キャラ攻略/綿月豊姫

Last-modified: 2014-12-19 (金) 01:13:24


ルート概要

  • 妹とは打って変わってフリーダムで騒々しい豊姫√。常識に囚われない言動と深い知識からくるご高説が魅力。…ちょっと不安です。バトル要素が少なめなので彼女の圧倒的な強さを見たいなら積極的に連れ歩こう。
  • 一方、月光女学院の秘密へ最も近付くシナリオでもある。彼らの言う『穢れ』。それを克服するための、未だ完遂の見えぬ計画。豊姫の呈する『ある質問』に、あなたはなんて答えるのか。

出現条件

  • 月光女学院の生徒なので普通には会えない…と思ったか!?びっくりするほど簡単に会えるよ!
    その方法は、「輝夜にバイトを始めさせること」。すると「姫様に会いに行く」という名目で豊姫が学院の外に出てくるので、自分も外を歩けば彼女に声を掛けてもらえるようになる。

フレリスト登録条件(戦闘参加)

  • 豊姫が出歩くようになったら、この時たまたま歩いていたPCに色々訊いて来るので、「オススメの○○があるんだが…」と適当な店や観光地を教えることが可能。博物館や機械関係に連れて行くと、そこはかとなく(笑)されるので、水族館や自然公園など「可能な限り自然を再現した」場所へ案内しよう。
    この後、「素敵な場所を教えてくれたお礼に」と言って、手のひらサイズほどの小さな箱を手渡される。そして「決して開けないよう」念押ししてその場を去る。開けちゃいけないものを渡すのは何故に…。
    ここで素直に「開けない」を選択すると駄目。「我慢出来ずに開けて」しまおう。すると不可思議な煙がPCを覆う…が、何も起きない。
    後日、永琳が「個人的に会わせたい人がいる」と言い、豊姫を紹介してもらえる。例の箱は「煙を浴びた者の情報を得る」なんとも都合の良い道具だったのだ。これによって豊姫はPCを調べ、師匠経由で紹介してもらえたのだ。
    こうして、「師匠から直々に許可を得た」ことで堂々とPCと会えるようになった豊姫はニヤリと笑うのだった。これにはえーりんも苦笑い。

ルート攻略

  • ブロントさん主人公ならブロント語に感染していく様子が見れるが、話が長いので気の短いブロントさんは本来ルートに入りづらい…が、豊姫側の好感度が上がりやすいので、総合的な難易度は誰でも変わりない。
    ただし、月人としては限りなく不良に近い彼女でも、やっぱり『穢れ』には慣れない。普段の生活レベルなら気にしないが、明確に殺人を犯すようなら攻略は不可能になる。虫一匹殺さない程度の心構えを持とう。

序盤

  • 依姫と違って輝夜を働かせれば序盤から知り合える。その性能はこの時点でPT入り出来るメンバーとしては桁違いに高い。ある種の初心者救済である。ただし、月人である彼女がPTに居ると他のメンバーの不信感がマッハ。さらに穢れのため人はもちろんだが、動物やモンスターでさえ殺すことが出来ない。援護に専念させるか、殺さずに戦いを終わらせる方法を用意する必要がある。(永遠亭メンバー含め)攻略しない場合は自信が付き次第PTから外すように。
  • 衣玖とは外出以来から多少の付き合いがあるらしく、輝夜ら永遠亭メンバー以外では彼女だけはお互いに相性が悪くない。
  • 陰陽鉄学園生徒でない以上、放課後まで会えないため、攻略に専念する場合は校内では鈴仙や永琳の評価を上げると良い。

中盤

  • 交換留学なんてしないが放課後や休日は普通に会えるので問題ない。
  • 豊姫のフリーダムな言動に振り回されつつも日々を楽しく過ごすPC。そんなある日、永琳から呼び出される。曰く「厄介事は好きか」と。
    何の話か分からないが好きと答えれば「よろしい。豊姫の相手は疲れるだろうけど、嫌いにならないであげてね」と、嫌いと答えれば「なら豊姫と会うのは止しなさい」と返される。個別√に入る直前の警告であり、攻略する気が無いのに好感度を上げていたのなら、以降は一切会わないように。

合成獣計画

条件:ドッグイーター作戦をクリアする。

 

「ドッグイーター作戦……そんなことがあったのね」

 

話を聞いた豊姫は、きょとんとした顔で言った。どうやら知らなかったようだ。

 

「こっちじゃ何も無かったわよ? そんな大規模な作戦でもね」

 

あの研究所で見た資料を思い出していた。
ドッグイーターを生み出した科学者は、元月読命社員だったのが本当であれば、月読命はいい顔をしないのは当然だろう。隠蔽したがるのも無理は無い。

 

「一応、何か大きな騒ぎが起こっているってことだけは、レイセンから聞いたけど……合成獣ねぇ」

 

豊姫は目を閉じて「うーん」と唸っていた。

 

「その人は学会から追い出されたんでしょう? 合成獣なんて、月の理念と相反する研究をすれば、そうなるのは当然よね」

 

理念と反する……のだろうか? そもそも理念というのが分からないが。

 

「生命の冒涜よ。理念以前の問題ね。月の理念というのは、穢れを捨てることにあるのです。合成獣は真逆にあると言ってもいい」

 

きっぱりと言い放つ豊姫。彼女が言うのだから間違いはないだろうが……一番の疑問である、彼に資金援助をした男というのが、未だに不明だ。
何か心当たりはないのだろうか?

