Fall In Forbidden -禁忌へ落ちていく-

Last-modified: 2013-01-14 (月) 14:18:02
 
 

これは私、フランドール・スカーレットの回想録です。
具体的には、国家解体戦争前にリンクスに仕立て上げられ、戦い続けていた頃。
企業の言う事を忠実に従うだけのアワレな駒が、その企業を離反するまでの御話

 

今でも「破壊天使」なんてゴタイソウな徒名で呼ばれているけど、実際は何てことない。
私は他のオリジナルとは違って、戦いに何も見い出せない、虚しい兵隊でした。
人間性最悪な奴でさえ、それなりの理由はあったのにね。

 

それが、死の際でようやく片鱗のようなものを見出せた。
……きっと、そんな感じ。

 
 
 
 

世界移動シナリオ-ARMORED CORE Paradise of Stain編のイベント

Fall In Forbidden -禁忌へ落ちていく-

 
 

ミッション解放条件
オーダーマッチでランク3 フォービドゥンを撃破

WORST REUNION -最悪の再会-(ブラム・ストーカー撃破)

 

人外であるモノ――妖怪――ほど、AMS適性が高い可能性がある。
そんな突飛な訳のわからない理由で、私は姉や友人と引き裂かれた。
国家解体戦争が起こる前のこと。

 

不安と恐怖で押し潰れそうになりながら、
リンクス養成所で高いAMS適性を見出された私は、ローゼンタールと呼ばれる企業に引き取られた。

 

アーマード・コア ネクストの操縦者、リンクスとして。

 

本名を捨てさせられ、下らない礼儀を強要される事さえ除けば、厚遇はされている。
何の不自由もない。
何かあれば余程の事でない限り大体の要求に応えてくれる。

 

――でも、それだけ。

 

あの頃のように家族はいない。友人と呼べる者もいない。
ただ、企業の権力の象徴たる尖兵として、命のやり取りを強いられる。
オーメルのリンクスに咲夜がいたのが唯一の救いだったけど、
それでも彼女と顔を合わせる事すら許されない。

 

「家族の事は忘れろ」

 

感情を露わにする私を宥めながら、周囲は遠まわしにそう言った。
上層部の人間は、私が理想的なリンクスである為には過去の繋がりは不要と考えていた。

 

内心を抑え、戦場を駆り、成果を挙げると、周囲は私を褒め称える。
笑顔を振りまきながら、内心では私はどうしようもないほど虚ろだった。
結局のところ、彼らが褒め称え、必要としていた対象は私自身ではなく、
あくまでネクストの性能、そして私のAMS適性、操作技術に過ぎない。
ネクストとリンクスが世界を変える為の力などと力説されても、実感はなく、興味もない。
そんなことよりも、テレビの中のヒーローの言葉の方がよっぽど感動する。

 

…戦争での常識だとしても、
私は最後まで「兵隊」で、「個人」として扱われる事は最後までなかった。

 

……そうやってリンクス戦争の終盤近くまで、私は人形のように生きていた。

 
 
 

 

[Operater]
ミッションを説明します。
目的は各地で遊撃行動を行うレイレナード側のネクストの撃破となります。

 

敵はレイレナードの中量二脚、No.11 ドラクリア。
現在、目標はアグリッサ採油施設内部に潜伏中。
ドラクリアは味方も巻き込みかねない過激な戦闘方法から投入される作戦は限定されています。
そのため、実質孤立無援状態と言ってもいいでしょう。

 

説明は以上です。
どうか無事の御帰還を、フレデリカ卿。

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリアアグリッサ採油施設
作戦目標敵ネクストの撃破
 

 

Pray for the Power

 

「……ノブリス・オブリージュ、状況を開始。
 紅いネクストを撃破する」

 
 

狭く、入り組んだ地形が特徴的な作戦エリア。
撃破目標は03-AALIYAHベースの二脚機「ドラクリア」。
マシンガン「03-MOTORCOBRA」とアサルトライフル「04-MARVE」、右背部にプラズマキャノン「TRESOR」を装備している。武器も格納しているが、使う事はない。
積極的に攻めてくるため、真っ向から撃ち合うとかなり厳しい。狭い地形を生かし、戦おう。
APを40%以下まで削ると台詞と共にムービーに入り、ミッションはクリアとなる。

 
 

[Bram Stoker]
……死ねる、かよ。
貴様らだけには、殺されてたまるか……!

