イベント/惨劇の条件

Last-modified: 2015-01-05 (月) 20:01:59

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


惨劇の条件

 
 
 

アヴィールは死んだのよ! 貴方の白魔法が遅れたせいで!

 
 
 

そんな! あれは、アヴィールが獣人の群れに走っていっちゃたから……!
彼、焦ってたから……もっと頑張らなきゃ、手柄を挙げなきゃって……。

 
 
 

もう懲り懲りだ! 俺はパーティを抜けさせてもらう! お前みたいな役立たずの白魔道士とは2度と組まないだろう!

 
 
 

あたしもよ。前から、あんたの事嫌いだったのよ。いつもいつも、アヴィールにベタベタくっついてさ!

 
 
 

……そんな……ごめん、ごめんね……。

 
 
 
 
 

あとさ……大事に持ってるその首、さっさと埋めなさいよ、気持ち悪い

 
 
 
 
 

始まりは一通の手紙

……それが彼、パイヨレイヨ……タルタル族の青年が語った、かつての仲間との最後の冒険の日の出来事だった。

 

「あんた、近頃色々活躍してるんだろ? 冒険者仲間じゃ有名だ。
 だから、あんたの腕を買って頼む。俺と一緒に結婚式に参加してくれないか」

 

そんな意味不明の言葉から始まったこの依頼は、非常に不気味で危険な臭いを漂わせていた。
パイヨレイヨは数ヶ月前、『エッダ』という白魔道士の女性とパーティーを組んでいた。
同じパーティーにいた『アヴィール』という男性はエッダの婚約者だったのだが、功を焦って無謀にも獣人の群れに挑みかかり、死亡してしまった。
仲間を失って冷静さを欠いていた当時のパーティは、エッダの回復が遅れたせいでアヴィールは死んだという論調になり、喧嘩別れしてしまったという。

 

「後味の悪い出来事だったから、奴らとは2度と会わないつもりだったんだが……」

 

パイヨレイヨは懐から、一通の手紙を取り出して見せた。

 

「……届いたんだよ。エッダから結婚式の招待状がな……」

 

それは……目出度いことではないのか? 婚約者を失った悲しみから立ち直って……。

 

「普通だったら喜んでやるべきなんだろう……。だが、俺は薄ら寒いもんを感じたね。
 なんせ……結婚相手が死んだはずのアヴィールだって書いてあるんだからな」

 

え……!?

 

「しかも、式場はアラパゴ暗礁域にある洞窟だ! アンデッドの巣窟だぞ!?
 それにアラパゴ暗礁域は……!!」

 

そこで一旦、パイヨレイヨが言葉を切り、思いつめた様子でポツンと告げた。

 

「……アヴィールが死んだ場所なんだ」

 

死んだはずの婚約者と結婚するという手紙……その上、式場は死んだはずの場所と来た。
どうやら、先に感じた臭いは大当たりだったようだ。

 

「……招待状には、同じパーティの一員だった『リアヴィヌ』と一緒に来てくれと書いてあった。
 けどなぁ……リアヴィヌは……あいつも一ヶ月前に死んだんだよ……! 魔物に殺されてなぁ!」

 

パイヨレイヨは今にも泣き出しそうな勢いで、叫ぶように事実を告げた。
もう1人のパーティメンバーも死んだ……エッダはその事を知っていたのか? それとも……。

 

「この前……リアヴィヌの墓参りに行ったんだよ……」

 

タルタルの青年の声は涙で震え、掻き消えてしまいそうだ。

 
 

「そしたら……墓が荒らされて……死体が持ち去られてたんだよ!!」

 
 

言葉を失った。
パイヨレイヨの叫びに道行く人が何事かと振り返ったが、気に留める余裕は無かった。

 

「エッダの奴、きっと知ってたんだ、リアヴィヌが死んだって……。
 いや、リアヴィヌの死体を持ち去ったのも、エッダの仕業なのかもしれない……。
 そう考えたら俺……もう体の震えが止まらなくて……」

 

その絞りだすような声を聞くと、元々小柄なタルタル族の青年が、より一層小さく見えた。
彼はガタガタと震え、そのまま心臓麻痺でも起こしてしまいそうだ。

 

……放って置くことは出来なかった。

 

「話は聞かせて貰ったわ」

 

と、その場に現れたのは、五蛇将が1人、パルスィだ。

 

