イベント/少女の奔放

Last-modified: 2011-11-07 (月) 20:41:49

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


少女の奔放

少女の失踪

あの後、しばらくしてから目を覚ました主人公は、まず青い服を見た。
あれは……不滅隊?
「……起きましたか?」
話しかけたのは、青に混じる赤い服の女性。
「お初にお目にかかります、宰相のサトリです。コイシのわがままに付き合わせたようで……申し訳ありません」
冷徹そうな表情のまま丁寧にお辞儀して、サトリは視線を落とす。彼女の腕の中には、コイシが眠っていたのだ。
「う、うん……おねえ……ちゃ……」
寝言のように呟くも、再び気を失う少女。サトリはそんなコイシをなんともいえない優しげな眼差しで見つめ、それから元の冷徹そうな表情に戻って主人公を見据える。
「……今のは、他言無用ですよ」
主人公は、首を縦に振るしかなかった。

 
 
 

後日。
カラババたちは既に国に帰還し、会社の業績が上向きだと上機嫌……だった臼姫から受け取った手紙は、サトリ名義の皇宮への召喚命令だった。急ぎの用らしい。
早速皇宮へ赴くと、重々しい口調でサトリと不滅隊が出迎えた。
「今日、来てもらったのは他でもない、貴方を優秀な傭兵と見込んでのことです。……セフィロス」
「はっ」
サトリに促され、長身の男が前に出る。
「無意識の傀儡師と呼ばれる、コイシのことは知っているな?実は、失踪したのだ。つい先日な」
【えっ!?】
「その反応……やはり初耳だったようだな」
「あれと既知の間柄の貴方なら、もしや……と期待していたのですが。やはり総則網を広げるしかないようですね。ここは頼むわ。私は将軍たちと掛け合ってくる」
「はっ」
サトリはそれだけ言って五蛇将の元へ馳せ参じた。
「もう分っていると思うが、宰相様の頼みというのは他でもない、コイシの捜索だ」
セフィロスに女性隊員アミナフも言葉を続ける。
「コイシ様はご自分の人形の一体、アヴゼンを捜しに行ったものと我々は踏んでいます。もう一体の人形、メネジンもまた行方が知れず、コイシ様が伴われたものと思われます」
「既に我々は隊員のリシュフィーを派遣しているが、一人では心もとない。これは宰相様の御下命だ。リシュフィーと合流し、手分けしてコイシを捜索せよ」

 
 

「う~ん、母さん、まだ眠いよ……はっ!」
現地で見付けたリシュフィーは、ものの見事にプリケツを晒していた。
な、何があったのか言うべき早く言うべき。
「えーと……何が、と言われても、姿は見えず、仮にも不滅隊の僕が気配すら察知できなかったから……いったい、何者だったんだろう?」
ほーむ……厄介そうな相手か。そうだ、コイシは見つかった?
「いや、来た痕跡はあったけど……もうここにはいないみたいだよ。でも、大丈夫。行き先の心当たりがある。ワラーラ寺院……きっとそこにいるはずだよ」

少女の傀儡

「ようこそ、ワラーラ哲学の殿堂へ」
到着した主人公を僧は出迎えてくれた。
用件を伝えようとすると、もう一人の客人が訪れる。
「おお~!主人公殿ではござらぬか!久方ぶりの友との再会でござるな。いかがでござる?息災でござったか?あ、いや!皆まで申すな。皇国の軍役に疲れ浮世を忘れんがため、ここに来たのでござろう?あるいは……その、社用でござるか?」
うんにゃ、人探しでござるよ。無意識の傀儡師というのをだな。
「……やはり」
呟いたのは僧だった。
「隠しても無駄のようですね。いかにも、無意識の傀儡師コイシは、当寺でかくまっております」
「何と!それは罪ではござらぬか?何故そのような……」
「それには、少々時を遡ってお話をする必要がございます……」

 

僧は詳しく聞かせてくれた。
コイシがやんごとなき身分だということ。
まだ6歳の時に母を無くし、皇家を出家させられたこと。
寺院の近くで芸を披露していた大道芸人に傀儡の技を教わっていたらしいこと。
2体のオートマトンは寺に来たときから既に手元にあり、一方は母から、一方は姉からもらったものだということ。
当初は言葉を喋れずコイシの後ろをトコトコ付いて行くだけだったが、いつの間にか話すようになったこと。
人形たちに励まされ、コイシも本来の明るさを取り戻していったこと……。

 

