ライブパフォーマンス

Last-modified: 2010-05-18 (火) 13:53:54

ライブパフォーマンスを考える

バンドで音楽をやっていると、観客に自分たちに練習しているこの曲を伝えたい・盛り上がりたい!という気持ちが芽生えてくると思う。そうなると真っ先に出てくる手段としては、ライブに出演して観客の前で生演奏をして楽曲を届ける、ということがあげられるだろう。プロのライブを見ると観客の前で生演奏するのはもちろんだが、派手なパフォーマンスで観客を盛り上げることが多々ある。何故そういうことをする必要があるのか。この項ではライブを再認識することからはじめて、ライブパフォーマンスとは何かをじっくりと考えたい。

ライブとは何か?

ライブとは一体なんなのだろうか?つまり、ライブとは果たして音楽をやるだけのものだろうか?言い変えると、ライブとは演奏会なのか?発表会なのか?ショーなのか?コンサートなのか?リサイタルなのか?ギグなのか?ミサなのか?呼び方はどれでもいい。問題はその中身だ。
果たしてライブとは、生演奏すればそれだけでライブなのか?というところから改めて提起したい。これはその人がライブをどう捉えているか、そういう問題なのだ。「ライブなんだから俺の歌を味わって聞け!」って人や「俺の超絶技巧を見てくれ!」って人達はライブの演奏、聴覚の部分を重視する傾向にある。またその人達は割とパフォーマンスな部分はスポイルしても他にウリを持っているので、普通のライブ以上に盛り上がることもある。対して「ライブってのはショーだ!見てくれている俺たちも含めてライブの一部なんだ!」って人や「俺の曲で俺も暴れたい!お前らも暴れろ!」って人達はパフォーマンスを重視する傾向にある。これは観客に自分たちをどう見せるか、どう客に曲を聞かせるのか、という楽しみ方を提供している人達だ。なので客に対するアクションが何もないときよりも、ダイレクトにライブの楽しみ方をわかってくれる分ライブもノッていきやすい。
やってる曲やバンドの編成にもよるものもある。ライブが演奏だとするとダンサーなどのパフォーマーがいるものはライブではないのか。打ち込みのある曲をやるバンドはライブではないのか。コンピューターを使ったらライブではないのか。自分ひとりだけならそれは違うのか。インストならどうか。はたまた、演奏陣が一人もいないで曲を歌うのはライブではないのか。
無意識のうちにライブというものの範囲を自分で狭めて考えてしまってないだろうか。つまり自分はライブというものをどう認識しているのか、それを活かしてどう演奏しどう観客に曲を伝えていくのか。その信念に基づいて曲に乗せて自分を表現すればもうそれは立派なライブなのである。そのライブでの表現手段のひとつとしてライブパフォーマンスがある、ということを言いたい。ライブパフォーマンスは必ずやらなくちゃいけないかと言うと、必ずしもそうではない。が、ライブというものを楽しく盛り上げるための一つの形・演出であることは間違いないだろう。海外では音楽がショービジネスの一環でもあることを考えると、ライブとは聴覚+視覚で楽しむものという考え方でもいいだろう。問題は自分がその比重をどうおいて考えているのか、なのだ。

