宛先:ホープ
父より、愛をこめて
ホープ。
直筆の手紙が持つ趣を、お前が気に入ってくれることを願っている。なぜなら他に連絡手段がないのだ。これを送る方法も見つけなければ。愛する我が娘に会いたくてたまらない。だが今は手短に伝えなければならん。
私は今、超巨大企業から逃げている。奴らは軍隊を持っている上に、人権を尊重する気などない。そいつらが長いこと私を不法に監禁していたのだ(またお前の言う通りだったな)。
ここには怯えた市民が大勢いる。みんなひどい虐待を受けていた。私には、彼らの身の安全を守る責任がある。と言うのも、私が彼らを説得して脱出を計画した本人だからだ。みんな疲れ果て、体力が尽き、飢えている。隠れる場所も物資もほとんどない。
だが、私はこの十年でこれほど楽しいと思ったことはないのだ。
おかしくなったと思われぬよう、真面目かつ冷静な態度を心掛けている。だが初めてスーツを身に着けたとき以来、私は正しいときに正しい場所にいると感じている。
私は再びヒーローになったのだ。どうかこの老いぼれを誇りに思って欲しい。
娘よ、心から愛している。