イベント/東の姫

Last-modified: 2011-11-17 (木) 14:26:34

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


東の姫

すれ違う袖

輝夜姫……輝夜姫……はて、どこかで聞いたことがあるような?
「そりゃ、この国で一番偉い人なんだから、名前くらい聞くでしょうよ」
うん、それはそうなんだけど……どこだったか?

 

「……この町で、じゃないか」
考え事をしている内に、目的地に到着したようだ。
ああ、確かにこんな異国風情あふるる町だったな、うん。
「永遠亭だっけ?そのお屋敷はどこ?」
「あっちですね」
セーガ、ヤマメ、リンが先を急ごうとすると、妹紅とヨシカが立ち止まり、ここで待っているという。
ヨシカは致し方ない事情があるから分かるが、妹紅は何故?
「……個人的嗜好からだ」
「?まぁ、いいか。早く用を済ませて、絶品と噂のSushiを食べたいねぇ」

 

うむ。間違いなくこんな町で……ああ、そうだ!ちょうどあんな人に教えてもらったんだ!
ようやく思い出し、記憶の中の人の顔とそっくりな町娘を見つけ、思わず指差してしまった。
……いや、そっくりというか瓜二つというか、まるっきり本人だった。

 

「あら、また会えたわね」
元気そうで何より。
「お知り合いなんですか?」
「ええ、そうよ」
セーガの質問に、何でか彼女が答える。今のは俺宛ての質問だったのでは?……もしかして、この二人も知り合いだったりするのかな?
「そっちの方々は?」
「あ、えーと……か、観光客です」
まさか町娘に敵国アトルガンの人物だとはさすがに言えなかったのか、ヤマメが適当に誤魔化した。
「ふーん……?ま、いいや。今日はまた異国の珍しい果実が入荷したらしいからね。えーと、なんだっけ。そうそう、『すたあふるうつ』。へんてこな名前よね」
そっちの方がずっと興味があるようで、挨拶もそこそこに彼女はさっさと行ってしまった。
「……明るいんだねぇ。こう着状態とはいえ、戦時中なのに。……あんまり他国のこと言えない気もするけど」

 

町でも一際目立つ立派なお屋敷。
そこが目的地の、永遠亭だ。
この国の中枢ともいえるお姫様の住居なのだが、病院としての側面もあるためか、訪れるのに特別な資格などは必要ないようだ。
「……なるほど、貴方たちがアトルガンからの使者なのね」
二人の将軍とセーガ、ついでに主人公を出迎えてくれたのは医者兼従者の永淋だった。
「おひめさまには会えないんですか?絶世の美女っていうから、楽しみにしてたのにー」
あんまり残念じゃなさそうにリンが言うのを、何故か永淋は焦った風に否定した。
「か、仮にもこの国の姫ですから。そう簡単に面会は出来ないのです」
「ええ、それはもう無理でしょうとも」
どうしてかセーガが、さも当然という顔で付け加える。姫と面会できない、明確な理由でも知っているんだろうか。
「まあ、和平に向けての形式的な使者だから、それでもいいんですけどね。せっかくだから会ってみたかった」
ヤマメは割合本気で会いたかったようだ。

 

ふと、思い出したように。
「そういえば町で会った人は凄く綺麗だったよね。あの人よりも美人なのかな」
「さーにゃー……ギラリ」
「……なんでそんな熱い目でウサギを見てるのさ?」
将軍とは思えない暢気な会話を、冷や汗流しながら聞く永淋。医者なのに風邪でも引いてるんだろうか。
それを見て、セーガはニヤニヤ笑って。
「そういえば、あとるがんの聖皇陛下『も』放浪癖があるとか?」
「そーなんですよー。全く困ったもんです。まあ、それが国民の声を直接聞ける機会だって言うし、否定的に見てる民も少ないようなので、見逃してるんですけど」
「よく言うにゃー。本気で捜しても見つけられなかった癖にー」
「う、うるさい……」

 