ライブパフォーマンスの心構え

ライブパフォーマンスをする上で大事なこと、それは相手をどう楽しませるか、だ。言い換えると、これをやるとお客さんは喜ぶのか?自分たちは楽しいのか?と言ってもいい。これを受け取っている相手がいるんだ、ということを意識してライブをやるのがパフォーマンスの第一歩となる。
その点から考えると、ライブパフォーマンスの基本は笑顔である。自分たちが演奏して、ライブをやっていて楽しいのを見れば相手にもそれが伝わる。そうなれば相手も自然と楽しくなってくる。その気持がまたライブを作る。望ましいパフォーマンスのあり方はこうあるべきだろう。
次に大事なのは意識して客席を見ること。もっというと胸を張って前を見ること。緊張して客なんて見るのも怖いってこともあるかも知れないが、観客にはそんな事情は知った事ではない。緊張しているとだんだんと手元に目が集中したり、足元に目がいきがちになる。恐ろしいのは、その姿勢のせいで観客に自信なさげにとられたり、楽しくなさそうにとられたりすることだ。十分な練習してきたのだからできれば堂々とした姿勢でライブをしよう。
場によってそぐわないものも当然存在する。イスに座ってみるライブで客席にダイブしても危ないだけだし誰もそんなことは望んでないだろう。当然のことだが、相手が不快になることをしてはいけない。そんなことをしても誰も喜ばないようなことはしてはいけない。例えば盛り上がらないからと言って不機嫌になったり、客に対してそれを愚痴ったりしてはいけない。演奏者をみている人がいる以上、想像以上に観客に自分たちの気持ちが伝わってしまう。呪うなら自分の実力不足、盛り上げ不足を呪おう。
それと、観客全員に一つのやり方を強制してはいけない。発信側は一つだとしても、受信側にはそれをどう受け取るかどう楽しむかは好きにできるという権利がある。観客の中には前で暴れたい奴もいるし、後ろで腕を組みながらじっくり曲を楽しみたい奴もいるし、ギタリストの前にへばりついて曲の弾き方を参考にしたい奴もいるし、曲をBGMにコーヒーを飲みたい奴もいることを忘れてはいけない。だから観客に楽しみ方を提供しても、一部が自分の意図したことと違うことをやったからといって不機嫌になってはいけない。寛大な精神でライブをしよう。

基本的なライブパフォーマンス

ここでは簡単にライブパフォーマンスの例を紹介していく。

MCをする

基本にして最大のライブパフォーマンスでもあるだろう。だが、意外と何をしゃべっていいのかわからないことも多いだろう。喋る内容は人によって様々だ。自分たちのことを語るもよし、メンバー紹介するもよし、最近自分の身に降りかかった出来事を語るも良し、楽曲のエピソードについて語るもよし、ネタを言うもよし、ライブの感想を言うもよし、語りかけるのもよし、客を煽るのもよし、今日のライブのお礼を言うもよし、あえて一言二言で終わったりMC自体なかったりするのもまたよし、だ。客と自分たちとの距離をグッと縮める役割があるのがこのMCだ。トークライブとは違うので長すぎてもダレてしまうことがある。雰囲気を読んで話そう。ただし当然だが観客が不快になるような話をしてはいけない。身内ネタもいいが、見てる相手には様々な人たちがいることも理解しておくこと。
あと、MCで困らないようにする方法のひとつに事前に喋る内容を考えておくというのがある。ネタ張にまで書く必要はないのかも知れないが、それでもぼんやりとは今日何を話したいかを組み立てて考えよう。自分たちをどういう人たちだと紹介したいのか、どういうライブをしたいのかを想像しよう。これを軸に考えると内容を思いつきやすいだろう。
もうひとつ大事なのは、その内容に基づいてMCをキチンと練習すること。バンドでスタジオ練習にはいったときに、こういう様なMC内容を考えてきたんだけどどうかなとメンバーに話して聞かせるのがいいだろう。そうすれば大体どういう反応が返ってくるか事前に察知することができるし、なにより感想を聞けるのでネタを練り直すこともできる。事前にMCを練習したという自信もつくし内容も頭に入るだろう。もし人前で話すのが苦手で、MCどうしようと悩む人ならばやってみてほしい。
これはMCじゃないのかも知れないが、曲が終わってすぐ「ありがとう」と言うと、客に曲終わったんだなと認識されることができるので拍手がほぼ確実にもらえる。せっかく曲やってんのに拍手がないなぁと悩んでる人がいればやってみよう。

演奏中に動く、暴れる

どれだけ動くのかはその人のさじ加減だが、体を動かすことによってこいつら自分たちで曲にノッてやってんだな、と視覚的に訴えることができる。それによって観客もテンションがあがっていきやすい。また演奏側も互いに暴れたりすると相乗効果でお互いのテンションを高め合うことができる。ただ、疲れるのが難点だ。
暴れるスタイルは人それぞれだが、足でカウントをとる、首を振る(ヘッドバンキングをする)、体を揺らす、足をあげる、踊る、ジャンプをする、ステップを踏むなど色々なことができる。是非鏡の前で自分たちがどう暴れているのかを確認しながら練習してほしい。意外とかっこよくない動きをしていることもあるので、自分で確認しながらやるのがかっこいい暴れ方への近道だ。相手に動きを見られていることを意識すること。
そんな演奏しながら動けないよーって人はまず、演奏しながら関係ないことを会話できるレベルを目標にしよう。その際必ず立って練習すること。ライブはほとんどの場合立って行うので、その環境に事前に慣れておく。次に、手元を一切見ないで弾けるよう練習する。暴れたら当然手元なんてほとんど見えない。全編そのレベルまでもってく必要はないが、手元はできるだけ見ない方が好ましい。真っ暗な部屋で練習したりすると体でその感覚を確認することができる。そうした練習を繰り返していけば自然と手元と体を切り離して動かすことが可能になるはずだ。

