イベント/心

Last-modified: 2014-12-03 (水) 13:28:07

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


真昼の開戦

作戦決行は昼に決定した。
城の戦力の大多数を占めると思われるアンデッドは、夜の方が活発に動く。それに、万が一にも住民が寝ていて避難が遅れるようなことがあってはならないからだ。
昼の間ではレミリアも全力を出せないことになるが、周囲の被害を最小限に抑えるためにはむしろ都合が良かった。

 

そして、戦いの火蓋は切られた。
ドラコニスの爪による一撃が、スケルトンもろとも容易く城の外壁を打ち崩す。建物の中ではドラゴンの動きは大きく制限されてしまうことと、住民にも良く見えるように、外から焚きたてるように騒ぎを起こす。兵士が集まり、逆に住民の避難も順調の様子だった。

 

ただ、懸念要素もあった。
アンデッドの軍勢に混ざって、人間が居る。
背負った巨大な武器、防具。ドラコニスは直感的に察知した。
「……ドラゴンスレイヤーか!?」
悪竜退治を生業とする屈強な人間。それも複数だ。
しかし、ドラゴンスレイヤーなどそうは居ない。それに、いくらドラゴン退治を依頼されたのだとしても、アンデッドに混じって戦うなど奇妙だ。
ドラコニスは知らなかったが、彼らは俗に『モンスターハンター』と呼ばれる人種だった。
ハンターズギルドを通ってきた依頼なら、依頼主が誰かは選り好みしない。例え横に人外が居ようとも自分たちには関係の無いことだとストイックに考える傭兵たちだ。

 

ハンターの動きは、理性を無くしたアンデッドのそれとは全く違う。
巨大モンスターとの戦いを食い扶持にする彼らにとって、ドラゴンとの戦いは手馴れたものだった。ブレスを吐けば防御し、爪や尻尾を振り回せば回避し、僅かな隙を見つけては的確に弱点を攻撃してくる。
たった一体の年老いたドラゴンが戦うには、少々荷が重い相手だった。

 
 
 

「住民はこれで全員か?」
「は、はい!」
「よし!全員、突撃!」
カナコの号令と共に、一斉に騎士たちが飛び出していった。レミリアはあっという間に城の内部へ飛び込んで、一人で暴れだした。
「レミリアさんは、一人で大丈夫でしょうか?」
「心配いりませんよ」
不安がるサナエをサクヤさんが諭す。
「もしも殺られても次の日には復活しますから」
それあんまり大丈夫じゃないよね。
「あいつよりドラコニスよ!苦戦してるみたいだけど……」
義理の姉をあいつ呼ばわりしても、サクヤさんは特に気にしてない様子だった。
「心配なら、助けに行けばいいじゃない?」
「うう……そういうわけにはいかないでしょ。作戦はドラコニスに一任してあるんだから」
口ではそう言っても、不安で仕様が無いのは火を煮るより明らかだ。
「さっさと城を制圧するぞ」
スコール?
「その後なら、助けでも何でも好きにしろ」
「……hai!」

  • 大規模戦闘
    女神の騎士
    勝利条件:敵の全滅
    敗北条件:主人公、またはテンシの戦闘不能
     
    サクヤ、カナコとサンドリア騎士たちとの共同戦線。
    カナコとサンドリア騎士たちはNPCで操作不能。とはいえ、雑魚のスケルトンに遅れを取るようなことはないだろう。
    敵はスケルトンが3体で1ユニットで、それが6ユニット。更にボスにナラカ族「がしゃどくろ」が一体で、計19体。
    スケルトンは弱いので問題ないだろうが、状態異常技には注意。
    ナラカ族のがしゃどくろはスケルトンとは打って変わって強敵。
    通常攻撃が範囲攻撃になっており、前衛の被害は想像以上に大きくなりがち。幸い、防御力は並み以下なのでダメージを与えるのには苦労しない。特に殴属性の攻撃に弱く、カナコの攻撃では一気に大ダメージを与えられる。
    レベルの高いカナコを中心に、遠距離攻撃で地道に削っていこう。
 
 
 
 
 

……まだ、早いか?

