【22話 這い寄る念動の影】
「この1週間、"念動"について秘密裏に研究しましたか?」
"ミッドポッター"に詰め寄る"ハイランド"は、さながら尋問のようであった。
広い荒野の何もない場所に、"脱国派"の人々がそこらじゅうで拘束されている。それを指揮した"ガズエル"も捕まり、"ミッドポッター"も捕まっていた。
「してない……する理由がない」
"念動"の話題になった"ミッドポッター"は縄で縛られたまま、急に神妙な雰囲気になった。
"念動"というのは、少し前に発生した大災害"星来災禍"で発生したエネルギー。"ミッドポッター"はその言葉を少し忌避しているようであった。
「……何か隠してるんじゃない?」
彼と"ハイランド"の会話の側に居る、"ゼレナ"がよろけながら肩を掴みかかった。
彼女を支えている"アラバン"は少し驚いた。
「おい、お前……」
「……!」
「情報で言う"アラバン"がここに……?大丈夫ですか」
"アラバン"が"ゼレナ"を引き留めようとした時、ふと横からその腕を掴み取る者が居た。
フードを被った剣士。その名は"アスロナ"だ。
「みんなと同じ所に送り届けてあげて」
「ああ。……従順にしてれば何もしない。来い」
"ゼレナ"の指示で、"アスロナ"は"アラバン"を連れ去った。"アラバン"の支えを失った彼女だったが、案外大丈夫そうに自立していた。
その間も、"ハイランド"は"ミッドポッター"と話していた。
「本来あなたは1級ペナルティに処される為、情報を開示できませんが、今は技術者が少ない」
「ああ、聞くよ」
すると"ハイランド"は、目を瞑ってゆっくり頷いた後、上空にある、うっすら見える黒い膜を指した。
「……長い仲だ。あなたを信頼しています。問題はまぁ、空のあれです」
「"割れ空"。念動の一番アホな現象だ。多分まだフェーズ0」
「……まあ、"星来災禍"を起こすアホは普通居ません。考えられるのは……」
「……うん。思い返せばこっちも情報あるね。脱国派に明らかに"念動"使ってそうな猫耳が居て、"元凶を止める"的な事を言ってたよ。多分、元凶は……」
「「"ハルマ"」」