「形式的とはいえ、せっかく東まで来たんです。聖皇陛下からも、何か役立ってこいとの御達しを受けておりまして。是非協力させてください」
五蛇将をまとめているだけあっての丁寧さでヤマメが永淋に詰め寄る。
「そうね……やっぱり死者の軍勢……いや、カイエンから『亀の化け物を見たでござる』って報告があったはず……」
「亀の化け物?」
「ん……それ、似たようなことをウツホが言ってましたよ」
永淋の話に、今にもウサギを追いまわし始めそうなリンが反応した。
「なんでも、黒い甲羅のすごく大きい亀が出たって。すぐにまた居なくなったって話してて……てっきり、あいつが何か見間違えたんだろうと思ってたんですけど」
「カイエンの話とも合致するわ……」
ほむ……。その亀が出たっていうのは、どこなんです?
「ええ……あんまり案内したくない場所なんだけれどね」

黒い甲羅の破壊者

聖蛇戦線。または、東方戦線。
そこが、亀の化け物が目撃された地点。つまり、膠着状態とはいえ、戦場の真ん中である。
ここのところ毎日、定期的に現れては消える、謎の亀の怪物。
只でさえ睨みあいしているだけの兵士たちのフランストレーションは推して知るべしだろう。

 

「……本当に、こんなところに亀の化け物が?」
視界の果てに自国の兵士を見ながら、ヤマメが問うた。
「間違いのうござる」
それに、カイエンが応える。
……いくら身分を明かしてはいないとはいえ、敵の陣地に堂々と乗り込んでいる将軍と、それに気付かない兵士たち。ちょっと不思議な光景ではあった。
「毎日、定期的に現れては、挑発するかのように消えていく……一体、何者でござろうか?」
「さて、ね。まあ試してはみよう」
一同は両陣営の間、戦場の中央に堂々と歩みを進める。

 

「数年もの間、ただ睨みあいを続ける。なんと滑稽な光景よ」

 

一瞬だった。
瞼を閉じて、次にあけた瞬間には、そこに黒い巨大な亀が立っていた。
両陣営にどよめきが起こる。
「……お前か、亀の化け物というのは」
妹紅が勇ましく既に戦闘態勢に入っていた。

 

「余は四神が一つ、玄武なり。余の瞬く間しか生きられぬ人間どもよ。余はそなたらがいつまた戦いを始めぬかと心待ちにしているのだ」
「何故、そんなことを?」
「これを見れば、窺い知れるであろう」

 

玄武が大きな足をもたげて地面を踏み鳴らすと、大きな地震が襲う。
皆が体勢を崩している内に、おびただしい数の亡者共が地の底から蘇った。
「!……お前、死霊の軍勢を!?」
「さっき、人間たちが戦うのを待っていると言ったね。それは、戦争が起これば大量の死体が……つまり、亀のお爺さんの手下が増えるから?」
「いかにも……こやつらは、余が瞬きを終えても消えはせぬからな」

 

妙だ。
玄武といえば、四神の一体である。それは自分でもそう名乗っていた。

 

四神は、聖獣ではないのか?
穢れない精神を持ち、人々を守護する存在ではなかったか……?

 

だが、そんな疑問が晴れる間もなく、玄武が身体を揺すった。

 

「さあ……小さな人間どもよ。己が小ささ、身をもって知れい」

 

「……好きにはさせんでござる!」
亡者の一体を切り捨てながらカイエンが数人の部下を引き連れ躍り出た。
「話は聞かせてもらい申した。拙者、微力ながら助太刀いたす!」

 

また、一体の亡者が灼熱の炎に飲まれた。
「この亀さんは、やっぱり悪者!そうでしょ、おリン」
「おくう?……ま、あんたは正しいよ」
「任せて!」
死霊を操るとなれば、アトルガン側からも参戦があった。

 

「鬱陶しい蟻が集まったな。だが、結果は同じだ」

  • 大規模戦闘
    砂礫を踏みしめ
    勝利条件:敵の全滅
    敗北条件:主人公の戦闘不能
     
    味方には妹紅、セーガ、ヨシカに加え、ヤマメ、リン、カイエン、ウツホ、さらにカイエンとウツホは名無しの兵士も引き連れ、とても充実している。
    ヤマメは防御力が高い他、彼女の周囲2マスに「統率」効果により命中、回避率も上がるので、彼女を中央に配置して進軍しよう。
    リンは回復が得意だが、ヤマメの統率を含めれば回避率がかなり高くなり、前線で殴るのも十分視野に入れていい。
    カイエンとウツホはどちらも高火力で、それぞれ近接、遠隔で真価を発揮する。また、各2名の名無し兵士で3人のユニットとなっているので、総合的な戦闘力はずば抜けている。
    敵方はこれまで何度か戦った亡霊兵士が20ユニットにボス格の玄武が待ち構える。
    玄武は見た目通りの防御力を持ち、生半可にはダメージを与えられない。まずは周辺の雑魚を片付けた後、高火力のカイエンとウツホを中心に攻める。HP50%以下になると殻に篭り回復を始めてしまうが、セーガに戦闘させると「壁抜けの鍬」で防御状態を解いてくれる。