 

 

『……死ねる、かよ。
 貴様らにだけは、殺されてたまるか……!』

 
 

敵ネクストのリンクスが怨嗟の声を上げた。

 

それは、
聞き覚えのある声だった。
もう聞けないと思っていた声だった。
ずっと聞きたかった声だった。

 

ネーミングセンスが最悪で、我儘で、傲慢で、泣き虫で、でも一緒にいて楽しかった

 
 

「……お姉様?」

 
 

私が漏らした呟きに
紅いネクストの動きが一瞬、固まった。

 
 

「レミリアお姉様なの?」

 
 

ネクストの操縦者は何も答えない。
回線の向こうで、息を飲む音と、
聞き取れないほど小さな呟きが聞こえる。

 
 

「お姉様でしょ?
 よくよく考えてみたら……
 その機体の色も、名前も、全部……お姉様っぽいもの……」

 
 

ブラム・ストーカー ドラクリア  どうして今になって気がつかなかったのか。
虚無的になって、周囲への関心を失ったせいなのか。

 
 

「聞えるよね……? 私よ、フランドール…
 ねえ、応えてよ。  ……ねえ!」

 
 

武装を投げ捨て、右手を伸ばす。
それが届くより前に、ネクストはオーバードブーストを吹かし、私の前から飛び去った。

 
 

「……ねぇ……お願い……だよ……」

 
 

弱弱しく呻きながら、体を前に折る。
……敵ネクストの姿は、どこにもなかった。

 
 
 
 

 
 
 
 

ミッションの失敗
ローゼンタールの上層部はこの結果に眉を顰めたが、
敵ネクスト「ドラクリア」の活動がパタリと止んだことから「特別恩赦」で良しとはした。
その間、私は敬虔な羊のような態度こそ取っていたが、内心は穏やかではなかった。

 

上層部の舐める様な視線も気に障っていた。しかし、それ自体はどうでもよかった。
「家族の事は忘れろ」
リンクスとして戦っている間、そう言い聞かせられた。
しかし忘れられる訳もなく、抑圧することで、保った。
幾ら腕っ節があろうが、私は心まで強くはない。
これまで戦ってこれたのも、自分の感情を抑え込み、偽っていたからのこと。

 

だがその姉、レミリア・スカーレットとの――敵としての――再会。
それは、私の精神を乱すのにはあまりに十分すぎた。

 

その時の私を、後に元レイヴン上がりのリンクス、ミヒャエル・フランシスカは
「とても見てられなかった」と苦笑いを浮かべて評していた。

 

姉に逢いたい。
姉や咲夜達に、無邪気に甘えたい。あの時の様に。
愚かにも頭の中にはそれしかなく、ホームシック染みた寂寥に苛まれていた。

 

…もう、そんな余裕すらなかったというのに。

 

MARCHE AU SUPPLICE -断頭台への行進-(ネクスト部隊撃破)

 

[Operater]
ミッションを説明します。
目的は旧ピース・シティを通過するレイレナードグループネクスト急襲部隊の襲撃です。

 

敵はレイレナード中量二脚主力No.1シュープリスを筆頭に、同社逆接前衛機No.12ラフカット、
BFF重量四脚狙撃支援機No.15レッドキャップ、アクアビット軽量二脚支援攻撃機No.21ヒラリエスの4機
これらによって編成されたレイレナード陣営の精鋭部隊です。

 

我々は同等以上の戦力をぶつけ、それに対処することを決定しました。
フレデリカ卿。
貴女とNo.30ナルとアナトリアの傭兵及び、もう一機のネクストの4機で相対してください。
なお、最後の支援機については詳細な情報を開示できません。申し訳ありませんが……

 

……これは今の我々が考え得る、最高の戦力です。
前回のミッションでの失態を払拭するには余りあるほどでしょう。
苦境ですが、貴女ならできます。
幸運を、フレデリカ卿。

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリア旧ピースシティ
作戦目標敵ネクストの撃破
 

 

chapter4

 

[Mido Auriel]
フレデリカ 敵が来ました
ミッションを開始しましょう

 

……フレデリカ?

 

「ええ……そうね」

 

[Mido Auriel]
……っ?

