イベント/毛玉の王

Last-modified: 2014-12-07 (日) 19:43:53

世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント

毛玉を統べる者

ある日、開拓仲間から話を聞いた。
森に出る小さな魔物、毛玉のことだ。
毛玉は大人しくて人間に危害を加えず、見た目の愛らしさから、街では彼らを模したお守りまで出回っている。
そんな空気みたいな存在の毛玉だが、実は森で起こっている異変を知っている可能性があるのだという。
ところが、毛玉は人語を介さない。
唯一の例外…毛玉の王を除いては(毛玉に王がいること自体、噂なのだが)。
だから最近の開拓者の間では、この毛玉の王に会う方法を探すのがブームになっているらしい。
そのためにはまず、毛玉の警戒を解く必要があるのだが…。

 

「待て、そこのお前」

 

情報収集をしていたら、突然誰かに呼び止められた。
その男は、金ピカの服装、過剰なアクセサリーを身に付けた、怪しすぎる見た目であった。

 

「私はマティウス。巷では皇帝などとも呼ばれているな」

 

十中八九嫌味で言われてるだけだ…。

 

「で、お前、名は?」

 

若干おののきながら、君は名乗った。

 

「ほう、やはり聞きなれぬ名だ。ここの生まれではあるまい」

 

君は頷き、中の国から来たことを伝えた。

 

「中の国の冒険者か。開拓のためにこの国にな。
 楽しんでいるか? ここへ来たのなら楽しまねば損というものだ。
 人生は長く退屈なものなのだから、楽しめる時には思い切り楽しむことだ。
 最も、どんなに面白い娯楽だとて、過ぎれば飽きるものだがな。
 人生に大切なのは新鮮さだよ。
 それが若さを保たせてくれる。身体ではなく、心のな」

 

なんだ急に語ってきた>>皇帝

 

「ふん、いかんな。長生きするとどうしても長話が好きになる」

 

長生き…? 彼は若そうに見えたが。

 

「見ない顔を見つけたので、興味本位で話しかけたのだ。今言ったように、お前が新鮮な刺激を提供してくれるやもしれぬとな」

 

刺激ではないが、INT高そうなので聞くのだが毛玉について詳しかったりしないですかねぇ?

 

「毛玉? 王に会いたいのか?」

 

君は頷いた。

 

「昔話をしてやろう」

 

おいィ? なんでそこで昔話が始まるんですかねぇ?

 

「人の話は最後まで聞け。
 初代王のことは名前くらいは知っているだろう?」

 
 
 

「それは遥かな昔のことで、当然、当時のことは誰も覚えていない。
 だが、言い伝えだけは残っている。
 蛮勇の王は仲間と共に魔境へ分け入り、行く手を塞ぐ敵を打ち倒し従えていった。
 その時に最も激しく抵抗したのが、モンスターの王たちだ。
 そいつらは倒された後に初代王に忠誠を誓った。
 今では、七支公と呼ばれているな」

 
 
 

「王はこうして次々とモンスターを従えて、森の奥深くへ侵攻していった。
 だが、結局は王は開拓を諦めた。
 死の間際、『魔境には立ち入るなかれ』と遺言を残してな。
 これが『古の盟約』と呼ばれている」

 

マティウスが語る昔話を、君は熱心に聞いていた。
彼の語り口には、まるで実際にその場面を見てきたかのような迫力があった。

 

「今でも七支公はこの契約に縛られ、土地を守っている。いや、七支公だけではない。分かるか?」

 

…毛玉?

 

「そうだ。だから毛玉は人間が森に立ち入ることは良しとしない。
 奴らにとって王との誓いは絶対なのだ。
 それを覆せるのは初代王か……王の遺志を継ぐと認められた者くらいか」

 

王の遺志を継ぐ者…。

 

「かつては古の盟約を人間も守っていたものだがな。アドゥリンが王政だった頃はそうだった。
 初代王の願いは、奴が子孫に託した剣に刻まれている。
 代々のアドゥリン王は初代王の遺剣を民の前に掲げて、盟約を遵守すると誓っていたものだが…」

 

え、そうだったのか?

 

「意外か? まあ、今の状況を見ればそうも思うだろう。
 アドゥリンの歴史において、魔境に人間が足を踏み入れたのは過去2度だけだ」

 

2度? 過去ってことは今のは含めないで、ということ?

 

「最初は初代王の時代。2度目は、王の伝説が忘れられつつあった『大遠征』の時代だ。
 …ん? その時代の話は関係なかったな」

 

ないんかい!

