リハの流れ

Last-modified: 2009-07-02 (木) 03:44:33

是非このページは実際のミキサーの写真を見てイメージをつかみながら読んでいただきたい。


設営後の準備

ミキサー周り

会場設営が終わったら(あるいは設営を進めながら)、実際に音を出せる状態を作っていく。

  1. まずミキサーを『ゼロコンソール』の状態にする(オーナーズマニュアルのP5を参照)。それから全てのチャンネルに対して、『PRE FADER』『ASSIGN 1-2』スイッチを押し込む。SUB 1チャンネルの『LEFT』、SUB 2チャンネルの『RIGHT』を押し込む。ボーカル用マイク、ギター用マイクのチャンネルの『LOW CUT』を押し込む。これでミキサーの基礎設定は完了。
    SUB 3,4チャンネルが未使用であるが、何か良い活用法があれば加筆を求む。
  2. 機材の扱い方のページでも述べたように、パワーアンプの電源を入れる前にミキサーなどの電源を全て入れておく。またメインスピーカー、モニタースピーカーの結線は全て完了していることを確認すること。その後に、パワーアンプのボリュームが完全に絞られていることを確かめた上で、パワーアンプの電源を入れる。これらのことを守らないと、不快なノイズが発生するだけでなく最悪アンプを壊してしまう危険があるので、機材の電源のオンオフ、シールドの抜き差しの際は常に十分注意すること。
  3. パワーアンプの電源が入ったら、まずメインスピーカー用のアンプのボリュームを少しあげ、PA用マイクやSEなど何でもいいのでミキサーから音を送り、メインスピーカーから音が返ってくることを確認する。この時LchとRchが正しく振られているか、パンを振ったりしてちゃんと確認すること。
  4. 続いてモニタースピーカー用のアンプに対しても同様に、正しく動いていることを確認する。特にAUX1とAUX2が意図する結線になっているかをしっかり確認すること。
  5. ミキサーに繋がっている全てのマイクがちゃんと機能していることを確認する。具体的には、ステージ側の人に指示を出して各々のマイクで(もちろん楽器用マイクもである)順番に声を出してもらい、全てきちんと音が返ってくることを確認する。もし音が出ないものがあった場合、シールドを取り替えてみたりマイクを交換してみたりして原因を究明し、速やかに代わりの機材を用意しよう。
  6. ひとまず不要なchをミュートし、パワーアンプのメモリを3時の方向くらいまで上げておく(7,8割程度)。基本的にはここは一度決めたら動かさないので、日をまたぐ時は前日までの設定値を忘れないようにすること。それからミキサーの『MAIN MIXフェーダー』 『SUBフェーダー』 『MASTER SEND』ユニティにしておく。これらも基本的には動かさない
  7. ボーカルマイクのゲインを大体決めてしまう。マイクを1本選び、自分で声を出すか必要ならボーカリストを1人ほど呼んで声を出し続けてもらう。大きい声を出したときに『ZERO LEVEL』がビカーッと光り続けない程度まで上げる。必要であれば『SOLO PFL』スイッチも活用する。後でボーカリスト毎に微調整はするが、だいたいのアタリをつけておくのは有用である。調整できたら、他の全てのボーカルマイクのゲインをとりあえずそれに合わせておく。
  8. マイクのチャンネルフェーダーを-10dB程度まで上げ、メインスピーカーから十分な音量が出ることを確認する。もし小さい場合はパワーアンプの音量を再調整すること。
  9. エフェクト(リバーブ)のチェックをしておく。エフェクトが掛からないときは機材の扱い方参照。ちょっと強めに掛けて、ちゃんとエフェクトがスピーカーから返っていることを確認しよう(ディレイ系がわかりやすい)。
    パラメータの設定例を以下に挙げる
    • 種類は『LG.HALL』か『LG.PLATE』(ボーカルとスネアでエフェクトを共用する場合は選択肢はこのくらいだろう)
    • 『EFX2 SEND』『TO MAIN MIX』はユニティ
    • 『AUX1,2 EFFECTS TO MONITOR』は8~9時程度
    • 『TIME』は長すぎない程度に適度に長く(短くハッ!って言ったときに減衰に1秒ちょいくらい)
    • 『DAMPING』(リバーブの明るさ)は控えめ(10時くらい)
    • 『WIDE』はオン
      あくまで一例であるから、色々試してみて自分の好みの設定を探してみるのもよい。
  10. モニター周りのチェック。ステージ上のマイクで誰かに声を出してもらい、そのチャンネルの『AUX SEND』を少しずつ上げていく。目的は「どこまで上げたらハウリングを起こすか」を把握することである。なので軽くハウリングするまで音量を上げていく。ハウる音量を確認できたら、そこから30度ほど下げておこう。ある程度の余裕を持っておいた方が何かと便利である。なおその状態でモニターとしての音量に特に問題がないことを確認してもらっておく。
    ハウリングしている周波数が特定できる場合はミキサーの『STEREO GRAPHIC EQ』で目標帯域をカットしてもよいが、AUXの系統には絡んでないので実際のところそこまでの効果はないかもしれない…

マイキング(執筆中...)