 

遠目にテンシたちの戦いを眺めながら、ドラコニスは考えていた。
ドラコニスの身体からは、徐々に力が失われていた。ハンターたちは強かった。
自身の敗北を悟りつつ、ドラコニスの心は自分でも驚くほど波立っていなかった。
ドラコニスには判っていた。

 

彼らの勝利に沸き立つ横顔を見ることができないことを。
彼らと共に勝利の喜びを分かち合うことができないことを。

 

それでいい。

 

私は、古い時代の忘れ物に過ぎないのだ。新しい時代を導くのは老獪ではない。若い力なのだから。

 

でも、最期の時が来るまでは。
まだ抵抗しようと思った。

 

もう少しばかりの勝利を。
あとほんの少しだけ、勝利を。
絶頂へ持って行け、終わりではない。
殺し屋の卑しい手に堕ちるのではなく、意地を通すんだ。
向こう側の友人たちに、誇りを持って語れるだけの雄姿を見せてやりたかった。

 

だけど。

 

今は、柔らかい太陽の光と爽やかな風を受けて、休む時間が必要だった。

囚われの竜

ハンターたちは、一体の竜を捕縛することに成功した。
モンスター狩猟の専門家である彼らにとって、それはさして珍しいことではなかった。
……とはいえ、アンデッド連中と肩を並べて仕事する日が来ようとは夢にも思わなかったが。
ドラクア伯爵から、執拗に「ドラゴンを殺すな」と言われている。何故かは判らない。モンスターを捕縛して生態研究しようという学者なら居るが、ドラクアは学者タイプには到底見えなかった。
でも、理由は二の次でいい。
自分たちの仕事は、『ドラゴンの捕縛』。目の前で城が襲撃されていようと関与する必要は無い。彼らの武器はあくまで対モンスター用で、喧嘩ならともかく殺し合いでは騎士に勝てる見込みも無い。彼らは恐ろしく現実的だった。

 

「ぐあぁっ!?」
「!?」
突然、全身を縄で縛られたドラゴンが大きく呻いた。傷が痛みのだろうか?
「あ……ぐ」
少々不気味だが、喋るドラゴンも初めて見たわけでもなかった。狩猟対象に同情は禁物だ。
「がぁ!ぐおおっ!?」
……痛み方が、少々異常なようにも感じたが。

 
 
 

スケルトンの軍勢を退け、サンドリア部隊は城内に突入していた。そして、テンシはドラコニスが囚われているのを見た。
「……っ!先に行って!私は急用ができた!」
「はい?て、テンシさん!?どこへ?」
「友達を助けに行くの!」

 

言いつつ、テンシは一目散に駆け出していた。
「仕方の無い奴だ……主人公、頼む」
任された!

 
 
 

「ドラコニスを放しなさい!」
急な少女の介入に、ハンターたちは少なからず驚いた様子だったが、すぐに落ち着き払って武器を手に取った。
「ぐ……テンシ……?」
「待ってて!今すぐ助けるから!」

  • VS.モンスターハンター
    Sword of Valiant
    テンシと二人での、3人のハンターたちとの戦い。
    ハンターはそれぞれ、両手剣、片手刀二刀流、銃を装備したABCの三名。
    Aは一撃が重く、Bは二刀流で手数で多く、Cは後列から攻撃してくる。
    また、各人回復薬を持参してきているので、ある程度HPを減らせても自力で回復してしまう。
    ただし、回復には限りがあり、またHP自体も多くは無い。どちらが先に倒れるかの電撃戦になるだろう。

勝利の代償

大剣を振り下ろすハンターの一撃を紙一重で回避し、その鳩尾を盾で思い切り殴りぬくと、流石のハンターも気を失ったようだった。
「ドラコニス!無事だったのね?良かった……」
嬉しそうにドラコニスに駆け寄るテンシを、しかしドラコニスは冷たい声で言った。
「早すぎたよ」
「え?」
「あいつらにやらせれば良かったんだ。……さあ、お前がやるんだ」
「なんのこと?」

 

テンシが疑問を浮かべると、城の壁が崩壊し、ドラクア伯爵が吹き飛ばされて来た。
と同時に、ドラコニスが苦悶の叫びを挙げた。
「がぁぁ……!」
「ドラコニス!?どうしたの!?」
ドラゴンに心配そうに駆け寄るテンシの目に、紅い槍を携えた義理の姉が写った。
「お、テンシ。生きてたのね。さすがはブロントさんの義妹ってところかな?」
「義姉さま……」

 

「くそっ!」
瓦礫を退けながら、ドラクアが立ち上がった。豪奢だった服装は、今や見る影も無くボロボロだ。
「ふぅん……大した再生力ね。だけど、それだけじゃあ永遠に苦しいだけなんじゃないの?」
挑発的な笑みを浮かべ、レミリアが言い放った。
ドラクアは返す言葉も無く歯軋りしているだけだ。
「うぐ……あ……」
ドラコニスが異様に痛がる。あの時、城から脱出した時と同じだ。

 

ドラコニスが言っていたことを思い出した。
元が同じ心臓を持っているから、痛覚まで共有している。確か、そんな風のことを言っていた。レミリアがドラクアを攻撃するのと同時に痛みを覚えたのなら、それは正しいということになる。

 