 

「ぜんえzんないわ」

 

駄目か……気になるけど、忘れるしかないのだろうか。

 

「ちょっと待って、忘れるのは駄目よ。だって、スネークイーターというのとキメラテックイーターというのがまだ残っているのよね? なんとかしなきゃ」

 

それはそうなんだが、どこにあるかも検討がつかない。

 

公安総局(ジャッジ)が動いているのよね。話を訊けないかしら」

 

無理なんじゃないだろうか? そもそも、生徒が動かなければならない理由もない。

 

「そうよねぇ」

 

二人してうんうん唸っているだけで、話は全く進展しない。
この件についてはやはり忘れるしかないのか。

 

「ドッグイーターがケルベロスなら、他も何らかの伝説のモンスターなのかしら?」

 

ケルベロスを生み出すために、わざわざ他のイヌ科のモンスターを大量に生み出したりしたのだ。
そこに何の意図があるのかは分からないが、他の二体もモンスターを模した合成獣である可能性はある。

 

「キメラテックイーターは……そのまんまキマイラだとして、スネークイーターは何だと思う?」

 

蛇のモンスターと言えば……メドゥーサとか?

 

「ギリシャ神話には詳しくないかしら? ケルベロス、キマイラと来たら、ハイドラよ」

 

その三匹に何かの共通点が?

 

「答えは、エキドナとテュポーンの子供たちということよ」

 

へぇー。それで、エキドナとテュポーンの子供だとすると……?

 

「全く分からないわ」

 

意味ねぇ!

 

「でも何らかの意図はあると思う。テュポーンはギリシャ神話では全ての怪物の父と言われているわ」

 

怪物の父か……。

 

「そう、怪物の父から生まれた魔物たちを生み出す実験……何か感じ入るものはない?」

 

自分がテュポーン……怪物の父になってやる、ということ?

 

「所詮は推測だけどね。もしこれが正解であれば、早急に何とかしないと、ドッグイーター作戦の時みたいな事態がまた起こるんじゃないかしら」

 

むむむ。……でも、結局我々に動く術はないわけだし。

 

「そこに戻ってきちゃうよねぇ」

トリフネ計画

条件:プリッシュルートと同じように、メリーがトリフネの夢を見るようになる段階まで進め、かつプリッシュや永琳らの説得に折れ乗り込むのを諦める。
トリフネに乗り込むと豊姫ルートへ戻ってこれなくなるからだ。

 

「トリフネ? ……ああ、八意様から聞いたことがあるわ」

 

トリフネのことが忘れられず豊姫に聞くと、彼女は自分が知る限りのことを教えてくれた。

 

「連携取れてないのよねぇ、上は。前にも言ったっけ? 生体実験は月の理念から離れたことだって」

 

聞いたような、聞いてないような。

 

「まあいいわ。とにかく、怪しいことは全部月のせいにされては困るのよ」

 

同情に値する。でも実際、色んな黒幕になっているのも事実みたいなんだが?

 

「だから、連携が取れていないって言ったのよ。月の技術力だけ使って、自分の欲望を満たそうとする連中も多いんだから。
 能力さえあれば人間性は問わない、なんて言うのは駄目だと思うのよ」

 

どうやら癪に障ってしまったらしく、ぺらぺらと語りだす豊姫。

 

「カムラナート様もきっと、そういう者たちを監視して管理するのには苦労していると思うわ!」

 

そ、そうなんだろうか? あの変な前髪が苦労している図というのはなかなか想像できない。

 

「うーん、そうね。機会があったらむしろ破壊するべきじゃないかしら?」

 

破壊って、トリフネを? そんなことしていいのだろうか? それ以前に、破壊できるのか?

 

「正直、私もトリフネには興味があったのよ。どれほどの不浄を込めた場所なのかね。だから私の能力で乗り込んでみることにするわ!」

 

ええ!? 大丈夫なんですか!?

 

「依姫と一緒なら、この世界に危険な場所なんて無いわね。準備しておくから、覚悟が決まったら話しかけてね」

 

大変なことになってきたようだ……。

トリフネ突入

依姫と合流し、永琳にも内緒でトリフネへ潜入を試みる3人。
瞬きする間に、集合地点は奇妙なジャングルへと早変わりしていた。
豊姫の海と山を繋ぐ能力によって、一瞬にしてトリフネへ移動したしたのだ。
地上でも見覚えのある動植物も、初めて見る動植物もあった。
水の流れる音はするのに、川は見えない。

 

「この植物で足場全体が埋め尽くされている。恐らく、川も植物の下でしょう。気をつけて進みましょう」

 

依姫の言葉に頷き、ゆっくりと足場を確かめながら、3人は歩を進めた。

 
 
 

大分奥まで訪れると、羽根を生やした獅子のような怪物……キマイラが現れた。

 
  • VS.キマイラ族「ウィングキャット」
    3人しかいない状態での戦闘。
    豊姫・依姫がいくら強いとは言っても、ウィングキャットは非常にHPが高い上、解除不可能のリジェネ状態であり、普通に戦うと撃破には非常に時間がかかる。
    幸い、攻撃力は大して高くない。
    豊姫のスペルカードによる割合ダメージが有効であるため、これを活用しよう。

キマイラを撃破した3人は、不自然さに気付く。

 

「……合成獣は生態系サイクルの形成に必要ですか?」

 

ないですね(断言)。

 

「もう少し、奥へ進んでみましょう」

 

トリフネの奥底に、研究室らしき部屋を見つけた。明らかに人間のためのスペースだ。
その部屋は紙があちこちに散乱し、荒れたような後があった。何かがあったのは明らかであろう。
そこに置いてあった資料には様々なことが書いてあった。

 

「生物の生成……穢れのない人間……デザイナーズベイビー……贋作(イミテーション)……? 何なの、これは?」

 

