シナリオ/世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント。
雷光が託す言葉
粘り強い捜査の末、遂にザイドらしきガルカが北の地のズヴァール城の方へ向かったという有力な情報を得ることが出来た。
……また、そこにはライトニングらしき女性を見た、という話も聞けた。
偶然だろうか、それともパチュリーの勘が正しかったのだろうか?
いずれにせよ、こうしてはいられないと一行は極寒の北の地へ足を踏み入れた。
「……まさか、この足でこの地を踏みしめることになろうとはね」
暖かそうな防寒具に身を包み、それでもガタガタと寒さに震えるパチュリー。
「俺はいつか来るつもりだったけどな。闇の王を討ちに。……でも、それは今じゃない」
気を抜くと一瞬で埋まりそうな猛吹雪の中を突き進む。
ただでさえ寒いが、それだけではなく、ここは敵の本拠地なのだ。当然、見張りのデーモンやモンスターがいくらでもいる。
凍えてカチカチと鳴る歯の音ですら、命取りになりかねない。
そう思うと、こうして会話を続けていないと、気がどうにかなってしまいそうだった。
そうして、遂に見えてきた、真っ白な銀世界に不釣合いな、黒い牙城。
闇の王の待つ、ズヴァール城。
……だが、フリオニールの言う通り、今の目的は闇の王ではない。
見張りのデーモンたちを可能な限りやり過ごしながら奥への道を探す。禍々しい気配を全身に感じながらも弱音も吐かずに突き進んだ。
そして……。
見付けた!
間違いない、ライトニング隊長だ。すぐ近くには、ザイドの姿もあった。
「やっぱり二人は繋がっていたのね……」
「よし……行くぞ!」
勢い良く飛び出したはいいものの、どちらに付けばいいのか分からず、三人は、睨み合いの三すくみになるような形で介入した。
「お前たちハ……」
ライトニングが口を開く。でも、その声はライトニングの凛々しいものでは、なかった。
「お前たち、こんなところまで来たのか」
ザイドも少し驚いたようだった。
「隊長、ザイド。帰りましょう、バストゥークへ。みんな待ってますよ。
ちょっと怒られるかもしれないけど……きっと、許してくれる」
「フリオニール……」
フリオニールの必死な呼びかけにザイドは黙り込むが、ライトニングは嗤いを持って応えた。
「クカカカ! 無駄ダ、既にこの女の意識ハ、闇の中ダ!
お前たちの声など届いてはいなイ!」
やはり、その声はライトニングのものではない。大方、狡猾なデーモンのものだろう。
「操られているのね……。なら、やりようはある」
「無駄だと言ったものヲ。ザイド!」
悪魔の声に導かれ、ザイドが顔を上げる。
「クカカカ!この男はナ、この女のためにその身も心も闇の王に捧げたのダ!」
「な……なんだと!? ザイド、本当なのか!?」
「…………」
ガルカの暗黒騎士は、しかし応えない。
「ザイド……っ!」
「さぁ、殺セ!」
ザイドが大剣を振りかぶり、降ろした。
ライトニングに。
「!?
お、お前ハ……闇の王ニ力を注がれたはずでハ……!?」
「そうだ……だが、それは隊長をお救いするための芝居だ」
「ザイド!」
味方であると確信できたガルカの暗黒騎士の元に、フリオニールとパチュリー、主人公が集う。
「やっぱりお前は裏切ってなんかいなかったんだな!」
「すまん……本当は、俺一人の力で解決するつもりだったんだが……」
「水臭いこと言わないでよ。……仲間、でしょ」
自分で言っておいて恥ずかしくなったのか、パチュリーが顔を赤らめ、帽子を目深く被り直した。
「クッ……おのレ……!」
「ライトニング隊長を操っているのは、『傀儡の石』という道具だ! それを砕けば……!」
「分かったわ。私が足を止めてみせる……」
「人間の尊厳を奪うやり方をするお前を、俺は絶対に許すことは出来ない!」
「隊長……今、お救いします」
- vs.ライトニング
ライトニングのテーマ
勝利条件:ライトニングの撃破
敗北条件:味方ユニットが一人でも戦闘不能になる
アーリマンは厄介な状態異常技を、ガーゴイルは攻撃力が高いのだが、闇の王の力を注がれパワーアップしたザイドをメインに戦えば強敵ではない。
ライトニングは味方と比べてレベルが非常に高く、まともに攻撃を受けられるのはザイドのみ。盾役は彼に任せよう。
幸い防御力はそれほどでもないので、フリオニールとパチュリーにも全力で攻撃させよう。
ライトニングを倒すと、代わりにデーモン族のアモンが登場するが、ステータスは前述のアーリマンやガーゴイルより多少高い程度。ここまでくれば負けることはないはずだ。
「そ、んナ、馬鹿、な……ッ!」
傀儡の石はザイドによって砕かれ、ライトニングを洗脳したデーモンは倒れた。
気絶したライトニングを、ザイドが抱きかかえた。
