イベント/究極触媒

Last-modified: 2012-05-20 (日) 22:03:22

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


究極触媒

香ばしく香るキノコのトラウマ

「おーい、主人k……どうしたんだ、この世の終わりみたいな顔して」
……いや、また面倒事頼むんだなぁ、と。
「いや、あの時は本当に悪かったって……。もうあんな真似させないからさ」
…………本当かい?
「ほ、本当だって。果物採集の手伝いをしてほしいだけだよ。
ヨランオラン先生からの直々の課題だから真面目に取り組むつもりだ」
…………またキノコじゃなかろうね?
「おいおい。キノコは菌類だぜ? 果物じゃあない」
話を聞こうじゃないか。
「……そこまで露骨にキノコを嫌がられると、流石にショックなのぜ……」

 
 
 
 

魔理沙のフィールドワークでおなじみ、古き森。
主人公と魔理沙は鬱蒼とした森林の奥に進んでいた。
この一帯だけ、まるで熱帯雨林の様に蒸し暑く、まさに密林そのものを思わせる。
「暑いなー……」
そればっかり言うともっと蒸し暑く感じるらしいぞ。
「まぁ、そうなんだけどさ……――あ」
暑さにうだっていた魔理沙が何かに気が付いた。
そして樹の一角を指差す。その先には真っ赤な果実がぶら下がっている。
「あったあった。ミラクルフルーツだ!」
ああ、食べると酸っぱいものや苦いものが甘く感じるって言う。
「へぇ、よく知ってるな。これ、かなり珍しいのに」
しかしこれが課題の対象とは……。
「これの種子の採集をヨランオラン先生から頼まれてな。なんでもマンドラゴラに生やしたいんだとさ」
そう言って果実に手を伸ばそうとした瞬間。

 
 

『キキャッ』
横からサルの様な生物……オポオポが飛び出し、魔理沙が取るよりも先に果実を掻っ攫った。

 

「あ」

 

そのままオポオポは森林の奥へと逃げ出してしまった。
突然の出来事に唖然とする。
やがて魔理沙が歯ぎしりしながら呟いた。
「ど……」
……ど?

 
 
 

「泥棒だーッ!」

 
 
 

……なんだろう。確かにそうなんだろうけど、お前が言うなというか素直に魔理沙の味方になれない。
「何を言ってるんだよ、さっさと追いかけるぞ!」
よほど腹に据えかねたのか、魔理沙は箒に乗ってオポオポを追いかけてしまった。

 
 

……取られたやつ以外にもまだ樹にフルーツ残ってるだけど……まぁ、いいか。

オポオポはどこ?

ミラクルフルーツを掠め取ったオポオポを追いかける。
広大な古き森を探索することになるのだが、闇雲に歩き回っても迷いの森よろしく最初に着た場所に戻ってしまう。
ただし、泥棒オポオポはあちこちに足跡といった痕跡を残している。この痕跡を辿って行けば迷わずに進める。
痕跡をくまなく探しながら追いかけて行こう。
なお、探索する範囲内にモルボルが雑魚としてエンカウントするが、相手するくらいなら避けた方が賢明。
モルボルは嗅覚感知なので見かけたらサイレントオイルやデオードを使ってさっさと撒いてしまおう。

 
 

「……なんか変だ」
オポオポを追いかける最中、魔理沙が呟いた。
フルーツを奪われた直後は怒り心頭であったが今はすっかりクールダウンしている。

 

変って……何が?
「よくわからん。けど、何か悪い予感がする」
そう言って森林の奥に進む、と。

 

真っ赤な物体に出くわした。

 

視界に突如姿を現したのは血液の様に真っ赤な、人の形をしたモノだった。
シイタケを束ねた様な筋が大量に集まり、それが人の様な形を持ち、地面に根を張っていた。
一見植物にも見えるそれは、ドクン、ドクンと、はっきり脈を打っている。

 

「なんだこりゃ……」
主人公もだが、奇妙な植物に見慣れている魔理沙もこれには面を喰らっていた。
「……カエンタケの仲間とかじゃないよな」
なんですかそれ。
「真っ赤な毒キノコ。一齧りで三日三晩苦しみながら死ねるぜ」

