イベント/硬き寝床の内に宿るもの

Last-modified: 2011-11-17 (木) 19:26:48

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


硬き寝床の内に宿るもの

闇月敵襲

稗田邸を出た時には時刻は既に夜になっていた。暗闇の中を進みサーシャの元へと急ぐ。
幸いにも幻想郷から彼女が待つ泉から然程距離がないので迷うことなく彼女の元へと辿り着いた。

 

「お、来たか。その様子だと……もしやわかったのか?」
うむ、大体わかった。あとから阿未さんが謎掛けの答えを持ってくるから少し待つべきそうするべき。
「御阿礼の子が……?」
訝しげな表情を見せるサーシャ。

 

やがて主人公から少し遅れて、桐の箱を持った阿未がやってきた。
「お、おまたせしましたぁ!」
ベヒ……牛車は使わなかったのか?
「牛車に引いてもらうほど距離はありませんから」
それよりもと、桐の箱をサーシャへと差し出す。
「件の謎掛けの答えです。どうぞお納めください」

 

「これは……」
桐の箱に手を伸ばそうとしたその時。
「何者じゃ!」
その直前にサーシャが向こう側の闇目掛けて一喝した。
幼い少女の姿からは考えられない鋭い声に反応したかのように、夜闇の中からガサガサと音が鳴った。
やがて音がこちらに近づき、月明かりに照らされ遂に姿を現す。それは列を成したクゥダフの部隊だった。
あれは……カm…クゥダフ!? な、なんでこんなところに!?

 

「獣人の侵攻、それはこの幻想郷も例外ではありません。かつてサーシャ様が霧の湖を発たれたのも、彼らの手により湖を血で穢されてのこと!」
……だったらやる事は一つしかあるまい。
「微力ながら、私にも手伝わせてください。こんなこともあろうかと家から色々持ってきました!」
助かる!

 
  • 大規模戦闘
    勝利条件:敵の全滅
    敗北条件:主人公の戦闘不能or敵勢力が特定ポイント(阿未・サーシャの元)に辿り着く。
    備考:2ターンごとに阿未が主人公に対し傷薬・エーテル・月見うどん・ざるそばの中から一個ランダムに使用
     
    8体のクゥダフと戦闘。相手のレベルは大分低いがなにぶん多勢に無勢。更に戦闘不能以外に敗北条件がある。油断は禁物。
    ただし極力前線に立っていればクゥダフは主人公に狙いを定め、まず最優先に狙って行く。ナイトといった耐久力に優れるジョブで攻撃をいなしつつ、正確に迎撃しよう。
 

主人公の一撃を受け、最後のクゥダフが地に伏した。……どうにかクゥダフの軍隊を抑えきることに成功したようだ。
やったか!?
「それは失敗ふらぐ……ああっ!」
阿未が悲痛な声を上げる。闇の中から更にクゥダフの群列が姿を現したのだ。
甲羅の群れの中には重厚な鎧を纏った将と思わしきクゥダフの姿も見える。

 

新手か!
「主人公さん、サーシャ様、ごめんなさい……私がここに留めたばかりに……」
言うな! どうやってでもいい、このぐらい覆して見せる! あんな連中に幻想郷を攻め入られてたまるか!
「主人公さん……」
と見得切って言ったはいいものの、先の戦いの疲れもある。できるなら、阿未達だけでも逃がしておきたいところだが……
主人公が覚悟を決める中……

 

「頭が高いわ、鈍亀共」
サーシャが動いた。

ヨルムンガンド

「主人公、御阿礼の子よ。謎掛けはお主たちの勝ちじゃ」

 

「え……」

 

「如何に絶望的な状況に果敢に立ち向かい、これを破る『不撓の魂』」

 

「それは鎧に非ず、されど鎧の如く硬く」

 

「それは鉄床(かなとこ)ではなく、強き意思を持つ者の内に宿り、安息を得るもの」

 

「意固地な帝龍ですらその考えを改めるほどに直向きな不動の心。それこそが謎解きの正解」

 

「先程の戦にてお主らの背からそれを見せてもろうた。ふふふ、まさかこの様なへ理屈の正答を身を以て答えようとは!
まさかそれを直接目の当たりにしようとは! 近頃の巷も捨てたものではないようじゃの!」
サーシャは主人公と阿未の間を通り、前に進む。

 

「ならば次はわらわが応える番じゃ。どれ……わらわが真の姿、とくと御覧じるがよい!」
そう言うが早いかサーシャの周りを包むかのように凄まじい冷気が集まり……弾けた。
弾けた冷気が晴れた途端、そこに少女の姿はなかった。

