イベント/魔境の開拓

Last-modified: 2014-12-14 (日) 19:51:59

世界移動シナリオ-中世聖騎士編のイベント

魔境の開拓

未開の地

新たな土地、アドゥリンの噂を聞いた君は、まずどのようにかの地へ赴くのか調べることにした。
通常は船を使うそうだが、それでは時間がかかる。
そこで、短時間でアドゥリンへ向かう方法として、アドゥリンで使用されている移動手段である「ウェイポイント」が用いられることになった。
ただし、大陸に設置されたウェイポイントは試作型なので、移動先が不安定になる場合もあるらしい。
それでも使うことにした君が行き着いた先は……。

 
 
 

どことも知れぬ森の中だった

 

大陸では見ない特徴的な植物が生い茂り、鳥や虫の鳴き声が絶えない、明るい森。
アクシデントに見舞われたことを恨みつつ、君は持ち前のポジティブさで散策でもしようかと思った矢先……。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

突然の悲鳴に、君は頭で考えるより早く悲鳴の聞こえた方向へ走り出した。
そこには、食虫植物らしきシルエットの植物モンスターが少女を襲っている場面であった。
急いで止めに入ろうとすると、目の前に浮遊する金色のハート型のモンスターが複数現れた。
見たことの無いモンスターだ。一見すると危害を加えてきそうにはないが、明らかに少女への救援を邪魔している動きだった。
驚く間に、頭の中に直接声が響く。

 

(ダメ……)

 

ハートウィング。頭に声を送ってきた主はそういう名前らしい。

 

(アノコハ ヤクソク ヤブッタノニ……)
(コレハ バツ ダカラナ!)
(コレハ サダメ ナノ……)
(コレガ ダイチノ コトワリ ダカラ)

 

複数のハートウィングたちは、次々と脳内に直接話しかけてくる。
その間にも、少女にモンスターは迫る。

 

「たすけてぇぇぇ!」

 
 
 

「傷つけてはならん!」

 
 
 

突如、声と共に閃光が周囲を照らし出した。

 

同時に、一人の女性が君の元へ駆け寄って、手に光の球を作り出す。

 

「これを使うがいい」

 

女性は、君の前に光の球を差し出すと、もう一度光の球を生み出した。
そのまま、光を前方に掲げたまま、少しずつ少女に歩み寄る。
モンスター達はその光に近寄れない様子だった。

 

(ズルイゾ! ズルイゾ!)
(アノコハ ヤクソク ヤブッタノニ……)
「確かに、ここはみだりに入ってきてはならぬ地。
 だが、それでも死は罰としては重過ぎる!」

 

女性は毅然とハートウィング達に言い放つと、彼らは動揺したようだった。

 

「あまり近付けすぎないようにな」

 

君はこくりと頷いた。

 

「礼を言うぞ。ついてきてくれ」

 

女性はゆっくりと少女に近付くとモンスター達に振り返った。

 

「よし、我に続いて、こう……」

 

そして手を頭上に掲げると、光の球を飛ばした。
すると光の球は先ほどのように炸裂し、光に当てられたモンスター達は一目散に逃げ出していった。

 
 
 

「全く、どうしてこんな危険なところまで来たのだ?
 いや、言わなくても分かるぞ。
 大方、魔境の奥に咲く花が必要だったのだろう?」
「う、うん……」
「やはりな。あれは病気に効く薬になるからな」

 

推理を当てて一人ドヤ顔する女性の周囲を、ハートウィング達が回る。

 

(モリニ ハイルナ ッテンダヨ!)
(ニンゲン イラナイ!)
(ノロッチャウゾ! ノロッチャウゾ! ノロッチャウゾ!)
「うるさーい!」

 

堪忍袋の尾が切れたらしい女性が、遂にハートウィングを怒鳴りつけた。

 

「お前達、薬草の生えている場所……知っているはずだな?」

 

互いに顔を見合わせるハートウィングたち。

 

「知・っ・て・る・よ・な?」

 

(ココカラ ミギ ダ!)
「右か?」
(ヒダリ デスワ!)
(マッスグ! マッスグ! マッスグ!)

