弔辞 キャプテン・スティーブン・ロジャース
スティーブと出会ったのは1941年だ。俺が16、あいつが20歳になる年で、アンクル・サムはキャプテン・アメリカに相棒が必要だと考えてた。出会った瞬間にわかったよ。あいつは…俺たちは…
クソッ、やっぱり無理だ。俺がこういうことをやるはずだった人間は、みんなナチスの兵器にやられて、60年以上前に死んでるんだ。葬式に追悼式に記念式、そういったものはことごとく欠席した男だからな、俺は。
それに耐えられたのは、誰からも愛され、尊敬の的だったキャプテン・アメリカもそうだと知ってたからだ。アメリカを代表するヒーローと同じなら、俺の人生もダメなことばかりじゃなかったのかもな。
俺はここにいちゃダメなんだ。この式だってすっぽかそうとしてた。スティーブ・ロジャースは向こう見ずで、いつも危険に飛び込んでた。みんなそう思ってるが、あいつが勝ち目のない戦いをしたことは一度もない。どんな時でもあいつは帰ってきた。必ず仲間を連れて。例外が一度だけあったが…いや、これで2回目か。
すまない。
俺の方が先に逝けばよかったのに。口に出してはっきり言わなかったからといって、お前の葬式に出なくていいと約束したわけじゃないんだよな。
ダメだ、もう無理だ。これでいいだろ。頼む、ナット…そっとしておいてくれ。