イベント/雅なる使者

Last-modified: 2011-11-19 (土) 12:38:01

シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。


雅なる使者

  • 前イベント、および往古来今の奏でをクリアする

陰陽師推参

町で一服していた主人公。
ふと、姫が言った『最後にして最高の退魔師』のことを考えていた。なんとなく、彼女を思い出したからだ。
そういえば、彼女の生家があるのは、幻想郷だと言っていた。
ひんがしの国と幻想郷は同盟間にあるらしく、また距離も近い。せっかくだからと足を伸ばしてみようか……。

 
 
 

結論から言って、その必要はなかった。

 

目的の人物が、目の前にいたから。

 
 

「おや、奇遇ですね」
彼女は、苦い思い出のある町で、くすくすと愉快そうに笑うのだった。

 
 
 
 

「冴月麟、陛下の御下命を承り、只今馳せ参じました」
永遠亭、姫の御前。
その場には、輝夜姫と永淋、そして姫が協力を要請した『最高の退魔師』麟がいた。

 

「来てくれてありがとう。……ごめんなさいって言う方が先かもしれないけれど」
「……滅相もありません」
麟にとって、ひんがしの国は良い思い出のある国ではない。
だがそれ以上に、過去のしがらみに囚われるつもりが無かったし、何より自分を頼ってくれる人がいるということが嬉しかっただけだ。

 

「単刀直入に聞きます」
輝夜姫が、早速本題を切り出す。
「『陰陽術で死者を蘇らせる』ことが出来ると思う?」
「無理だと思います」
麟は即答だった。

 

「どうして?」
「道教には『不老不死』という目的がありますが、陰陽道の目的は不老不死には無いからです。これは、道教が神仙を目指すよう考えていたのに対し、陰陽道は使えるべき主を頂点として見、それを超えようなどとは考えなかった点から来る違いですが……」
「自分を磨く道教の仙術と、主を助ける陰陽術というわけか……」

 

「うーん……仙術でなければ、陰陽術でもない?」
「あるいは、両方の複合であるか」
三者はしばし無言のままそれぞれの思案に暮れたが、やがて姫が根を上げた。
「何にしたって、情報が少なすぎる。未知の術であるというのなら、それこそ考えだけ無駄……」
「姫、それでは……」
「よろしい!麟、貴方には『ふいるどわあく』を許可するわ!」
「ふいるど……?」
「自由にしていいってことよ」
「あ、ありがとうございます」

 
 
 
 

「というわけで、よろしければ私と同行していただけませんか?」
まあ大体の事情は分かった……。

 

麟から事のいきさつを懇切丁寧に聞いた主人公。
彼女は姫から直々に死者の軍勢、および四神の件の調査を言い渡されたのだ。協力しない道理はない。

 

それで、まずはどうするんだ?
「はい。私としては、やはり四神の動向が気になります。四聖獣の異名を持つ彼らが人に害するとは、どうしても考えられないのです」
うむ。それは俺も気にはなっていた。
「まずは、大道を司る白虎から始めましょう」

 

麟は、町の外に人を待たせているという。
誰かと思いきや、そこにいたのは黒い羽毛をなびかせる……。

 

ゲッショー殿!
「おお~、主人公殿!久しゅうござる。息災でござったか」
ひんがしの国はゲッショーの故国だ。だから彼が居ても不思議ではないのだが、まさか麟に紹介されるとは思わなかった。
「私こそ驚きですよ。貴方、本当に人脈広いんですね。月照さんは、幻想郷まで私を迎えに来てくれた方なんです」

 

ゲッショーは、しばらくの間アトルガン皇国に滞在していた。
そのため、ひんがしの国の現状を知ってからはいてもたっても居られず帰国し、姫に下命を承った。
すなわち、陰陽師を迎える使者と、続けて彼女の護衛だ。

 

「麟殿。貴殿の経緯は承知してござる」
「……そうですか」
「拙者も、やぐうどに生まれた身。周囲から奇異の目を向けられたのは一度や二度ではござらぬ。麟殿の感じた苦しみ、悲しみの全てを理解できるなどと驕りはせぬ。されど、もし辛い時があらば、その辛さを拙者にも分けてはござらぬか?」
「……ありがとう。でも、私なら大丈夫です。優しい人と出会えたから」
「然様でござるか。……のう、主人公殿?」
な、何でそこで俺を見るんですかねぇ?
「優しい人と聞くと、拙者は真っ先に主人公殿を思い浮かべる故」
ゲッショーは、麟が誰に対して『優しい人』と言ったのか、既に見抜いていたようだ。
麟がくすくす笑っていたのは、愉快さからか、それとも恥ずかしさからかは、分からなかったが……。

