわからないが、フランがホッカイドゥに住むということなのだろうか。
「そういうこと。主人公も今晩はここで一泊したらどう?」
「歓迎しよう、盛大にな!」

 

レミリアの提案を快諾する。
ここにくるまでに色々とエライ目に遭ったから、ありがたい申し出だ。

月下の対話

それから数時間ほど経過し……

 

夜のホッカイドゥ城のバルコニー。
そこから望む雄大な光景を肴に、レミリアが紅茶を啜っている。

 

月に照らされたホッカイドゥを見て飲む紅茶は格別ねぇ、と思う。
なんかこう、月の光が紅茶の表面に当たってると、紅茶に月の魔力が宿っていそうな気がする。少なくとも部屋の中で飲むよりはずっと気分がいい。
……そういえば、新しい茶葉が入荷したと聞いた。今度店に行ってみようかな。
考えていたら取り扱っている店の、皮肉屋な店員(通称:紅茶)の顔を思い出す。
……店員の癖に矢鱈と強そうだよなアイツ。なんか剣たくさん召喚するし。
何はともあれ鼻歌の一つでも歌いたいくらいだと上機嫌になっていると、

 

When you give me all your blood, baby
Get the power from you love
The is no fear to survive

 

レミリアの耳に呟く様な歌が聞こえてきた。

 

And I will never lost my soul, It's true
Anybody knows that day
Can get nightmare again

 

メロディーからして、それ私の持ち歌だろと内心思う。

 

Breaking through the shining sun
Ain't no trick to get rich dream
We just don't care where we go
Just wanna stay with you all the time...

 

レミリアは顔を向けず、目だけで音源を見やる。

 

「……隣、いいかな?」
そこには愛しい愚妹がいた。

 
 
 
 

「そういえば、さ。お姉様」

 

「ん」

 

「少し見ないうちに随分雰囲気変わったよね」
「そうかしら」

 

フランは口元に手を添えて、くすくす笑っていている。
レミリアはその態度に内心に僅かな不審を得るが、

 

「……お腹の子、大事にね?」

 

放たれた悪戯っぽい一言を聞き、思わず噎せた。

 

「なん――でわかる!?」
「生命感知」

 

吸血鬼に限らず、不死に属する者が微細な生命力を鋭敏に感じ取る事ができることを思い出し、レミリアは肩を落としつつ苦い笑みを表情に浮かべた。
ひとしきり落ち着くと、お腹を見、優しく撫でる。浮かべた表情は慈母のように穏やかなもの。

 

「その子はブロント=サンの?」
「……ん。あと、そんなマッポーめいた名前じゃないからね。普通にさん付け」
「ブロント=サンさん?」
ブ・ロ・ン・ト! さん付けでいい!」

 

それより、と耳を寄せ、真剣な声音で囁く。

 

「ブロントさんには言わないでよ? ……言う時は自分の口からって決めてるから」
「はぁい」
「で、そっちこそどうなの?」
「?」

 

「見つけたんだろ、探し物の『はくばのおうじさま』とやら。
……しっかし、姉妹共々人間好くなんて、ホント奇特よねぇ私達」
「でも、悪くないよね?」
「ん。悪くないわ。人間見下してる奴らにざまぁみろって言ってやりたくらい幸せだし。……ざまぁ――っ!」

 

夜空に向けて誇らしげに叫ぶレミリアを見て、フランは笑い、
「……ここに来るまでにね、わたしが吸血鬼だって聞いても、怖がらず、わたしを信じる、仲間だ……そう言ってくれた人がいたの。
色々あってしばらくその人と一緒に戦ってたんだけど……ずっとひとりで剣を振ってたから、わからなかった。誰かの隣に並ぶって事が」
「……うん」
「それで、ね。やってみてわかったの。……すごい大変。何度もその人の足を引っ張っちゃったり、わたしのミスが原因でピンチにしちゃったり……。
……でもね、すごく楽しかった。すごい嬉しかったの。
戦いだけじゃない、一緒に仲間としていられることがこんなに楽しいものなんだって。
……何度も一緒に戦って、気が付いたら惹かれてたの。それを教えてくれた人に」

 

だから、
「見つけたよ、探し物」

 

それを聞いて、レミリアは感慨深げに月を仰ぐ。
「ついに愚妹にも春、か」

 

「春って……気が早くない? 今のところ私からの一方通行だよ?」
「いいこと愚妹? 則実行、思い立ったら即実行よ。だから押し倒すなりなんなりやっちゃいなさい。そっから口吸いで……
あ、東の方だと口吸いは婚姻の約束の証なんだっけ。国の解釈によっては段階すっとばすわね」
「こん……」
赤面するフランを見て、レミリアはウブだなぁと感じる。

 

「……でも、大丈夫なのかな」
「想いは通した方がいいわ。当たったにしても、外れるにしても、ね」

 
 

「私達に比べて人の生は一瞬。閃光みたいに通り過ぎてしまう。
だからこそ、せめて思い残すことのないようにしたい。今の一瞬を目一杯喜んで、怒って、泣いて、楽しんで、感じたい。だから――――」

 

「貫き通してきなさい。貴女のありたっけの想いとすべてを」