イベント/異変

Last-modified: 2011-11-03 (木) 14:35:04

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


異変

雷光の刃は誰に向く?

最近、ライトニング隊長の様子がおかしい。
フリオニールからそんな話を聞いたのは、紅魔城からの敗走から2週間後のことだった。
件の敗走の他、上層部に連絡も無く勝手に民間人(もちろん主人公のこと)を部隊に編入したのも、やっぱり問題があったらしく、ミスリル銃士隊の面々はしばらく懲戒のために別々の部隊に配属されていたのだ。
それも終わりようやく戻ってこれた矢先、再開を惜しむ間も無くフリオニールが切り出した。この場にいるのは主人公とフリオニールと、あとはパチュリーだけだった。
「隊長よりもザイドよ。聞いた?懲戒先の部隊を脱走したらしいわ」
「そ、そうなのか?どうしてそんなことを……」
重く暗い空気に包まれる中、今度は3りに、大統領からの呼び出しがあった。

 

ミスリル銃士隊は、元々大統領直属の部隊だ。だからフリオニールやパチュリーも大統領とは直接の面識があるのだが、言うまでも無く始めての経験な主人公は気が気でならない。
「来たか」
迎える、マイケル・ウィルソン大統領。そこには既にライトニングの姿もあった。
ただ、その背姿を見て、先ほどのフリオニールの言葉を思い出し、二度身が縮まる思いだった。
「君たちを呼んだのは他でもない、ザイドに関してだ」
やっぱり……。パチュリーがそう小声で呟く。
「彼が懲戒処分中に脱走したのは知っているな?ザイドを捜索し捕らえてもらいたい」
「あの、プレジデント!」
なんでフリオニールは大統領じゃなくてわざわざプレジデントなんて呼ぶんだ……という突っ込みは心の中だけにしまっておいた。
「ザイドを捕まえたら……あいつは、どうなるんですか?」
「場合にもよるが……しばらくは頭を冷やしてもらうことになるだろうな」
「……折檻、ですか」
再度重く暗い空気が周囲を包み込む。大統領が口を開いた。
「私はこれから会議があるのでな、もう行く。君たちの健闘を祈っている」
そう励ますように労って、大統領が部屋から出て行こうとした、その時。

 

ライトニングが剣を抜き放ち、大統領に襲い掛かった。

 

あまりに突然の事で咄嗟に反応できなかった。
反応できたのは、当の大統領。身構えて、一部の隙も見られない。だが、彼の体にライトニングの刃は届かなかった。

 

フリオニールが身を挺して大統領の盾になったからだ。

 

「ぐっ……」
「フリオニール!」
呻くフリオニールにパチュリーが駆け寄る。幸運なことに、彼女は回復魔法も心得ていた。すぐに治療を始める。
「ライトニング!何の真似だ!?」
大統領の呼びかけにもライトニングは応えない。
ただ意思の宿らぬ瞳で、とても正気の沙汰とは思えなかった。
彼女はもう一度剣を振るって大統領を退けると、部屋から立ち去っていくのだった。

揺らぐ気持ち

ライトニングが豹変して大統領を襲撃し、フリオニールが負傷した。
その突然すぎる事件は瞬く間に大工房に広まってしまった。こればかりは不可抗力だろう。
パチュリーに治療されたフリオニールは医務室へ行くことも無く、ライトニングを追うことを望んだ。
「隊長には何か理由があるはずだ!でなければ、こんなことをするはずがない!」
興奮を抑えきれず声を張り上げる。隣のパチュリーがうるさそうに耳を押さえた。
「そんなことは分かってるわよ。でも、今は状況が混乱してる。まずは落ち着きましょう」
「むぅ……わ、分かった」
言われて、ようやくフリオニールはクールダウンした。

 

パチュリーの言う通り、状況は混乱している。
ザイドの脱走と、ライトニングの豹変。
二人ともミスリル銃士隊のメンバー。つまり、それだけの強い信頼を受けていた身だ。
今回の事件は、あまりにも唐突過ぎる。
「一応、口止めはしてあるけど……あの時間帯に大工房にいた全員を把握するのは無理。国中に知れ渡るのも時間の問題だと思うよ……」
大工房で修行中の技術者、にとりが普段の明るいものとは違う、落ち込んだ様子で話してくれた。
純粋な彼女にとって、バストゥークではヒーローのような存在であるミスリル銃士隊の異変がショックなのだろう、無理も無い。
大統領は平然を装って会議に出席したが、本当は驚いているはずだ。誰よりもバストゥークとその住民を愛している彼なのだから。

 

「……やっぱりライトニング隊長を探すしか無いんじゃないか?今ならまだそんなに遠くには行っていないかも知れないし……」
「……そうね、ザイドを探しましょう」
えっ?と、主人公とフリオニールがほぼ同時にきょとんと声を出す。
「た、確かにザイドのことも気になるけど、今は隊長が……」
「隊長とザイドの件、短い間で大きな事件が起きすぎてると思う。偶然じゃないって可能性は無いかしら?」
「……隊長の豹変とザイドの失踪に、何らかの関連があるってことか?」
ほとんど勘みたいなものだけどね、とパチュリーは付け足した。
「さっきも言ったけど、隊長のいくえは分からない。ザイドもだけど……でも、これって不幸中の幸いよ。私たちには二人を探す大義明文があるんだもの」
「なるほどな……分かった。任務として、ザイドを探そう。途中で隊長を見つけても、それは偶然、だよな?」
「そゆこと」
たくましいなぁ、と呟くにとりを取り残し、主人公含め三人はすぐさまバストゥークを発つのだった。