ステージ上を移動する

演奏中に暴れるのが縦移動だとすれば、ステージを移動するのは横移動ということになる。舞台を広く使うことでより効果的にライブを見せることができる。ステージの前の方へ移動したり、他のプレーヤーの方へ行ってみたり、ソロになると前の方・中央へ行くというだけでも効果はある。普段からステージをどう使えば盛り上がるか考察してみよう。

客を煽る

これもやり方は人それぞれであるが、もっとも有名なのは「イエーイ!ノッてるかーい!?」という古い常套句である。これは観客の気持ちを盛り上がる方向へ煽動することでライブを盛りあげようとする行為だ。言うセリフは何でもよく、曲中で煽ってもMCで煽っても良い。「お前らー!まだたんねーぞー!」でも、「踊れー!」で、も「JUMP!JUMP!」でも、「ポゥ!」でも、「ライブハウス武道館へようこそ!」でも「大阪~!」でも「SATSUGAIするぞ貴様ら!」でも良い。ここでこれを言えば盛り上がるというコツはない。照れを捨てて煽ろう。

コールアンドレスポンス、振付をする

比較的難易度の高いものになる。演奏者側が呼びかける(コールする)ことで、観客側からの反応(レスポンス)を期待するもの。有名なのはHIPHOPなどの「SAY!HO!」(HO!)など。振付をする場合は曲中やMCなどで観客に指導したりする時間も必要になる。やれば観客との一体感が生まれ、ライブとして盛り上がったり思い出深い物になるだろう。しかしやる曲に一般的知名度がない場合や、演出を練らないでグダグダになったりすると観客に何をやっているのかわかってもらえない場合もあるので注意。

有名なライブパフォーマンス

オーソドックスなところからいうと、MCをする、メンバー紹介をする、客と会話する、曲にあわせて動く、ノる、ジャンプする、暴れる、踊る、客を煽る、ステージ上を移動する、ソロ回しをする、曲にあわせたふりつけをする、コールアンドレスポンスをする、歌詞をゆかりのあるものに変更する、アドリブやセッションをする、お互いにアイコンタクトをとる、背中を預けあう、衣装替えをするなどがあげられるだろう。
激しいものだとメイクをする、客席にダイブする、客をステージにあげたり演奏させたりする、ヘッドバンキングする、ドラムセットの上に乗っかるなどになる。
有名なパフォーマンスをあげると、曲のあとおじぎをする、仁王立ちで歌う、聖書をやぶる、マイクを振り回す、腕をグルグルさせながら弾く(ウインドミル奏法)、口から火を吹く、ダックウォークする、床をのたうちまわる、アンプを引きずり倒したりする、などがあげられるだろうか。
伝説になっているものを言うと、コウモリを食いちぎる、ギターを壊す、ギターに火をつける、背面弾き、歯弾き、乱闘する、失神する、ドラムセットを叩き壊す、自慰行為・排泄行為・性交をする、全裸になる、途中で帰る、そもそもライブをしないなどになる。
え?こんなにあるの?こんなのしたくないよーという方もいるかとは思うが、この中には法をおかしてるものややりすぎなもの、危険なものもある。自分のライブをどう演出するか、その点において自分にとって必要なものを取捨選択してほしい。

総括

どうだっただろうか。やりたいライブパフォーマンスは見つかっただろうか。ライブパフォーマンスは一つの要素にしかすぎず、やってもやらなくても何をやってもよい。しかし、見せ方にこだわることで自分のライブを演出する。それは相手が自分をみているという意識を持つことに他ならない。その意識を高く持てばその先に一段とクオリティの高いライブが待っているはずだ。盛り上がるライブをしたい人は理想のライブを模索し、追求していってもらいたい。