 
 

撃破目標は03-AALIYAHベースの中量二脚「シュープリス」、04-ALICIAベースの逆関節「ラフカット」、049ANベースの重量四脚「レッドキャップ」、そして武器腕アクアビットマンことMADNESSベースの軽量二脚「ヒラリエス」の4体。
根っこ自体はAC4の最難関ミッション「MARCHE AU SUPPLICE」と同じ。
しかし、4機は徹底集中して自機を狙ってくる&武装とアセンが破壊天使で固定なので、まずきのこれない。
これ自体は負けイベント、敗北=クリアなので素直に負けよう。

 

ただしアンシールにトドメを刺されると漏れなく死に腐れ発言を吐きつけられる。
刺されなくても吐かれるが

 

[Berlioz]
戦場だ、いつかはそうなる。
悪く思うなよ、破壊天使。

 

[Zanni]
…すまない、ブラム・ストーカー。

 

[Unseal]
ケッ、それで最高戦力とはなぁ。
雑魚が。死に腐れ。

 

[P Dam]
この程度か……下らん

 

 

機体の整備も、AMSにも異常はなかった。
敵が強い? いや……

 

弱過ぎるのだ、自分が。
今の今まで抑えていた弱さが、この時点になって露わになった。
……なんて、無様なんだろうか。

 
 
 

最後の最期に姉の姿が脳裏に浮かんだ。
最後くらい、話がしたかった。もう、叶わないとしても。

 

私が死んだと聞いたら、姉はどんな顔をするのだろう?
いや……その先を考える事も億劫だ。

 

五感は深海の底の様に重く、暗い。

 

―死ぬんだ、ここで。

 
 
 
 

消えゆく意識を繋ぎとめたのは、レッドキャップの汚い謗りだった。

 

『貴族のお人形に薄汚い裏切り者。
 姉妹揃ってどうしようもねえ。
 ケッ、屑が……さっさと死に腐れ』

 
 
 

AND THEN THERE WERE NONE? -そして誰もいなくなるのか?-(ネクスト部隊撃破)

 

小さな夢を見た
夢の中に、姉の姿があった

 

すぐに届く距離なのに
今にも触れられる距離なのに
手を伸ばしても
姉は何も応えてくれない

 

誰も応えてくれない

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリア旧ピースシティ
作戦目標敵ネクストの撃破
 

 

『貴族のお人形に薄汚い裏切り者。
 姉妹揃ってどうしようもねえ。
 ケッ、屑が……さっさと死に腐れ』

 

「今、なんて……」

 

『あ?』

 

「……今 なんていった?
 何で、……を…知っている」

 

『ああ…それか。
 テメエNo.11の妹なんだろ。
 聞いたぜ。あいつ、レイレナードに叛逆したそうじゃねえか』

 
 

重くなっていた筈の五感が鮮明になった。
お姉様がレイレナードを離反した?

 

私は無意識にその事実と作戦開始時までの私の醜態と重ね合わせていた。

 

何故姉が、レイレナードを離反したのか。
その理由を不思議と理解した。
それについて想うより前に、レッドキャップのリンクスの嘲りが遮る。

 

『今頃、追手に嬲り殺しにされてるか、GAの連中の慰み物にでもされてるだろうよ』

 

目の前が真っ赤になった。

 

『碌でもない阿婆擦れを姉貴に持つと大変だなぁ。
 無様に死ぬのはお前ら両方ともだけどな!』

 

沸き上がった感情に押され、噛み砕かんばかりに歯を食いしばる。上の犬歯がギリギリと下歯を抉った。
今まで無機質な色彩だった旧ピースシティの大地が、敵の機影が朱に浮きあがる。

 

『本当に救いようがないな、オイ』

 
 

脳裏に、姉の姿が浮かんだ。
心配そうに私を見つめる、お姉様の顔が。

 
 

『……あん?』

 
 

……阿婆擦れと貶したな、お姉様を。

 
 

―…何も知らない貴様が、お姉様を見下したな。

 
 
 

貴様如きが。

 
 
 

 

overture

 

『チッ まだ動きやがる……
 化物だけにしぶてえ。
 胴体を念入りにブチ抜かねえと死なねえの……』

 

さっきから眼の中が焼かれる様に熱い。
頭の中身が蒸発しそう。
怒りだけで腸が煮えくりかえりそうだ。

 

それでも、思考だけは冷えきった清水の様に鮮明だった。

 
 