依姫の言葉に、2人とも返事はできなかった。
どうやらここは、自分たちが考えていた以上の闇があるようだ。
触らぬ神に祟りなし。
身の危険を感じた3人は何も見なかった事にしてその場を後にした。

 
 
 

『合成獣計画』を発生させていると追加会話。

 

「…似たような例を知っているかもしれない」

 

数々の資料を睨みながら思案していると、豊姫が何かを思い出したようだ。
実を言うと、君にも思い当たる節があった。
そう、それは……。

 

ドッグイーター……だとしたら……あった!」

 

豊姫が手にとった紙。
そこにはこう記されていた。

 

キメラテックイーターと。

 

「さっき倒したのが、キメラテックイーター……?」
「いつだったかお姉様が話していたものですか?」

 

ドッグイーターが発動したのは、1、2年前だ。
対してトリフネが宇宙へ打ち上げられたのは十数年前。
もしもドッグイーターとトリフネが関連のある事柄だとしたら、時間が開き過ぎている。
それほど長期的な計画だということか?
しかし、この場にキメラテックイーターの名が残されているのは事実だ。

 

「トリフネ計画は合成獣計画の隠れ蓑だったと?」
「少なくとも、あのキマイラと同じように創られた生命体がいることは確かよ。
 そしてこれは、決して放置してはならない事案だということもね」

 

豊姫はいつになく深刻そうな顔で言う。

 

「どうするんですか、これから? 天狗ポリスか公安総局(ジャッジ)あたりに報告するんですか?」
「それはするべきだけど……より多くの情報を持っている我々は、積極的に動かなければならない義務がある」

 

その言葉を聞いて、依姫は首を縦に振った。
この場を後にし、3人は見つけた資料をガブラスに届けた。

 

「放棄されているステーションとはいえ、不法侵入には違いない。本当なら私は、お前たちを厳しく叱らなければならないことは心しておけ」
「hai! すいまえんでした;;」

 

平謝りの後、ガブラスは独り言のように言った。

 

「……キメラテックイーターか。放置は出来ん、私が上へ報告しておかねばならんな……」
お願いします……

 

ガブラスの気遣いに感謝し、小声で礼を言うと、その日は解散した。

神獣創造

条件:合成獣計画とトリフネ突入をクリアする

 

あの日以来、豊姫は尽くせる手を尽くして調べ物をした。

 

「ドッグイーターの件だけど……その人の援助をした人というのが、月読命の関係者である可能性が出てきたの」

 

え? しかし、そもそもあの科学者は月読命から追い出された身分なのでは?

 

「そこよ。月としては追放したけれど、彼の研究だけは必要だったのよ」

 

月読命は外面を鑑みて彼を追放した、しかし彼の研究……ドッグイーター計画の成果は必要だったので、身分を隠して再度接触した?

 

「今まで私は……月読命の一部の暴走だと思っていた……いえ、そう信じたかったけど、
 ここまでの規模だとすると、一部だけが暴走した結果と考えるのは苦しいわ」

 

ドッグイーターもキメラテックイーターも、金持ちの気まぐれだけで実行できるような規模の計画だとは思えない。
豊姫はこれまで、月の上層部の一部だけが月の理念と反した行動をしたと考えていたが、どうやら違ったようだと、
月のトップであるカムラナートを含めた上の大部分がこの計画に参加していたと言うのだ。

 

「儀式と言うのは形式が重要なのよ。ドッグイーターを始めとする合成獣計画……
 テュポーンの子を選んだことには、儀式的な意味合いがあるに違いないわ」

 

怪物の父になる儀式は、生物としての強化実験である。
テュポーンの子を選んで合成獣として造り出す事で、儀式としての体制が整い、呪術的な意味合いをも持つ事になる。
わざわざそのような面倒な手順を踏むことで、造り出される合成獣は霊力を得ることが出来る。
つまり、科学力だけのアプローチでありながら、合成獣に神性を持たせることが可能になるのだ。

 

「簡単に言えば……神獣を造り出す実験……なんだと考えているの」

 

ここで言う神獣とはイフリートやシヴァのような召喚獣でも、信仰の対象となる神々でもない。
単純に、物凄く強いモンスターという意味だ。
疑問になるのが、何故(穢れを嫌う月読命が)そこまでして神獣を造り出さなければならないのか、ということだが……。

 

「そこなのよねぇ。月読命の科学力は世界でもトップクラス……それなのに、これ程までに面倒な手順を踏んで、そのような怪物を生み出さなければならないのか……動機が分からなくて、確信が持てないのよ」

 

豊姫が言ったように、月読命の科学力と、その保有戦力は世界最強クラスだ。
その月読命が、どうしてこれ以上の戦力を欲するのだろう?
普通に考えれば、絶対に倒したい相手がいるとか……?

 

「だから、それが何なのかということを考えているのよ」

 

豊姫も少々苛ついている様子だ。
自分が今まで信じていたものに裏切られたようで、気が気でないのだろう。
何が何でも、計画の先にいるものを知りたいようだった。

 

「この計画は一番根っこの深い所に通じている気がするわ。闇というやつね」

 

終盤

  • ある日、唐突に豊姫が箱を渡してきた。以前渡されたのとよく似た、しかし一回りも二回りも大きい箱。
    曰く「その箱を開けると煙が出て、その煙は貴方の記憶を抹消する。私と関わった記憶だけを、完全に消してしまう。『穢れ』を取り払うために、私は貴方に玉手箱を開けさせなければならない。でも、そんなことは出来ない…だから、貴方の意思に一任することにしました。貴方は、絶対にその箱を開けなくてはなりません」
    そう言って踵を返してしまった。
    さて…この禁断の玉手箱、どうしたものか。
    警告だが、すぐに開けてはいけない。BADに突入するだけだ。答えを出すのはまだ早い。
  • とりあえず、玉手箱について調べようと考えたが、本当に記憶を消すなら下手に開けることは出来ない。詳しそうな人に訊いてみようか…。