「あと何回殺せば気が済むんだ?」
ドラクアを見下しながら、レミリアが次の攻撃を始めようとする。
「ま……待って!」
テンシの制止は、一瞬遅かった。

 

運命「ミゼラブルフェイト」

 

紅い鎖が多数伸び、ドラクアが捕らえ、刺し貫く。
「「がぁぁぁ!?」」
「えっ!?」
驚いたのはレミリアだ。自分の攻撃と関係ない(はずの)ドラゴンが、ドラクアと同調するように叫んだのだから。
「義姉さま止めて!ドラコニスを痛めつけないで!」
「は?いや、私はドラクアを……え?どうなってるの?」
義妹に攻撃を止められ、レミリアは混乱していた。

 

「ぐっ……殺せ、テンシ!」
「ドラコニス!?」
お前が殺すんだ、テンシ!お前に授けたその竜殺しの剣【フロッティ】で、私の心臓を貫くんだ!!」
「なっ……何を言っているの?」
「心臓が二つに分かれようとも、ドラクアの心臓は私の物なのだ!私が死ねばドラクアの心臓も止まる!」

 

テンシは呆然としていた。
ドラコニスは言っていた、『ドラクアを殺す方法を知っている』と。
それは、こういうことだったのか?
「私は恐かったのだ!あの時代の最後の生き残りである私が死ねば、誰があの時代を証明するのかと!だが、もう恐くはない!お前たちが竜の時代を語り継ぐんだ!」
「だ……駄目よ!友達は殺せない!」
「ならば友として、討て!……お願いだ!」
ドラコニスの、文字通りの必死の願いを聞いて、知らずテンシの頬を熱いものが伝っていた。涙でドラコニスが今どんな表情をしているのかすら見えない。
「……できるわけないでしょう!?」
「では、この縄を解け!私の手で私の心臓を引き裂かせてくれ!!」
「できないわ!」

 

レミリアもまた呆然としていたが、ドラクアが紅い鎖を断ってテンシを襲おうとしているのを見て、咄嗟にグングニルをドラコニス目掛け投げようとして、
「止めて!!」
「!!」
テンシはそれを再び止めた。
声に応えるように、レミリアはとっさに再度紅い鎖を飛ばした。攻撃ではなく、拘束のために。
雁字搦めになったドラクアがバランスを崩し倒れた。

 

テンシは涙を拭って、レミリアと視線を交わす。
レミリアの表情は心配そうだった。
状況を読み込めないながらも、彼女なりにテンシを気遣っていたのだ。
テンシもそれを察し、何かを言うべきだと思ったが、竜の友の身体が視界に映り、また涙が溢れてきて、言葉が喉に詰まってしまった。

 

その時、テンシは自分に向けられた殺意を感じ取り、その方向を見た。
ドラクア。自分の国の民をアンデッドに変え、己が欲望のために死者の王国を作ろうとし……ドラゴンを騙した男。
不死の王の殺意と野望を、全身で感じ取った。
そして、ようやく悟った。
この男は必ず倒さなければならないと。
友の言うとおりに動くしかないと。
これは、絶対に自分がやらなければならないと。
それが友の願いなのだから。
テンシはその小さな手には余る竜殺しの剣を、強く握り締めた。

 

「……ドラコニス!!」
その華奢な腕に握られた剣は、驚くほど容易く竜の鱗を引き剥がし、その奥の鼓動を打つ心の臓を刺し貫いた。
フロッティが、二度目の竜殺しを果たした瞬間だった。

竜星

満天の星空が空いっぱいに広がっていた。
夜。
ドラコニスの心臓が貫かれると同時に、ドラクアは灰となって風に散らされた。彼がアンデッド化させた兵士たちも同様だった。
「伝書チョコボの返事が着たぞ。アイノンはサンドリア領に組み込まれることになりそうだな」
ドラクアが討たれても、彼の与えた被害が治療される訳ではない。戦の後始末はいつだって大変なものだ。
でも、アイノンの民はこうなることを覚悟して噂を流していたのだ。承知の上だった。

 

夜空を見上げるテンシの横顔は、決して晴れ晴れしいものではない。
でも……泣くのだけは、止めた。
「ドラコニスは、夜空に還る名前だもの。ドラコニスはあそこにいる」
半ば自分に言い聞かせているようなものではあったが、夜空はそれに応えてくれた。

 

「あっ!流れ星!」
夜空を指してコガサが嬉しそうに声を挙げた。
ふたつ、みっつ、よっつ……次々と夜空を切り裂いて流星が降り注ぐ。まるで、今回の勝利を祝福してくれるかのように。


  • イベントクリア後の影響
    テンシがPTに誘えるようになる。
  • 報酬
    片手剣『フロッティ』
    一式装備『八竜具足』