にとり「どーも、こんにちはスピンカッパーでーす」
雛「ええ」
にとり「よろしくお願いしまーす」
雛「よろしくお願いしますね。はいはいはい」
にとり「キュウリだいすきー。ひっひひー」
雛「ああそうですか」
にとり「嘘ですけどね」
雛「嘘か…」
にとり「あのーね、頑張って行きたいけども」
雛「嘘じゃないでしょ」
にとり「どうでもいい食べ物なんですけども」
雛「あなたからキュウリとったら何も残らないでしょ」
にとり「絶滅してしまえばいいんです」
雛「絶滅とか言ったらダメよ」
にとり「いやー、今日はですね」
雛「はいはい」
にとり「しめやかな空気で行われていますけどもねー」
雛「しめやかじゃないでしょ」
にとり「あなたも盛り上げていきましょうよ」
雛「ぶっ…ものすごくキュウリが飛んできた…」
にとり「ふふふ」
雛「ごめんなさいね」
にとり「ねえ、客席からすすり泣く声が聞こえましたけども」
雛「いやいや、泣いてないですよ…」
にとり「うん、さっきからね」
雛「はい」
にとり「ツッコミが弱い」
雛「え?」
にとり「キュウリ飛んできてごめんなさいはないでしょ」
雛「いやあねえ、食事中の人もいるかもしれないから」
にとり「あのねえ、雛は優しすぎるのよねえ」
雛「ああ、そうですか?」
にとり「うん、あなた怒ったことないでしょ?」
雛「そうねえ」
にとり「厄が来ないからよ、だからイラッとすることがない」
雛「ああ…」
にとり「怒りを覚えないと説教もできませんよ」
雛「うーん、なるほど」
にとり「そこで奥さん」
雛「おお!」
にとり「そういうときはにとりのシュシュ」
雛「お!なんですかこれ?」
にとり「このシュシュをつけると人並みの厄を受けることができます」
雛「え?」
にとり「厄を集めるだけじゃダメ。厄を出しそうな妖怪。人間を直接注意して厄を根本から消していこう」
雛「いやいや、そういう原理じゃないですけど、でも厄を受けるっていうのは興味がありますねえ」
にとり「でしょ?つけてみて?」
雛「はいはい、未体験の世界です」
にとり「体験するなら山の麓にある商店」
雛「あぁ、なんか店員さんの態度が悪いって有名らしいですね」
にとり「ねえ、あそこの店員はほんと態度悪いですからね」
雛「ええ」
にとり「あいつらだらだらしてるでしょあいつら」
雛「たまにいますねそういうの」
にとり「奥で携帯タバコ吸いながら携帯ばっかいじってですね」
雛「そうそう中にはね」
にとり「あいつらだいたい楽して金稼ごうってスタンスってやつらばっかりですからね」
雛「うん、たまにいますね」
にとり「あれくその集まりですからね」
雛「うん、あなたにはね」
にとり「だいたいね、親の教育がわるいんですよあいつら」
雛「まあ、あなたには」
にとり「だいたい親もイカれてると思うんですよ」
雛「うん、まあまあ」
にとり「だいたいね、親はね、妖怪相手の娼婦が多くてね」
雛「言い過ぎでしょ!何よ妖怪相手の娼婦多いって!勝手な想像でしょ!」
にとり「私もホントはムカついてないからさ、文句は何も浮かばないのよ」
雛「言い過ぎでしょ!」
にとり「雛に乗っかろうと思って」
雛「乗っかり過ぎなのよ!だいぶ上まで行ったよ、怒りが」
にとり「ごめんごめん、でもねえ雛はやさしいし、そういう目にあったことないから注意できないでしょ?」
雛「なかなか機会ないですね」
にとり「でもそれじゃあ、あいつらのためになんないよ」
雛「あぁ、そっか」
にとり「じゃあ、練習しよう」
雛「なるほど」
にとり「私態度の悪い店員をやりますから」
雛「あぁ、わかりました」
雛「さあ、今日はおでんでも買って帰ろうかしら」
にとり「おーこらカラーボールばーん」
雛「わぁ」
にとり「カラーボールもういっこばーん」
雛「ちょ、ちょっと」
にとり「お前何回転してんだよ」