    「結論から言うと、玉手箱の中身は本物である可能性が高いわ」
    そう永琳先生は言って、続けて玉手箱の原理を教えてくれた。
    なんでも玉手箱の煙は魔法を仕込んだものらしい。つまり、玉手箱は現代の魔科学というわけだ。例えば最初に渡された玉手箱には「ライブラ」の魔法が仕込まれていたように、この中には特定の記憶だけを消す魔法が仕込まれているのだ。
    「記憶を消す魔法なんて古今東西いくらでもあるけど…特定のワードを限定して消すとなると、相当に高度になるわ。月光の技術がそこまで進んでいたということかしら…」
    「『穢れ』を取り払うために…そう言っていたのね?となると、豊姫も計画の一端に呑まれている…?」
    一人で考え込まないでもらえますか^^;
    「ああ、ごめんなさい。でも大事なことだから。もう少し考えさせて」
    そう断ってから永琳先生は自分の世界に入り込んでしまった。頭のいい人はやりづらい…。

玉手箱

条件:神獣創造をクリアしている状態で、玉手箱を開ける

 

玉手箱からは白い煙が立ち上り、君の体を包み込む。
このまま浦島太郎のように、自分はお爺さんになってしまうのか?
そう焦っていた時、煙は君の体から何かを吸い取るように黒く染まっていき、玉手箱へと戻っていった。

 

…………体に変化は現れていないようだ。
体は不自由なく動くし、鏡を見てもシワ一つ増えていない。
結局何だったのか分からないまま、次の日は何もなかったかのように学校へ行った。

 

放課後、帰り支度をしていると、永琳先生から呼び出しがあった。
保健室へ行って見ると、大事な話だからと車に乗せられ、永遠亭まで移動する。

 

「開けるなと言ったのに、開けてしまったのですね」

 

呆れたような、しかしどこか嬉しそうな表情で、豊姫が出迎えた。

 

「月は合成獣計画だけではなく、様々な方向から、穢れに対するアプローチを行っています。玉手箱も、その一つ。
 『記憶を通じて穢れそのものをコントロールする』研究の成果です」

 

あの煙は、記憶を芯とすることで、体から穢れを吸い取ってしまうものだったらしい。
記憶を通じて穢れを吸い取ることで、記憶と引き換えに穢れを祓うことが出来る。
実験中、記憶を失う者が続出したが、一部、記憶を保ったまま穢れだけを祓うことが出来た者もいた。
豊姫はその1人である。

 

ちなみに、年齢を芯として穢れをコントロールする術なら、ある程度の完成度があったらしい。
ただ、それでは穢れを祓えなければ老人になってしまい、仮に祓えても赤子になってしまい、成長するまでに再び穢れてしまうという欠陥があった。
そこで、年齢の代わりとなるものとして目を付けられたのが、記憶だったのだ。

 

「……つい最近出来上がったばかりの、動作確認中の試作品なんだけどね」
「失敗していたら警告どおり、月に関わる全てを忘れていたのよ」

 

そんな危険なものを……。

 

「私は開けるなと警告しました。とにかく、開けてしまったものは仕方ありません。
 貴方にも最後の戦いに参加して貰わなければなりません」

 

最後の戦い?

 

「合成獣計画によって打倒したい対象のことが分かった……というより、教えて貰ったのです。
 ほら、ガブラスさんに資料を渡したりしたでしょう? それでバレて……。
 カムラナート様は仰いました。『新型玉手箱を使って、全てを忘れるか、穢れを克服し戦うか』と」

 

玉手箱は今後どうするかの賭けだった。
研究成果の玉手箱が、成功して穢れを祓うことが出来るか、失敗して記憶を失うか、どちらに転んでも月読命にとって損はない。

 

「見事にモルモットね。いい? 玉手箱は成功し、今の貴方に穢れはなくなってしまった。
 つまり、貴方は否応なしに月の計画に巻き込まれてしまったということなのよ」

 

計画というのは、どれのことだろうか?

 

「合成獣を使ってまで打倒したい相手を、貴方たちが代わりに倒せ、ということよ」

 

……なるほど。忘れなかった代わりに、月の計画のそもそもの発端である、元凶を倒せというのだ。
これは無茶振りである。

 

「待って下さい、お師匠様」

 

永琳の言葉を、豊姫が止めた。

 

「月読命だって、闇雲に死地へ送りたいわけではないのです。
 この土壇場で新型玉手箱を試したのも、倒した後で穢れを取り祓ってやるという、彼らなりの誠意なのです」
「誠意を試作品で試しちゃ駄目でしょう……」
「記憶を忘れる方の術はほぼ完璧だったのです。月だってまさか、私も彼も、両方とも成功してしまうなんて考えていなかったのですよ」

 

記憶を芯とする術には、秘訣があった。
年齢は自分だけのものだ。誰かが肩代わりするようなことは出来ない。
しかし、記憶は共有できる。
互いに引き合う思い出があれば、記憶を失うことはないのだ。

 

「お師匠様、私は自分の手で、原因を取り除きたいのです」
「豊姫、貴方は昔から飲み込みが早くて、私の言うことは何でも聞いてくれたわね?」
「今だけは聞けません」

 

笑顔で否定する豊姫を見て、永琳は額に手を当てて呆れていた。
彼女が永琳に反抗するのは、今回が初めての事だった。

 

それで……ずっと気になっていた、合成獣計画で打倒したい相手、というのは何者?

