イベント/特命全権大使

Last-modified: 2011-11-07 (月) 17:45:01

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


特命全権大使

来る悪魔

「あっ……いいところに」
ブーメラン・センチネルにて、社長の秘書の真似事をやらされている鈴仙が声を掛けてきた。
「なんでもね、ウィンダスから特命全権大使とかいうのが来るらしいから、貴方にも知らせておこうと思ってね」
特命全権大使……って何なんですかねぇ?
「知らないけど……言葉の響きからして偉い人には違いないんだわ」
ほむ……厄介ごとの予感がするな。見に行ってみようか。

 
 
 

「オーホホホホ!」

 

厄介ごとというか、大災害の予感だった。
眼鏡を掛けた、どっかで見たようなタルタルとその傍らには人形を連れたヒュームが立つ。
「着きましたね、シャントっ……じゃなくて、カラババ大使。出迎えのようですよ?」
「あら、アリス。仮にもわたくし、一国の特命全権大使として来ておりますのよ?出迎えは当たり前と言えば、当たり前ですことね」
二人の前には、メネジン、風蛇将パルスィ、土蛇将ユウギ、不滅隊の女性隊員アミナフと、層々たるメンバーが集っていた。

「ようこそ、アトルガンへ……。聖皇陛下が皇宮でお待ちです。カラババさま、こちらへ」
口を開いたのは、アミナフ。
「随分と物々しい警備ですことね?わたくしの警護のためかしら?それともまさか、わたくしを警戒なさってのことですかしらね?」
「左様なことは決して……」
「……控えよ」
それこそ随分な物言いのカラババに、無謀にもメネジンが前に出る。
「あら、今なにか、おっしゃりまして?」
「……控えよ、と述べたまで。我が国には我が国の作法がある。異邦人ども、口を慎むがよい。西の国ほど民度が低いと聞いたことがあるが、まことのようだな」
(これが、アトルガンのオートマトン……)
アリスがまじまじとメネジンを見つめて、言葉を紡いだ。
「私はアリス。これでもウィンダスじゃ名の知れた人形師でね……貴方の階級を教えてもらえるかしら?」
「……なんと申した?」
「ふふ……2かな?3かしら?それともジャックかな?」
「……そなた、わらわを何と心得……」
そこまで言って、突然メネジンの動きが止まってしまった。
「あら……故障?」

 
 

一方、こちら皇宮。
アヴゼンを通じてメネジンの様子をコイシが見ていた。
「わらわを!?……どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう?このままじゃ、また宰相に怒られちゃう……」
「……ドウシタ?イツモ、いッテルダロウ?なイタッテ……」
「何も、解決しない……?えぇ、そうね。私がなんとかしなきゃ。だって、メネジンが聖皇さまの『真似事』をしてしまったんだもの。アヴゼン、おねがい。なんとかメネジンを起こしてあげてちょうだい」

 
 

場面は戻る。
「オホホホ!随分と興味深い趣向ですこと。おたくのカーディアンもどきには、よくあることですかしら?」
「いえ、そのようなことは……」
「ふぅん。オートマトン、期待してたんだけどね。やっぱり、ウチのカーディアンの方が上かな?」
「……無礼者!」
ようやく、メネジンが再起動した。
「……これまた突然にどうかしたわ。クレイジーな木偶ね」
「……もうよい、下がれ」
「これ以上どこへ下がれって?海に落ちちゃうわ」

 
 

再び皇宮。
「んもうっ!でも、なんとか話は逸らせたかしら……」
「ソンナことヨリモムカッぱらガ、タッタゾ。アノヨウなヒレイ、ゆるしてハおけヌゾ、こいしヨ」
「……うん、そうかも。でも、アヴゼン。あのカラババとやらとアリスって人は、宰相の大切なお客様なのよ?」
「……ツンツーン!」
「もうっ」
愉快に会話するコイシとアヴゼンを見ていたのは、不滅隊のリシュフィーだけだ。彼は二人が何をやっているかわかっていながら、咎めはしなかった。
「ソレデ、よイノカ?アノようニばかニサレテ、こいしハくやシクハナイノカ?」
「それは……でも、どうするの?」
「イイコト、おもイツイテルゾ♪」

 
 