レッドキャップがスナイパーキャノンを構えた。
敵の間合いも、味方の位置も、一切合財を放り投げる。
あの糞忌々しい赤頭に全てを絞る。

 

統合制御体に指示。
クイックブーストを最大出力で連続展開。
方向座標は敵ネクスト、レッドキャップ。

 

一気に接近する。

 

『か……ッ!?』

 

レッドキャップはバックのブーストで距離を取ろうとする。/それを許さない。クイックブーストで距離を詰める。

 

『な……どうなってるんだよ、おい…!』

 

レッドキャップのリンクスから、動揺の声が漏れた。/敵の感情が手に取るように見える。

 
 

『ベルリオーズ、不味い…!』
『アンシール、距離を離せ!
 そちらに向かう!』

 

『クソがっ! 俺のせいだっていうのかよ!?
 図に乗るんじゃねえ! この貴族被れの化物が……!』

 

レッドキャップがレーザーブレードを振り上げた。/下手くそな動きだ。掠めもしない。

 

反撃として連装レーザーキャノンを起動、至近距離から発射する。/それに、さっきからやかましい。
地面ごと粒子装甲が吹き飛び、表面装甲を焼き尽くす。/悪態を着かないと生きていけないのか、貴様は。

 

「…やかましいんだよ、銀朱臭い餓鬼が」

 

レーザーブレードを展開。/赤頭がたじろいだ様に硬直した。
減衰しきったプライマルアーマーごと、四脚の前脚部を叩き斬る。/無視して、足を潰す。
バランスを失い、機体が崩れ落ちた。/獲物は無様に這い蹲った。
返す一刀で武装ごと腕部を両断。/後はゆっくり料理すればいい。

 

がああっ!?

 

レッドキャップのリンクスが苦痛に悲鳴を上げた。/不快だ。悲鳴すらも耳に障る。

 

「土塊と血漿 口に詰め込んで、臓物真赤に吐き散らして。
 ……さっさと死に腐れ」

 

 

ノイズを喚くネクストのコアにレーザーブレードを叩き込んだ。
先程よりもけたたましいノイズが聞こえてきた。どうでもよかった。

 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。
潰れた蛙のようなノイズが聞こえてきた。どうでもよかった。

 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。
ノイズがぴたりと止まった。どうでもよかった。

 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。
ネクストからはもう何も聞こえない。どうでもよかった。

 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。
オープンチャンネルの向こうから周りが何かを言っていた。どうでもよかった。

 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 
 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 
 
 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 
 
 
 

レーザーブレードをもう一撃叩き込む。

 
 
 
 
 
 

『ノブリス・オブリージュ! 平静を取り戻して! 敵が……!』
『こんな……フレデリカ……!』

 

『……アンシールッ!』
『ベルリオーズ、不味い!』

 

熱に浮かされる様に、衝き動かされる様に、只管レーザーブレードを振り回し、ネクストを切り刻む。
不毛であることを知りつつ、動きは止まらない。
家族を引き離されてから、今まで堪えてきたモノが、今になり、一切合財吐き出される。
口から乾いた哄笑が溢れる。眼からは涙が止まらなかった。

 
 
 
 

そして、爆音が鼓膜を殴り、
強い衝撃が機体を走る。AMSを通して、脳が強い苦痛を示す。
脳裏にAP減衰を報告する警告音が響き渡る。

 

感情を抑えてサイドブースタのクイックターンで振り向く。ネクストがいた。
シュープリス。
背部の有澤製グレネードランチャーの銃口から硝煙が噴いている。
漆黒のネクストのカメラアイが不気味に蠢く。
肩部のエンブレム―血塗られたギロチン―が揺らぐ視界の中で、鮮明に焼きつく。
私への告死のように。

 

gorannoarisama.jpg

 

『……何をしている、破壊天使』

 

シュープリスのリンクスの殺意を押し殺した声に、
私はひどく苦々しげな笑みを浮かべた。

 
 
 
 

「ご覧の有様だ、ベルリオーズ」

 
 
 
 

統合制御体に神経を集中する。
そして、敵ネクスト群目掛けて、クイックブーストを最大推力で連続してかける。

 
 

激痛と機体損傷によるAMS負荷が意識を呑み込もうと私を揺さぶる。
屈するつもりなど毛頭なかった。
無味乾燥だった私の意識に懐かしい感覚が過った。

 