 

「とにかく、代々のアドゥリン王は古の盟約を守っていた。
 だが時代が下った今、アドゥリン家は十二家の1つでしかない。
 現当主のミコは歴代のようにはしなかった。
 若い当主は遺剣を手放し、再び魔境の開拓を始めることを宣言した。
 そして、新しい開拓の時代が始まったというわけだ。
 これが4年前のことだ」

 

その、王の遺剣というのは、今はどこに?

 

「あれは、ミコの即位の時に、近しい人物が譲り受けた。
 お前ももう会っているのではないか?」

 
 

フトが持っていた剣だ!

 

「その通りだ。今ではあの小娘が持つ剣だけが、古の王の遺志を示すただ1つのものだと言えるだろうな」

 

「…大分話し込んでしまったな」

 

聴き疲れた…。
あれ? 毛玉の王に会うにはどうすればいいか、まだ聞いてないぞ?

 

「これだけ話せば、ヒントくらいにはなるだろう」

 

こんだけ話したんだから直接答え教えてくれてもいいのでは!?

 

「意味がない、それではな」

 

「PC、私ほどの歳になるとな…夢を見ない。
 だからこう考える。初代王は確かに初めは夢を追っていた。
 森の奥深くへと分け入り、遥か彼方まで到達しようとしていた」

 

それがどうしたと?

 

「今の冒険者と同じだということだ」

 

…初代王と同じように、いつか開拓を止めるということだろうか?

 

「さあな。今のは忘れてくれて良い」

 

そう言い残して、マティウスは立ち去った。
彼の話をまとめると、こうだ。

 

フトの剣を借りればいい。

 
 
 

…………たったこれだけの話をよくもあんなに長々と話せたな、あいつ!?

王の遺した七星剣

フトの従者から彼女の行き先を聞き出し、追う。

 

まだ開拓もまともに進んでいない洞窟の奥に、彼女はいた。
そっと近づこうとすると…。

 

「誰だ!?」

 

急に大声で怒鳴られた。
そのせいで、フトも自分も両方が驚いてしまったようだ。

 

「……おぬしか。驚いてしまったではないか。冒険者とは、皆おぬしのように気配を消すのが上手いのか?」

 

そんなことはないが…。

 

PCはフトをじっと見つめた。
PCはフトをじっと見つめた。
PCはフトをじっと見つめた。

 

「なんだ急に3回連続で見つめてきた>>PC
 …この剣がきになるのか?」

 

PCの視線に気づき、フトは腰の剣を手にとった。
それは、初代王の剣?

 

「む? 知っているのか?
 そうだ、初代王が遥かな昔、1000年程前に身に付けていたとされる宝剣だ。
 『七星剣』というのだが。
 …これが目的で、わざわざここまで追ってきたのか?
 やらんぞ?」

 

残念です。

 

その剣があれば毛玉の王に会えるかもしれない。

 

「何だと? 本当なのか?」

 

フトは七星剣を鞘から引き抜き、刀身を見つめた。
少し考えてから、顔を上げる。

 

「分かった。流石に七星剣を渡すことはできない。
 だから、我も共に行こう」

 

その申し出を二つ返事で引き受けた。

 

「毛玉のいる森なら、この洞窟を抜けた所だ。すぐに行こう」

これがkedamaのkingか

早速、洞窟を抜け森へ出ると、毛玉を探す。
そう珍しいモンスターでもないはずだが…。

 

キョロキョロと周りを見渡すフトの後ろから、静かに近付く巨大植物が、フトを締め付け高く持ち去ってしまった。

 

「ぬおおっ!? なんだこれは!?」

 

慌てて助け出そうとすると、複数の毛玉が現れ、邪魔をするように立ちはだかった。
蹴散らすこともできたが、それでは最初の目的とは真逆の結果になる…。

 

「お、落ち着け! 我らは戦いに来たのではない! まずは降ろしてくれ!」

 

暴れるフトの腰から、七星剣が零れ落ちた。
それは地上の毛玉の一体に当たり、毛玉は倒れた。

 

「…いい、止めろ」

 

その声を聞いた途端、巨大植物の締め付けが弱まった。

 

「え、ちょっと待って。解く前に降ろさないと…!?」

 

フトは葉に掴まろうとするが、ツルツル滑るだけで、抵抗虚しく地上へ落とされたが、倒れた毛玉がクッションとなって怪我はなかった。

 

「部下が迷惑を掛けた…。その剣はまさしく七星剣…」
「喋っているな…」

 

その毛玉は、他の毛玉より2回り程大きく、頭に王冠を載せていた。毛玉の王で間違いないだろう。

 

「ようこそ、人間。俺はこいつらを率いる立場にあるもの…キングとでも呼んでくれ」

 

そのまんまだ…。

 

「俺達は人間風の名前を持っていないんだ。すまんな」
「いや、そんなことで謝る必要はない」
「お前は…かつて共に戦ったあいつとどんな繋がりを持った個体なんだ?」
「我はフト。モノノベ家の現当主だ」
「…あいつの部下の子孫、ということか?」
「ああ」

 

キングの口調は、思っていたのと違って、ややワイルド、というかやさぐれた様子だった。

 

「あいつの遺志を継ぐ個体であるなら、尋ねたいことがある」
「尋ねたいこと?」
「どうしてお前たちは、森を傷つける? この森は世界樹ユグドラシルの恵みで栄えた森なのに…」

 

世界樹ユグドラシルだって?
なんだか凄そうだが、それは一体?