再び場面は戻る。
またしてもメネジンは動きを止めていた。
「やーれやれ、またなの?アトルガンの人形は、ちゃんとメンテナンスしてるの?」
「失礼しました……カラババさま、こちらへ……」
そうして一同が移動しようとした、その時。
メネジンが再度動き出し、今度は戦闘態勢をとった。
「おっと!」
メネジンの攻撃を、アリスの人形が受け止めた。
「(ちょっと口が過ぎたかしら?何だか悪者みたいね。でも……)いいわ、正当防衛よ。アトルガンのオートマトンの実力、見せてもらうわ!」

 

そして、勝負は一瞬だった。
「……あら?この余興は、もう終わりですの?」
アリスの方がメネジンより数段上だった。メネジンは地面に伸び、パルスィとユウギが介抱していた。
「恐れ入ります……聖皇さまがお待ちですので、皇宮へ……」
「さて、それはどうですかしらね?」
「……は?」
すると、カラババはパルスィを見て問うた。
「わたくし、何か甘いものが頂きたいですわ。案内してくださる?あ、お店で結構ですことよ。というわけで、わたくし寄り道してから皇宮へ参りますわ」
「それは……困ります」
「……あらあらまぁまぁ。一国の大使であるわたくしに人形をけしかけるなど、本来なら国際問題に発展しかねぬ事態。その深~い心の傷を甘いもので癒して、忘れようというのに何か不都合でもございますかしら?」
「疲れたときにはスィーツね」
既にスィーツのことで頭一杯の様子の大使を見て、アリスが調子を合わせた。アミナフが溜息をつきたい気持ちを必死で抑えていた。
「……承知しました」

 
 

「……こいしヨ……どうして……ドウシテアノときに……ナマ・イッテンジャ・ナイヨ!……ト、めねじんハ、いエナカッタノダ……?」
「ごめんね……。でも、アヴゼン。私、いよいよ計画を実行しようと思うの」
「オオ、ついニカ!ソレデ、ソレデ?どこヘ、どこヘ?」
二人の会話を聞いているのは、リシュフィーだけ。彼は決して口を挟まなかった。
「ふわぁ~あ!なんだか疲れちゃったな~(チラッ)。そろそろ寝屋に行こう~っと(チラッチラッ)」
リシュフィーは大きく溜息をついたが、それでも咎めなかった。

同期の桜

アルザビに構える茶屋にて。
「おお、主人公殿ではござらぬか!」
そこにはゲッショー殿が胡坐で茶の湯を楽しんでいた。……冷静に考えると、ヤグードが茶を飲んでいるのは結構不思議な光景だったが、気にしないでおいた。
「拙者、茶の湯を楽しみながら天下の動静について考えていたところにござる。御主も一服されてはいかがでござるか?」
進められたので、素直に席に座ることにした。
「……で、いかがでござる?最近、仕事の方は?拙者、別件して忙殺されしばらく社に顔を出しておらぬのでござる……なんぞ近況を聞かせてはもらえまいか?」

 

「……左様でござったか。拙者、御主にかける言葉が見つからぬ……。のう、主人公殿。御主と拙者は同期の桜ぞ。これからも、じっこんにお頼み申す」
いやぁ、まだまだこんなものじゃないのだよゲッショー殿……。
「あいや、待たれよ!恐ろしい話はもうたくさん。御主に比ぶれば拙者が社長殿より与えられた試練などものの数に入らぬでござれば。拙者、主人公殿に、真の忍耐とは何か教えられ申した。立ち止まって己の境遇を嘆くよりも、立ち上がって己の指名を遂げよ、と」
HAHAHA……。

 