「男と女の悲劇……と聞いたら、この私が無視することは出来ないわね」
「あんた、五蛇将の!? そ、そうか。売り出し中の冒険者と五蛇将がいれば、ちょっとは安心できる……。
 俺、式場に行こうと思う。頼む、俺と一緒にエッダに会ってくれないか」
「わかったわ。エッダがどうなっているのか……ふふ、とても興味あるからね」

 

かくして君とパルスィ、パイヨレイヨの3人は、招待状に記されたアラパゴ暗礁域にあるという洞窟へ向かうことにした。

 
 
 
 
 

君もパイヨレイヨも、後から合流したパルスィも、最後まで、遠くから見ていた白装束の女性には気付かなかった。
通行人が彼女の前を通り抜けると、もうそこには誰もいない。

薄明るい洞窟の底で

ダンジョン『暗礁域の洞窟』
BGM:タムタラの墓所

 

道に大量に敷かれたロウソクに従って進んでいくダンジョン。
パイヨレイヨは完全に腰が引けて戦える状態ではないので、護衛する必要がある。
誘導されているので迷うことはないが、何度か中ボスと戦わなければならない。
出現するモンスターは宙に浮いたカオナシみたいなアンデッド類「ダンタリオン」を始め、ナット族の「フレッシュフライ・スウォーム」、ゴースト族の「スペアソウル」、ヘクトアイズ族の「不要になった眼」、スライム族の「バットミート」など。
いずれも不気味な見た目と名前を持っており、想像するだに恐ろしい。
途中、デーモン族とインプ族が「2人に祝言を!」「このめでたき日に」等と言って湧いてくる。雑魚ではあるが、再POPはしない。

 
破れた手記

道中では、破れた手記がいくらか落ちており、読むことが出来る。
というか、読むことを強く推奨する。

わたしとあの人が育った故郷に帰ってきた。
子どもの頃には広く感じた村も、
今では何だか、とても狭く感じる。

 

わたしが世界の広さを知ってしまったからだろう。
そう、わたしとあの人は、ともに夢見た。
広い世界での胸躍るような冒険を。

 

やっぱり、この狭苦しい村は、あの人に相応しくない。
冒険に出よう。
もう一度、あの人といっしょに。

「これは……エッダの日記か? なんでこんな所に落ちてるんだよ……」

 

初めてのウィンダス。
天に伸びる星の大樹は美しく輝き、
まるで、わたしたちの訪れを祝福しているよう。

 

大樹の木陰で、あの人と見つめ合う幸せな一時。
日が暮れるまで、ふたりきりの時間を過ごした。
これからもずっと一緒だ……あの人の言葉が嬉しかった。

「あの人って、アヴィールのこと……だろうな。いつ頃書いたんだ?
 俺たちと一緒にいた頃は、中の国の方には行ってなかったはずだが……」

 

最近なんだか、あの人の顔色が悪い。
やっぱり、バルクルム砂丘に来たのが悪かったんだ。
あの人は熱いのが苦手だから。

 

凍てつくように寒いザルカバードに行こう。
そうすれば、きっとあの人だって元気になる。
そうすれば、耳元で囁くこともやめてくれるはず。

「まあ、普通の日記じゃないわよね。この辺からもうおかしいわ」

 

うん、わかってる。
わかってるよ、自由に動ける身体がいるよね。

 

うんうん、わかってる。
そんなに毎日毎日毎日、囁かないでもいいんだよ。
何も言わなくたって、あなたが言いたいことはわかるの。

 

だって、わたしはあなたのお嫁さんになるんだから。
だからもう、囁き続けるのはやめて。
あなたにふさわしい身体を見つけるから。

「……嫌な想像しちまった。なあ、将軍様よ。覚悟の上で訊くが、これって……」
「ええ、多分、想像通りだと思うわ」

 

ごめんね、なかなか、あなたに合う身体が見つからないの。
あなたは、ヴァナ・ディールに名を馳せる冒険者になるのだから、
中途半端な身体じゃダメ。

 

それに、わたしわかってきたの。
身体だけあってもダメだって。
立派な冒険者には、立派な魂が必要なんだって。

 

強い身体には、強い魂がいる。
弱い魂しか見つからないなら、たくさんの魂が。
もう少しの辛抱だからね、待っててね、あなた。

「……すまん、もう何も聞かないでくれ。
 俺はもう帰りたい気持ちでいっぱいだ……」
「貴方にほんの少しでも申し訳ないという気持ちがあるのなら、駄目よ。
 逃げずに、立ち向かって」
「……くそっ」