「なんと……よもや、余の甲が人間に割られるとは……楽しきかな。また、何処かで相まみえん」
力尽きた玄武は、徐々に姿が薄れ、最後には消えていった。
だが、止めを刺したはずなのに、玄武の口ぶりは、また会うことを示唆していた。
「どういうこと?倒したのに、何でまた会おうなんて?」
「地獄で会おうって意味じゃない?」
「ああ、地獄か。地獄はいいね。でも冥路の騎士には会いたくない」

 

「……察するに、玄武殿も死者の軍勢の一味に過ぎなかった、ということではござらぬか?」
「恐らくはな。そして、黒幕の手にかかれば、今倒した玄武を復活させることも可能なんだろう」
暢気な炎蛇将と水蛇将は無視して、カイエンと妹紅が冷静に分析していた。
「だけど……玄武っていやあ、よくは知らないけど凄い奴なんだよね?そんなのを部下にしてる奴って……」
「……玄武は四神、または四聖獣の一体です。それが人を襲うだけでも、よっぽどの異常事態です」
「……こりゃ、早く帰って報告した方がいいかもね。四神ってんなら、多分きっと、他の三体とも会うことになるだろうしさ」

おやつ帰りのお姫様

玄武の件を報告するために永遠亭まで戻ってきた一同。
報告を聞いた永淋は顔をしかめる。
「四神の玄武……?どうして、そんなことが……」

 

「四神の一体が死者の軍勢の一味だったなら、他の四神も敵方だと考えるのが自然よね」
そこに、別の声。
だが、聞き覚えはあった。町ですれ違った、あの……。

 

「ですが、姫。四神ともあろうものが、何故人間に敵対する必要があるのです?」
「それを考えるのが、『ぶれえん』の役目でしょ?」
姫……部屋には姿を現さないが、これは姫の声なのか。
「……分かりました。以前から姫が言っていたように、死者の軍勢に裂く兵力を増員しましょう」
「今回の件は、ご苦労でした。貴方たちの活躍のおかげで、頑固な従者が折れてくれました」
「姫……」

 

「四神か……ここは、その道に詳しい人に聞いてみるのが一番だと思うわ」
姿を見せない姫は、しかし積極的に提案した。
「……もしかして、『彼女』ですか?」
「私が知る限り、最後にして最高の退魔師だもの」
「ですが、彼女は…………いえ、わかりました。使者を送りましょう」

 

「……と、言うわけです。この国は、少し騒がしくなるでしょう。アトルガンの使者たちよ、面倒事に巻き込まれる前に、国に帰った方がいいわ」
「もう巻き込まれてる気がするけど……どちらにせよ、他国の事情に口出しする気はありません。これにて失礼させていただきます」

 

「何だか、きな臭くなってきたね。聖皇さまはなんて言うかな」
永遠亭を後にしたヤマメが、そんなことを言い出した。
「陛下のことだから、きっとヤマメが思ってる通りのことを言うでしょうね」
「……だろうなぁ。ま、ひとまずはおさらばってわけだ。元気でね」

 

将軍たちとも分れ、元通りの四人組が残った。
「永淋は何て?」
「何も言ってませんでしたよ」
妹紅はセーガの返事を聞くと、早速旅支度を始めた。
「何も言ってないってことは、好きにしろってことだ」
これからどうする気なんです?
「あの山が見えるか?蓬莱山って言ってな。ウチの国の陛下の御尊名でもあらせられる聖なる山ってわけだ。その頂きに、この国の守護神……霊獣・鳳凰がいる。私は、鳳凰に会おうと思ってる」
鳳凰に?
「鳳凰は四神の上の位を持つ。だから、何か知ってるんじゃないかとな」
ほむ……。セーガは?
「登山は好きですが、今回は遠慮しておきましょう。もう少し有益な情報が集まるまで、死者の軍勢を相手にしています」
……さて、俺はどうするかな……。