 

「……月の民が本当に月にいた頃、しばらくは平和に暮らしていたけど、ある時になって、慌てて地上へ逃げました。何故だと思う?」

 

ぜんえzん分かりません。

 

「穢れの塊のような生物が、月で眠っていたことが分かったからです。
 そいつは恐ろしく強く、当時の月の民では手も足も出ませんでした。
 その強さと見た目から、誰ともなく伝説に語られる竜……神竜と呼ばれるようになったのよ」

 

神竜……それが自分と豊姫に与えられた任務、最後の戦いの相手。

 

「穢れ祓いの玉手箱は成功した。これから月の民も、穢れを捨て去る者が増えていくでしょう。
 残る問題は唯一つ……月を支配する神竜だけ。神竜を倒すことさえ出来れば月の民は……月へ帰還することが出来る」

 

月への帰還を賭けた戦い。月の民にとっての悲願。
あの月読命も、今回ばかりは最大限のバックアップを尽くしてくれるだろう。
神竜を倒すことさえ出来れば……。

月の海の竜

合成獣計画最後の産物であるハイドラに似た姿を持つ怪物、スネークイーターを含む、月読命が投入できる全ての戦力が集った。
依姫はもちろん、カムラナートとその弟エルドナーシュも前線に立っていた。永琳や輝夜はいなかったが……。

 

月にいる神竜。
それこそが月読命が全ての戦力を使ってまで撃破したい相手だ。
穢れを祓う方法は、限定的ではあるが目処は立った。
残った障害は神竜だけなのだ。

 

「諸君! 決戦の時は来た! 今こそ我々の故郷を取り戻す!」

 

カムラナートの号令に合わせ、豊姫が能力を発動する。
一瞬にしてそこは、幻想的な青い風景へと変わっていた。
よく知った月の表面を水らしき液体が覆い、月全体を海にしているようだった。水にしか見えないが、その上に立つことも出来た。
明るい海の底のような、宇宙の彼方のような、地球では見られない光景で、綺麗ではあったが、どこか不安を掻き立てられる場所だ。
木の葉は揺れず、水は流れず、獣は吠えず、鳥はさえずらず、虫も鳴かず。
生物の鼓動の一切感じない世界。

 

「ここが……月?」
「神竜が月を作り替えたというのか?」

 

それは月の民としても同じで、皆が皆、この場から浮いていた。

 

唯一つ……月の海の真ん中で、彼らが来るのを分かっていたかのように佇んでいた、その竜を除いては。
穢れの塊だと聞いていたが、竜はむしろ、神々しいまでに浄化された姿に見えた。一切の穢れを寄せ付けぬ神のように。

 

だが……死の臭いを纏わぬ竜は、どうしようもなく、我々とは相容れぬ存在だと思えた。
余りにも綺麗すぎる竜は、幽霊のような、この世のものではない者の気配を発していた。
ただ人、いや、あらゆる生命体が畏怖する姿形をしているかのようだった。

 

スネークイーターが神竜へ三つ首を向け、毒霧を放つ。
だが神竜は毒霧を吸い込むと、月の海から大津波を発生させ、スネークイーター諸共、軍勢を飲み込んでしまった。

 

平らになった月の海は、すぐに静けさを取り戻す。
神竜は焦点の定まらぬ目で、虚空を見つめていた。
目の前の海からスネークイーターが飛び出し、牙を剥いて襲いかかっても碌な抵抗もなく受け入れた。
月の大気圏外から隕石が降ってきてスネークイーターを押し潰そうとも、神竜は動かなかった。

 

「……なんなんですか、あれは?」

 

海から這い出た依姫が不思議そうに呟く。
神竜というのが、全く分からない。
何を目的としているのか、何故あれほどまでに強いのか。

 

「分からんのか? 奴の内にある幾万幾億もの死が?」

 

同じく体勢を立て直したカムラナートは、神竜の内に隠された死の臭いを感じ取っていた。

 

「死……?」
「どうやら月の民だけではない、どうやってかは知らぬが……奴は何億もの命を吸い続けた邪悪竜だ」

 

神竜は穢れの塊である。
今の神竜から穢れを感知できないのは、長き間、この月に神竜以外の生命体がいなかったためだ。

 

「ぷはぁ!」

 

豊姫がやっと海から顔を出した。

 

「お姉様……」
「ごめんね。この人をたすけなきゃと思って」

 

豊姫は海面から君を押し出すと、自分も立ち上がった。

 

「月の民の悲願……月の都の為にも……貴方にはここから出て行って貰うわ……」

 

その言葉を知ってか知らずか、神竜は咆哮もなくこちらを見つめていた。

  • VS.神竜
    豊姫、依姫、カムラナート、控えにレイセンとエルドナーシュがいる固定PTでの戦闘となる。
    各種精霊魔法IV系とコメットを交え、苛烈な技の数々を使用する。
    「カタクリスムヴォルテクス」はHPを1だけ残す範囲技。魔法ダメージであり、シェルを使っておけば半減できる。ただし、リフレクによる反射は出来ない。
    「コズミックブレス」は暗闇や悪疫などの状態異常を付加するブレス。こちらもシェルで軽減可能。こちらも反射は不可能。
    精霊魔法への対策も含め、シェルは可能な限り維持しておきたい。
    HPが50%を切ると、魔法がV系とメテオに変化し、ラストスペルも使用するようになる。
    「スーパーノヴァ」は死の宣告の効果があり、非常に危険。
    なお、浄化扇などの割合ダメージは当然利かないものの、実は穢土の竜宮による割合ダメージだけは有効である。
 