 

「どっちよ!!」

 

とうとう、ハートウィング達は散り散りに飛び去ってしまった。

 

「全く……奴らはどこまで本気なのだろうな……。
 ん、すまん、まだ名前を聞いていなかったな」

 

そう言うと、女性は君に向き直った。

 

「えーっと……名前、聞かせてもらってもいいか?」

 

君はちょっと迷い、それを断った。

 

「ほう、警戒されているのか? 慎重なのだな。
 我は……フト。
 先ほどは武器を収めてくれて助かった。
 アドゥリンには来たばかりなのか?
 ようこそ、アドゥリンへ」

 

君はこの地へ来た事情を説明した。

 

「え? ウェイポイントの転送で……こんなところに?
 もう少し森の奥だったら、命の保障が出来ないところだった。
 ……いや、そうでもないのかな?」

 

「お主、中の国の冒険者……だな?」

 

君は素直に頷いた。

 

「そうであろうそうであろう。
 モンスターを前にしても随分と落ち着いていた様だったしな」

 

「冒険者……か。
 すまんが、この森は本当は開拓者以外は立ち入り禁止となっておる。
 だから、探している薬草は我とこの子で見つけてくる。
 心配は要らんぞ、街へ帰るための呪符もちゃーんと持っておるからな。
 ひょっとしたら、お主より早いかもな!」

 

「なぁ……本当に名前を教えてくれないつもりなのか?」

 

流石に悪い気がして、君は名乗ることにした。

 

「恩に着る! ……やっぱり、あまり聞かない名だな。
 不思議な響きというか。
 街を目指しているのだろう? それ、あっち」

 

フトは北の方を指した。

 

「お主みたいな人間が開拓者に志願してくれると……色々助かる。
 そうしたら、また会えるかもしれんな。
 ではな!」

エアリー

アドゥリンに到着した君は、そこで先ほどの少女にであった。呪符デジョンで君より早く帰ってきたようだ。
探していた薬草を含め、幾つか薬の原料を手に入れた旨を伝えた少女は、急いだ様子で駆けて行った。

 

着いて早々に開拓者の登録を済ませた君は早速開拓の準備を始めようとした矢先。

 

「そこの貴方!」

 

急に何者かに声をかけられた。
とは言っても、既に何度か似たような経験をしている君は、特に驚くようなことは無かった。
声の主を探して右左。中々見つからない。

 

「ここよ! ここ」

 

声と同時に、蝶のような羽根を持った小さな人が降りてきた。妖精、ピクシー族だ。

 

「貴方、いい目をしているわね。
 なんていうか、責任感が強そうで、一度決めたことは必ずやり通すって感じだわ!」

 

勝手に人間観察されたが、褒められているらしいので悪い気はしない。

 

「そんな貴方にお願いがあるのよ。まあ、頼まなくてもやってくれそうではあるけど」

 

ひょっとして、開拓のことだろうか。

 

「勘がいいわね! 貴方には開拓を手伝って欲しいのよ!」

 

妖精はヒュンと飛び回り、君に開拓の重要性を説いた。
人の住む土地はもちろん、食料、薬の原料となる植物、貴重な鉱石やモンスターらの素材……。

 

「アドゥリンの人口はどんどん増えているわ。
 闇の王が討たれ、平和な時代になった今、それは更に加速するでしょうね。
 でも、今のアドゥリンに人が住める土地は少なすぎるわ。食料問題もある。
 それに、病気に苦しむ人に薬をあげられないし、新しい家を建てる木やら鉄やらだって……。
 だけど!
 魔境の開拓に成功すれば、これらの問題が一気に解決するのよ!
 正に万々歳じゃない!?」

 

妖精の言い分には頷ける部分もあったが、それ以上に彼女の熱意に君は押され気味だった。

 

「そう思うよね!? だから、ね!? 協力してくれるよね!?」

 

開拓の重要性に納得できた、というより妖精の熱意に負けて、君はつい同意の返事をしてしまった。

 

「引き受けてくれるのね!? やっぱり、私の目に狂いはなかったわ!」

 

君は辟易しながらも、妖精の不自然さに疑問を抱いていた。
妖精は、自然と共に生きる、というより、自然そのものの具現のような存在だ。
そんな妖精が、自分から自然の破壊とも呼べる開拓に協力するのは奇妙な話だ。
だが、そんな疑問を口にする前に、妖精は口早にまくし立てる。

 

「それじゃあ、先に魔境に行って待ってるからね!」

 

「……あ、私の名前はエアリー! 覚えておいてね!」

 