「……拙者らが例の幽霊船と出くわしたのを覚えてござろうか?実は拙者、今一度彼の地に赴いたのでござるが、生憎幽霊船を見つけることは出来なかったのでござる。されど、あの船と痛風らがまことに数百年の時を経て黄泉より蘇った者であるとすれば……やんごとなき大いなる意志が働いているのではござるまいか?彼らといい、彼の地に出没する亡者の軍団といい……今尚、小競り合い続く各地といい……世界には、常に死が溢れているでござる。拙者は知りたいのでござるよ。ただ、その理由を……」
ゲッショー殿……。
「拙者、これから『とろうる』の都『まむうく』に参ろうと考えているでござる。何故だか分り申すか?件の幽霊船、ぶらっくじゃっく号が出入りしているようなのでござる。幽霊船と、とろうる。一見なんの縁もなき両者を結びつけているもの……その答え、彼の地にあるに相違ござらぬ」
なるほど……。
「それから、其れは過日のことでござるが……拙者、運悪く『まむうじゃ』に捕まり、『まむうく』に連行されてしまったのでござる。其処は、鬱蒼と茂る木々の奥に築かれた都。拙者の故郷にも似た紅葉の美しき土地でござった。もし、懐中を調べられ社の階級章でも見つかったときは命はあるまいと腹を括り、辞世の句をしたためようかとも思ったのでござるが……まむうじゃ四天王のひとり、賢哲王のもらあじゃ殿は、拙者の手足を見るや……『古き鱗の友よ。汝は我らが同胞なり』と、拙者を解放したばかりか、自宅に招いてくださったのでござる。腹を割って話してみれば、もらあじゃ殿は、拙者同様に国を憂えるまことにできた御方にござった。夜を徹して、様々なことを語り合ったのでござるが……中でも興味深かったのは魔笛についての見解でござった。もらあじゃ殿は、皇国の喧伝している魔笛の役割は偽りであり、恐らくは軍事的な利用法が別にあると睨んでいたのでござる。それが確立せし時、恐ろしき災厄がまむうくにもたらされるは必定……ゆえに単に魔笛のもたらす益のためならず、皇国の目的抑止のためにもまむうじゃは魔笛を手にせねばならぬ、と。その根拠についてまではさすがに言葉をにごらせられたが、まむうじゃの大儀、拙者にも痛いほど伝わり申した」
ゲッショー殿の話を聞き、主人公は考えていた。
「のう、主人公殿。魔笛とは……そして皇国のまことの目的とは何でござろう。我ら傭兵はこのまま皇国の走狗のままでよいのでござろうか……。……ぬ!殺気!?」
ゲッショー殿が次の言葉を紡ぐ間も無く、彼の身体に古代魔法バーストの電流が流れた。ゲッショーは崩れ落ちながらも何とか微塵がくれして消え去った。

 

「オーホホホホ!町のド真ん中でヤグードが茶をすすっていたように見えましたけれど……わたくしの気のせいでしたようね?」
(せめて話くらい聞いておくべきだったんじゃないかしら……)
カラババとアリスだった。宣言通り、町の甘いものを求めてきたのだ。
「アリス、お願いいたしますわ」
「分かってますよ。つっかれったとっきにっはスィーツでーっす?」
アリスもシャントっ……カラババのお供をして疲れているのか、奇妙は鼻歌を歌いながら買出しに出かけていった。
「そこの貴方」
は、hai!何か用かな?
「わたくし、この辺りを見て周りたいんですのよ。アトルガンのからくり人形に使われている素材に興味がありまして。そこで、貴方には現地ガイドを頼みたいのですわ」
選択肢……無いんだろうなぁ。

嗜む淑女

「オーホホホホ!豊かな薫り。このコーヒーとやらは、ほわ~と疲れが癒されますわね」
「カラババ様のために特別に最高級豆を挽かせましたよっと」
「そのくらいは当然ですわ。それにしても、このシュトラッチとやらも……んまあ!甘くて柔らかくて……口でとろけて……オホホホホホホ!」
茶屋では特命全権大使さまが甘味を嗜んでいた。

 

そんな光景を見る影が二つ。
皇宮から抜け出してきたコイシとアヴゼンだ。
「コウシテ、まぢかニめニスルト、アノときノくやシサガ、ふつふつヨわイテクル……」
「そんなことより!私の前で……私よりも先に……あんなスィーツを食べてるなんて……私だって……この国で生まれた私だって食べたこと無いのに……許せない!!私、いま決めた!一生、アイツだけは許さないことにするわ」
「ソウダナ、それニツイテハおおイニ、さんせいスルゾ」
メネジンは今頃泣いてるかもしれない。
「……ン?あれハ……。こいしヨ、みぎぜんぽう、おくヲみヨ!」
「……?あ、臼姫のとこの傭兵さん!悪い魔法の国の大使と臼姫の傭兵……どういうことなの?」
気にはなるが、コイシたちの位置からでは何を話しているか聞こえなかった。
「マタ、アイツニあエテ、うれシイナ!」
「もーう!いつまでも見てないの!」
コイシはアヴゼンを強引に連れ出した。
「聞いて、アヴゼン。私ね、もっと近づいてみようと思うの」
「んー?こいしヨ、バレズニ、せっきんデキルノカ?」
「ふふん!かくれんぼは得意中の得意よ!」

