序文
コードの話をするにもスケールの話をするにも、まずは音程というものに対してきちんと言葉を定義しておかないと話が進められない。算数をやるには九九を、高校化学をやるには周期表を覚えるのと同じことである。というわけでこれは音楽理論のための準備のお話である。
オクターブ
1オクターブとは、ドとその隣のドとの音程のことであり、開放弦とその同一の弦の12フレットとの音程のことであり、概ね理解されている感覚であると信じたい*1。カラオケ大国日本において、日常会話で最もよく用いられる音程の単位だと思う。
半音
半音とは、1オクターブの1/12の幅を指す*2。逆に言うならば、半音という音程が12個積み重なったらそれが1オクターブになる。ピアノでドから隣のドまでは12個の鍵盤があるし、ギターやベースにおいては開放弦と1フレットとの差が半音である(12フレットで1オクターブであることを思い起こそう)。ちなみに半分の音と書くからには全部の音というのもあって、それを全音と呼ぶ。ずばり半音の2倍の幅を指す。全音が6つ集まったら1オクターブである(が、あまりそういう風に意識することはない)。
度
半音が定義されれば一応全ての音程*3を表現できるのだが、これだと多少不便なので、音楽理論上有用な度という音程を定義したい。「3度でハモる」とか言う、あの度である。
ここにピアノ鍵盤の一部を用意した。白い鍵盤の間に黒い鍵盤(それぞれ、白鍵、黒鍵と言う)が2つと3つ、これで1固まり、1オクターブである。ピアノはこの構造がずらーっと繋がったものになっている。鍵盤弾きで無い人もせっかくだから覚えていただきたい。
各鍵盤の間隔は半音である、ただし黒鍵も含めて。例えばドとレの間は半音+半音で全音、ドとミの間は半音が4つ(これを全音が2つで2音と言う)、ミとファの間は半音、と言った具合である。ご覧のようにドレミの間には不規則(に見える)に黒鍵が入り込んでいるので、半音単位でその音程を表すとその間隔はいびつになってしまう。そこで白鍵だけの間隔(あるいは数)に注目して名前を付けよう、というのが度の考え方である。
ドとレ、レとミ、ミとファ、のように隣り合う白鍵の音程は2度と呼ぶ。ドとミ、レとファ、などは3度と呼ぶ。同様に、4度、5度…と定義され、8度がちょうど1オクターブ、ドととなりのドの間隔に等しいことを確認していただきたい。9度以降ももちろん定義される。なお音程に違いが無いことを1度と呼ぶ。
正確な度
注意して欲しいのは、同じ2度と言っても実際には異なる音程に同じ名前を付けているという点である。実は度にはより正確な名前がある。どうしてそういう名前が付くのかという説明は後回しにして、とりあえず言葉を定義しておくことにしよう。
半音 | 度 |
0 | 完全1度 |
1 | 短2度 |
2 | 長2度 |
3 | 短3度 |
4 | 長3度 |
5 | 完全4度 |
6 | 増4度・減5度 |
7 | 完全5度 |
8 | 短6度 |
9 | 長6度 |
10 | 短7度 |
11 | 長7度 |
12 | 完全8度 |
例えば、ドとミの間は半音が4つなので長3度、シとドの間は短2度、ファとシの間は増4度、などである。長とか短とかを無視すると、ちゃんと白鍵の数を数えているのが見えるだろうか。
ひとまず音程に関する言葉の定義はこれで終わりである。