青い鱗の偉大なる玉

西方の大道。
そこが白虎の司る場所らしい。ここからだとひんがしの国よりも幻想郷の方が近い。
……とは言うけど、ここに来れば会えるってものでもないのでは?
「ええ、まあ」
おいィ……
「嘆いても詮無きことでござる」
「ただ、奇妙な気配は感じて……?」

 
 

「分を超えた神殺しの所業に手を染めたるは、うぬらか?」

 
 

そこに、ナニカがいた。
玄武の時と同じ、一瞬の間に音もなくそこに立っていた。
人型をしているが、黒いもやのようなもので覆われて輪郭がよく分からない。男か女か、人間か人ならざる者かも。

 

神殺し……そう言った。それが玄武のことであるなら、もしや……。
「死者の軍勢の一味……?」
「答える必要は無い。神殺しの報いを受けてもらおう」

 

吐き捨て、ナニカが詠唱を始めた。

 
 

我、雷牙雷好の威声を以って百姓同じく形を生する。五行の将六甲の兵を以ち百邪斬断万精駆逐

 
 

「法術……!?二人とも、避けてっ!」
「ぬう……っ!?」

 

九天応元雷声普化天尊、急々如律令、勅!!

 

人型の手元から一筋のいかづちが迸り、三人を襲おうとしたが、それはゲッショーの空蝉に防がれた。
「ゲッショーさん!」
「空蝉にござる!心配めされるな!」

 

あいつ、一体なんなんだ?法術?
「道士……それとも陰陽師?」
「正体を勘繰っている場合ではござらぬ!」

 

次に人型は、手を地面に着いた。
すると、大地に巨大な太極図が描かれ、そこから地面が砕け大量の水が噴出した。人型は激流に飲まれ見えなくなった。

 

「面妖な術を!」
「嘘っ……転天通水の法!?」
な、なんですかそれは!?
「大地の属性をも変える大妖術です!!この一帯は……水の理の通じる地になる!」

 

麟の言葉通り、大量の水が激流となり一体を瞬く間に覆う。激流は見えない壁、結界のようなものに阻まれ押し止まる。そのために三人はみるみる内に身体が水に沈んでいく。
さらに、悪いことは続くものだ。

 

「我が逆鱗に触れたる者よ、血祭りにあげてくれよう」

 

水中から姿を現す青い鱗の龍……。
ま、まさか……

 

「青竜!!」

 

やっぱりかー!!

 

「そんな……本当に、四神は敵になったと……?」
「人間如きに我を御せると思うな」

 

青竜は水を司る四神。つまり、水中で青竜と戦うなど、無謀の極みだ。

 

ふと、身体を締め付ける水の圧力がなくなった。
見ると、周囲に不可思議な空間の隔たりがある。
「スキマ……紫さん?」

 

「聞こえていますね?あの人型はこちらに任せて下さい。無茶を承知で言いますが……青竜を倒しなさい」

 

「本当に無茶でござる……されど」
ああ、やるしかない。どうせ逃げられないだろうし。
「青竜……本当に、戦うしかないのですか?」
「構えぬなら、せめて苦しまぬよう一撃でしとめてやろう」
青竜は、既に臨戦態勢だ。戦わないとは、こちらの死を意味していた。
「……分かりました。貴方が来るというなら……私も、剣を振るいましょう。これも定めならば……」

 

今にも戦闘の始まりそうな水中の上、水面には幻想郷の賢者、八雲紫が人型と対峙していた。
「お前は……何者?」
「朕は、神である」
「神……?」
「これは、我が千年王国を築くための一手でしかないのだ」

  • vs.青竜
    深海のミニアチュール
    勝利条件:青竜の撃破
    敗北条件:味方が一人でも戦闘不能になる
     
    水中での戦いとなるが、スキマのおかげで普段通りに戦える。
    味方の麟とゲッショーはどちらも非常に心強いユニットなのだが、敵が四神である以上油断はならない。
    青竜はエアロ系統の魔法を得意とし、目立った弱点も無い。
    確実な対策というものがないため、強力な2りの味方をどれだけ活かせるかが勝負のポイントになるだろう。

「なるほど……我は、いささか人間をみくびっておった。だが、次はこうはいかぬ……」
青竜が倒れると、結界も水も消え去った。スキマによってぬかるんだ地面に着地できた。
「終わりましたか」
「青竜も敗れたか……」
視界に紫と人型を見つけ、既に満身創痍の身体を引きずって武器を構える。
「愚かなる人間たちよ。記憶せよ。我は神。いずれこの世界を支配する者である」
そう言い残すと、神と名乗った人型はすうっと消え去った。
そして、緊張の糸が切れた主人公と麟は、その場で倒れたのだった。