耳コピ(01)

Last-modified: 2009-08-02 (日) 23:10:58

序文

前項までの知識を押さえたら、易しめの曲であればコピーが出来るようになってきているはずである。ここではコピーするにあたってのいくつかの要点を挙げよう。ただし簡単のため、対象とする曲は単一のスケールで構成されスケールはmajかminに限りメロディはスケールアウトしない、という制限を以下ではさせて欲しい。これは結構厳しい制約ではあるが、それなりに多くの音楽は表現できるので基礎力を付けるのには十分だと考える。

スケールの特定

楽曲のコピーをするうえで最も大事なことはスケールを特定することである。スケールが分からなければ、1オクターブ中12種類の音の中から目的の音を見つけなければならない。また半音の違いというものはなかなか聞き分けづらく、これが耳コピを困難なものにしている大きな要因でもある。しかし一旦スケールを特定してしまえば、1オクターブ中使われている音は7種類。それぞれは多くが全音の距離を持っているため、かなり音の特定が容易になる。またダイアトニックコードという、コードを特定するにあたっての最有力候補達が手に入るし、コード進行理論による定番進行の知識から次に来るコードをある程度予測することすら可能になる。以上のように、まずはスケールを特定することが耳コピの第一目標と言える。

メロディ

ボーカルラインや間奏の印象的なフレーズなどは、楽曲中で最もコピーしやすいパートの1つである。

  • (基本的に)単音である
  • 比較的ゆったりとした変化である
  • 音として聞き取りやすい(音域やアレンジなど総合的な意味で)

などの理由が考えられるが、とにかく楽器のできない人でもカラオケで歌えるのである。メロディを口ずさんだり自分で楽器を鳴らしながら、できる範囲で正確にコピーしよう。

音の種類

メロディをコピーしたら、使われている音の種類を抽出しよう。例えば、ド、レ、ミ、ソの4種類が使われていたとする*1。するとこれだけでもうスケールを大部分特定できてしまう。この4種の音が含まれているメジャースケールはCmaj、Gmaj、Fmajの3つだけである(マイナースケールはメジャーの平行調だと思うことにする)。よってひとまずそれ以外のスケールのことは忘れてしまっていい。

半音

もしファ#、ソのように、半音の音程を出現する音の種類から見いだせたならこれはかなりの決定打である。なぜなら、メジャースケールは全全半全全全半という音程関係で構成されているので半音が出現する箇所は2ヶ所しかない。よって、その半音は3つめの音程か7つめの音程かのいずれかしかない。つまり今の場合は、DmajかGmajしかあり得ないことが分かるのである。

スケールのルート音

先のドレミソの例に戻る。もしこれがFmajだとしたら、スケールのルート音であるファがメロディに出現しないという可能性はかなり低いので、Fmajである可能性はかなり低く見て良い。同様の理由でAmの確率も低い。
また、曲の最後のメロディの音というのはスケールのルートである確率が高い*2。のでまずはそれからスケールを仮定してみるのも有効な方法である。

ベース

いわゆるバンドサウンドにはほぼ確実に存在しているし、大抵のポップスにもある重要なパートである。耳コピにおいても非常に重要な存在であるのだが、なかなか聞き取れないという人が多い。慣れない人は、音声処理ツールで楽曲全体の音程を1オクターブ上げたりするとベースの音がよく聞き取れたりするだろう。ちなみにメロディに対して行ったのと全く同じアプローチをベースに対しても行うことで、スケールを特定できる可能性を上げることができる。

メロディで絞ったスケール

メロディの耳コピによってかなりスケールは絞り込まれている。ベースが使う音の種類もそのスケールに添うのが普通であるから、それだけでもかなりベースのコピーは楽になるだろう。

コード進行

メロディとベースという単音のパートをある程度聞き取ったら、コードの特定に入ろう。

コードチェンジの瞬間

それぞれが何のコードか分からなくても、ベースやギター族、あるいはメロディの雰囲気によって、ここでコードが変わった!と思う瞬間が認識できるはずである。まずはそういうチェンジするポイントをコピーする際には押さえておこう。

コード進行のルート

ベースは低音楽器であり、コードのルートを支える存在である。ベースを耳コピすることによって、コード進行のルート音を大部分特定することができるだろう。ベースがフレーズを動いていたとしても、フレーズの最初の音がコードのルートである可能性は高い。またベースがルート音をフレーズ中で全く弾かないということは普通あり得ないので、それだけでもルート音の候補はかなり絞られるだろう。

メロディが主張するコード

もしメロディがある音を他の音よりも長く発音していたとしたら、その音はコードの構成音である可能性がかなり高い。そうでなければ、コードにぶつかって濁ってしまう。そして大抵それはルートとは違う音程を主張するので、これでコードの構成音を2音特定したことになる。もう一歩である。もしベースと同じ音程だったとしたら、それはコードのルート音である可能性がとても高いので、それはそれで有益な情報である。

とりあえずダイアトニック

ルート音が特定できれば、スケールのダイアトニックコードを当てはめることができる。もしこの時点でスケールの候補がいくつか残っていたとしても、試すべきコードの種類はごくわずかに限定されたことになる。特定の2音を含むダイアトニックコードの種類も決して多くない。あとは弾きくらべてみることで特定することが可能であろう。

脱ダイアトニック

ダイアトニック以外が使われるコード進行はパターンがそう多いわけではないので、それらを元に特定するのが楽ではある。そういう知識が無くとも、ルート+メロディの2音に何か音を足してみて響きを確認するという方法でも比較的楽に特定できると思われる。

オンコード

ルート音に対して素直にコードを乗せてみてもあまりしっくり来ない場合、オンコードになっている可能性がある。オンコードが用いられる進行もかなりパターンになっているので、それらを覚えておけば特定が容易になる可能性が高い。

パターン暗記

いろんな曲のコピーを続けて行くうち、「あれ、この進行はあの曲と一緒だ」と思うものが出現するだろう。そういう経験が積み重なって行くと、いずれ曲を聴いた瞬間に「ああ、あれか」と思えるようになる。つまり、コード進行の引き出しをたくさん持っていると耳コピに非常に有利なのである。特にダイアトニックでないコードを特定する際にはパターンを知っているかどうかでコピーの速さがかなり変わってくると思う。ぜひたくさんの引き出しを習得して欲しい。

細かいフレーズ

スケールとコードが特定されていれば、細かいフレーズを採ることもそこまで苦労はしないだろう。またハモりを採るのもかなり楽になる。

まとめ

慣れてくると、ベースラインを多少聴いただけでスケールと進行のルートが見えるようになる。ルートの上にはダイアトニックが乗っているのか?そうじゃないのか?あるいはオンコードなのか?と言ったことは自分の知っているコード進行の響きとの照合である。鳴っているコードの1音1音を直に聴き取れているわけでは決してない*3。だからもう一度言うが、コード進行の引き出しをたくさん持つことが大事である。バンドスコアなんかにくっついているコード進行譜を見て、実際の響きと共に覚える、と言ったこともどんどんやって欲しい。それからベースを聴き取れるようになって欲しい。シングル版についてるOff Vocal音源などは、メロディのヒント無しに進行を特定する訓練になると思う。そのときベースの重要さに気付くだろう。


*1 「さいた さいた チューリップの~」とか
*2 ポップスだと3度上だったり5度上だったり9度が来てみたり色々だけど
*3 レベルの高い絶対音感な人はできるらしい