神竜は……数多の命を吸い続けた異世界の神が変貌した姿である。
そのことを、この世界の誰も知る由はないが、神竜は斃れた。
変わり果てた姿ではあるが、月は今、神竜の支配から解き放たれたのだ。

 

「……月か」

 

カムラナートは無感情に呟いた。
彼らが見る月は、彼らが常に思い返していた月とは、余りに違っていた。

 

「……諸君。今一度、地上へ戻ろう。我らが月に帰るのは、いささか早すぎたようだ」

 

勝利の喜びもなく、皆が豊姫の周囲に集まる。
地上へ戻る前に、皆が今の月を見渡した。

 

海に沈んだ青い月。
とてもではないが、こんな所に暮らすことは出来ない。
これが神竜のもたらした変化であれば、月の民が穢れを捨てている頃には、元に戻っていれば良いのだが。

戦いの後は

ぐてー、と豊姫が帽子をそばに置き、机に突っ伏していた。

 

「お姉様……今まで通りに戻ってしまわれましたね……」
「だってー、特にすることないんだもーん」

 

自由な姉と、真面目な妹。慣れ親しんだ光景に戻っているのを見て、君は苦笑した。

 

神竜との戦いの後、それまでの忙しさが嘘のように平穏が戻っていた。
例の新型玉手箱は量産まで数年ほど時間が必要らしく、少なくともそれまでは地上で今まで通りの生活が続くだろう。
最も、数年程度で青い月が元に戻るかは、大いに疑問だったが……。

 

「青い月を元に戻せるかの調査があったでしょう?」
「調査隊はしばらく月に残るけどお前は帰っていいぞって。それに、月と地上を行き来できるのは何も私だけじゃないもの」

 

腕を組んで仁王立ちの依姫に対し、豊姫は机に突っ伏したままで返事をしていた。
目的意識を持つ事でキリッと頑張っていた豊姫は、その目的が達成された事でこれまでのぐうたらな姫に戻っていたのだ。
がっかりしたような、むしろ安心したような……。

 

「楽しい事ないかしら……」
「デートでも何でも行って来たらいいじゃないですか? 今みたいにぐにゃーってしてるよりはマシですよ」
「そうねぇ……」

 

豊姫は顔を上げ、君を見た。
じぃっと見つめられると、こちらも目を離せない気分になってしまう。

 

「……うん。ここの所真面目なことばっかりしてたからね。今日からはまた遊びましょう!」
「いえ、仕事はして欲しいのですが……まあいいです、少しくらいなら」
「ねーどっか連れてってー」

 

机に上半身を預けたまま、腕だけを上下にパタパタと動かした。

 

「あ、そうだ。海がいいわ、海が」

 

海って……つい最近海に関して嫌なことがあったばかりな気がするのだが。

 

「あんなのは海じゃないわ、ただの液体の集まりよ」

 

月で見た海は、豊姫のお気に召さなかったらしい。確かに、楽しい場所ではなかった。

 

「海っていうのはもっと、沢山の生で満ち溢れた鮮やかな場所の事を言うのよ」

 

青一色ではない、赤も黄も緑も、カラフルな魚や海藻で溢れる場所こそ海だ。
生命の誕生した場所。
生き、産み、死に続ける生命たちの地獄であり、楽園でもある。
地上の海は、それこそ溢れんばかりの穢れで満ちた場所だ。
しかし、豊姫は、そういう海を嫌いにはなれなかった。
魚も、亀も、海藻も、貝も、全て豊姫の好きなものだ。
子供の頃、絵本で読んだ、竜宮城。
乙姫様みたいに、海の生物たちと一緒に暮らすのが夢だった。
その夢は、残念ながらまだまだ叶いそうにないが、今はそれでも構わなかった。

 

気付いたら最近は、彼に話を聞いて貰うのが楽しみになっていた。
うんちくでも、持論でも、真剣な話でも、いつもちゃんと聞いてくれた。
八意様は、依姫のことを「言う事を何でも吸収していった」と評したが、それがこんなに嬉しいことだとは知らなかった。
まあ、彼はちょっとわずかに簡単に私の話を信じ過ぎるので、少しは疑う事を覚えた方が良いかもしれないが……。

関連イベント一覧

始業式/入学式

  • 陰陽鉄学園生徒でないので当たり前だが会えない。当の本人は自分の学院の始業式に参加していて外出もしていない。

デート

  • 水族館が好き。幻想的に泳ぐ魚たちを見てしっとり癒されよう。また食い意地の張った一面もある。本当は自分で用意できるものすら面倒がってねだることもあるが、素直に応じてあげるといい。

夏休み

  • ヒャッハー!海だー!
    海へ連れて行くと年齢を忘れさせる程度にはしゃぐ豊姫が見れる。また、好感度が高ければてゐ(とザイド)・鈴仙・永琳・輝夜・依姫・レイセンらを各自誘うことも可能。誘った人物によってセシルとかゴルベーザとかも付いてくる場合もある。
  • そろそろいい時間だと他のみんなが帰り支度をしている頃、豊姫は夕暮れに染まる海を見ていた。
    片付けに参加しない辺りはいつも通りか・・・何してるんだ?
    「ちょっと、ね。海を見ていると考えてしまうのよ、あの人は今でもこんな海の上にいるのかなぁ…ってね」
    あの人?
    豊姫は少し考え、目を瞑って語り始めた。
     
     
    …むかーしむかーし。
     
    ある所に海沿いに暮らす2りの女の子がいて、2りは姉妹でした。
    姉妹の両親は仕事で忙しく、なかなか一緒にいられませんでしたので、親代わりのお医者さんに育てられました。
     
