Appointment with Death -死との約束-

Last-modified: 2014-04-19 (土) 18:15:26
 
 

捨て去られるくらいなら掬いあげたかった
最初は、それだけだった

 

切っ掛けがどんな形であろうと
これまでに過ごしてきた日々は、偽物ではない

 

それは 間違いなく事実

 

例え、私には過ぎたものだとしても
例え、もう取り返しのつかないものだったとしても

 

それだけは……

 
 
 
 

世界移動シナリオ-ARMORED CORE Paradise of Stain編のイベント

Appointment with Death -死との約束-

 
 

ミッション解放条件
Endless Night -終りなき夜に生れつく-クリア

STRAY CAT -迷い猫- (chapter0)

レイヴン同士の戦いに沸く遊戯施設兼傭兵達の闘技場「アリーナ」

 

参加選手、観客を始めとする大勢の人員が行き来するためか、アリーナ内部には飲食店、宿泊施設といった設備が充実している。と言っても混合玉石といった風情で、高級料亭やロイヤルスィート級のホテルがあれば、場末の酒場やオンボロ宿のような極端な店もある。要は各々の背丈に会った場所を選べということなのだろう。
アリーナ選手の大半が大きな壁に当たるように、アリーナを訪れる者には格差というものが確かに存在する。

 

欲望と闘争が渦巻くアリーナ。その一角にとある萎びた装いのバーがある。
とある上位ランカーが片手間に経営しているそこでは
アリーナに出場する夢追い人、荒くれ者共、もしくは勝敗を予想する観戦者達がそこに屯していた。
しかし今日ばかりは、そんな酒と男臭さにはおおよそ似つかわしい、悪く言えば場違いな人物が片隅の席に座っている。

 

スリットの大きく開いたチャイナドレスを着こなす女性だった。
目鼻立ち整った怜悧な顔つきに、深紅の長髪を靡かせた美女である。
引き締まりつつも、メリハリの利いた体つきから漂う色香を隠そうともせず、物憂げな表情を窓に向けている。

 

傍目から見ても引く手数多と言っても良い別嬪だが、
彼女を見るものは遠巻きに熱い視線で見るか、連れ合いとひそひそと何事かを話すことがもっぱらだ。
手を出す不埒者や、声をかける自信家は皆無といっていい。
なぜなら彼女は……

 

[???]
仮にも上位リーグの門番ともあろうものが、油を売っていいのですか?
レッドパンダ、それとも紅美鈴?

 

鈴を転がすような涼やかな少女の声。
女性はからかうように自身の出自を語る言葉を耳にすると、声の方へと顔を向ける。
途端に、怜悧な顔立ちから想像もできないほど明るい笑みを浮かべた。

 

[Hong Meirin]
今日はオフです 今の私はレッドパンダではなく、紅美鈴ですよ
ええ、お待ちしてました こっちです、妹様!

 

声の主、シックな黒ドレスを纏った少女は一歩前に出ると嫋やかに一礼した。
動きに任せて、蜂蜜色のサイドテールが静かに揺れる。

 

[Frandre Scarlet]
お久しぶりです、美鈴

 
 

 
 

場所をバーのカウンター前に移し、
バーのマスターに注文したカクテルを舌で転がしながら、
美鈴の待ち人だった少女……フランドールがしかめっ面でボヤく。
少女が飲酒を行う様を咎める者がいない。いや、厳ついガルカのマスターがなにも言わない時点で、
"そういうこと"なのだろうと勘付いているのだ。

 

このマスターの知り合いにアリーナランカー古参の合法ロリという前例がある以上は。

 

[Frandre Scarlet]
……
美鈴、私が来る前に結構呑んだでしょ?
服から違うお酒の臭いがします

 

[Hong Meirin]
えーと、はい
私の故国では酔拳なる拳法がありましてね、その習得にちょいーっと…

 

[Frandre Scarlet]
嘘ばっかり
お酒飲んで強くなるのは神主かジャッキー・橙だけ
酔拳は酔っ払いながら戦うものじゃないのよ

 

[Hong Meirin]
……お詳しいですね!?