雛「やり過ぎでしょ!」
にとり「回転するなよ」
雛「待って!態度悪いじゃなくて頭おかしいでしょ!何よカラーボールばーんって!」
にとり「誰しも一度は投げてみたいじゃない?」
雛「ダメでしょ!」
にとり「どうなるんだろうみたいな?」
雛「いや頭おかしいですよ!」
にとり「そうだね。ちょっとじゃあ」
雛「ちが…態度悪いでおねがいしますよ」
にとり「態度悪いね。はいはい」
雛「さあ、おでん買って帰ろうかしら」
にとり「ふふふふ」
雛「いらっしゃいませも言わない」
にとり「ははははは」
雛「すいません。すいませーん」
にとり「は?」
雛「ちょっとまって!ねえ、ちょっと!」
にとり「はい?」
雛「ねえ何今の愛想笑い?」
にとり「あぁ、はい。はいいらっしゃいませ」
雛「雑誌を読まない!」
にとり「ああこれ基板です」
雛「基板!?何みて笑ってんのよ!マニアックすぎるわよ!」
にとり「はい。はい」
雛「おでん」
にとり「え?」
雛「態度悪いわねあなた。おでんいただけるかしら?」
にとり「どうぞどうぞ」
雛「どうぞじゃないわよ!セルフサービスじゃないでしょ!取らないといけないでしょあなたが!」
にとり「ちっ」
雛「あっ…えぇ、あなた今舌打ちしたでしょ?」
にとり「してないですよ」
雛「何したのじゃあ?」
にとり「舌鼓」
雛「なに!?何を食べてんのよ今?」
にとり「これ」
雛「あなた接客中に…」
にとり「だって私にキュウリとったら何も残らないじゃないですか」
雛「ぺっぺっぺっやめなさい!ちが…おでんとって、大根」
にとり「あーん」
雛「ってあつあつあつい。熱いでしょ!カウンターで食べたら、冷温器にいれなさいよあなた」
雛「えーとね、ちくわ」
にとり「ちくわないです」
雛「いやあるじゃん。ほらちくわ」
にとり「それちくぶです」
雛「ちくわでしょこれ。牛すじ?」
にとり「ないです」
雛「いやあるじゃない?ほら刺さってるでしょ」
にとり「ないです」
雛「あるって!これ何なのじゃあ?」
にとり「ちくわぶです」
雛「ちがうって」
にとり「ふっ」
雛「あなた、ちくわぶ知らないでしょ?」
にとり「知ってますよ。自分中学と高校」
雛「ちくわ部か」
雛「あなたちくわ部…ちくわ部…」
雛「なにするのちくわ部で?ねえ?はい!ちくわ部ファイトー!先輩ファイトー!ってするの」
にとり「50文になりまーす」
雛「相手してよ!カウンターでちくわ部したのよ、あなたのために!」
にとり「はいどーぞ」
雛「はいじゃないわよ!ふたは?汁が溢れるでしょ!」
にとり「ふた無いです」
雛「ふたあるじゃないの!そこ!それなによあなた!ちくわ部?」
にとり「これふたでしょ」
雛「わかってるわよ!」
にとり「ふたをちくわ部ってあたらしいね」
雛「いや、あなたのために言ったのよ!ふたしてよはやく!」
にとり「はい、100文です」
雛「なんで値上がりしたの!50文も!」
にとり「値段ですから」
雛「あなたふざけてるでしょ!ああ、もういいわ。上の人を呼んで?」
にとり「え?」
雛「上の人を呼びなさい!」
にとり「な、なんですか?上の人って?」
雛「偉い人がいるでしょ?」
にとり「神奈子様とか?」
雛「偉すぎる!こんなところに呼べないでしょ?こんな小さな商店に。店長ですよ店長」
にとり「ラスボスクラスの?」
雛「ラスボス…ラスボスとかじゃなくて、店長!」
にとり「いないです」
雛「いるでしょ!裏にいるでしょ?話し声が聞こえてるじゃん!」
にとり「あれ、人形です」
雛「は?」
にとり「AIの導入を頼まれたんです」
雛「バイト先に持ってきちゃダメでしょ」
にとり「でも、彼女の夢を叶えてあげたいんです」
雛「ああ、人形と会話してもっと愛を深めたい。わかるー。わかるか!」
にとり「メディスンやあんたみたいに人形は簡単に喋らないんだから。待てないのよ彼女はAIを入れてあげないと」