    ある時、お姉さんが外へ出てはいけない、という約束を破って出かけていってしまいました。
    それは、家から浜辺で倒れている男の人を見つけたからです。
    彼は漁師だと言い、嵐で舟が沈んでしまい、ここまで流された、と言いました。
     
    それから彼は、家の外のことを良く知らない女の子に、自分が見てきた色々なものの話を聞かせてくれました。
    漁師なので大体は海やお魚の話でしたが…女の子にとっては、そのどれもが始めて聞くような話でした。
    だから女の子は彼の話を夢中になって聞いていました。
     
    気付けば、もう日が沈もうとしています。
    帰らないと、怒られる。
    女の子が慌てて言うと、彼は優しく笑って、5色に光る綺麗なものを渡しました。
     
    これは僕が見つけた5色に光る亀の甲羅だ。僕の宝物なんだ。これを君にあげるよ。
    大事なものなんでしょう?
    大事なものだからだ。君が海を好きでいてくれるように、おまじないをかけておいた。
    ありがとう、お兄さん!
     
     
    …終わりか。
    「ええ、終わりです。ちなみにこれが証拠ログ…代わりのアイテム」
    豊姫は5色に光る甲羅を見せてくれた。
    「あの人がどこでなにをしているかは知りません。でも、あの人のおかげで、私は外の世界を強烈に見たくなったの」
    そう語る豊姫は、なんだかいつもより綺麗に見えた。
    豊姫…もしかして、その人のこと…?
    「ふふふっ…子供の頃の話です」

文化祭

  • √に突入していれば自分の学院は放って置いて陰陽鉄学園の文化祭に突撃してくる。見覚えの無い人、しかし賑やかな喧騒の中ですぐに周囲と打ち解けていく。
    焦る鈴仙と呆れる永琳を尻目に一人、場合によっては輝夜と二人で散々に暴れまわるのだった。
    「…豊姫さん、何でこっちに…」
    「あら衣玖。いいじゃない、ウチの文化祭は静かでいけないんだもの。あ、この桃頂くわ」
    「ちょ!?それ私のよ返してよ!」
    「天子さんは天子さんで自分のクラスの出し物に専念して下さいよ!」
    「ああ、楽しいわね~」

修学旅行

期末テスト

冬休み

クリスマス

年末年始

バレンタインデー

ホワイトデー

終業式/卒業式

エンディング一覧

TRUEEND 『蒼の宴』

豊姫の好感度がMAXで、関連イベントを全てクリアしている。

 

卒業式を終えて数ヶ月経っても、月は未だに青いまま。
地上から見上げる月は全く変わっていないが、月の都などは遠い目標だ。

 

今、目の前に広がる海は透き通る程で、美しいサンゴ礁の様子がよく見える。
ここはネ実市ではなく、このサンゴ礁が有名な南の島だ。

 

「海ねー!」
「海ですね。姫様、準備運動しないと!」

 

軽装の輝夜が砂浜を駆けるのを、鈴仙が追いかける。永琳が困ったような顔を見せ、てゐがマイペースに2人に近付いていく。
その後ろを歩く豊姫と依姫とレイセン。
豊姫が振り返ると、更にその後ろを、大量の荷物を運ぶゴルベーザと、もう一人の男子の辛そうな姿。彼らは既に生徒ではなくなっていた。

 

熱い太陽が照りつける真夏の日、一行はこの島まで旅行に来ていた。
新生活に慣れつつある時期だが、同時に、皆一抹の寂しさも感じていた。
だからこの日に、この面子で旅行なのだ。

 

相変わらず月光女学院は孤立していたが、今までずっとそうだったのだ。豊姫は無理に変わることはないと考えるようになった。
元より、革命は豊姫の目的ではなかった。
人の性格というのは定義付けできるものではない。
そこに月の民も地上人も関係ない。
どこで産まれ育とうと、個性は違ってくるのだから、我慢して相手や周りに合わせることはないのだ。

 

神竜は倒れ、穢れの除去についても、ある程度は目処が立った。
月読命はその目的の半分を解決し、後はリスクのない穢れ除去の方法を開発するのも時間の問題に思えた。
それが何年後かは分からないが……もう、月読命が外部に迷惑を掛けるような事はないだろう。
後は月読命だけで解決できる、すべき事柄しか残っていない。
今更、体制を変えるような必要はない。

 

「何を考えているんですか?」

 

依姫の声に振り返ると、既に水着姿になった輝夜と鈴仙とてゐ、それとレイセンが皆を呼んでいた。
ボスッ、という鈍い音がした方向を見ると、ようやく荷物を運び終えた男子陣が、既に汗だくになっていた。

 

「いえ、これからの身の振り方をね」

 

豊姫の返事に、依姫も少し寂しそうな顔をした。

 

「……月に帰るか、地上に残るか、ですか?」
「それか、月まで連れて行くかね」

 

第三の提案を聞いて、依姫はきょとんとした。
依姫は、豊姫と離れ離れになるかもしれないと不安がっていたのだ。
永琳とはこうして時折会えても、一緒に暮らすことはできないと理解していた。
姉も師匠と同じになってしまうのかと、覚悟していたのだが……。
少し考え、息を切らしながら休んでいる男子を見て、呆れた、という表情になる。

 

「……じゃあ、それでいいんじゃないですか?」
「まあ、考える時間くらいはあるでしょう? 生まれ故郷を離れることが本当に幸せなのかは、よく考えないと」
「よく言いますよ。一瞬で行き来できるのに」
「……あれ? じゃあ問題ないか」

 