 

[Frandre Scarlet]
元はといえば貴女が私に護身術を教えたがったからじゃない…

 

[Hong Meirin]
昨今は物騒な世の中ですから……
例え妹様がリン……ゲフンゲフン

 

わざとらしく咳き込む美鈴の姿に、フランドールは一抹の寂しさを滲ませながら微笑む。
気のせいか、グラスを持つマスターの手に力が入る。

 

[Frandre Scarlet]
……紅魔館へは、もう戻らないの?

 

[Hong Meirin]
私は咲夜さんやパチュリー様とは違う……
抗うことを諦め、主人達の目の前から逃げ出してしまった卑怯者です

 

紅魔館の番人の座は、私では役不足です

 

[Frandre Scarlet]
気にしなくても良いのにね
でも……

 

言葉を切って、バーの天井に設置されたモニタに視線を移した。
アルコールが入ったのか、ドレスから覗く剥き出しの肩は赤みを帯びている。

 

モニタに移されているのは、明日の対戦カードだ。

 

[Frandre Scarlet]
【C LEAGUE LANKER C-1 RED PANDA】……か

 

上位ランカーに食い込める位置でしょう? 大躍進じゃない

 

[Hong Meirin]
私はあの位置でいいのですよ
向上心溢れる挑戦者を全力で迎え撃てる、あの位置が
立ち向かうその姿勢が、戦っていて何よりも楽しいんです
 
妹様もアリーナマッチはなされないのですか?
噂ではランク1や2もお忍びで参加しているそうですし……あ、噂ですよ?

 

[Frandre Scarlet]
……Nice Jork
あンのサングラスとズドン巫女……
遊びでやってるんじゃないでしょうね……?

 

[Hong Meirin]
え?

 

[Frandre Scarlet]
いえ……無理ですよ、私には

 

[Hong Meirin]
そう、ですね ごめんなさい、冗談でした……

 
 

何とも言えない微妙な空気になる両者。
その二人の沈黙を、小さな鳴き声が破った。

 

『みゃおぅ』

 

[Hong Meirin]
ん?

 

[Frandre Scarlet]
子猫? え……
こんなところに?

 

店を訪れた時に気付かなかったが、カウンターの隅っこに薄汚れた木箱があった。
その中で、小さな命がか細い声をあげていた。

 

[Zaid]
……物好きな客が押しつけてきた
親が死に、路頭に迷っていた……とな

 

寡黙なマスターがぶっきらぼうに告げた。

 

[Frandre Scarlet]
……

 

箱の底に敷き詰められたタオルケットの中に白い猫がくるまっている。
純白だったであろう体毛も、外界の環境によるものかすっかり薄汚れてしまっている。

 

フランドールはその額に手を差し入れ、小さく、優しく撫でた。
猫はその指に鼻をこすり付け、そのまま口に含んで舐める。
母親を求めるような仕草に、少女の顔が優しく笑んだ。

 

[Frandre Scarlet]
あの……この子を育てるつもりは?

 

[Zaid]
……ない
厄介事を押しつけられただけだ

 

[Frandre Scarlet]
では、引き取り手は?

 

[Zaid]
……厳しいな

 

[Frandre Scarlet]
では、私に引き取らせて頂けませんか?

 

[Hong Meirin]
え、妹様!?

 

[Zaid]
それは、コイツへの同情か?
安易な情など、貴様らしくもない……

 

[Hong Meirin]
……ザイド 彼女は私の客人だ
何者であろうとも、今は非礼を許さない

 

[Zaid]
理解している
だからこそ……敢えて、忠告しているんだ
 
貴様が取り巻く環境に、この小さな命を取り込むつもりか?

 

ただならぬ気配にざわめく客を無視して、フランドールは子猫を抱き上げる。
そして10COAMほどの大金をカウンターに遠慮なしに置いた。

 

[Frandre Scarlet]
それで美鈴と私の勘定を お釣りは結構
 
 
偽善でも、気まぐれでも、独り善がりでも
その小さな命が捨て去られるくらいなら
半端な情でおざなりにするくらいなら、私はそうする

 

[Hong Meirin]
妹様……

 

[Zaid]
……

 
 

 
 

場所は変わって、国家解体戦争のオリジナルを中枢戦力とする傭兵集団の本拠地・紅魔館
そのリーダーたるレミリアは額に手を当てて、妹の蛮行に頭を痛めていた。

 

[Remilia Scarlet]
猫を飼うですって……?

