イベント/初任務

Last-modified: 2012-01-23 (月) 07:11:56

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


初任務

「ドラゴン退治」をクリアしている。

調査隊結成

テンシ。
ホッカイドゥ領領主ヴぁーんさんの義士で、騎士見習い。
今回、正式に騎士として採用されるための研修のため、初任務に赴くこととなった。
その内容とは、悪政を敷いていると噂の北方領主、ドラクア伯爵の下に赴き、噂の真実を確かめること。
危険は少ないが、念のためにと他の隊員も一緒だ。

 

部隊内訳…

 

隊長スコール以下、サナエ、コガサ、テンシ。後主人公。

 

なんか適当に扱われた気がする!
「気のせいだろう。王国騎士団と神殿騎士団の混同隊なのは……単純に、人手不足だからだ。かといって、新米と見習いを戦場に送るわけには行かないからね。スコールはお目付け役というわけよ」
(勝手な話だ……)
「了解しました!」
「任せて!」
「初任務ね……まあ、そんな気負いしなくてもいいかな?」
カナコ団長の言葉を訊いて、スコール以外はそれなりにやる気があるようだった。

 

「いいか、お前たち。この大戦の最中、前線に赴いている者は多い」
「……」
(……お兄ちゃん)
「戦場に出れないからと不貞腐れることはない。そいつらが、私たちなら国を任せても大丈夫だと思えるように気張れよ」
「「「了解!」」」

 
 
 

「テンシちゃんは初任務なんだよね?」
既に住み慣れたサンドリア王国を発ってから、コガサが朗らかにテンシに話し掛ける。
「ええ……でも大丈夫よ。戦闘があるかも分からない様な内容だし」
「気を抜くなよ。戦時中だ、何があってもおかしくはないと考えておけ」
「は、hai!」
スコールの注意を受けて、思わずテンシが背筋を伸ばした。
「スコールは気張りすぎなんだよー」
「隊長と呼べ。戦場では臆病なくらいが丁度いいんだ」

 
 

「……ん」
ふと、コガサが空を仰いだ。
「どうかしましたか、コガサさん?」
「……雨が降るかも」
「えっ、本当ですか?」
「……雨宿りできる場所を探そう」
コガサとは長い付き合いだったスコールが、彼女の言葉を受けてそう判断したのだ。多分、本当に雨が降る。
「あ、あそこに洞窟がありますよ!」
丁度良い、あそこで雨の様子を見よう。

 
 
 

「……雨、止みませんね」
洞窟に篭ってから一時間近くが経とうとしていた。
コガサのおかげで雨に濡れることは無かったが、雨は一向に止む気配がない。完全に足止めを食らっていた。
「雨くらい、気にせず進むんじゃ駄目なんですか?」
「駄目だ」
テンシの問いに、スコールは即答する。
「旅っていうのは、ただでさえ不足の事態が付き物だ。モンスターに襲われたり、野盗に出会ったりな。雨が降ったらもっと大変だ。渡れると思った川が氾濫したり、土砂崩れがおきたりもする。ぬかるんだ道は危険なんだ」
「そうなんですか……」
旅慣れないテンシには、ちょっと分かりづらいことだったかもしれないが、旅なんてのはそんなものだ。
「はい、その通りです。……だから、食料だけはいつも多めに持っていくことにしているんです」
そう言って、サナエが箱を取り出した。
「雨は憂鬱ですけど、食事にしましょう!元気出ますよ」

 
 
 

それからまた、数十分が経った。
和気藹々と話に花を咲かせる女性陣に、ただでさえ無口なスコールは辟易している様子だった。
「……騒がしい」
だから、そんなちょっと無愛想な言葉が出ても不思議では無かった。

 

……でもちょっと、野太すぎるような?
「スコール、いつの間に声変わりしたの?」
「こんな短時間で変わるか。俺じゃないぞ」
「え?それじゃあ、誰の……」

 

「私だ」

 

声と共に、洞窟の暗闇の奥から姿を現した声の主は……。

 

「ド……」
「ドラ……」
「ド、ドド……」

 
 
 

「ドラゴンだーーーっ!!!」

 
 
 

「……だから、騒がしいぞ、人間ども」

洞窟のドラゴン

そのドラゴンは、ヴリトラやヨルムンガンドのような、いかにもといった竜であるウィルム族でも、近東に出現するという三つ首のハイドラ族でもない。
肉付きの悪い、羽の生えたトカゲのような……単なるドラゴンだ。
テンシとコガサは初めて見るドラゴンに驚き、興奮し、はしゃいで、それからやっと思い出した様に武器を手にした。
(しっかりしてくれ……)
今ならスコールの考えていることが良く判る気がする。さとり妖怪になった気分。

 

「ど、どうするんですか、スコールさん……」
サナエがおびえた表情で、ドラゴンに武器を向けたまま問うた。
「スコール……」
「……隊長」
「…………」
一連の行動を、ドラゴンは黙って見ていた。
あまり、敵愾心があるようには思えない。
スコールもそれを感じ取ったらしい。ドラゴンとの戦闘経験のあるサナエはともかく、コガサもテンシもドラゴンなんて強敵と戦わせるわけにはいかない……穏便に行くべきだ、と。

 

「俺たちは雨宿りがしたいだけだ。しばらく、ここに居させてくれないか?」
「武器を向けながら言うことか?まあいい。ただし、条件がある」
条件?
「私の話相手になって欲しい」

 
 
 

数刻後……
そこにはドラゴンとすっかり打ち解けた女性陣の姿が!