「其は、ようござった……。拙者も幼少のみぎり、口減らしで奉公に出された故、その辛さ、寂しさ、よう分り申す……」
「そして……ある日、前聖皇が崩御し、突然にコイシは連れ戻されたのです……。あの子は、その扉の向こうです」

 

封魔堂。
魔笛が収められた場所に、コイシとメネジンはいた。
「……変わらぬな、ここは……」
「あのとき以来ね……。毎日毎日お勉強。お姉ちゃんからの手紙も来なくなって……。辛くって、苦しくって、逃げたくなって……」
「……この堂に逃げ込んだのだったな」
彼女たちの前には、くるくる回る魔笛が浮いていた。
「魔笛を見ていたら、なんだか落ち着いたの。優しい、不思議な力に包まれてる気がして。……そのときだったよね。メネジンが私に話しかけてくれたの」
今は過ぎた昔を思い出し、語らう二人。
「あの時、私は一人じゃないって気付いたの。そして決めた。お母さんみたいな傀儡師になるってね」
「毎日夜中に抜け出して、三人で特訓したな……」
「そしたら、アヴゼンも話せるようになって……」
「アヴゼンめ、とてつもなくおしゃべりだった……」
ふっと笑って、もう一度魔笛を見上げる。
「私、本当は魔笛のこと、よく分からない。けど、宰相が言うみたいに、魔笛を集め終えて巨人が完成したら……きっと、素敵なことが起こって、みんなが幸せになれる日がくるはずなの。私も、魔笛の光で救われたから……」
そこで二人は、ようやく近づいてくる足音に気付いた。
主人公とリシュフィーだ。
「……やれやれ。ついに、ばれたか……」

 

「コイシさま、ご無事で何よりです。さぁ、今から帰れば、きっと宰相様も寛大な……」
「……リシュフィーよ。教えて進ぜよう……コイシさまは戻られぬ……」
「!そ、それは……」
「まだ、お外でやることあるんだもん」
つーん、とそっぽを向いてしまった。
「アヴゼンさんですか……しかし、どこを探されるおつもりなのですか?」
「……う、う~んと……秘密よ!」
その場に居合わせた全員が心の中で「嘘だッ!!」と突っ込んだに違いない。
「御免。拙者、主人公殿の同僚にて、月照と申す者。耳寄りな話がござる」
急に切り出したゲッショーを、リシュフィーがわずかに眉を潜めた。
「実は拙者、御公務にてぜおるむ火山を訪ねた折……赤い機関人形を見かけたでござる」
「アヴゼン!?」
「お待ち下さい、コイシ様。彼の地を領するトロールの軍団には、皇国軍から奪った人形を用いるものがいますよ」
今にも走り出そうかというコイシを引き止めてリシュフィーが告げた。
「まぁ、信ずる信ぜぬは御主らの自由にござる。ただ……はるぶうんでは、人形を捕らえると自分たちの命令を聞くようもぶりんの技師が改造を施し別物にしてしまうとか……急いだほうが良いやもしれぬぞ」
「わ、分かったわ……」
「それでは拙者、御公務にてまむうくへ参るでござる。これにて御免」
そういい残し、ヤグードの忍者は去ってしまった。
「よし、早速ゼオルム火山に行きましょう!」
言うが早いかコイシが既に駆け出している。
「コイシさま!今しばらくお待ち下さい……」
「もう!事は一刻を争うのよ!」
「……今、確認が取れました。ゲッショーなる人物がマムージャに関わる公務の命を受けている事実はありません」
「……なんだと?」
「それに、あの息遣い……先ほど私が何者かに襲われたとき、遠のく意識の中で確かに聞いた気がするのです……」
リシュフィーが自身でも信じがたいという表情で告げた。
「恐らく、先ほどの話は偽りかと……。むしろ、あの者が向かったというマムークにこそアヴゼンさんがいる可能性が高いかもしれません」
「今度こそ決めた!私、マムークに行く!リシュフィーも付いて来てくれるよね?」
「お止めしてもいくのでしょう?仕方ありません……」

消え入る命、不滅の魂

マムージャたちの住まう地、マムークへ赴いた一行。
マムージャたちの言葉が多少は分かるというリシュフィーが会話の内容を訳してくれた。

 

「……間違いない、それぞ、長きに渡り我らの捜していた、件のブツだ」
一同に会する、マムージャたちの五人の王。
その内の一体がアヴゼンを手にしていた。
「そのガラクタが我らを脅かすものだ、と?」
「ふむ……到底、そのようには、見えぬが」
「シュ~……シュ~……そこが、アトルガン……奴らの狙いよ」
「それにしても、だ。こんなちっぽけなものの、何を怖れる?」

 

「!!あいつが持っているのは……」
「……アヴゼン」

 

「分からぬ。分からぬなぁ?いっそ、バラバラにしてみるか?」

 

「騎龍王殿。其れには及ぶまいぞ。既に見当はついてござれば」

 

……今、何だか聞き覚えの声と口調が聞こえたよーな?