 

[Frandre Scarlet]
ええ、帰路の間に必要な備品は全て買い揃えたわ
お姉様達に迷惑はかけない

 

[Remilia Scarlet]
あのね? お姉ちゃん知ってるから
そういう人に限って、自分だけじゃ世話できないの!
聞き分けのいいハムスターや蝙蝠とは違うの!

 

[Patchouli Knowledge]
レミィ どうどう……

 

[Frandre Scarlet]
……知ってるわ、それくらい

 

[Remilia Scarlet]
いいや、わかってない! そもそも私達はね……!

 

捲し立てようとするレミリアの唇を、フランドールの指が遮った。

 

[Frandre Scarlet]
命を奪い続ける私達が、命を救うなんて滑稽よね
……でもさ

 

フランドールは懐ですやすやと安らぐ子猫を優しく撫でる。

 

[Frandre Scarlet]
この子、ね
飢えとかじゃなくて、親を戦争で亡くしたんだって
私達と同じ……戦争で滅茶苦茶にされたって

 

[Remilia Scarlet]
私達の境遇と重ね合わせたつもり?

 

[Frandre Scarlet]
……

 

[Remilia Scarlet]
……ハァ
 
買ってきたソレを無駄にするわけにもいくまい
そんなにそいつを飼いたいなら、好きにすればいい

 

[Frandre Scarlet]
お姉様……

 

[Remilia Scarlet]
根を上げるようなら、速攻で追い出す
それでいいわね?

 

[Frandre Scarlet]
ありがとう といいたいところだけど……
 
 
……小猫の飼育と傭兵稼業を一緒くたにするのはどうなの?

 

[Remilia Scarlet]
……

 

[Patchouli Knowledge]
レミィは動物あまり好きじゃないのよ
犬に吠えられて、大泣きした頃からだったかしら

 

[Remilia Scarlet]
……パチェ!

 
 

BAD DAYS -不吉な日常- (chapter1)

 
 
 
COLLARED
No.202698-887435A
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
≡≡≡≡≡≡≡≡≡
 
01-0248 KITANAI NIJYA
01-2222 KOTIYA SANAE
01-0495 FRANDRE SCARLET
01-0000 N O
01-0M03 YEARNER S TATIBANA
 
01-6652 LILIUM WOLCOTT
 
......
 
 

[Kitanai Ninjya]
……不抜けた面だな、破壊天使

 

[Frandre Scarlet]
何か……
携帯端末を操作しているだけですが?

 

[Kitanai Ninjya]
猫の画像を見てニヤついているのが、か?

 

[Lilium Wolcott]
失礼ですが、その猫はフランドール様がお飼いになられているのですか

 

[Frandre Scarlet]
ええ、まあ……

 

[Kotiya Sanae]
うわっ、かわいいじゃないですか! 白い猫ちゃんですね!
いいなあ、ウチの方はペット飼育は厳禁なんですよねぇ……

 

[Frandre Scarlet]
ペット……ですか
そんなつもり、ないのですけど

 

[Yearner S Tatibana]
だが、誰かを慈しむことは決して悪いものじゃない
こんな時世だからこそ、守るものがあることは大切だ

 

[Frandre Scarlet]
……
一気に言われても、どう答えたらいいものか

 

[N O]
フム……では、御名はなんと言う?
それくらいならば、貴様も困らぬだろうて
老骨めに教えてはくれまいか

 

[Frandre Scarlet]
ヴィレ、です
抱き上げた時、生きたいという「意思」を感じた……気がしたので

 

[Kotiya Sanae]
ヴィレちゃんかー……いい名前ですねぇ
 
あれ?
フランドールさん、もしかして照れてます?

 

[Frandre Scarlet]
……よくわかりません
こう、立て続けに質問攻めされるのは初めてですし

 

[Lilium Wolcott]
そう言えば、そうですね

 

[Kitanai Ninjya]
いつもは会話を盗み聞きするか、横から口を出すくらいだからな
受け身になるのは珍しかろう? クッククク……

 

[Yearner S Tatibana]
……少し私怨が入っているのは俺の気のせいか?

 

[Kotiya Sanae]
よく日常を暴露されてますからねー、この男……

 

[N O]
その音頭を取っている貴様が言うのもどうかと思うが……

 

[Frandre Scarlet]
……
 
汚い忍者様

 

[Kitanai Ninjya]
あん?

