とある聖女の物語
話者 | セリフ | 備考 |
---|---|---|
- | それは 雨が通りすぎた後の 学園の裏庭でのことでした。 | イヴの回想 |
イヴ | きゃぁーーっ!? | |
カミラ | お~い 大丈夫か? | |
イヴ | あ……カミラさん……大丈夫です。 少し服が汚れてしまいましたけど。 | |
カミラ | なら まずは立て。 話はそれからだ。 | |
イヴ | お手数をおかけしました。 | |
でも カミラさんはどうして こんな時間に? | ||
カミラ | 散歩だ。吸血鬼は闇の種族。 夜を好む種族だからな。 | |
それより お前こそ こんな時間に いったい何をしているんだ? | ||
イヴ | わたしですか? | |
わたしは お祈りのために 聖樹様のところに 行っていたんですよ。 | ||
夕方に 行こうと思っていたんですが 雨が降っていたので 行けなくて…… | ||
でも ちょうど雨もあがったので これは行くべきだなって思いまして。 | ||
明日は運気が あがりますように……。 | ||
そして 明日もみなさんが 幸せな一日を送れますようにって。 | ||
カミラ | だが その帰り道に転んでいては お祈りの意味が ないのではないか? | |
イヴ | うう…… それを言われると つらいです。 | |
わたしって どうしてこんなに 不運なんでしょう…………。 | ||
カミラ | ……そう落ち込むな。 | |
慰めになるかは 知らんが ひとつ 面白い話をしてやろう。 | ||
イヴ | ……面白い話……ですか? | |
カミラ | ああ。お前と同じく とんでもなく不運だった とある聖女の話だ。 | |
あれは 五百年ほど前のことだったか……。 | ||
カミラ | その聖女は とある村の教会で シスターをしていてな。 | |
その元を 多くの人々が日々訪れていた。 | ||
人並み外れた魔力を備えた その聖女の力を借りるためだ。 | ||
聖女は その魔力によって 悪魔の呪いを解呪したり 時には 魔物退治なども することがあったという。 | ||
イヴ | 人並み外れた魔力ですか! なんだか すごい方ですね! | |
カミラ | しかし その聖女は とある問題を抱えていた。 | |
お前のように…… いやお前以上に 不運を呼び寄せる体質だったのだ。 | ||
そんな ヤツが よく言っていた言葉がある。 | ||
- | 確かに 私の身には 日々 多くの災難が降りかかります。 | 聖女 |
ですが 私自身が 不運であるとは思いません。 | ||
その災難は 私以外の誰かを不幸にすることなく 私の元に来てくれた。 | ||
おかげで私は その誰かの笑顔を見ることができる。 | ||
私は とても幸運な人間なのです。 | ||
カミラ | ……とな。 | |
イヴ | …………。 | |
……素晴らしい方だったんですね。 | ||
カミラ | どこか お前に似ているだろう? | |
イヴ | いえいえ! そんな立派な人物と 比べられると恥ずかしいです! | |
でも……その方の考えは とても素晴らしいと思いました。 | ||
不運は 誰かを幸せにした証…… | ||
なんだか 元気が湧いてきました! ためになるお話 ありがとうございます! | ||
……ところで その方と カミラさんは どのようなご関係だったのですか? | ||
カミラ | 聖女と吸血鬼の関係など 言わずともわかるだろう。 | |
天敵だ。天敵。 | ||
イヴ | はあ……。 | |
カミラ | それより そろそろ部屋に戻ったらどうだ? 汚れた服も 洗濯せねばならんだろう? | |
イヴ | そうですね。 | |
お散歩の邪魔をしても悪いですし わたしは そろそろ部屋に戻ります。 | ||
カミラさん。 今日は本当にありがとうございました! | ||
カミラ | ……あの女は。 魂の一部が欠けて生まれていた。 | |
その欠けた部分に 悪魔が入り込んでいた。 | ||
しかし ヤツは生まれつき 魂の力が強かった。 | ||
結果 悪魔に魂を乗っ取られることなく その力を己のものにしていた。 | ||
だが いびつな魂は いびつな力を生む。 ヤツは呪われていた……。 | ||
その聖なる力を使えば使っただけ…… | ||
そこにつけいるように 邪悪な力が ヤツの体を蝕んだのだ。 | ||
その呪いは わらわが手を尽くしても 完全に解呪できるものではなかった。 | ||
しかし それを知っても ヤツは 力を使うことをやめなかった。 | ||
その力で 他者を救い続けた。 | ||
- | この力があるからこそ 多くの人を 幸せにできました。 | 聖女 |
多くの素晴らしい出会いが できました。 | ||
だから 私は…… | ||
カミラ | とても幸せです…… | |
……か。 | ||
……やれやれ。 感傷に浸ってしまったな。 | ||
まあ あれだけ わらわが解呪に尽力したのだ。 | ||
生まれ変わった先では 以前よりは マシな人生を送れるだろうさ。 | ||
イヴ | きゃああああ!! | |
ううう…… また転んじゃいましたぁ……。 | ||
カミラ | …………。 | |
ちゃんと解呪できたか ちょっと心配になることもあるがな。 |