 

「いにしえの、鱗の同胞、月照よ。して、その見当とは、いかなものぞ?」
マムージャたちの五人の王。その中でも抜きん出て威圧感を放つ、2つ首の王が問うた。
「かたじけない。然らば。其は、ただの人形に非ず。あとるがんは前聖皇じゃるざあん自らが手を加えた機関人形でござる」
「グルルゥグルルルルルッ!ジャルザーンだ、と!?」
「如何にも。其は、じゃるざあん肝いりの世界初の機関人形なのでござる」
王たちとは違う、流暢な共通語を話す何者か……っていうかぶっちゃけゲッショー殿の言葉に、マムージャたちは気を更に荒立てる。
「そして、その人形を手掛けた者が牽引して、あるたざある遺跡が再び調査されているのでござる。オートマトンが出来るより以前、そうしたように」
「……そうだとしても、オートマトンは、既にある。今更、何を、遺跡に、学ぶのだ?」
「……!いや……まさか、まさか!アトルガンめは、鉄……あの伝説の鉄巨人を、復活させんと、もくろんでいると!?」
「確証はござらぬが……。されど、安心なされよ。今の皇国軍にニ正面作戦を展開する余裕はござらぬ。盟約が交わされし暁には、閣下ら西方の軍勢と我らが東方の武者が一斉に皇国に攻め入ることができ申す。さすれば連中に、そのような機械を復活させる余裕などなくなるは必定。我らは、皇国を制した後、鉄巨人とやらを打ち壊せばよいのでござる」
ゲッショーの交渉は、順調に進むかと思われたが、王たちがざわめいた。
「……いかがなされた?」
「グルルゥルルル……臭う……臭うぞ。鱗なき者どもの、臭いだな。出て、こい。隠れる場所など、ない、ぞ。ゲッグッグッグ……どの道、この場から、そなたらは逃げられないんだから、なぁ~!」
これ以上隠れるのは無駄か。
そう判断した一行は、素直に姿を現した。
そして、現れた者たちの姿を見て、ゲッショーは露骨に慌てだした。
「!!主人公殿……!?い、今の話……せ、拙者は……拙者は月照ではござらぬっ!御免!」
そして、ゲッショー殿は微塵隠れしていなくなってしまった。

 

「……おい、そこのトカゲもどき。アヴゼンを返してもらおうか……」
メネジンがマムージャを指差して言う。
「アヴゼン、ダト……?コレノコトカァ?」
「アヴゼン!アヴゼン!目を覚まして!」
「……起きないな。ブレーカーが落ちているのか?」
「だったら、私が直接起こすわ!」
気が昂ぶったコイシの拳が、隣のメネジンにぶつかったが、彼女は特に気にしなかった。
「貴様ラ……ソノ前ニ、テメェノ、命ヲ、心配スルンダナァ!ココハ、ガヒージャにオ任セヲ!」
「グルルゥルルルルル!ガヒージャ!」
「ヒ、ヒィ!?」
「南方帰りの騎龍王が術、期待して、おる、ぞ!」
「……オオオ!オマカセ、アレ……!」
後始末の兵を寄越す、と言い残しマムージャの王たちは去っていった。
遠くから地響きを轟かせ、巨大な何かが接近してくる。その音を聞きながら、ガヒージャは天高くアヴゼンを投げ捨てる。
「!?」
地面に落ちたアヴゼンを解放しようとコイシが掛けようとすると、大きく揺れ動く地面にバランスを崩した。
それは、ガヒージャが呼んだ、巨大モンスターだったのだ。
未だ体制を立て直せないコイシに容赦なくモンスターが襲いかかり……。

 

「危ないッ!!」

 
 
 

コイシは突き飛ばされるも、モンスターの攻撃は受けなかった。
攻撃を受けたのは……。
「リシュフィー!!」
「オット、順番ガ、変ワッテ、シマッタカァア?」
「くっ……コイシさま、逃げて、下さい……」
「だ、だけど……!……ごめんっ!」
「……すぐに戻るからな」

 

「ハッハァハァアア~!死ねッ!死ねッ!ナメクジ、ドモォ!」
今にもリシュフィーを踏み潰してしまいそうな騎龍王ガヒージャ。
見ていられず、躍り出る主人公。
「ナンダァア!?貴様モ、コイツニ踏ミツブサレタイカァア!?」