 

[Frandre Scarlet]
小耳に挟みましたが、レイヴン達が凌ぎを削るアリーナでは
ランカーに入っては消えることを繰り返す「ゴースト」なるレイヴンがいるそうです

 

[Kitanai Ninjya]
で、その木っ端烏がどうした
飽きっぽい三流傭兵じゃねぇのか

 

[Frandre Scarlet]
いえ、これは他称なのですけれども
確かレイヴン名が『SHINOBI』、ACは『ダーティクロウ』でしたね
 
……はて 試合を見る限りでは
何処かの誰かとセンスも戦術もそっくりですが

 

[Kitanai Ninjya]
……

 

[Frandre Scarlet]
余技としてアリーナに参加するのは結構ですが
我々がリンクスであること、くれぐれも忘れないでください
……お願いですから

 

[Kitanai Ninjya]
……チッ

 

[Yearner S Tatibana]
企業が意欲的な場合はともかく……

 

[N O]
その反応を見る限りでは、オーメル側は認知しておらぬな……

 

[Kotiya Sanae]
そ、それは不味いですね

 

[Frandre Scarlet]
……貴女もですよ、東風谷様

 

[Kotiya Sanae]
気をつけます……

 
 

 

[Frandre Scarlet]
(なんで部外者の私がこんな忠告してるのかしら……)

 

自問自答したが、答えは何となく察している。
短くない付き合いとはいえ、多少のお節介を焼く程度には見過ごせなくなっているのだろう。

 

[Frandre Scarlet]
(なんだかんだで、この空気が好きなんだろうな、私も……)

 

物思いに耽っていると、携帯端末にメールが届く。
その内容を確認すると神妙な表情で眼前の紅茶をズズッと飲み干し、席を立つ。

 

[Kitanai Ninjya]
あ? なんだ、退出するのか

 

[Frandre Scarlet]
ええ 用事のついでに立ち寄ったので
 
それに、いつもの「お茶会」でしたしね

 

最後の言葉は僅かに笑みを含めて零す。
これといった情報のやり取りもない、最高戦力同士の駄弁り合い。
そこに込められた感情に気付いた者はいるだろうかと思い、そんな自分を内心で苦笑いする。

 

[Kotiya Sanae]
あら 何かの用事ですか?

 

[Frandre Scarlet]
まず、猫のおゆはんを買う為に
 
仕事を貰いに

 

 

[Patchouli Knowledge]
ミッションの概要を説明するわ
依頼主は企業連
目標はアウラス渓谷に集結している反企業連組織の制圧
 
クライアントが調べた限りでは
敵組織が保有しているのはMTとノーマル戦力を中心とした部隊
ただ未確認情報も多く、結局のところ戦力の全貌は不透明みたいね
額面通りに受け取らない方がいいでしょう
 
ミッション概要は以上よ
ランク3に要請する以上、クライアントもそれなりに警戒しているのでしょう
気をつけてね

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリアアウラス渓谷
作戦目標敵戦力掃討
 

 

Brandnew Armored Core Runs About

 

[Patchouli Knowledge]
ミッション開始よ
アウラス渓谷の敵戦力を掃討して

 

[Frandre Scarlet]
了解
フォービドゥン、状況を開始します

 
 

渓谷に屯っているMTとノーマルACを片づけるミッション。
MTはfaではお目にかかれなかったGAの逆関節型。
ノーマルはオーメルの飛行型とアルドラ社のノーマル。

 

[Frandre Scarlet]
統一性のない相手
寄せ集めか、それとも……

 

飛行型がうざったらしいので優先して叩き落とせば、大した敵は残らない。

 

[Frandre Scarlet]
どうしてこんな僻地に武装集団が?
この渓谷に、何かあるのか

 

[Patchouli Knowledge]
増援を確認……
 
何ですって、自律型ネクスト?
2機来たわ、気を付けて

 

[Frandre Scarlet]
案の定か
ただのテロリストではないな
 
了解、迎撃する

 

敵を全滅させると、自律型ネクスト002-Bが二機出現する。
近寄られると怖いので、引き撃ちに徹しつつ冷静に対処を。

 

[Patchouli Knowledge]
自律型ネクストの撃破を確認
もう、付近に敵対戦力は見られないわ

 

[Frandre Scarlet]
……
何者かしら、この連中は

 

[Patchouli Knowledge]
妹様?

