分類と類型、鱼生の夏

Last-modified: 2023-08-20 (日) 04:46:54

分類と類型、鱼生の夏

はじめに

このページではIVLの各チームごとの被BanとPick状況をヒートマップで示し、クラスター分析を行い、各チームを分類し樹形図で表します。あくまでBanとPickという観点で非類似度を計算していることに注意してください。B&Pには習熟度だけでなく、おそらく選択された地図という要素も存在しています。

また試合を見た時、使うキャラは全く違うけれども何だか似ているなと思ったとき、あなたの無意識は例えば立ち回りの類似を感じ取ったのかもしれません。私自身はCOA4の予選でCGのコーチをされているよつさんの解説を聞いた時「選手たちってこんな事を考えているんだ」と頷くばかりでほんと何もわかってないんだと気づきました。でも、もし自分が「何だか分からないけど何か」が感じ取れたら、ジブランの詩にあるようにそういった感覚を大切にしていきたいと最近思ってます∪・ω・∪!

もし今言った言葉が漠然としていても、明確にしようとしないでください。ぼんやりと不透明なのはすべての始まりであり、終わりではないのです。

「預言者のことば」 カリール・ジブラン(有枝訳)

計算方法(+をクリックして展開)

興味のある方向け

少しだけ図や手法の説明をします。

Ban率とPick率

Ban率とPick率は以下の式で計算しています。

  • ハンター
    Ban率=(Banされた回数)/(Banが入った試合数)*100
    Pick率=(pickされた回数)/(試合数)*100で計算しています。
    2番手の選手は1つの試合で2キャラBanの場合も多いため、全てのBan率を足し合わせた合計Ban率は高くなり、スタメンの選手は大体1キャラBanなので合計Ban率は低くなります。
  • サバイバー
    Ban率=(Banされた回数)/(試合数)*100
    Pick率=(pickされた回数)/(試合数)*100

計算の対象

キャラクター:全試合で(Pick+Ban)が合計10回以上
選手:現役(もしくは法律の関係で休止中の選手)で出場回数が15回以上

2次元ヒートマップ

ヒートマップとは行列内の数値を色の濃淡という次元を導入することで視認性を高めたグラフのことです。マス内の数字は行の選手と列のキャラクターごとの百分率のことで色が濃いマスほどそこの列の値に対して相対的に高くなっています。

クラスター分析

「クラスター」とは同種類のものや人の集合を表す言葉で、ある集合で似ているものをより小さなクラスターに分けて分類する手法をクラスター分析と言います。その中でも階層的クラスター分析という手法で、距離はユークリッド距離でクラスターの形成法はウォード法と郡平均法の二つを使い、樹形図でそれらを比較します。

結果とグラフ(+をクリックして展開)

2020夏季IVL
  • ハンター
    ivls20h.png
    clust20s_h.png
  • サバイバー
    ivls20sp2.png
    ivls20sp1.png
    clust20s_s.png
2020秋季IVL
  • ハンター
    ivlf20h.png
    clust20f_h.png
  • サバイバー
    ivlf20sp1.png
    ivlf20sp2.png
    clust20f_s.png
2021夏季IVL
  • ハンター
    ivls21h.png
    clust21s_h.png
  • サバイバー
    ivls21sp1.png
    ivls21sp2.png
    clust21s_s.png
  • ハンター
    クラスターの去年から今年にかけての推移を見たときに魔女をメインに使う組とそれ以外の闘争の歴史で、魔女の存在の大きさを思い知らされた気がします。また、クラスターを見ると選手が大きくスタイルチェンジするのはとても困難なように感じます。
  • サバイバー
    クラスターを見ると選手の移籍や4人で役割を分担しているので、そのチームごとの一貫した傾向はなかなか見られませんね。また21夏のWolvesとZQのヒートマップを比較するとZQは墓守を50%もピックしていてキャラ範囲が狭いようです。20秋季みたいにBan数が少なく、キャラの力がある程度階層化していた場合には、どちらかというと決められたパターンをより深く習熟することが重視され、今季みたいにBanが増えキャラの力もバランス調整され階層が少し崩れたので、深さに加えキャラ範囲の広さも重要になっているとデータを見ても感じますね。

鱼生の夏

2020夏季IVLのグラフや樹形図を見た時に自然と私の脳裏に浮かんだのは鱼生(Ken)という選手です。無意識的に湧いてきた記憶から私なりに彼の物語を伝えたいです。

IVLの物語分析

スポーツの物語とはある種の英雄譚だと思います。今季人気となったWolvesを例にクリストファー・ボグラーの神話の構造解析を元にした英雄の旅という理論を紹介ます。英雄神話には普遍的なパターン(いくつかのステージからなる構造)が存在し、多くの物語がこの型を元にしているそうです。それをWolvesに当てはめると、

冒険への誘い(Call to Adventure)
→COA4予選参加
冒険の拒絶(Refusal of the Call)
→COA4予選敗退
助言者との出会い(Meeting with the Mentor)
→高名なハンターであるAlex選手の加入
新たな旅の始まり(Crossing the First Threshold)
→2021夏季IVL参加
試練、仲間、敵対者(Tests, Allies, Enemies)
→2021夏季IVLのレギュラーシーズンでの戦い
深淵への接近(Approach to the Inmost Cave)
→2021夏季IVLのプレイオフへの準備
最大の試練(The Ordeal)
→2021夏季IVLのプレイオフ
報酬(Reward)
→COA5への切符