それだけ言うと、妖精……エアリーはビューンと飛び去ってしまったのだった。

コロナイズ・レイヴ

開拓者として改めて魔境に足を踏み入れた君を、エアリーが忙しなく迎えた。
エアリーは開拓に関して、具体的な説明をしてくれた。

 

最初の目標は、障害物の破壊らしい。
道を阻む絡み合った堅牢な木の根、危険が危ない今にも倒れそうな木、岩盤の亀裂から隆起した岩石……。
開拓から一歩踏み込んだ段階へ進むためには、まずこれらの障害物を撤去して後の行動をスムーズにする必要がある。
ただ、魔境と呼ばれるだけあって、障害物の破壊の最中であってもモンスターの妨害は避けられない事態らしい。
モンスターを退けつつ、迅速に障害物の破壊を遂行することが、開拓者の仕事というわけだ。

 
  • 開拓を妨害するモンスター
    大規模戦闘。
    プラントイド類・ヴァーミン類のモンスター多数が妨害する中、「結ばれた目」を破壊するのが目標。
    モンスターの数は少ないが、結ばれた目はHPがやや多めな上、全てのダメージを50%軽減するため、少々手こずる。
    とはいえ、ここで苦戦していてはこの先辛い。

無事、最初の開拓は成功した。
一端街に戻ると、エアリーから大木破壊の心得を教わった。
最初の一回は感覚を掴むことが大事だったらしく、それを終えたからには安心して教えられるとか。
これで、大木の破壊に手間取ることはなくなるだろう。

 

開拓者の仕事は障害物の破壊以外にも沢山ある。
各種素材や資材の調達、進路の確保、生態の研究、地脈の調査、他にも治安維持のための巡回などもある。
それらをこなすのはとても大変ではあるが、徐々に開拓を進める確かな手応えを感じて、君は少しだけ気分が高揚した。

目覚ましき活躍

その日の開拓を終えアドゥリンへ戻った君を、使者が出迎えた。
開拓におけるPCの活躍が十二家会の目に止まり、晩餐会に招待されたのだ。
早速アドゥリン城へ向かおう。

 

城で十二家会が来るのを待っていると、扉が開き、ぞろぞろと人がやってきた。
そのいずれもが、制服のように共通の服装をしていた。
彼らがこのアドゥリンを統治する十二家会の面々だ。

 

「この1ヶ月で既に3つよ! バナジウム鉱石の発見なんてここ数年なかったのに! ほら、冒険者に開拓を依頼したのは大成功だったじゃない!」

 

先頭を行く小さなフェアリー…エアリーが嬉々として報告する。
話を聞くに、どうやら自分のような開拓者の活躍が、国の利益につながっているようだ。

 

「そう…か? 私には危険が迫っているように感じてならん…。禁を犯して開拓を続ければ、恐ろしいことが起こるぞ」

 

一方、対する女性は違った。
彼女は開拓反対派であるようで、エアリーに苦言を述べていた。

 

「若いわね、トジコ。お父さんから家督を譲られるのは早すぎたんじゃないの? 誰が何と言ったって開拓は続けるべきよ! そしてもっーと儲けるの!」
「おろかものめが…欲に負け、大地の理を軽んじるとはな。『初代王』の遺言も無視し世俗にまみれては、王の加護も失うぞ…」

 

トジコと呼ばれた女性は信心深いようだ。

 

「そんなことはないわ! いい? 世界にもっと目を向けるのよ! 中の国でも、ひんがしの国でも、冒険者を使って急激に…」
「大地の理も介せぬ胡乱な輩…」
「だからアタマ固いんだって! おばあちゃんじゃないんだからさ!」
「そもそも私は、フェアリーのお前が十二家会に出席できることにも疑問を持っているんだ!」
「それはオブリージュ家の当主が病気になっちゃったから、仕方なくでしょ! それに、前にも家会で審議して私が家会に出席するのは認められたじゃない!」
「多数決だろう! 私はあの時から反対だったんだ!」
「そこに文句をつけたら家会の意味が…!」

 

「二人とも、その辺にしておこう」

 

声のする方へエアリーとトジコが振り返った。
そこにいたのは、金髪のナンパそうな男性。

 

「国のことで子孫たちが喧嘩してるなんて知ったら、初代王もきっと悲しむぞ」
「む……」
「むー…!」
「む」
「「「なにがむむむだ」」」
「ははははは!」
「…って、何やらせるんだ、エドガー…!」
「そうよ! 何よ今の!? 思わず言っちゃったけど」
「乗っておいてその反応はないだろう! ははは!」

 

エドガーという男性は、一触即発の状況を、一瞬で解決してしまった。見事な手際だと感心するがどこもおかしくはないな。

 

「…あ! PC!」

 

と、エアリーがこちらに気付いて飛び寄ってきた。

 

「最近すごいみたいじゃない。城でも貴方の噂で持ちきりよ!」

 

そうなんだろうか? ちょっと恥ずかしい気もする。

 

「これなら、七支公の相手も安心して任せられるわね!」

 

七支刀? なにそれ? 国宝?

