イベント/死の向こう側

Last-modified: 2012-01-14 (土) 13:16:51

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


死の向こう側

虹色の獣

生きていた。
……という言い方は正しくない。
間違いなく、あの場で自分たちは『死んだ』のだ。あの寒い感覚は……二度と味わいたくない。

 

「死んだ、という表現は少し違う。正しくは『命の終わりを迎えた』だね」
目の前の小さな獣は、そう言った。
「カーバンクル、でしたか?『死んだ』のと『命の終わり』と、どう違うのでしょう?」
サクヤが尤もな疑問を投げかけた。
「全然違うよ。『死』とは肉体の破滅、『命の終わり』とは魂の破滅という意味なんだ。不死とは肉体的に不滅であること。でも魂が不滅というわけではない。だから、例え不死であろうとも命の終わりは避けられない。分かるかな?」
「よーく分かった、と言っておくよ。長話は嫌いだから」
「仕方が無いなぁ……本当に不死の吸血鬼なの?」
「不死だけど、まだ長生きはしてないんでねぇ」

 

主人公たちは、不気味な雰囲気の異世界(デュナミス、というらしい)にいた。不気味とはいっても、自分たちが殺された、あの紅い世界よりは余程マシだったが……。
一同をこのデュナミスへ運んできたのは霊獣「ディアボロス」。そして、一同の前に現れたこの獣もまた、霊獣のひとつ、カーバンクルであった。

 

「……で、だ。疑問は山ほどあるが……順番に整理したい」
ひとまずは落ち着き払って、ギルガメッシュが口を開く。
「まず、あいつらは何なんだ?変な顔だわ、空を歩くわ、瞬間移動するわ。おまけに剣で斬られると、体じゃなく魂が傷つくなんてよ。余だってあんな剣はいらん」
苛立った様子で(これでも大分落ち着いた。目覚めた当初は大暴れだった)言った。確かに、あんな訳の分からないままに殺されて、納得できるはずもない。
「そうだね…どこから話せばいいのか分からないけど……」

 

「名は【ルルサス】。遙かな昔……【真世界】の扉を開こうとして、かつての民や霊獣たちに倒された男。その妄執が生んだ、彼に忠実な戦士たちだよ」

ルルサス

真世界。
世界を創った原初の神々が眠っている……とされる世界。
……と、パチュリーが説明してくれた。
「ルルサスは、真世界の扉を開けば救いが得られると信じていた。だけど、真世界の扉を開くっていうのは、多分に今の世界に負担を与える行為だと言うことを霊獣たちは知っていた。ルルサスを止めるため、霊獣たちは人間と共に、彼と彼に心酔していた者たちとの戦争を始めた。結果、ルルサスは彼の信者もろとも封印された。今の万魔殿……パンデモニウムにね」

 

パンデモニウム……じゃあやっぱり、あの紅い世界は……。
「キミたちは、ルルサスに狙われたんだ」

 

「それよ!次の疑問」
バッと霊夢が手を挙げた。多分、挙げる必要は無かった。
「どうして、私たちがその、ルルサスとかいう奴に狙われなきゃいけないのよ?」
それもまた気になっていた事だ。それに、声の事も。
「【救世主】……って呼ばれなかった?」
「呼ばれた呼ばれた」
「それが、ルルサスの目的と深い関係があるんだ」
それは、いったい?
「【救世主】……正確には【アギト】と呼ぶのだけど。それは、ルルサスが真世界に至るための鍵になるんだ」

 
 
 

「賢者は語る……」

 

ふと、アリスが思い出したように呟いた。
それにパチュリーが続ける。

 

「全てに於いて意味があり」

 

「全てに於いて忌みが明ける」

 

「選択せよ。理か、王なる力か」

 

「我はなろう、アギトへと……」

 

「鐘を鳴らそう。世界を震わせ伝えよう」

 

「9と9が9を迎えし時、識なる底、脈動せし……」

 