 

「ユグドラシルは、初代王がこの地に植えた神樹だ。遠い大陸から持ってきたらしいが」
「世界樹、か。そんなものがここに生えていたのか」

 
 

「俺たちはユグドラシルから生まれた、綿毛のような存在なんだ」

 

ユグドラシルってタンポポだったのか…!? っていうか、樹じゃなくて花だ!

 

「…人間にわかりやすい例えであって、ユグドラシルがタンポポだったわけじゃない。
 ともかく、そういうわけだから俺たちはユグドラシルの力の、ほんの幾ばくかだけ受け継いでいる」

 

キングは言った。
世界樹ユグドラシルがもたらす恵みの力は、魔を払い邪を退ける力。闇を封じて、この世の光を護る力だと。

 

「だが…遠い地のユグドラシルは既にこの世にはないみたいだ」

 

そうなのか? 枯れてしまったのだろうか。

 

「……遠いユグドラシルの片割れであるここのユグドラシルも、長年病気に苦しんで…」
「樹の病?」
「冥なる病と呼んでいる。地の底から湧き出る暗い力。
 明るい光と清き水を必要とする俺たちにとってそれは猛毒であり呪いだ。
 だから俺たちのユグドラシルは傷ついている」

 

キングの声のトーンは、諦めにも似ていた。

 

「だというのに、お前たち人間はますます森を傷つける!
 もうこれ以上俺たちを傷つけるな…森から立ち去ってくれ…」

 

…お前たちが森の異変について知っていると聞いたのだが。

 

「お前たちが七星剣に刻まれたあいつの心を尊重するというなら、今やこの森で唯一の清浄な泉へ行ってみろ。その思いが本当であれば…ユグドラシルが何かを伝えてくれるかもしれない…。
 だけど、期待はするな。俺たちはとっくの昔に、お前たちへの期待を失っているんだ…」

 

世界樹に何が起こったか

この森で唯一残った清い水源だという泉に近付くと、頭の中に直接映像が流れこんできた。
それは遠い北の地の映像…多種多様な生き物と自然、その中心に立つ、巨大な巨大な樹。

 

「これがユグドラシルなのか…?」
「そうだ…片割れのユグドラシル…」

 

その世界樹の根本に、蠢く獣人。
あの姿は、忘れもしない、オーク族だ。
そういえば、オーク帝国の本拠地は北の大地にあると聞いたことがある気がする。
では、この大陸は…?

 

考えている間に、オークの軍勢がユグドラシルに火を付ける。
たちまち世界樹は火柱と化し、己もろとも周辺を焼け野原へと変えてしまった。

 

「もう1つの世界樹は、オークに焼かれたのだな」
「片割れが焼かれたことで、こっちのユグドラシルにも影響が出た」

 

場面は移り変わり、今度は別の大樹が見えた。だが、こちらは既に枯れかかっている。

 

「これが、この大陸の世界樹…? 今にも枯れ落ちそうだぞ…」
「片割れのユグドラシルが焼かれた時、力を振り絞ってその全てを根へと変え、張り巡らせた。
 文字通り、この大陸を支えることにしたんだ」

 

映像が終わり、現実へと引き戻される。

 

「今見たのが過去に起こったこと。そして、俺たちのユグドラシルも、もうすぐ力尽きる」
「もしも世界樹が完全に枯れたら?」
「俺たちだけじゃない、草も木も虫も獣も、生きてはいられない。
 この魔境は本来、全ての生き物にとって優しい土地じゃないからな。
 今森に起きている異変っていうのは、そういうことだ」

 

世界樹を助けるにはどうすればいい?

 

「それが分かれば既に実行している。俺たちも、ユグドラシルとの絆が消えつつある。
 もし、その問いに答えられる個体がいるとしたら……女王をおいては他にいないだろう」

 

女王…? 毛玉の女王? どこにいるんだ?
そう訊いたが、キングは押し黙ってしまう。
更に踵を返して、立ち去ろうとする。
最後に一言だけ残して。

 

「女王に……訊いてくれ……」