 

そこにいたのは蒼い真龍……。
月明かりを浴び、口内から冷気を吐きながら恐ろしい咆哮をあげる真龍ヨルムンガンドの姿だった。

 
 

自らの産毛がパリパリと凍りつくのを感じながら……主人公はその背を見ていた。
ヨルムンガンドが天に向けていた鼻先をクゥダフ目掛け突き付ける。
その先端に幾重の魔法陣が顕れたかと思うと、白い閃光が視界一面を覆い尽くした。主人公たちは瞼を閉じ、閃光から目を背ける。閃光に続いて体全身を貫く様な寒波が襲いかかる。
そして目を開き、アイスバーンと化した一面に屹立するクゥダフの氷像を目視して、主人公らは今の閃光と寒波の正体がヨルムンガンドが放ったブリザガの余波ということに気付いた。
ヨルムンガンドは背を向けるとその長い尾を振り回し、氷像を片端から薙ぎ払い、粉々に砕く。
アイスバーン地帯の向こうには先程のブリザガからのげられていたのか、数体のクゥダフが敗走する姿が見えた。

 

ヨルムンガンドが逆鱗を蓄えた喉を細かく震わせた。
そして後肢で地面を蹴ると翼を広げて飛翔。頭部を突きだし、目一杯開けたその口に途轍もない量の冷気が集う。

 

次の瞬間、絶対零度の爆風が大砲の様な勢いで吐き出され、逃げ惑うクゥダフ達を残さず吹き飛ばした。

 
 

一方的な掃討を前に唖然とする主人公と阿未の目の前にヨルムンガンドが降り立つ。
やがてその姿が空気に溶けるように消えたかと思うと、真龍が座した場所にサーシャが居た。

 

「さて、御阿礼の子よ」
「は、はい!」
「くるしゅうないのじゃ。そう固くせずとも好い……サンドリアのモリヤには美しい湖があると聞き、そこを安住の地にしようかと考えたが……お主らの不撓の魂に惚れた。お主らさえ良ければ幻想郷に再び居を移そうかと考えておるのじゃが……わらわが去った後、霧の湖はどうなってしもうた? 未だあのケダモノ達の血に穢れておるのじゃろうか?」

 

やや不安げなサーシャの質問に阿未は迷わずに答えた。
「いいえ。すべて元通りになりました。空気も、湖面も、そこに住まう生き物も。霧の湖はとても冷たく、透き通る様に澄んでいます。真龍様の御帰還には多くの民が驚くかと思いますが……八雲からは私から話してみます」
それを聞いたサーシャの顔がぱっと輝く。
「そうか! 既に元通りになったか! もう一度わらわの目に通してみたいのじゃ!」
「じゃがその前に……」
サーシャの視線が桐の箱に移った。

 

あ"
「あ!」

 

「これの中身を拝見していなかった。今一度あらためることとしよう」
い、いかん……アレの中には……!
「なにがでるかな♪ なにがでるかな♪」
制止しようにも時既に時間切れ。
箱の封はあっさりと解かれてしまった。

 

「む、これは……」
箱の中を見たサーシャは驚きの声を漏らす。
ヨロイ蟲ではないか!」

 

「も…申し訳ございません~~~!」
阿未は半泣きで謝罪し、主人公は次に起こるであろう逆鱗を想像し、思わず両の掌で顔を覆う。
しかし、サーシャのとった行動はそれとは全く異なるものだった。
新しい玩具を手にした子供の様な表情で箱の中に手を突っ込み、ヨロイ蟲を摘み取ると、掲げる様に眼前に引っ張り出したではないか。
「まさかヨロイ蟲とは。これは思わぬ馳走じゃ」
サーシャは黄色い脚と全身をモシャモシャとばたつかせ抵抗するヨロイ蟲を愛おしげに仰ぐと……
「では早速活きが良い内に頂こうかの

 

ちょっ、おまっ……!?
「さ、サーシャ様!?」

 
 
 
 
 
 

がぶりゅ

 
 

もっきゅもっきゅ

 
 

ゴックン!

 
 

さーしゃ.jpg

 
 

「ふふっ♪」
口元を舌で軽く舐めると、サーシャは満足そうに微笑んだ。

 

「さぁ、いざいかん我が古巣へ!」
ご機嫌なサーシャに若干、否、だいぶ引いたものの……
これが幻想郷に真龍が舞い戻った瞬間だった。

 

霧の湖にサーシャが出現するようになった。