 

「……主人公」
何か用かなスコール君。
「俺はあんな愉快な生き物にはなれない……」
無理ないね。

 

ドラゴンは長寿の生き物だ。
だから、様々な話を聞くことが出来た。

 

「貴方、名前ないの!?」
「あるにはあるが……人間には発音が難しい」
「それは不便ねぇ……よし!私が名付けてあげるわ!」
斯くして、ドラゴンは「ドラコニス」の御名を頂いた。名付け親はテンシ。夜空に輝く星のひとつと同じ名前らしい。
「この場にあの吸血鬼がいなくて良かったわね。もしいたら貴方死んでたわよ」
それは物理的な意味なのか精神的な意味なのかどっちなんだろう。
「吸血鬼……?」
「ああ、レミリアさんのことですか?楽しい人じゃないですか。最初に見た時はびっくりしましたけど」
「人じゃありません。人手は足りてるっていうのにメイドまで連れてきて……屋敷が狭くなったわ」
テンシは不機嫌そうに告げた。喧嘩でもしたんだろうか。どっちもわがまま属性持ちだしなぁ。
「?……テンシは吸血鬼と暮らしているのか?変わっているな」
「まさかモンスターに言われるとは思わなかったけどね……」
「吸血鬼と言えば、ドラクア伯爵も不死って噂だよね」
「!」
コガサが口にした名前に、何故かドラコニスが反応を示した。
「何よそれは」
「だから噂だって。北方領主アイノンのドラクア伯爵は、自分を不死化させたって」
コガサの話では、ドラクア伯爵は元々病弱だったのだが、数年前から別人のように変わった、と。
「ドラクア伯爵って……これから私たちが向かう先じゃないですか!なんで言ってくれなかったんですか!?」
「えっ?ご、ごめんなさい、所詮は噂だろうとーー」
本当に不死であるなら、それは自分たちの手に負える相手ではなくなるが……。
「噂は噂だ。そもそも俺達は戦いに行くんじゃない。不死だろうと関係ないだろう」
スコールの言うのも最もだ。気にしても始まらないか。

 

「お前たちは、ドラクアに会いに行くのか」
ドラコニスはどうしてかそんなことを口にした。
「あれ?そのナントカ伯爵っていうの、知ってるの?」
「……ふん。私は世俗に疎い、ただの引きこもりドラゴンさ」
「答えになってないんだけど……」

 

結局、雨が止んだのは昼を大きく回った時間帯だった。これでは、アイノンに到着する頃にはすっかり日が沈んでいることだろう。
「道の泥濘も加味すれば、もっとかかるね……」
「えっと、途中にアウトポストが設置されているはずですから、そこに泊めさせて貰いましょうか?」
「やはり行くのか?」
一行が旅路の相談をしているのを見て、ドラコニスが口を挟む。
「そりゃ、記念すべき初任務だからね」
「功を焦れば傷は負う……忠告だけはするぞ。奴は危険だ」
「心配してくれるなら理由を教えてくれればいいのに……まあいいや。それじゃあね、ドラコニス。任務が終わったら貴方にも報告に来るわ」
洞窟を発ち北へ向かう一行を、ドラコニスは静かに見守っていた。

不気味な……

獣人との戦争における前線基地としての役目を持つ木造小屋を守るエルヴァーンの兵士は、快く一宿一飯を許可してくれた。なんでも、この辺は獣人は余り来ないので退屈していたらしい。
「って、見張りも大事な任務だから、こんなこと言ったら前線で戦ってるみんなに不謹慎だよね~」
と、彼はエルヴァーンらしからぬ柔和そうというか頼りなさそうな表情で「あはは……」と笑った。
「獣人が来ないならアウトポストを設置する意味もないんじゃあ……はっ!大人の汚い世界が見えるようです!」
「サナエ、あんまりそういうことは言わない方がいいよ……」
空気読まないサナエとたしなめるコガサを見て、彼の柔和な笑顔が苦笑いに変わった。
「あはは……君たちはこれからアイノンに行くんだよね?」
「はい、そうです。……あの、やっぱり何かあるのでしょうか?」
「お察しの通り、ここのアウトポストが見張るのは獣人じゃない。アイノンなんだよ」
テンシの問いに、彼は少しだけ真面目な表情になる。

 

「北方領土アイノンは他国からかなり離れているだろう?それに利点の少ない僻地だから、他国の目が届き辛い。今の領主ドラクア伯爵の父で前王もまた、悪政で知られた王だった。前王は暗殺されたけど、この暗殺犯はアイノンの民だと専らの噂だ」
「……」
「前王が暗殺された時、唯一の王位継承者だった息子ドラクアは死病を患っていて、誰もがドラクアは王座に座ることなく没すると思っていた。だけど……」
そこで彼は一度言葉を切った。彼自身、思うところがあるのだろう。だからコガサが後を続けた。
「ドラクアは死ななかった……それどころか不死身の肉体を得て、新たな悪政を敷いている?」
エルヴァーンの兵士は、ゆっくりと頷いた。

 

一行はエルヴァーンの兵士に別れを告げ、アウトポストを出発していた。
彼が言っていた内容が事実かどうか確かめなければならないと、テンシが強く言ったからだ。それは初任務で功を焦っているから……というのが無かったとは言わないが、それ以上にドラコニスの言っていたことが気になっていた。
隊長を務めるスコールも同意見で、反対する者はいなかった。
「不死身って聞くだけでワクワクしちゃうよね」
「私はそうでもないけど……」
「えー?どうして?」
「だって……きっと毎日退屈で仕様がないわよ」
「ふーん。テンシは悟ってるねー」
そんなガールズトーク(?)に花を咲かせるテンシとコガサを余所に、サナエは緊張していた。
「なんだかヴリトラのこと思い出しちゃって……」
あー……無理もないか。
「お前たち和み過ぎだ。……見えて来たぞ」
スコールの見つめる先に、少々寂れた雰囲気の城が見えた。