 

[Frandre Scarlet]
いいえ、何でもない
ミッション終了……戻ります

 

 

『ミッション終了……戻ります』
フランドールの淡々とした声が部屋に響き渡る。
その一室は薄暗く、無数のモニタの明かりが照明のように部屋を照らしている。
モニター傍らの空調機器の音が静かに響くそこは、紅魔館に設けられた管制室だ。

 

パチュリーはヘッドマイクを取り外すと、
近くの椅子に座ってヴィレと戯れているレミリアに声をかけた

 

[Patchouli Knowledge]
ミッション終了
妹様、無事に終わったわ

 

[Remilia Scarlet]
そう まあ、当然よね

 

[Wille]
うにゃあー

 

[Remilia Scarlet]
ふふん お前も嬉しいの?
そうか、そうか

 

[Patchouli Knowledge]
まったく
あんなに嫌がってたのに、すっかり骨抜きになっちゃって

 

[Remilia Scarlet]
お情けよ、お情け
あの子がいない間くらいは
相手してやっても良いかなって
 
……ほら、私の指は玩具じゃないっての

 

半目でレミリアを見ていたパチュリーであったが
次には真剣な表情で彼女に問いかけた。

 

[Patchouli Knowledge]
それで、どう思う?

 

主語が抜け落ちているその問いは
フランドールが討伐した武装勢力の事だ。

 

[Remilia Scarlet]
思ったより得体が知れない
 
自律ネクストなんてモノを持ってる連中が
あんなごく小規模な組織とは考えにくい

 

[Patchouli Knowledge]
後ろ盾がいると?

 

[Remilia Scarlet]
案外、金持ち連中や夢想家の集まりかもしれないよ
というかさ、その反企業連組織の名前からして……ねぇ?

 

そう言って、レミリアはコンソールに指をなぞらせる。
モニタの一部がACの状況ではなく、違うものを映した。コロニーニュースヘッドラインと銘打たれた番組だ。
その中では、ニュースのアナウンサーが「反企業連組織が企業が抱える新資源プラントを占拠・破壊した」という声明を読み上げていた。

 

[Remilia Scarlet]
DARK SOULS……「DRAKの後継」ね
 
あのあからさまな戦力は囮だったってワケ
馬鹿にされたものね

 

フランドールが撃破したあれらにも自律ネクストと同じ簡素なAIが詰め込んであったのだろう。
AIを使ったメカニカルバトル「フォーミュラフロント」の応用なら、
ネクストは無理だろうが、MTやノーマルでなら機能する。

 

[Patchouli Knowledge]
大丈夫かしら、ラインアーク……

 

[Remilia Scarlet]
前科、あるからね
 
あからさますぎるから
そこまで突き上げはこないんじゃないか?

 

[Wille]
ゴロゴロ……

 

[Remilia Scarlet]
お前、ホント懐っこいわねぇ……
猫ってもうちょっと図々しい生物じゃないの?

 

[Remilia Scarlet]
……
ねぇ、パチェ

 

[Patchouli Knowledge]
なに?

 

[Remilia Scarlet]
コジマ汚染の影響で、野生動物の立場は悲惨そのものだわ
こんなちみっこい生物が、未だ生きていられるのは奇跡としか言いようがない
 
でも、それも長く続くはずがない

 

[Patchouli Knowledge]
……
ええ、そうね

 

[Remilia Scarlet]
何れ、あの子もそのことに気が付くわ
 
いたずらに命を背負うことの意味を

 

[Patchouli Knowledge]
この猫は、どう思っているのかしら
自分が生まれたこの環境を

 

[Remilia Scarlet]
さあ、ね
 
でも、生きることは望むでしょう
こうして懸命にはしゃぐ姿を見ていると……

 

指に必死で齧り付くヴィレ。
レミリアから見れば、そのほほえましい仕草も、
飼い主の姉にじゃれているのではなく、生きる為に抗っているように思える。

 

[Remilia Scarlet]
……さて、そろそろ部屋に戻しておくか
表向き、私はこいつの飼育に懐疑的ということになっている

 

[Patchouli Knowledge]
ツンデレめ

 

[Remilia Scarlet]
世話の手間を共有したくないだけよ
 
ああそうだ……パチェ
"アレ"はどう?

 

[Patchouli Knowledge]
妹様専用の新兵装?