  • vs.騎龍王ガヒージャ
    勝利条件:騎龍王ガヒージャの撃破
    敗北条件:主人公、またはリシュフィーの戦闘不能
     
    敵は騎龍王ガヒージャと、彼が駆る鎧竜ウヴィルの2体。
    一方、味方は固定では主人公とリシュフィーだけ。リシュフィーは青魔法を多数習得しているが、開始時点でHPが50%となっており、しかも回復できない。予めPTメンバーを誘っておかないとかなりキツイ。
    ウヴィルが攻撃力が高い他、こちらの防御力を激減させる技なども持つ。標的はガヒージャだが、先にこちらを倒そう。
    ガヒージャは防御力が高く回復魔法を使うナイトタイプ。先にウヴィルを倒しておけばそれほど難敵にはならないだろう。

騎龍王は息絶えた。
コイシの姿を捜していたリシュフィーは、彼女が逃げずにアヴゼンの元へ向かおうとしているのを見た。
既に上まで登ってきていたメネジンの手を掴もうとして……何故か、メネジンが宙に浮いた。
「wwwwwwwwこのブリキ人形wwwwwww俺がもらってくかんなwwwwwww」
幽霊船ブラックジャック号に潜入した時、フォモルに参謀と呼ばれ、主人公たちを移動魔法で飛ばしたタルタル……墨樽と目されている者だ。魔力でメネジンを宙に浮かせているのだ。
「無礼な!降ろせ!降ろさぬか!」
「元気な人形だなwwwwwwゼンマイ巻きすぎたんじゃねーの?wwwwww別に離してもいいけどよwwwwww下に落ちてスクラップだぞwwwwww」
「や……止めて!」
コイシの声を聞き、メネジンは素直に動きを止めた。
「寝つきがいいなwwwwwwまぁ壊れたらこっちも困るしなwwwwwww」
メネジンがアヴゼンの傍まで運ばれると、アヴゼンが急に立ち上がる。
「!?」
だが、それは再起動したのではない。
インビジの魔法で姿を消していた男が現れたのだ。
「こんなものがwwwwww厄災の双人形だと?wwwwwwww」
「ちがいねーよwwwwww」
その男は、タルタルと同じ時に会った……痛風だ。
「か、返して!それは私の……私のアヴゼンなんだから!」
「あん?wwwww今なんつった?wwwwwww」
「もうっ、私のアヴゼンを返してって言ったの!」
コイシの言葉を聞いて、何故か痛風は笑う。
「wwwwwwwどうやら、アヴゼンとメネジン、双人形で間違いねーみたいだなwwwwww作戦会議に遅れてwwww指の一本でもくれてやらねーとって思ってたのによwwwwww失うどころかとんだ拾い物したぜwwwwwwおいwwww墨樽wwwww」
「わーってるよwwwwww」
痛風に促され、墨樽が得意の移動魔法を詠唱した。宙に魔方陣が浮かび、メネジン、アヴゼンの順で放り投げると、掻き消えるように移動した。続けて痛風、墨樽も魔方陣に飛び込んだ。
「に、逃がすかっ!」
覚悟を決め、コイシもまた魔方陣に飛び込もうと身を投げた。
「お止め下さい、コイシさまっ!」
リシュフィーが止めても時既に時間切れ。
コイシを巻き込み魔方陣が掻き消え、その場に残されたのは主人公とリシュフィーだけとなった。
否……近づいてくる足音がある。
「……70、いや100……200か!?トカゲどもが言っていた後始末の兵か!僕たちをなぶり殺しにする気なんだ……」
ど、どうすればいい!?
「聞いてくれ。あの方向からは足音が少ない。そこから包囲網を脱出するんだ」
リシュフィーは!?
「これでも僕は不滅隊のはしくれ。ここに残って敵を防ぐ!」
そんな……!
「元よりこの命、聖王様に捧げている。感情はいらない……さぁ、行け!」

 
 

すぐさま、マムージャの大群が集結した。
打開するには、あまりに絶望的な数だった。
「グッゲッゲ……貴様、一人、カ?」
「そうだ……もっと来いよ……」
リシュフィーの身体は、不思議な輝きに包まれていた。
マムージャたちは、何か不吉なものは感じ取っていたが……ふと、一匹のマムージャが気付いた。
「貴様、マサカ!?」
リシュフィーを包む輝きは……命を力へと変換し、圧倒的な破壊を生む技……。

 

ボム族の、自爆。

 
 
 

コイシさまを、頼んだ