上で各マイクがちゃんと生きていることを確認したあたりから並行して、マイク録りをする各楽器のマイクの設置を行う。

キック

スネア(あれば)

オーバートップ

ギター

マイキングが終わったら、各マイクに対して先ほどと同様に「どこまで上げたらハウリングを起こすか」をチェックして、どこかにメモしておく。無くさないように気をつけること。

以上で準備は完了である。バンド毎のリハが始まるまでは念のため『MASTER SEND』を少し絞っておき、『BREAK SWITCH』を押し込んで趣味の音楽でもSEとして流しておこう。

各バンドのリハ

リハを始める前に、PAシートを十分な枚数用意しておくこと。書き損じなどの可能性も含めて、出演バンド数+5枚程度を刷っておこう。なおPAシートは備品のページにdocファイルが保存されている。

PAシートの使い方

メモするべきは、

  • 各パートのゲイン、『AUX SEND』、フェーダー
  • 各パートのEQでデフォルトから動かしたもの
  • ボーカルの『EFX2 SEND』
  • 『MASTER SEND』 『MAIN MIXフェーダー』などのうち、デフォルトから動かしたもの
  • ドラムの設定でデフォルトから動かしたもの

このくらいである。これらの情報を、各バンドのリハが終わるごとにメモしていく。
このときまずは『BREAK SWITCH』を押し込んでおく。これでフェーダー類をゆっくりメモすることが可能になる。
それから『MASTER SEND』を動かした場合はまずはそれをメモし、その後『MASTER SEND』を完全に絞る。これでミキサーから音を発するものはSEだけになるので、バンドが転換をしている間に落ち着いてPAシートにメモを残せばよい。次のバンドのリハが始まるときにはこれらのミュートをきちんと解除しておくこと

リハの基本的な進め方

最初にバンドさんに「よろしくお願いします」と挨拶をすること。基本だけど大事です。
まずは「ドラムさんキック下さーい」「上手ギターさん音下さーい」などと言い、調整したいパートさんに音を出し続けてもらう。ゲインを上げて、『ZERO LEVEL』軽く光る程度が目安。場合によっては『SOLO PFL』スイッチを押して詳細にチェックするのも大事。生音がでかすぎる場合(主にギター/ベース)は下げてもらうこと。
それからフェーダーを上げて外の音量をなんとなく出す。『MUTE』スイッチを入れたり外したりして、「どの程度PAしているのか」を確認することは重要である。
その後モニターにある程度返して個別の調整は終わり。この段階以降ゲインは基本的には動かさず、調整はフェーダーまたは『AUX SEND』つまみで行うこと。ゲインを動かすと、メインとモニターの両方の音量が同時に変わってしまうからである。
個別の調整が終わったら全体の調整をする。これは後述する。
時間になるか全体調整に納得が行ったら、「本番もよろしくお願いします」と挨拶して1バンドお終い。PAシートにセッティングや特記事項をメモして、以上のことを全バンド分繰り返す。

ドラム

1バンド目のリハの時には、各パーツ毎(といっても学祭ではキックとスネアくらいだが)の音出しをしてもらう。そしてそこでの設定をデフォルトにしてしまうとよい。2バンド目以降はとりあえずセット全体で叩いてもらって、問題が無いことを確認したら終わってよい。
ただし「こいつはパワードラマーだ」って人の時は過大入力にちょっと警戒しておくこと。実際強すぎる場合はデフォルトより少しゲインを抑えるようにPAシートにメモしておくこと。
逆に全体的に弱いドラマーの場合はデフォルトよりゲインを上げることを考えるが、このときはハウリングを起こさないように注意すること。

キック

アタックが強力なので、ゲインを上げたときに『ZERO LEVEL』が結構チカチカと光るが、多少は仕方ないと割り切る。『SOLO PFL』を活用してあまり上げすぎないように気をつける。
フェーダーは上げすぎるとパワーアンプのプロテクションが働いて落ちることがあるので注意。EQで低域をある程度切ると改善されるかもしれない。
キックの重心は高めの方がよいと思う。具体的には5~8kHzあたりでポイントを定めて少し上げてみるなど。
それからある程度全体にモニターを返しておく

スネア(あれば)

これもキック同様アタックが強力なので、チカチカ光るのもやむなしと思う。ただキックほどの低域は出ないのでプロテクション落ちの心配はいらないはず(確証無し)。
500Hz付近に胴なりのポイントがあるので、ここを多少切った方が気持ちのいい音になる場合がある。また高域は多少上げてもいいかもしれない。
エフェクトで『LG.PLATE』『LG.HALL』あたりを少し掛けてあげると素敵な音になる
モニターはあまり返さなくてもいいだろう

オーバートップ

これはドラムセット全体を叩いてもらう。
スネアに反応してちょっと光る程度までゲインを上げる。
キック以外は割と生音でも足りるはずなので、フェーダーは音量が気持ち強化される程度でよい。モニターもほとんど返さなくて問題ないだろう