 

[Remilia Scarlet]
そう、アレ 進捗どうよ

 

[Patchouli Knowledge]
順調よ
性能テストだと、こんな感じ

 

そう言いながらコンソールに指を走らせ、
ある映像をレミリアに見せた。
興味深げに見ていたレミリアだったが、やがて喜色満面の笑みを浮かべて
パチュリーの肩をパンパン叩く。

 

[Remilia Scarlet]
そうそう! これよ、これ!
ハイエンドやAFに使えて、ネクストにこれができないのはおかしいわよね!
 
フランが見たらどんな顔するかしら?

 

[Wille]
にゃー?

 

[Patchouli Knowledge]
……心配なのは、そこね
どう見てもレミィ好みだもの

DARK SOULS -DRAKの後継- (chapter2)

DRAKの後継「DARK SOULS」

 

再び企業連、及び世界を牛耳るシステムに
宣戦布告を下したそれら

 

当初は企業もカラードも見くびっていた
所詮、武力に訴えた単なる一組織に過ぎない
あのマグリブ解放戦線にも遠く及ばないだろう、と

 

彼らがイレギュラーネクストを何機も抱えている事
カラードの上位ランカーに裏切り者がいた事実が露見するまでは

 

 
 

[Frandre Scarlet]
よしよし、っと……
 
……
 
あははっ
音、そんなに気になる?

 

[Wille]
にゃー

 

[Patchouli Knowledge]
やっぱりここにいたのね、妹様
あら……何を?

 

[Frandre Scarlet]
ヴィレの首輪を作ってみたの
この子、鈴の音が好きみたいだから

 

[Patchouli Knowledge]
そう
レミィは不安がっていたけど
ちゃんと可愛がっているのね

 

[Frandre Scarlet]
勿論
拾ったからにはね
 
まだまだ2ヶ月の付き合いだけど

 

[Wille]
へぷしゅ ぷしゅっ

 

[Frandre Scarlet]
あら、くしゃみ?
トップランカー辺りが噂してるのかしら

 

[Patchouli Knowledge]
……妹様
団欒に水を差すようで気が引けるのだけど

 

[Frandre Scarlet]
……

 

[Patchouli Knowledge]
カラードから連絡がきた
 
仕事の時間よ

 

[Frandre Scarlet]
……わかった

 

 

思えば、少し気が緩んでいたのかもしれない
"まだ"2ヶ月ではない

 

"もう"2ヶ月経ってしまったのだ

 

 

[Patchouli Knowledge]
ミッションの概要を説明するわ
 
依頼主は企業連
目標はDARK SOULSが保有する拠点のひとつ
ラジアニア基地の急襲
 
かつて企業が所有していた要塞なのだけど、
既に放棄されたそれに戦力が結集しつつある
 
これを電撃作戦でカタを付けてほしいとのことよ
 
……何が真意なのかは知らないが
彼らには痛い目にあってもらうしかない

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリアラジアニア基地
作戦目標敵戦力掃討
 

 

Why Don't You Come Down

 

[Patchouli Knowledge]
ミッション開始
ラジアニア基地を制圧して

 

[Frandre Scarlet]
対空砲火……
それに確認できる戦力の少なさ

 

[Patchouli Knowledge]
企業連め、ダミーを掴まされたな
 
あれはミグラント達が運用する移動型砲台よ
正面から突っ込むのは賢くないわ

 

[Frandre Scarlet]
では、横合いから思い切り
殴り飛ばせばいい
 
助走をつけて!

 

要塞外殻に設置された移動砲台S77シリーズを撃破する。
射線上に入りさえしなければただの置き物同然。横合いからブレードでみじん切りにしてやろう。
途中で高機動型一般兵器が増援として出現し、攻撃してくるので先にそちらを片づけた方が楽。

 

[Patchouli Knowledge]
要塞内部から
ハイエンド、ミグラントACの増援を確認
 
同一規格のアセンブリに、あの動き……

 

[Frandre Scarlet]
……
フォーミュラ・フロントのハードウェア搭載機
 
こいつらはただのゲリラ屋連中とは違う
明らかな後ろ盾がいるわ

 

ライフルを二丁装備した軽量逆関節のミグラントAC4体
レーザーライフルとライフルを装備した中量二脚のハイエンドAC1体が増援として出現
どれもノーマルより少し強い程度の相手で、動きもシンプルだが、数で囲んでくる。
位置取りに気を遣いながら一体ずつ確実に排除すべし。

 

[Patchouli Knowledge]
妹様、後ろ盾と言ったわよね
まさか企業の……?

