イベント/境界線の脱出者

Last-modified: 2011-12-22 (木) 15:15:30

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


境界線の脱走者

休息中の訪問者

峡谷を抜け、追手を振り切り、やっとの思いで北の地から脱出する。気が付けば夜の闇が一面を包んでいた。
……もう追手が来る様子は見られないようだ。

 

逃げる時は気にならなかったが、事が一段落した途端に疲れがどっと噴きでてきた。
「……一端ここで腰を下ろす?」
疲労困憊の主人公を見、フランが提案する。傷を抑えてはいるものの、疲れた様子が見られないのは流石といったところか。

 

しかし、今は彼女の気遣いがありがたかった。
フランの提案を受けて、近くの開けた場所で一端休むことにする。

 
 

「変わった天幕。バストゥークの新製品なのかな……」
張られたテントの布地を撫でながら、フランは興味深そうに首を傾げた。
……まさか、タイムマシンに用意されていた備品だとは言えないので、なんとか濁す。

 

そうやって警戒を絶やさない程度に注意を周囲に回しながら、一晩を明かす中、傍に小さな物音が聞こえてきた。

 

 

一瞬、モンスターか何かかと思ったが、
「……多分人間の気配。あとモンスターが近くにいるけど、敵意はないよ」
フランの、ガーネットを思わせる瞳が闇の中に光る。
その言葉通り、闇の中から傍にクロウラーを連れたタルタルが姿を現した。

 

「こんばんわでしゅ(´・ω・`)」

 

……どこかで見たことのある姿形に聞いた事のある口調だ。

 

「……っ!」
そのタルタルの姿を見た途端、突然フランが主人公の背後に隠れた。

 

……ど、どうした?
しかしフランは答えず、羽根を限界まで縮こませて、顔以外の姿が見えないようにしている。
その表情は、壊してしまった家具を母親に見つけられた子供の様だった。
「……お願い、動かないで。このままにしてて……」
そっと主人公の耳に力なく零した。
下手をすれば、シャドウ某に出自をばらされた時以上に覇気がない。

 

……まさか、タルタルの外見してるけど実はおっかない輩……なんて落ちじゃないよな……。
そう思っていたが、フランのか細い声を聞いたタルタルが、可愛らしい目を丸くした。
「……しっこくしゃん?(´・ω・`;)」

 

え?

 

「もしかして、その声はしっこくしゃん……でしゅ?(´・ω・`)」

 

驚いた様なタルタルの声を聞いて、フランが力なく呟いた。
「……獣様」

焚き火の再会者

どうやら、クロウラーを引き連れたタルタル……獣様とフランは知り合いだったらしい。
獣様の方は漆黒の騎士としての面識のみで、フランの素顔や素性は一切知らなかったようだが。
しかしフランのこの状態はどういうことなのか……と思ったが、今のフランの状態を見て、察しがついた。
自分の素情……種族とか云々が、知り合いに、獣様に知られるのを恐れているのか。
少なくともフランの反応を見るに、彼女が吸血鬼だという事を彼は知らない。

 

「しっこくしゃん、でしゅよね? ど、どうしてお顔を隠すんでしゅか?(´・ω・`;)」
「え、え……えっと、か、顔見せるの、は、恥ずかしくて……」

 

しどろもどろな言い分。それを聞き、獣様が傾げた。
確かに全身鎧装備だし、実はシャイだったんだ! と言われればああ、そういうことだったのね、と言い分も通じる……のだろうか。

 

「あの、しっこくしゃんにお礼を言いたいんでしゅ。僕の手紙を読んでここまで来てくれたんでしゅよね?(´・ω・`)」
「……ぅぁ」

 

……ダメだ。フランがぽんこつ状態になってしまっている。このままでは会話がまともに続かない。
どうすりゃいいんだと板挟みの状態に陥る主人公。

 
 

そこに、傍の焚き火から飛んだ火の粉がフランの頬に直撃した。

 
 

「ひゃっ!?」
驚愕に反応して、フランの羽根が広がった。
七色の宝石に似た羽根が、焚き火の光に反射して万華鏡のように輝く。

 

……あ。
「あ……」

 

背後から色を失ったフランのつぶやきが聞こえてきた。ばれた、と。続けて、声にならない呻き声が響く。
……なんだ、その「木こりが困り果てていたら、囲炉裏の火の粉が弾けて覚の目玉に直撃した」みたいなオチは。

 

羽根を直視した当の獣様は、
「わぁ、綺麗な羽根でしゅね(=´▽`=) 」
目を輝かせてフランの羽根を見つめていた。

 

「……ぇ」
フランが目を見開いた。

 

「驚かない、の?」
「? どうしてでしゅか?(´・ω・`)」
「どうしてって……こんな、羽根が生えてるんだよ?」
「宝石みたいにきらきら光っていて綺麗でしゅ(*・ω・)」

 

フランはしばらく絶句して、そのままの状態を維持していたが、やがて意を決したのか、主人公の後ろから姿を現した。
獣様に近寄ってその目線までしゃがむ。
「ちゃんと顔を合わせるのは初めてでしゅね(*・ω・) しっこくしゃんのお名前を聞かせてもらってもいいでしゅ?(´・ω・`)」
「……フラン、フランドール・スカーレット。……吸血鬼だよ」
「フランしゃんでしゅか。ちゃんと覚えましゅた! よろしくお願いしましゅね(=´▽`=) 」
「……怖がらないの?」
「友達に人間だとか吸血鬼とか関係ないでしゅ(`・ω・´) 」
その通りだとでも言うようにクロウラーが体を蠢かせた。

 

その言葉を聞いて、フランはしばらく黙していた。
やがて俯いて、両手で目を何度も擦る。
「ど、どうしたんでしゅ?(´・ω・`;)」

 