そんな気の抜けた言葉に、依姫は大きくため息をつくと、レイセンの声に答えて海の方へ歩いて行った。

 

自分が会得したこの能力があれば、月と地上を繋ぐことができる。
豊姫も流石に、そんな事は分かっていた。
しかし、事はそこまで簡単ではないだろう。
月への帰還が完了すれば、地上との連絡は取りづらくなると考えるのが自然だ。
無理をすれば行き来はできるだろうが、それは自由にとは言わない。

 

……とは言え、自分は幸せだろうな、とも思っていた。
竜宮城の乙姫様は、浦島太郎とは二度と再会できなかったのだ。
多少の面倒は踏まなければならないだろうが、それに比べれば、自分の悩みなどちっぽけなものだろう。

 

この穢れた青い海で寿命を過ごすのも、月から永い間青い星を眺めているのも、どちらも悪くないと思える自分が好きだった。
好きな人とは一緒にいたいが、彼が故郷に居たいと言うなら仕方がない。だけど、乙姫様と同じ轍を踏みたくはない。
それなら、自分が浦島太郎になるのも、やぶさかではなかった。

GOODEND 『忘却の箱、賢者の杯』

豊姫の好感度がMAXであり、なおかつ豊姫と友好度MAXのキャラが9人いる。また、月光女学院関連のイベントをコンプリートしていない状態で玉手箱を開ける。

 

その箱には、とてもとても沢山の「いやなもの」が入っていた。
「いやなもの」は体に纏わり付いて、そして語りかける。

 

『忘れてしまえよ』
『そうすれば、もうあんな面倒臭い女に付き合う必要も、辛い戦いに巻き込まれる事もなくなる』
『楽になれるぜ?』

 

お前頭悪いな。
豊姫は至高のリア♀だから面倒臭いなんて思わないし、雑魚相手の戦いなんて辛くもなんともないんですわ?お?

 

『本気かよ』
『死ぬほど面倒臭いぞ』

 

うざいなお前喧嘩売ってんのか?
ネガキャンとか要らないですストレス溜まるので^^;

 

『…どれほど辛い思いをしても、報われないかもしれないんだぞ』
『それでもいいのか?』

 

心配は要らにいぞ、『俺』

 
 

「おおーい!そろそろ宴会が始まるわよ~」
「早く来ないと貴方の分まで豊姫様が飲んでしまいますよ」
「飲まないわよ!」
「お姉様は食い意地張りすぎなのです。ダイエットでも始めてはどうですか?」
「必要ないもん!」
「ほらほら、何してるか知りませんが、早く出てこないと愛しの人が泣いちやいますよ」
「依姫、何だか最近嫌な性格になった!?」
「いえいえそんなことありませんよ。ただちょっと穢れに触れて変わったかもしれませんねー」
「都合よく解釈してるだけでしょう!?は、はやく助けにきてー;;はやくきてー::」
「本当に来ますかね」
「来るに決まっているでしょう?」

 

「何たって、私の…」

 

俺には…至高の仲間たちがいるからな。

NORMALEND 『「還」る境地は、未だ見えず』

「…失礼します、八意様」
永琳の元を一人の少女が尋ねてきた。豊姫だ。
「…首尾はどうだった?玉手箱は上手くいったのかしら」
あの玉手箱は永琳が渡すよう指示したものではない。それでも身内のことだ、気にならないわけもなかった。
「ええ、間違いなく作動しました」
「そう…じゃあ、彼の記憶は…」

 

「消えないよ」
「えっ?」
「あの人との思い出も、この想いも、何も消えてない」
「豊姫・・・?それはどういう…」
豊姫は踵を返し、扉まで引き返す。

 

「だって…私の記憶までは消えていませんもの」
くるりと振り返り、にこやかに笑う。
「記憶は無くても、思い出は消えていません。だから」
その顔には、目一杯の悲壮と決意が込められていた。

 

「必ず、月光の今の体勢を壊します。私とあの人の関係を、最初からでもいい、やり直せばいいんです」

 

「私は…絶対に諦めません。何度だって戦います。何度敗北を味わおうと…いつか、きっと勝ちます」

 

「…辛い戦いになるわ。なにせ、単純な力では決して解決できない。勝利するまで命が繋がっている可能性は、極めて低い。その上、彼がああでは万全の体制も取れないのよ」
「それでも…戦います」
「…そう」

 

当事者の一人が記憶を失いながらも、その裏で二人の女が強い誓いを立てた。
ハッピーエンドは、未だ遠くに…。

BADEND『「返」って見れば、こは如何に』

遂に意を決して、豊姫の渡した玉手箱を開けるPC。
不気味な色の煙が覆い、そして…………


目を開けると、そこは永琳がいた。彼女の言うには、PCは気を失って倒れていたのだという。
「何か、気を失うような心当たりは?」
いや…ぜんえzん…。
「本当に、何か覚えてない?」
さっぱり分からない不具合。むしろ俺が聞きたいくらいなんですがねぇ…?
しきりに訊いてくる永琳。いくらなんでもしつこ過ぎやしないだろうか。
とうとう堪えられなくなったのか、目の前に箱を出す。
「…この箱に、見覚えは?」
……無い、な。完全に。
「…そう。悪かったわね、変にしつこくして」
そして諦めたような、落胆したような顔でこちらを見て…それっきりだった。


次の日から、いつも通りの学園生活が始まる。なんら変わらない、全く普段の学園生活が。
何か、忘れている。大切な何か。でも決して思い出せない。
時が過ぎれば、何かを忘れていたことすら忘れるだろう。
そうすれば、この胸のもやもやも消えるはずだ、いつか…きっといつか…。

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