 

全身の皮膚の爛れ、呼吸困難、言語障害、白血球・赤血球の減少、造血機能障害、多臓器不全――
助かったとしても小脳の萎縮による運動障害や脱皮・脱毛という後遺症が一生残る――
などと、その中毒症状をサラサラと述べる魔理沙を慌てて引き留める。

 

もうキノコの話題は勘弁してほしい。

 

「……どっちにせよ、あれには近寄らない方がよさそうだ。触らぬ神に祟りなしだぜ」

赤い植物の正体

探索中も、あの赤い植物(?)を何度も見かけた。
その大きさこそまちまちだが、脈を打つのは変わりない。
鬱蒼とした密林の中、気味悪さを押し殺しながらひたすらオポオポを追い続ける。
そして、

 

「「見つけた!」」

 

崖にぽっかりと空いた洞窟。
その入口に、あのオポオポが無防備にもこちらに背を向けて座っていた。

 

「見つけたんだぜ、泥棒猿! 今すぐあのフルーツを返すか、それとも痛い目を見てから返すか――」
時間からして、もう既に食べられてるだろうが――そう魔理沙は零しながらオポオポに近寄るが……

 

「?」
返事がない。というか……

 

「様子が変だ……?」
何もリアクションがないのだ。ときおりビクンビクンと体が動いている以外、動きが見られない。
現に魔理沙がすぐそばに近寄っているのに、全身をぐんにゃりと伸ばしきって何もしない。

 

流石に不審に感じた魔理沙が回り込んでオポオポの顔を見ようとして――

 

「――っ!?」

 

目を見開き、強張った。

 

慌てて魔理沙に駆け寄り、そして主人公も絶句する。
後ろ姿では何も変化はないように見えたが、前面は変わり果てたものだった。

 

オポオポの体は、溶けていた。
愛嬌のある猿顔も、腕も、弛緩しきって、その表面には赤い筋の束がうっすらと見えている。
絶句している間にも、ときおり思い出したようにぴくぴくと動くソレは、道中に見かけたあの赤い人型にそっくりだった。

 

「なんだ、これ……」
オポオポの様なものを見て、主人公も魔理沙も、そう言葉にするので、精一杯だった。

 

『キキィッ!』

 

後ろに甲高い啼き声が聞え、オポオポがもう一匹姿を現した。
その手には、あのフルーツが握られていた。

 

「お前は……」

 

あのオポオポだ。
ということは、このオポオポの様なものは別の個体ということか。
フルーツを掠め取ったオポオポは魔理沙達に目もくれず、オポオポだったものに近づくと、顔だった箇所にフルーツを押し込もうとした。
フルーツを食べさせようとしたのだろうか。
しかし、ぐにゅっとめり込むだけで何も反応はない。

 

「キ……」

 

悲しそうな声を漏らしながら、それでも押しつける。
やがて意味がない事を悟ったのか、がっくりと肩を落とした。
「お前、そいつにそれをやるつもりだったのか……」
言葉を解するのか、オポオポは魔理沙の顔を悲しそうに見上げた。
そして洞窟の奥へ歩を進めると、こちらに手を上げて招き寄せるような素振りを見せた。
「……『ついてこい』って言いたいのか?」

 

導かれるまま、洞窟の奥に進むと、やがてあの赤い植物が視界に入った。
オポオポはその植物の前で立ち止まる。
オポオポの背後にあるそれは今までのもの違い、衣服の類を身につけていた。
その傍には、ボロボロのメモが落ちている。
魔理沙がそれを拾い、軽くめくる。
「随分ぼろいけど……かろうじて読めそうだな」
どんな内容なんだ?
「えーっと……どうも目の前の赤いのは、植物学者らしい」

 

魔理沙曰く、その学者はここでとある植物の研究・繁殖のテストをしていたそうだ。
それは植物にも関わらず、肉気・血の味のする一風変わった植物だった。
戦場で戦う騎士・傭兵達の大半は血の気が多く、長期間の遠征では支給される乾パンや植物性の食物だけでは物足りない。
従軍の経験から、その人物は肉の味がする植物を開発していたという。
葉緑素をヘモグロビンに転換だの、理屈は面倒なので省略するが、実際に完成したそれをオポオポに試しに与えた。
「その結果が道中で見かけた物体みたいだ」