 

[Frandre Scarlet]
マグリブ解放戦線の時とは訳が違う
 
それにフォーミュラ・フロントの技術は
企業連由来のものではない
 
疑わしいのはそのドナー

 

[Patchouli Knowledge]
フォーミュラ・フロント
アーキテクト
……アリーナ
 
咲夜に調べて貰うべきかしら

 

[Frandre Scarlet]
いえ……
アリーナやフォーミュラブレインなら
私の方が幾らかコネとアテがある

 

[Patchouli Knowledge]
待って
作戦エリアにネクストの出現を確認
 
ネクスト、モルガンよ!

 

 

[Pixy]
見つけた
 
カラードで見かけて以来か
破壊天使

 

[Frandre Scarlet]
元カラードランク5、ピクシー
裏切り者のお出まし

 

[Pixy]
ああ、彼らの政治劇に疲れ果てた
長らく続くこの道楽戦争にも

 

[Patchouli Knowledge]
そうして、戦争を終わらせるための戦争を起こす
 
DARK SOULS、貴方達のやっていることも
結局、企業と変わらない

 

[Pixy]
……

 

[Representative]
夢と呪いは同じ、とはよくいったものだ
 
破れた志がこうも縛り付けるとは

 

[Frandre Scarlet]
どなた?

 

[Representative]
「DARK SOULS」の代表者 代表で結構
 
世界の敵として、世界を変える為に戦った
貴方達「DRAK」の志を継ぐ者

 

[Patchouli Knowledge]
志を継ぐですって?
 
あの戦争で、私達と企業がもたらしたものが
どれだけ不毛なものだったか
 
それを理解しているの?

 

[Pixy]
無論
私達は築き上げられた不毛の上で生きている
だが、企業はそれを積み上げることしかしない
 
無駄になるだけだ
何もかもが

 

[Representative]
彼女がその悪魔を
相手取っている間に訊きたい
 
我々と志を共にする気はないかどうか
 
怠惰を貪る老人達を「舞台」から引きずり落とし
閉塞したこの状況を打開する為に
 
我々には貴方達の存在が必要だ
今の我々を形作った、かつての先達の存在が

 

[Patchouli Knowledge]
馬鹿にしないで、広告塔の間違いでしょう
 
くだらない御飯事遊びは机上の空論だけに留めなさい

 

[Representative]
大真面目ですよ、我々は
酔狂だけで、このような大掛かりな真似はしない
 
だがしかし、その気がないのであれば……

 
 
 
 

CONTACT

 

ライールとアリーヤをミックスした構成の軽量二脚「モルガン」が出現する。
APは低いが機動性が極めて高く、かく乱しながら的確なサイティング技術でこちらのAPを削ってくる。
連戦でAPが消耗しているだろう状態での戦いなので、実力がないと苦闘は避けられないだろう。

 

フォービドゥンのAPが30%を切るか、モルガンを撃破することで一旦戦闘が区切る。

 
 
 

フォービドゥンがレーザーブレードを横薙ぎに振るう。
対する片翼の妖精は軽やかな機動で悪魔の毒牙を何なく避ける。
攻撃が空振りに終わった瞬間、フォービドゥンのアクチュエータ各所から無数の火花が飛び散った。

 

[Patchouli Knowledge]
妹様!

 

[Pixy]
それが、かつての国家を解体した力か?
なら、貴女はこの戦いに関わるべきではなかった

 

[Pixy]
破壊天使 貴女は奔放だ
自由に生き、自由に死ねる
 
そう
我々が乗っている"脅威"さえも
しがらみなく扱える
ランク3という立場でありながら
 
……貴女は戦場で何を望む
何を望んで、この場に立った?

 

[Frandre Scarlet]
……

 

[Pixy]
答えないか
 
なら、直接聞く
貴女達が好きな殺し合いで全てを決める

 

[Frandre Scarlet]
言っても意味がない

 

[Pixy]
何?