ベース

生音音量注意。でかいときは下げてもらおう。
ベースの低域は教室ではよく出る(回るとも言う)ので、PA的には低域を増強する必要はあまりないと思う。アタックの成分(一般に1kHzあたり)を多少強調しつつ、ラインでもらった音の低域はある程度切ってしまう(程度問題だが)。
フェーダーは適当に、モニターはドラム/ベース側にある程度返しておく
なお注意点がひとつあって、壁際にPA席を設営している場合低域がかなり大きく聞こえるので、必ず客席側まで出てチェックすることが重要である。
基本的な調整が済んだら「他の音色[おんしょく]はありますか?」と尋ね、ある場合は一通りエフェクターを踏んでもらったり奏法を変えてもらったりすること。このときPA的に注視すべきなのは音量である。特にスラップ(チョッパー)奏法はアタックが強烈なので、ゲインはそれに合わせて余裕を持たせておいた方がよい。最もでかい音を出されてもミキサーで歪んだりしないように調整しておく必要がある。

ギター

生音音量注意その2。
2人居る場合は「上手ギターさんお願いします」などと順番にやってもらおう。一応注記しておくが、PA席から向かって右側が上手、左側が下手である。
歪み系のギターの場合、『ZERO LEVEL』がいきなりビカビカ光るので軽く点滅する程度にするのは難しい。なので光り始める直前くらいが妥当なところであろう。
ギターアンプは指向性が強いので、客席のどの位置にいてもある程度ギターの音が聞こえるという状況を作り出すのがPAの役割である。なのでフェーダーはある程度突く必要がある。このため生音がでかすぎると困るのである。
パンは全く振らなくても、生音と相まって奏者側から聞こえるはずである。むしろ逆側に少し(11時~10時程度)振って全体をカバーするという考え方も一理ある。奏者側に振るのは上述のPAの観点からあまりやらないほうがいいと思う(但しバンドの表現上、立ち位置とアンプ位置がひっくり返っている場合などはこの限りではない)。
またモニターも全員にある程度返す必要がある
基本調整後はベースと同様エフェクターをあれこれ踏んでもらい、一番でかい音量に備える

キーボード

キーボードはどんな音が来るか分からないので、『SOLO PFL』でチェックして0dBより5~10dB程度余裕を持っておいたほうが確実である。
キーボードはバンドアンサンブルで唯一生音の全く無い楽器なので、フェーダー、モニターともとりあえずある程度返しておく。
パンは奏者側に多少(11~1時程度)振ってもよいが、あまり振ると逆側の客席に音が届きにくくなるので注意。またストリングスなど雰囲気系がメインの場合はほとんど振らなくともよい。
これも基本調整後に音色の有無を聞く。いっぱい音色があって迷ってそうであれば、「特に音量の大きいものはありますか?」などとストレートに聞いてしまおう。

ボーカル・コーラス

これも複数人居る場合は順番に声を出してもらおう。
本番で歌うような声量で声を出し続けてもらう。迷ってそうなら優しく、明らかにふざけてる感じのときは厳しく注意を促す。
ゲインは事前準備でだいたいアタリをつけているので、『SOLO PFL』でチェックしながら大きく問題がありそうな場合のみいじる。
ボーカルはバンドの要なので、ハウらないレベルで全員にしっかりモニターを返すこと
『EFX2 SEND』を上げてリバーブエフェクトを掛ける。ボーカル単品で聴いてちょっと掛けすぎかな?くらいの方が全体に混ぜたときに丁度良い。なおモニターにはあまりエフェクトを返さなくてよい。
EQはあまりいじらなくて良いが、3kHz付近を上げると音量を上げずに言葉を聞き取りやすくできる。

全体

個別の調整が済んだらバンド全体でとりあえず数分演奏してもらう。この間にまずは外音(メインスピーカー)のバランスを取る。ぱっと聞いて、聞こえないパート、明らかにでかいパートを特定しよう。音量のでかさが生音に起因する場合は仕方ないので、適当なところで演奏を止めてもらって調整してもらう。
また聞こえないパートがあったからと言って、むやみに上げるのは得策でない。何か特定のパートがでかすぎて、それによってマスクされている可能性があるからだ。上げられる音量にはパワーアンプの能力的にもハウリング的な意味でも限界があるので、音量を下げてバランスを取るという視点を常に忘れてはならない。
外のバランスを取りつつ演奏者たちのワガママ中音(モニター)に対する注文を訊く。その注文の6割(推定)が「自分の音が聞こえないので返して」なので(残りの4割は「誰それの音が聞こえないので(俺に)返して」である)、ついモニターの音量を上げてしまいがちだが、やはり外音同様上げる一方では限界があるので注意しなければならない。
例えば「ボーカルが聞こえねえ」の場合。どんどん返しを上げていって、もう(ハウるために)これ以上上げられないというところまで来たとする。それでも「聞こえない」と言われたら、ギターあたりをモニターから返しすぎていて聞こえにくいという可能性が考えられる。このとき、ギターの返しの音量を少し下げたり、ギターの3kHz付近を削ってみたりするとボーカリストに笑顔が戻るかもしれない。このようにPAさんは、どのパートとどのパートが喧嘩しやすいかということに精通してなければならない。