 

ここには、からだがいっぱいあるの。
いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいあるの。
だから、きっとあなたもげんきになるわ。

 

そうしたら、けっこんしきをあげようね。
わたしたちは、あたらしいせかいにたびだつの。

 

けっこんしきには、みんなもよぼうね。
きっとぱーてぃのみんなも、しゅくふくしてくれるよ。

 

あんなになかがよかったんだもの、
おくりものをもってかけつけてくれるよ。
きっと、たましいだってくれるはずよ。

「…………」
「……どうやら、これが最後みたいね」

 

ささやき
くりかえす
それはきた
にがした
ささやくの
どこにあるの?
はりさける
うしないはりさける

 

もってきた

立会人リアヴィヌ
エッダによって墓を暴かれ、望まぬ役目を与えられたエルヴァーン女性。
一応大規模戦闘。
狩人で、弓WSを使用する。
戦闘中、何度か大量に雑魚モンスターを呼ぶが、攻撃すると自爆するので手を出すのは危険。
ではどうすればいいかと言うと、リアヴィヌが敵味方無差別の広範囲攻撃をするので、リアヴィヌの周囲へ誘導すれば勝手に全滅する。
「だから、あたしは嫌いだったのよ……気持ち悪い……やつ……」
スペアボディ
首のない、デュラハン族の中ボス。名前からして誕生目的が明確である。
こちらも大規模戦闘。
技を使うと闇エレメンタルが現れるが、この闇エレメンタルは戦場の中央にいるパイヨレイヨだけを狙い、自爆攻撃を仕掛けてくる。
リアヴィヌの時とは逆に、パイヨレイヨに辿り着かれる前に破壊しよう。
闇エレメンタルはスペアボディが技を使う度に後から後から湧いてくるので、闇エレメンタル処理係とスペアボディ戦闘係で分けると良い。

歯止めの無い心

洞窟に敷き詰められたロウソクの道。
それを辿り、着いた場所には、ロウソクで大きな輪を描く魔法陣だった。

 

「ほら、アヴィール。見て、パイヨレイヨだよ。お客さんも連れてきてくれたよ。
 きっとご祝儀、たくさんくれるよ」

 

頭から爪先まで真っ白い衣装に身を包んだ女性が、うわ言のように喋った。
いっそ、本当にうわ言だったら、どんなに良かったか。
何故なら、彼女……エッダは独り言を喋っているのではないからだ。
ただ、話し相手が果たして会話の通じる存在であるかは、甚だ疑問だった。

 

「エッダ……なんだよ、それ……!?」

 

パイヨレイヨが指さした先にいるモノ。それはアヴィールではあったが、アヴィールではなくなったモノ。
アヴィールらしき男性の顔が浮かび上がった、生首から手と翼が生えたかのような、醜悪な魔物だった。

 

「本当にそんなのがアヴィールだって言うのかよ!?」
「何を言うの? どこからどう見ても、アヴィールよ」

 

エッダはこちらを見て、満面の笑みを浮かべた。
この薄明るい洞窟の、不気味過ぎる空間では、その笑顔は鳥肌を立たせるには十分な恐怖であった。

 

「……想定していたよりも更に駄目なようね。これは……修正不可能よ」
「ああ、パイヨレイヨ! そのお客様……とっておきの体を持ってきてくれたのね?」

 

パルスィの言葉など耳に入っていないようで、エッダは君を見つけると心の底から嬉しそうに言った。
とっておきの体だと?

 

「ふざけるな! アヴィールはもう死んだんだ! 他人の体を使ったって、あいつはヴァルハラから帰ってきたりはしない!」
「アヴィールならここに居るわ? ねえ、あなた」

 

エッダは醜い魔物をアヴィールと呼び、新婚夫婦のように仲睦まじそうに撫でた。

 

「エッダ……お前……」

 

パイヨレイヨの声は、諦めたように小さくなっていった。

 

「恋は人をおかしくするものだけど……愛しい人の死は、もっとおかしくするわ。
 そして、傷心のエッダには暴走を止めてくれる人がいなかった……。
 だから起こったのね、この惨劇が……」

 

あくまでも冷静に、パルスィが分析する。

 

「……俺の……俺たちのせいだって言うのか。俺たちがエッダを壊してしまったのか……?」

 