 

[Frandre Scarlet]
他人に戦場の意味を求める輩に
何を言ったところで響くわけがない

 

フランドールがぼやくように呟き、
その言葉に反応したように、フォービドゥンが腕部のライフル、ブレード、そして機体の象徴たる翼型のレーザーキャノンをパージした。
ピクシー、並びに「代表」とやらが目を疑うより先に真紅の悪魔は格納部分から新たな兵装を解放し、マニュピレーターに接続する。

 

それは一本の端子に扇状のガードを取り付けたようなものだった。
まず、グリップを取り付けた軸があり、その先端には巨大な端子、その左右には小さな端子が二つずつ並び、扇状のガードは丁度、端子の背後で広がるように展開している。

 

見たこともない奇妙な兵装だ。

 

[Pixy]
……!

 

それを見たピクシーは危機感を感じた。
何をしでかすつもりかは知らないが、早急に叩き潰さなくてはいけない。
直感でピクシーは脳裏に浮かんだ思考をそのままネクストの動きに変える。

 

レーザーブレードを構えたモルガンが閃光を吹き上げ、懐に飛び込んだ。
一直線に飛び込むつもりはない。途中の軌道で死角に回り込み、斬り捨てようという魂胆だった。
その直後。

 

フォービドゥンが物体を振るった。

 

端子からプラズマ炎が一瞬だけ瞬く。
瞬いた炎が長大な稲光へと変わり、眼前の空間を横薙ぎになぎ払い、

 

その軌跡から、三日月形の燐光の刃が飛んだ。

 

モルガンのサイドブースタが炎を吹き上げる。
急激な機動で方向を変えようとしたモルガンの右腕部を、エネルギーの塊が焼き切った。

 
 

[Pixy]
……な、んだ それは……!

 

疑問こそ口に出たが、思考は即効で回答を弾きだす。
あれはレーザーブレードだ。
ハイエンドACやネクストが用いる、内蔵型・ハードポイント型とは全く違った、
強いて言えば、ミグラントACが用いるものに近しいタイプの近接光学兵器。

 

一般のレーザーブレードとは比べ物にならないほど非常に不安定な超高出力。
ゆえにその刃の形状は安定せず、下手をすればその出力と形成した刃が機体にダメージを与えかねない。

 

[Representative]
アームズフォート殺しと同じ……
パチュリー・ノーレッジ、貴女の作か!

 

[Pixy]
……ダメージが大きい この場は撤退する

 
 

 

[Patchouli Knowledge]
……「DARK SOULS」
 
私達が犯した悪手が
更に悪い形で実を結ぶなんて……

 

[Frandre Scarlet]
あの、パチュリー
ミッションはこれで終了?

 

[Patchouli Knowledge]
え、ええ

 

[Frandre Scarlet]
それなら、いいの
あいつらの為にパチュリーが気を病む必要はない

 

[Patchouli Knowledge]
妹様……

 

[Frandre Scarlet]
でも、お姉様の思いつきも役に立つのね
出力でマニュピレータがズタボロだけど

 

[Patchouli Knowledge]
防護にもう少し改良が必要みたいね
実はもうひとつ新兵装があるのだけど

 

[Frandre Scarlet]
……アレは、遠慮する

 

 

[Frandre Scarlet]
ただいま

 

[Wille]
にゃー

 

[Frandre Scarlet]
えっと……ごめんね
この後すぐ、また用事で出かけるの

 

[Wille]
ゴロゴロ…

 

[Frandre Scarlet]
本当に、ごめんなさい
出来るだけ早く終わらせるから……っ

 

[Wille]
ぷしっ ぷしっ

 

[Frandre Scarlet]

くしゃみが多いね……
風邪なのかな

 

[Wille]
ぷしゅっ  にゃあ

 

[Frandre Scarlet]
違う?
でも、一度病院に行った方がいいかも
 
……
 
ごめんね、構ってあげられなくて

 

[Wille]
ゴロゴロ…

 

[Frandre Scarlet]
お腹見せるの、好きだよね
こうやってお腹撫でられるのも
 
……

 

[Wille]
にゃあー

 
 

[Pixy]
……貴女は戦場で何を望む
何を望んで、この場に立った?

 
 

[Frandre Scarlet]
……

 

[Wille]
うにゃあー?

 

[Frandre Scarlet]
ううん、なんでもない
 
今抱えてる仕事、もう少しで終わるから
それまで、待ってて

 
 

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