「そして始まりの封が切れし時、雷のごとき声音響かん」

 

「「我ら来たれり」」

 
 
 

「……パチュリー、今のは?」
「ウィンダスに居た頃に読んだ……【無名の書】って本の一説」
「そして、現在までに存在するあらゆる書物の中で最も古い、【アギト】という単語が登場する本」
「アギトとは、世界に救いをもたらす偉大な人物のことだ……と、論じられていた」
「その後の書物では伝説的・英雄的人物……つまり、人間だとされている場合が多いわ」
「……恐らくは、そのルルサスっていうのが生きていた時代では、ね。貴方たち、アギトなんて単語聞かないでしょう?そういうことよ」
二人の魔法使いは、このように語った。
「……伝説は伝説でしかなかった、ということか」
パチュリーとの付き合いが長いためか、フリオニールには彼女の言わんとしていることが理解できたようだ。

 

「アギトは現れなかった……実在しなかった。そういうことなんだな?」
「そう……キミたちの考える通り、アギトなんて実在しなかった」
「だのに、ルルサスはアギトの実在を信じている……ってわけね」
「声を聞いたのが全員人間だった点も頷けるな」
「しかも、世界を救うという記述が、『真世界の扉を開ける』という意味だと、勝手に思い込んでる訳なんですよね?」
「それは、何と申せば良いのでござろうか……」
「バカだな」
「他人に迷惑かけるタイプの愛されない馬鹿ですね」
散々な言われようだった。まあ、自分たちを殺した相手なのだ、言って気が済むならいくらでも言わせればいいだろう。
……絶対、言うだけでは済まないのだろうが。

託された火種

「それで……みんな、これが一番聞きたい事だと思うんだけど……」
ルルサスはひとまず置いといて、ユメミが三つめの疑問をぶつける。
その内容は、ユメミが言った通り、みんなが何より気になっていたことだった。

 
 
 

「何で私たち生きてる……いや、『生き返った』の?」

 
 
 

そうだ。
本当は、一番にこの事を聞いておくべきだったのだ。ひょっとしたら生き返る間に改造人間にされてるかもしれないし。
あの時の冷たい感覚は、(当たり前だが)一度も味わったことのないものだった。決して嘘だとか幻などではなかった。

 

「それは、ボクらの仲間のお陰だよ」
仲間……カーバンクル……霊獣の?

 

「鳳凰……」
ぼそっとゲッショーが呟き、それを聞いた途端、弾かれたようにフリオニールが立ち上がった。
「そうか、フェニックス!再生を司る霊獣なら!」
呼応するように、霊夢が続ける。
「再生の鳥フェニックス……それなら、魂の修復ができてもおかしくはない、か……」
「カーバンクル、ディアボロス、そしてフェニックス……霊獣がこんなにも助けてくれるなんてね」
「それだけ敵は強大ということでござるな」

 

「真世界への扉が開かれれば、今の世界は壊滅的な打撃を受けてしまう。なんとしても、ルルサスが万魔殿からこちら側の世界に出現できるようになる前に、彼らを封印しなくちゃいけないんだ」
「本当にそのルルサスとか言うやつらを封印すれば世界は助かるんでうsね!?」
「そうだ。だから……」
カーバンクルの必死な依頼に、ブロントさんは、

 
 
 

「だが断る」

 
 
 

「えっ!?」
ぶ、ブロントさん?
「封印なんてしゃらくせぇ!バラバラに引き裂いて病院で栄養食を食べる羽目にすれば万事解決でしょう?」
「封印しようっていうなら協力しない。でも、完璧に、跡形も無く消滅させようってんなら、喜んで手伝うよ」
「き、キミたち……」
さすがのカーバンクルも、このあまりにもな強気には呆気にとられたようだった。
「わ、分かった。じゃあ……」

 

「ボクと協力して、ルルサスをやっつけてよ!」