幻影で見た姉の姿を、指先が掠めたような錯覚。

 

曖昧な意識の中でそれだけは、確かに覚えていた。

 

その姿だけが、私を衝き動かしていた。

 
 
 
 

 

Fall

 

戦闘を再開。
レッドキャップは既に撃破されている為、敵はヒラリエスとラフカット、そしてシュープリス。
「ナル」は大破しており、倒れるのも時間の問題。
戦闘開始時に僚機として使えるのは身元詳細不明の軽量二脚機「シュースィ」くらい。
そして、時間経過でアナトリアの傭兵――03-AALIYAHベースの中量二脚機「グラットン」が戦闘に参加する。
僚機と共に、残りの3機を撃破しよう。AIのロジックが良い(特にアナトリアの傭兵)ので、上手く引き付けてくれる。
なお、この時に限り自機のQBの仕様が強制的に2段QBに固定されている。その場限りの演出とはいえ本編に適用されないのが悔やまれる
その為、機動力が格段に向上しており、ENに気を配っていれば、被弾する確率が格段に減少するだろう。

 
 
 
 

 
 
 
 

落日の旧ピースシティ。
荒廃した廃墟の中心に、ネクストが膝を屈していた。

 

ノブリス・オブリージュ

 

本来ならその姿は、羽を休めた天使に写っていた。
しかし白かった機体は戦闘のダメージに汚され、高貴な面影は欠片も見当たらない。
落日に照らされるその姿は悪魔の彫像のようだった。

 
 
 
 
 

……。

 
 

『……!』

 

どこからか声が聞こえてくる。
誰かが無邪気にはしゃいでいる。私の耳の中を喧しく叫んでいる。
うるさい。煩い。五月蠅い。ウルサイ。

 
 

『……!
 ……ション成功です、フレデリカ卿!』

 

オペレーターの声だった。
安堵と興奮が入り混じった声でミッションの成功を伝えていた。

 

「……ああ。
 そういえば、そうだっけ

 

向こうから狼狽した様な気配が伝わる。
返した声音は、自分でも驚くほど酷く冷めていた。

 

シュープリスも、ラフカットも、レッドキャップも、ヒラリエスも総て旧ピースシティの土に還った。
視覚素子を通じての情報を見ると、もう僚機の姿はない。
既に作戦領域を去ったのか、それとも敵と同じく死に腐ったのか。

 
 

『フ、フレデリカ卿?』

 
 
 
 
 

困惑するオペレーターとの通信回線を完全に遮断。そのまま、機体動作をチェックする。
AMSはまだ繋がった状態だ。それは機体と自分の意識が混濁したような今の状態が証明している。
アクチュエータ系も無事。バイタルパートはギリギリのところで何とか保っていた。
ネクストの統合制御体も健在だ。現在進行形でAMSと接続しているのだから当然だろうが。
武装はレーザーブレードさえ使えるならそれでいい。

 

私は統合制御体に指示を送り、オーバードブーストをかけた。
その行き先は、ローゼンタール本社ではない。
私が最も見知っていた場所、企業の尖兵となって以来、足を運ぶことすらできなかった我が家だった。

 
 
 
 
 

この行いは謳われない。
ローゼンタール陣営の最高戦力から、ただのイレギュラーネクストへと惨めに落ちぶれる。
惰弱な一個人の感情で全てを捨てた愚かなリンクスと謗られる。

 

それでも、私は構わなかった。

 

私は戦う事に、意義も大義も理由も見いだせなかった、薄っぺらい吸血鬼だ。
でも、ようやく戦う為の理由を初めて見出せた気がした。

 

どうせ、私が消えてもその代替は利く。家名が後世へ継がれるように。
企業の尖兵として、遣い潰されるまで踊り続けるなら
私はこのまま姉や、パチュリー達の影を追い続けたかった。

 

影の先が底なしの奈落で、
その先にどこまで堕ちようと、
先の先がどんなに凄惨な最期だろうと。

 
 
 
 
 
 

だから
帰ろう、みんなのところに。

 
 
 
 
 

 
 
 
 
クリア報酬EC-O307ABfd
背部兵装
フランドール機「フォービドゥン」が装備する、連装レーザーキャノン「EC-O307AB」のカスタムタイプ。
レーザーのエフェクトが変更されている他、全体的な性能が強化されている。