 

「……ですから、わたくしの計算では神経伝達中枢繊維に弱い電気を流すことで、カーディアンの反応速度は、従来の3倍まで高めることが出来るハズですの。そのためには、オルドゥームの異物にときどき残っているという雷の絶縁体の分析が早道ですのよ」
(ふーん、オルドゥームに興味があるんだぁ……)
「まぁ、あの辺りには宝狙いの獣人も出没するようですから、か弱い文官には少々恐ろしくはありますけども」
(あいつ……脅してこき使おうだなんて……なんて、ひどいの!主人公をこき使っていいのは、私だけなのよ。……私だけだもん!)
かくして、少女は一足先に旅立って行ったことを、主人公は知る由もない。

古き波紋

「サクサクサクサク……!」
「すてき、すてきー」
「サクサクサクサク……!」
「がーんばってー♪」
遺跡にて、アヴゼンが物凄い勢いで地面を掘っていた。傍らにはコイシの姿もある。
「サクサクサクサク……!」
「どーんどん、掘ってー♪ごー、ごー♪」
「サクサクサクサク……ン?」
アヴゼンが地面から何かを引っ張り出した。
「こいしヨ、みつケタゾ!」
「やったね!」
掘り出した物体には、紋様が刻まれていた。
「コノもんよう、ドコカデみたよーな?」
「私も覚えがあるよーな?……ああ、魔笛に似てるかな?でも、そんなわけないか」

 

立ち去ろうとしたコイシとアヴゼンは、道中で運悪くモンスターに絡まれてしまった。
それを助けたのは、他ならない特命全権大使カラババだった。
「はじめまして。わたくし、特命全権大使のカラババと申します」
「…………」
コイシは礼も言わず、ただカラババとアリスを睨み付ける。
四人の間で板ばさみになっている傭兵の心情など気にもしない。
「あら、どうしました?初めて会うのに、わたくし何か気に障るようなことでも?」
「メネジンを……メネジンにしたことを忘れたとは言わせないわ!」
「メネジン?もしかして、あのオートマトンのこと?」
「めねじんハ、どもだちダ!」
「友達?(……オートマトンには、友達という概念が……感情が存在する?)」
アリスが思考に耽ると、アヴゼンがファイアの魔法を放つ。それはメネジンの時と同様、アリスの身代わり人形に阻まれた。
「今度は魔道戦タイプってわけね。なら……これは耐えられる!?」
アリスの掌で生じた小さな火球が投げ込まれ、凄まじい勢いで爆発する。

 

煙が消えたときには、カラババとアリスしか立っていなかった。
「アリス、少々やりすぎではなくて?」
「あ、あれ?(博士……じゃなかった大使と一緒にいたせいで加減を忘れたのかも)」
しかも、目標だったアヴゼンどころか、コイシ、あげく現地ガイド(主人公)まで吹き飛ばして気絶させてしまっていた。
「あちゃー……謝っても許してくれなさそうね」
大使のお供を引き受けてからずっと調子を狂わせられっぱなしのアリスが頭を抱えるのも気にせず、カラババは地面で光ったモノを見た。
「多少の魔力を感じますわね……コレは、誰の持ち物かしら?」
カラババとアリス以外は全員気絶している。もちろん、答える者はない。
「ふむ。誰のものでもないなら、わたくしがいただいておきましょう」
「あ……置いてっちゃうんですか、この人たち?」
「さーて、早く帰って研究ですわ」
アリスの呼びかけにも答えず、カラババはさっさと行ってしまった。
「はぁ……私の悪評が広まるばかりね……」
半分は自分のせいなのを棚に上げてアリスは溜息を吐き、大使の後を追った。

 
 

大使が去った後、機能停止したままのアヴゼンが奇妙な格好で宙に浮いた。
「こいつだwwwww間違いねぇなwwwwwww」
そのタルタルは特徴的に草を生やし、アヴゼンを連れて移動魔法を唱え去っていった。