 

「七支公! 魔境のモンスターの中で、特に危険な7体のこと!
 森の守護者とかなんとか言われてるけど、あんなの開拓計画の邪魔者でしかないんだからね。
 貴方の活躍なら、七支公退治にも期待できるというものよ!」

 

七支公か…これからも開拓を進めるなら、遠からずぶつかることになるだろう。
その時に備えて、準備は万全にしておいた方がいいだろう。

 

「アドゥリンはちょっと前から爆発的に人口が増え続けているの。
 前にも話したと思うけど、人が増えれば食べ物がたくさん必要だし、住む所だってそう。
 でも島は勝手に大きくなったりはしないわ。
 このままじゃ、神聖アドゥリン都市同盟は自滅する。
 だから! 開拓が必要なの!」

 

「それは古の法を反故にしてまで進めることなのか?」
「トジコ…しつこいわよ」

 

先ほど注意されたにも関わらず、再度トジコがエアリーに突っかかった。
エドガーも苦笑している。

 

「そもそも、魔境に入るなというのは初代王のご意思なんだぞ?
 つまり、魔境には触れないのがアドゥリンの大地の法。
 法を犯すものには罰が下るものだ」
「でも、開拓計画は初代王の血を引いているミコが決めたことでしょ!」
「ミコ様に開拓を進言したのはお前が一緒にいたオブリージュの奴だろうが…」
「決めたのはミコよ!」
「…ミコは今日も来なかったな」

 

ポツンとエドガーが呟いた。

 

「病気だって聞いたわ」
「参ったなぁ、オブリージュの所のお嬢さんにも会えないというのに、俺の情熱はどこに向ければいいんだ」
「知らないわよ」
「病気じゃ仕方ないなぁ。仕方ない仕方ない。そこでトジコ、今度一緒に食事でもどうだ?」
「今、してるが?」
「…そうだったな」

 

エドガーはナンパに振る舞ったが、ちょっとわずかにわざとらしい。
どうも、病気という話を疑っているようだ。
それはトジコも同様と見た。

 
 

「で、誰だ、こいつは?」
「それは俺も気になってた」

 

トジコとエドガーがこちらを見て尋ねた。
君は自己紹介をした。

 

「そうか、君が噂の」
「最近、目覚ましい活躍をしたから、ご褒美としてこの晩餐会に招いたのよ」
「ふん。一攫千金の山師の類か」

 

「モノノベ家・ご息女。フト様!」

 

その時、従者の声に遅れて扉が開き、1人の女性が姿を現した。
女性は一礼する。

 

「遅れて申し訳ない。ミコ様の見舞いをしてきたのだ」

 

その女性というのは、あの時森で助けてくれたフトだった。

 

「ミコ様はこのところ、少しばかり根を詰めすぎたようだ。熱もあるし、大事を取って休ませて頂いた」
「そんな風で、開拓は大丈夫なのか?」
「ああ、だから我も開拓は慎重に進めるべきと進言してきた」
「む」
「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってよ、フト!」

 

フトの言葉に、エアリーが慌てて割って入る。

 

「ミコは推進派なのに、なんで貴方は賛成してくれないのよ! 自分だって森に入ってる癖に!」
「それとこれは関係ない。それに…十二家は平等だ。あのお方が初代王の血を引くとは言え、我があのお方の考えに賛同しなければならない理由はない」
「うぐぐ…」
「完 全 論 破したのでこの話は終了だ」

 

フトに言いくるめられ、集まっていた者たちは思い思いの方へ散った。
フトはこちらを見つけると歩み寄ってきた。

 

「思った通り、開拓者になってくれたのだな」

 

お前偉い人だったのか、と君は驚きが鬼になった。

 

「言ったであろう? 「また会える」、とな」