 

完成した成果物は摂取した者を成果物同様の可食性の植物に変換してしまう。
となればあの赤い物体は、やはり――――

 

「とんだ失敗作だぜ。私ならここでさっさと見切りをつけて処分するんだけどな」
どうもその学者は違ったらしい。
魔理沙はやがてその学者が狂気に陥った旨を訥々と述べた。
「何をトチ狂ったのか、戦闘にて捕らえた捕虜・獣人、不要なものにこいつを与えれば、食糧の不足が一気に解決するなんて考えに行きついたらしい。……究極の触媒だとさ」
その後も、果実をオポオポといった原住生物にいたずらに与えては、その推移を観察していたようだ。

 

吐き気を堪えながら、魔理沙に尋ねる。
……こいつは、どうしてこうなった?

 

「こういうことだぜ」
学者のなれの果ての背後に視線を向ける。
そこには、くすんだ色に涸れ果てたあの赤い植物の束があった。よく見れば、齧られたような跡がある。
「植物に変化した奴を喰うと、そいつも同じことになってしまうんだろう。
『成果物は摂取した者を成果物同様の可食性の植物に変換してしまう』って書いてあるしな」

 

「キキ……」
暗い雰囲気の中、オポオポが魔理沙にフルーツを渡した。
「いらなくなったのか?」
受け取ったフルーツを帽子の中に収めると、代わりにバナナに良く似た草の実、パママをオポオポへ放り投げた。
「もう泥棒なんて真似はしないようにな」
……突っ込んだら負けか?
「進んで敗北主義者になりたいやつがいるのか?」
軽口を叩きつつ、魔理沙は溜息をつくと、主人公にメモを渡した。
「面倒なことに、この馬鹿が植えたっていう植物の苗床の場所がこのメモに書いてあった。
ついでにあの赤いのを野放しにしてたら、お仲間が増えかねない」
……どうする?

 

主人公の言葉を聞いた魔理沙は八卦炉を取り出すと、軽く放り投げ、そのままキャッチ。
「課題ついでだ。ボランティア活動も悪くあるまい。うん」

後日談

それから数日後。

 
 

ウィンダス水の区・音楽の森レストラン

 
 

魔理沙と主人公の二人はまたしてもアリスと席を一緒に、食事を摂っていた。

 

「ふぅん。キノコ採りの次はそんなことがあったんだ。……え、と。マトントルティーヤをお願いします」
「今までに比べれば簡単な採集だと思ってたんだけどな。あのオポオポのおかげで余計な手間が増えた。……あ、私はシチューを頼む」
「……あら。そう言ってる割にはきっちり事を済ませてたみたいだけど」
「ふん。森の生態系が荒れたら、フィールドワークをする私にはいい迷惑だからな」

 

「そういえば、ヨランオラン先生にミラクルフルーツの種子を渡す時にもこの話をしたんだ」
「へぇ、そうなんだ?」
どうだった?
「……マンドラゴラに夢中で話どころじゃなかった」
あらら。
「あの人のマンドラ馬鹿っぷりは院の外でも有名だからね」
くすくすと愉快そうに笑うアリス。
研究者ってみんなそんなもんなのかなぁ。
「話を言い終えて部屋を出ようとしたら、『命あるものは全て繋がっている』なんてこと言ってたけどな」

 

そうやって談話をしていると、注文した食品が運ばれた。
魔理沙は早速とスプーンを手に、シチューの中身を掬おうとするが、中身を見て顔が引きつった。
「まぁ……」
そして、シチューに入っている肉をより分ける。
「しばらくは肉気のある食物は遠慮することにするぜ」

 
 
 

「……ところで主人公。この肉はいるか?」
こっちよりも、アリスにあげればいいじゃないか。
「だよなー」


  • 報酬
    アクセサリ「フローライトリング」
    アクセサリ「ジュピターリング」