「やったな、ザイド!」
「喜ぶにはまだ早い。ここから帰らねばならん」
「忘れてたわ……。ザイド、私も背負ってくれない?」
「……そういう冗談は止めろ」
兜の奥で困り顔のザイドを見て、フリオニールとパチュリーは笑った。
「嘘、嘘。平気よ。帰りは」
柔らかく笑うパチュリーは、安心させるような声色で言った。彼女にしてはとても珍しいことである。
「どういうことだ?」
素っ頓狂な声を上げるフリオニールを魔力の渦が包み込んだ次の瞬間には、彼の姿は掻き消えていた。
「デジョンか。助かる」
続いて、ライトニングを背負ったザイドもデジョンの魔法を生み出す渦に飲み込まれて消えていく。
「あんたも。またすぐに会いましょう。
もっとも、帰ったら帰ったで、色々大変でしょうけど……」
言うが早いか、パチュリーは今度は主人公に向けてデジョンIIを唱えた。
自分の体が掻き消されていく慣れない不思議な感覚と、危険極まるズヴァール城まで来た疲れ、そこから脱出できる安心感から、知らず、眠りに落ちた。
次に目が覚めた時には、パチュリーの言う『色々大変』は大体終わった後だった。
ライトニングは大統領暗殺未遂の、ザイドは懲戒部隊の脱走の罪を問われた。
結果、ライトニングには半年の謹慎が、ザイドは危険な任務の最前線へ送り込まれることとなった。
……すなわち、ライトニングは傷の療養、ザイドは闇の王討伐を命じられ、臨時のミスリル銃士隊隊長を任されることになったのだ。
大統領さまさまである。
「起きたのか! お前が眠ったままバストゥークまで来たから、少し笑ってしまったんだぞ」
フリオニールの声を頼りに、君がベッドからふらふらと立ち上がると、先に目が覚めていたライトニングを、ミスリル銃士隊の面々が見舞っていた。
「隊長、後は俺たちに任せて、ゆっくり休んでください」
「ああ……すまない。助けられてしまったな」
ライトニングが申し訳なさそうにザイドと話していた。
パチュリーは「しゅんとしてる隊長なんてレア顔だわ。得した気分ね」なんて呟いている。
フリオニールと共にライトニングを見舞うと、彼女は一同を見渡して、改めて言った。
「お前たち、本当にすまなかった。それに……ありがとう」
ライトニングらしからぬ態度に、逆に銃士隊の三人の方が恥ずかしそうにした。
「隊長、そういうキャラクターじゃないでしょ」
「お前たち相手だから言えることだ」
ライトニングのデレっぷりにやられてか、三人はすっかり顔が赤い。
ミスリル銃士隊の隊長は、ゆっくり切り出す。
「……私はな、お前たちなら必ず闇の王を討ち、この馬鹿げた戦いに終止符を打ってくれると、信じている」
その言葉を聞いて、場の空気がわずかに緊張した。
「……また、北の地へ行けって? 隊長、鬼ですね。仕方が無いので行きますけど」
「闇の王は必ず俺たちが討ちます。必ず、この戦いを終わりに導いて見せます!」
「言われるまでもありません」
三人が口々に決意表明する。もちろん、自分も同じ気持だった。
四人の言葉を聴いて、ライトニングはふっと笑った。
「頼もしいな。なら、最後に……
死地へ向かうお前たちのために、せめてもの言葉を贈ろう」
前だけ、見てろ
恩返し
ライトニングの見舞いを済ませた一行は、大工房へ戻ってきていた。
「闇の王討伐、か。責任重大だな」
「だが、俺たちはやらなくちゃいけない。それが隊長との約束だからな」
ザイドの呟きにフリオニールが答える。
「でも、それはもうちょっと後ね」
「パチュリー……」
多分、わざと水を差すような言い方でパチュリーが口を開いた。
「あの時は極少人数だったから、北の地、果てはズヴァール城まで潜入できたけど、軍隊レベルでの進行はそうはいかない。
まさか、私たちだけで闇の王を討てるわけでもないし」
「そうか……そうだよな。何か、策はないのか?」
「あったらとっくに言ってるわ。今は何も思いつかないわね」
言いつつ、お手上げ、のポーズを取ってみせた。
「打開策が見つかるまでは座して待ってましょ」
「分かった。でもただ待ってるのは俺の性に合わないな」
フリオニールが主人公に向き直る。
「バストゥーク以外の国も見たことがあるんだろ? 俺たちに何か出来ることは無いか?
今まで手伝ってくれた恩返しがしたいんだ。なぁ、パチュリー?」
「お人好しめ。はぁ……あんまり疲れる所には連れて行かないでよね」
「ザイドはどうするんだ?」
「俺は……その、打開策とやらを見つけることが出来ないか、探してみよう」
「決まりだな。これからもよろしく頼む」
- イベント終了後の影響
ライトニングが療養のため戦線離脱。ザイドがミスリル銃士隊隊長代理に就任、諜報任務のため同様に戦線離脱。
以後、フリオニールとパチュリーがPTに誘えるようになる。