以上のような普遍的な英雄譚の始まりとの類似性から、多くの人が開幕前に英雄の旅が始まると感じて応援したくなったのかもしれません。まあ熱心なファンの方は「よく分からんやつがよく分からないパターン分類に当てはめるな」と言いいたくなるのも当然でしょう。ですが、そういう見方もあるということで許してください。

鱼生の物語分析

2020年夏季IVLでの鱼生の物語もよく見れば似た構造をしていると感じ取った人もいると思います。

冒険への誘い(Call to Adventure)
→mFbへの加入とCOA3に向けての旅
冒険の拒絶(Refusal of the Call)
→COA3直前での脱退と他のチームへの参加を拒絶される。
助言者との出会い(Meeting with the Mentor)
→ガードNo.26との出会い(これは時系列的には前ですが...)、ZQへの加入
新たな旅の始まり(Crossing the First Threshold)
→2020夏季IVL参加
試練、仲間、敵(Tests, Allies, Enemies)
→2020夏季IVLのレギュラーシーズンでの戦い
深淵への接近(Approach to the Inmost Cave)
→2020夏季IVLのプレイオフへの準備
最大の試練(The Ordeal)
→2020夏季IVLのプレイオフ
報酬(Reward)
→COA4への切符

Wolvesはそんなことをしていないと思われそうですが、「時計じかけのオレンジ」のアレックス・デラージの物語構造が、注意深く見れば一見すると正反対なキリストをモチーフにされているように構造での類似に言及しています。Wolvesは善の英雄ならば鱼生の物語は悪の要素を持つ英雄の旅と言えるでしょう。

鱼生について

また鱼生その人も非常に強い物語性を帯びていました。2019冬季IVCで優秀な2番手のハンターとしてmFbを3位入賞へ導き、第4回SG赏金争霸赛では、5hs相手にボンボンで圧巻の4吊を見せ間違いなくファンにとても期待されていました。多分非魔女使いとして元IMTの呵呵哒(heda)選手と同じぐらい目立っていたと思います。しかし、COA3の予選の直前でチームメイトへの不満から脱退してしまいました。

その後ランキング1位になったことや、第4回SG赏金争霸赛での準優勝、第2回西瓜演绎杯でベスト4という活躍、そして公式から銀河戦艦と称されたZQに加入したことでGr以外では最も注目されていました。そしてその期待に背かず開幕戦での衝撃的な4吊ショーから始まり、そのまま新興のチームを優勝という頂きへと引っ張っていきました。

鱼生の物語

絶対者⇄挑戦者
Gr(魔女)⇄ZQ(ガードNo.26)

この時の鱼生には悪名と勇名というある種反対の要素が混在していました。つまりその人の来歴という小さな枠組みの物語ではどう擁護しようとヒールだったでしょうけど、絶対者である魔女の支配する世界への反逆という大きな枠組みの物語では誰よりも格好いいヒーローでしたし、私はそういった彼の存在に酔いしれていました。鱼生の魅力はそういう2面性にあったと思います。やっぱりこの2020年夏季IVLを思い返す度に鱼生の夏だったと感じますし、俺の中ではこれからも永遠に鱼生の夏であり続けるでしょう。

終わりに

これで話はおしまい。私は肝心な試合や環境のことがさっぱりなので、果たして誰に向けて書いてるのかと疑問に思うことがあります。それに鱼生選手や皮皮限を待ちながらで語った皮皮限選手のファンという訳ではないので、的外れな事を言っていて他の人の反感を買っていないかという不安もあります。でも、IVLで自分が感じた事や物語を少しでも共有したいという思いがあるのです!´•ﻌ•`🐾

 

すべての人生は不可解なのだ、と僕は何度も自分に言い聞かせた。いくら多くの事実が語られたところで、細部が伝えられたところで、一番大切な部分は語られるのを頑なに拒むのだ。(...)われわれはみな物語を聞きたいと思っている。物語を聞くとき、われわれは幼かった頃の聞き方に戻る。言葉の内側にある真の物語を自分で思い描こうとするのだ。われわれは主人公の立場にわが身を置き、自分自身のことを理解できるのだから主人公のことだって理解できるはずだという思いを抱く。だがそれは欺瞞である。おそらくわれわれは自分自身のために存在しているのだろうし、ときには自分が誰なのか、一瞬垣間見えることさえある。だが結局のところ何ひとつ確信できはしない。人生が進んで行くにつれて、われわれは自分自身にとってますます不透明になっていく。自分という存在がいかに一貫性を欠いているか、ますます痛切に思い知るのだ。人と人とを隔てる壁を乗りこえ、他人の中に入っていける人間などいはしない。だがそれは単に、自分自身に到達できる人間などいないからなのだ。

鍵のかかった部屋 ポール・オースター(柴田訳)

参考文献

Rによる多変量解析入門 ―データ分析の実践と理論―
【R】ggplotとdendextendできれいなデンドログラムを描く!
ヒートマップの作図にはpythonのPandasを使ってます。