「……ごめんね」
「なんで謝るんでしゅか?(´・ω・`;)」

 

「……本当にわたしなんかが友達で、いいのかって、ずっと思ってたの。
怖かったんだ。もし獣様が、ううん、知っている人みんなが、わたしが吸血鬼だって知ったら、怖がったり嫌ったりするんじゃないかって……だから、ずっと鎧に閉じこもってた」

 

「鎧に籠っていれば、そうとはわからない。必要以上に傷つく必要はない。
……気付いたら、いつのまにかそれに甘えてた」

 

「でも、それじゃ……ダメだよね。だから、これはそんな考えで獣様に接してたことへの謝罪」
獣様と、主人公を見やる。

 

「だから、主人公はもう知っているけど、はっきり打ち明けるね。……わたし自身の口からはっきり」

 
 

「わたしの名前はフランドール・スカーレット。種族はヴァンピール。
『スカーレットデビル』レミリア・スカーレットの妹。そして、あの闇の王の娘です」

 
 
 

「……わたしと、あらためて友達になってくれますか?」

 
 
 

獣様は真剣な表情でフランの言葉を聞いた。そして間を置かずに返す。
「当り前でしゅ(`・ω・´)
僕はフランしゃんが吸血鬼だとか生まれに関係なく優しい人だって知ってましゅ(`・ω・´)
主人公しゃんはどうでしゅか?(´・ω・`)」

 

話を振られた。……というかその事はフランにも言ったんだけどなぁ。
色々あったけど、フランのおかげでこうして生きていられるわけで。
まぁ、話を振られた以上言うしかないのでもう一回言う。

 

フランがPTメンバーの一人なのは確定的に明らか。

 

二度も言わせんな恥ずかしい。

 

フランは答えを聞くと、目に涙をいっぱい溜めて、

 

「――――」

 

そのまま獣様と主人公に抱きついてきた。ダブルラリアット気味に。
結果、主人公と獣様は地面に背中を強く打ちつけた。

宵の反省者

フランがぽんこつ復帰したので、改めて互いの情報を交換する。

 

獣様の話と照らし合わせると、どうやらフランがあの時、闇の王の前に現れたのは獣様からの依頼だったようだ。
ウルガラン山脈に登頂するために北の地を訪れた際、ズヴァール城の方角に向かう人影を見かけたのだという。
このままでは危ない。
そう考えた獣様は大慌てで友達のコリブリに荒事方面で最も頼りになる友人……漆黒の騎士ことフランの元に手紙を届けたらしい。
……間接的とはいえ、自分は獣様にも助けられたようだ。
しかし……

 

「そうでしゅか……主人公しゃん以外の人達は……(´;ω;`)」
「私が着いた時にはもう……ごめんね」
「フランしゃんが気に病むことはないでしゅ(`・ω・´)」

 

そういえばウルガラン山脈登るって言ったけど、結局どうしたんだ?
「あの人達が気になって、登るのはやめましゅた。それにあの付近で雪崩が起きたみたいでしゅし、登らなくて正解でしゅ(´・ω・`)」

 

……そ、それは危なかったなぁ。
「で、でも無事だったんだよね? よかったぁ…… /echo 本当に危なかった……;;
「(´・ω・`)」

 
 
 

……それから数時間後。
どんちゃん騒ぎしたり、獣様が今までに出会った「友達」の話に耳を傾けたりして、夜を明かして。

 
 
 

夜が白み、いつ朝日を迎えようかという頃。
フランは疲れてしまったのか、横たわり静かに寝息を立てている。
吸血鬼であるがゆえに夜には強い筈だが……生体時間を矯正しているのだろうか。
焚き火の残り火に照らされる髪を梳く。

 

獣様を見ると、クロウラーをお供に、その場に立ちあがっていた。
ありゃ、行くのか。
「はい、フランしゃんにはよろしく言っておいてくだしゃい(´・ω・`)……寝ているところを起こしゅのは気が引けましゅ(´・ω・`;)」

 

「それでは御縁があればまたお逢いしゅましょう(=´▽`=)」
そして、獣様は去っていた。

主人公がウィンダス所属の場合

「あ、いけない(´・ω・`;)一つ言い忘れてましゅた(=´▽`=)」
立ち去る前に、獣様がこちらに振り向いた。

 

「……今回の仕事、本当にお疲れ様でしゅた(´・ω・`)」
そう言って獣様……否、ウィンダスの大魔元帥はぺこりと一礼。
クロウラーもその動きに倣いちょこんと触角を下げる。

 

……途端にあちこちから物音が聞こえた。おそらくは彼の「友達」のものだろう。
野営の間、一切のモンスターの敵意や襲来を感じなかったが……これが理由か。

 

「主人公しゃん以外の人達については……残念でしゅ。
……主人公しゃんは、闇の王の姿を見ましゅたか?(`・ω・´)」
問いに頷き、肯定。あれと相対して、あれこそが自分達が打ち破るべき敵なのだと否応がなく理解する。

 

「ザルカバードの地形や彼らの動向を調査して、ようやく一つの内容に纏められるほどに収拾できましゅた。
僕はこれからウィンダスに戻り、まとめた結果を報告をするつもりでしゅ。(`・ω・´)
何れ来る大きな戦いで、また彼と相対することになるでしゅ。その時には……」
再び、しかし力強く頷く。その時には……あの異形の騎士を破る。

 

「……今回の件についても、僕の方から報告しておきましゅ。
フランしゃんのことは知られると困る部分だけ省いておきましゅね(´・ω・`)」
ありがたい。そうしてくださると助かります。
「いえ、今回の事は本当にお疲れ様でしゅた。次はウィンダスでお逢いしゅましょう(`・ω・´)」
そして今度こそ、獣様は去っていた。