スケール(01)

Last-modified: 2009-07-30 (木) 03:31:49

序文

スケール(調)とは何であろうか。「1オクターブの中で、よく使う音を抜き出したもの」とでも表現されるだろうか。何のこっちゃ、とお思いだろうから誰でも知ってる具体例を挙げよう。

ドレミファソラシド

鍵盤2.png

ドレミファソラシドは、1オクターブの中から白鍵のみを抜き出した音の組で、立派なスケールである。Cメジャースケール(Cmaj、ハ長調)と言う*1。最も基本となるスケールなので、これを以下しばらく考察していきたい。

全全半全全全半

まず、スケール上で隣り合う音の音程を調べよう。ドとレは全音、レとミは全音、ミとファは半音、…、シとドは半音、である。これを抜き出して全全半全全全半という音程の並びが得られる。これはCメジャースケールを完全に復元する。どういうことかと言うと、まずドから始めて、ドの全音上の音、ドの2音(全+全)上の音、ドの2音半(全+全+半)上の音、…という風に音を並べていくと、綺麗にドレミファソラシドが並ぶのである。この抜き出した音程が実はCメジャースケールの本質、ひいてはメジャースケール(長調)の本質を表しているのである。

メジャースケール

例えば、ソを起点(これをスケールのルートという)にして全全半全全全半という音程を並べてみよう。それは、ソラシドレミファ#ソという音の組を得る*2。これをGメジャースケール(Gmaj、ト長調)と言う。手元に楽器がある人はそれを弾いてもらえればわかると思うのだが、GメジャースケールとCメジャースケールは高さが違うだけで同じように響くはずである。カラオケでキーを変えて歌うというのと同じ感覚であることがわかるだろうか。すなわちスケールらしさというものは、音の相対的な間隔によって完全に決定されるものなのである。
さらにもう1例出してみよう。ファをルートとして全全半全全全半と並べてみよう(鍵盤やフレットとにらめっこして自分で作ってみることをお勧めする)。すると、ファソラシbドレミファという音の組を得る*3。これをFメジャースケール(Fmaj、ヘ長調)と言う。やはり高さが違うだけで同じように響くと感じるだろう。同様にしてルートを変えることにより、C#メジャースケール、Dメジャースケール、…と12個のメジャースケールを作り出すことが出来る。

マイナースケール

Cメジャースケールは、ドをルートに白鍵をなぞることで得られた。では、ルートを変えて白鍵をなぞると何が起こるだろうか。ラをルートにしてみよう。ラシドレミファソラという音の組が得られる。メジャースケールの時と同様に、隣り合う音の音程を調べよう。全半全全半全全となることが分かる。これをAマイナースケール(Amin、イ短調)と言う。メジャースケールとは響きが異なることを感じ取ってもらえるだろうか。
他のマイナースケールの例を作ってみよう。ミをルートに全半全全半全全と並べてみよう。ミファ#ソラシドレミという音の組が得られる。Eマイナースケール(Emin、ホ短調)と言う。マイナースケール同士はまた同じように響くということを感じ取っていただきたい。メジャースケール同様、ルートを変えることで12個のマイナースケールを作り出すことができる。その他あらゆるスケールは、ルートとそこから積み上げられる音程によって決定され、特にスケールらしさというものはルートに関係なく、積み上げられる音程によってのみ決まるのである。

メジャーとマイナーと度

メジャースケールとマイナースケールは何が本質的に異なるのであろうか。それには、CメジャースケールとCマイナースケールを比べてみるのがよい。Cマイナースケールはまだ作っていなかったので、全半全全半全全の並びに従って音を並べるとドレミbファソラbシbドという音の組が得られる。メジャースケールと比べて、ミ、ラ、シの3つの音がそれぞれ半音低いということが見て取れる。スケールのルートであるドと、この3つの音との音程はそれぞれいくつだろうか?そう、3度、6度、7度である。メジャーとマイナーの本質的な違いはここに起因するのである。
さて音程の項の最後の方で定義した、正確な度をメジャースケールとマイナースケールとに対して考察してみよう。まずメジャースケールから。
ドとミは半音4個だから長3度、ドとラは半音9個で長6度、ドとシは半音11個で長7度。
次にマイナースケール。
ドとミbは半音3個で短3度、ドとラbは半音8個で短6度、ドとシbは半音10個で短7度。
…法則が見抜けただろうか。メジャー(長調)の3度だから長3度、マイナー(短調)の6度だから短6度、という仕掛けである。2度はこの2つのスケールでは違いが見いだせなかったが、他のスケールを持ってくると長短の違いが生まれ得るのである。

メジャーとマイナーのもう1つの関係

Aマイナースケールを作ったとき、白鍵だけをなぞった。すなわちこれは、Cメジャースケールとまったく同じ音の組を用いているのである。ラとドの音程は短3度。スケールとは相対的なものであったから、あらゆるマイナースケールに対して、そのルートの短3度上の音をルートとするメジャースケールは構成される音の組が一緒である、ということが分かる。例えば、EマイナースケールとGメジャースケールは同じ音の組で構成されている。このような関係にあることを、例えばEマイナースケールとGメジャースケールとは互いに平行調である、と呼ぶ。
また少し上で登場した、ルートが同じでメジャーとマイナーという関係になっていることを、例えばCメジャースケールとCマイナースケールは互いに同主調である、と言う。

まとめ

メジャースケール、マイナースケール、及びその関係は、この先の理論において基盤になってくる概念である。楽器を手にして是非その音程感覚を掴んで欲しい。


*1 Cはアメリカ式のドである。ドレミファソラシドはCDEFGABと対応する。なおドレミはイタリア式であり、日本式ならハニホヘトイロハと対応する
*2 ファ#は、ファとソの間の黒鍵の音程を表し、ファより半音高い
*3 シbは、ラとシの間の黒鍵の音程を表し、シより半音低い