パイヨレイヨは膝と両手をつき、絶望に暮れた。
風蛇将はそんなタルタルを一瞥すると、武器を抜いて構えた。
それを見てアヴィール……と呼ばれた魔物も吠える。
エッダは笑顔のまま、殺気など一切放たないまま、戦闘に入った。

  • 純白のエッダ&勇壮のアヴィール
    これも大規模戦闘。エッダとアヴィールとの戦いだが、エッダは攻撃できない。パイヨレイヨは相変わらず戦闘には参加しないが、今回は護衛する必要はない。
    エッダはアヴィールの後ろからアヴィールの回復や補助を行い、時折増援のデーモンを呼ぶ。
    また、それとは別に多数の「グルーム・トゥ・ビー」という雑魚が湧く。
    地面を這うだけで攻撃も行わないが、3ターン後にはエッダの元に辿り着き、吸収されると「レッドウェディング」というMAP全体攻撃を発動される。
    レッドウェディングは辿り着いたグルーム・トゥ・ビーの数に応じて威力が激増するため、可能な限り減らそう。
    アヴィールは直線攻撃の「熱視線」、単体攻撃の「首っ丈」を使うが、アヴィールさえ倒せば勝利となる。
    「病める時も、健やかなる時も、私たちはずっと一緒……永遠に……」

力尽きたアヴィールが地面へ落ち、闇へと溶けた。
驚愕するエッダは一歩一歩と後ずさる。そこにはロウソクがあるが、その奥にあるのは底の見えない真っ暗な穴だけだ。

 

「そんなこと……アヴィール……アヴィール……!」
「おい、エッダ! それ以上下がったら!」

 

パイヨレイヨの忠告も聞かず、後ずさり続けるエッダは遂に足を踏み外し、落下した。
ロウソクの火が服に移り、落下する中で火に包まれるエッダ。
だが……最後の瞬間に彼女は、ふっと笑った。

 

後には無力感に苛まれる君とパイヨレイヨとパルスィだけが残った。

 

「……愛に溺れ、暴走を止められなかった者の末路なんて、いつの世もこんなものよ」

 

掴んだはずの幸せな未来が、指の間からこぼれ落ちていった時、人はそれでも新しい別の未来を思い描くことができるのだろうか。
否、それができるのは、強き心の持ち主か、支えてくれる者がいてくれた場合だけだろう。
では、心弱き者は、支えなき者はどうなるのか。
惨劇とは、たったひとりで辿り着いてしまった答えの先に、あるものなのかもしれない。

パイヨレイヨが見たもの

次の日。
3人は共同墓地に来ていた。
リアヴィヌの遺体と、アヴィールの首、そして、エッダの心の弔いをする為に。
エッダの遺体は探すつもりになれなかった。
あの穴は海に通じているらしく、恐らくは既に海の生物の餌になっていることだろう。
アヴィールの首は、エッダが数ヶ月の間肌身離さず持ち歩いていたようだ。
これを元に肉体と魂を再構成しようと、死霊術にも手を出し、その過程でデーモンの協力も取り付けたようだ。

 

「……俺は故郷に帰るよ。もう、冒険者を続ける気力を失くしちまった……」

 

パイヨレイヨはそう告げた。
無理もないだろう、あんな出来事があったのだ。
肩を落としながら歩き去ろうとして、足を止めて振り返る。

 

「あんたらも、この件は忘れてくれ。迷惑をかけちまったな……」

 

それだけ言うとパイヨレイヨは足を動かそうとして……止まった。

 

「どうしたの?」

 

パルスィが声を掛けても、全く反応を見せない。
ある一点をまっすぐ見つめ、完全に固まってしまった。

 

「テラー状態かしら?」

 

パイヨレイヨは怯えきった様子で後ずさる。

 

「なっ、どうして……!? ひっ……お、俺が悪かった! やめてくれ! もう付きまとわないでくれ!!」

 

彼はまるで誰かに謝罪するような言葉を口にする。
そして次の瞬間、絶叫を上げながら走り去って行った。

 

君とパルスィがパイヨレイヨの見つめていた方を見ても何もいない。
墓があるだけだ。

 

「まるで……幽霊でも見たかのような叫び声だったわね」

 

彼が最後に何を見たのか、全く分からなかった。何か、とても恐ろしいものであったことは疑いようがないが……。
その後、アトルガンでパイヨレイヨの姿を見た者はいない。


報酬

  • 片手棍「フェイスロッド」