雛「何の話よ、いい加減にしてよあなた。店長に連絡しなさい」
にとり「いやー連絡」
雛「電話しなさいよはやく電話!」
にとり「ちょっと携帯止められてるんです」
雛「はぁ、あなた携帯止められてるの?」
にとり「いや店長が」
雛「なんで店長止められてるの!いい歳でしょ!」
にとり「そんなこと言われても」
雛「あなた、じゃあ住所教えなさいよ店長の!」
にとり「わかんないです」
雛「分かんないってなによ!教えなさいよ住所を」
にとり「店長、住所不定」
雛「はい?店長のくせに」
にとり「住所不定、無職」
雛「無職ってなによ?無職じゃないでしょ!店長でしょ?」
にとり「透明」
雛「透明!?なにそれ馬鹿にしてるでしょ!店長を呼びなさいはやく」
にとり「店長は今無理です」
雛「じゃあ誰なら連絡取れるの?」
にとり「船長なら」
雛「はい!?」
にとり「船長なら繋がりますけど」
雛「連絡してよ!私何を話すの船長と、ねえ?」
にとり「波の話とかもーれいやっさん元気とか」
雛「もーれい…おもしろい船長に連絡しなさいよ!電話しなさいよ」
にとり「船長電話取れないんですよ」
雛「なんで?連絡できるって言ったじゃないの船長!」
にとり「船長、あのー、手がフックに。電話、電話取れないんです」
雛「フック船長か?ねえこっちの手があるでしょほら」
にとり「こっちもフック船長なんです」
雛「ダブルフック船長か?」
にとり「ダブルフック、つり革!ってギャグに定評がある」
雛「あなたふざけてるでしょ!いいわおもしろい。船長呼びなさいよ。呼びなさいよ船長を」
にとり「はい。おまちください」
村紗「ひゃっほーい、つり革!」
雛「あのーあなたは?」
村紗「えぇ、船長の村紗です」
雛「そうですか。あのねえ、さっきの店員全然態度がなってない!どういうことですか?」
村紗「それ私に言われても」
雛「ですよねえ」
村紗「船長ですから私は」
雛「船長…ですよね」
村紗「どうしたらいいのか」
雛「すいませんこんな時間に」
村紗「もういいですか?」
雛「いいですはい。ありがとうございました」
にとり「どうでした?」
雛「誰今の?船長か?」
にとり「はい」
雛「すぐに来たじゃないの」
にとり「ねえ、まさか来るとはねえ。私も驚いた」
雛「ちが…もういい連絡します本部に連絡しますよ」
にとり「へ?」
雛「本部」
にとり「本部!?国連の?」
雛「違うわよ!なんで国連の?」
にとり「あ、じゃあ上海アリス?」
雛「はい?本部すぎるでしょそこは!ああ、いいわ。連絡するわそこに」
にとり「すいません」
雛「本部に連絡するよあなた」
にとり「本部は本部はやめてください」
雛「全然反省してないじゃないの」
にとり「すいませんすいませんでした。完全に私が悪かったです」
雛「あなた…」
にとり「本部は勘弁してください!」
雛「はぁ、もうあなたねえ」
にとり「6割私が悪かった」
雛「4割は!私の4割何が悪いのよ!」
にとり「いや、すいません。お詫びと言ってはなんですけど」
雛「何?」
にとり「こちら、500文以上買わないと引けないくじ」
雛「何も当たんないでしょ!」
にとり「いや超高確率で当たるようになってますから」
雛「本当なのあなた?」
にとり「引いてください」
にとり「これハズレですね」
雛「おまえ!超高確率って言ったじゃないの!」
にとり「いやー厄受けてますねー」
雛「受けてますねって」
にとり「いやこれでもうハズレはなくなりましたから引いてください」
雛「はい。じゃあこれ」
にとり「おめでとうございます。一番いいものが当たりましたよー」
雛「本当に?何が当たったの?」
にとり「これ、ちくわぶです」
雛「いるかー。やめさせてもらいます」
にとり「どうもありがとうございましたー」