「あのなあ、シオン」
恨めしげな目でこちらを見る彼女を見て、
レアリザスとオラスは思わず深い溜め息を吐いた。
──引き返せばよかった。
レアリザスは元々嫌な予感がしていた。
鞄やら書類やら猫缶やらがシオンの部屋まで点々と転がっていて、
ついでに部屋の前でオラスがぐったりとした顔をしていたのを見た時点で。
オラスが無理やり着せた自分の服1枚で
シオンはいつのまにやら増えたよそのネコと同居していた。
「シオン、着替えは?」
「ない」
「この前、兄ちゃんが買ったやつは?」
「……着たくない」
ああ、とレアリザスは嘆息する。新品だから着たくないわけだ。
別に綺麗でもったいないからとかではなく、
自分の匂い、あるいはアクシオンゲートの面々が普段使っている
柔軟剤の匂いがしなくて落ち着かないから。
「だからオラスのは着てくれたんだね」
「ほーら、まとめて洗ってやるから寄越しな」
「……ん」
気だるそうに返事をすると、
シオンはおもむろに、部屋に散らばった服に手を伸ばそうとして
──力尽きた。
「……ねる」
「おーい!待て待て待て待て寝るな!」
「の前に、お花畑でおしっこしてくる」
「オブラートに包めてないよっ!」
大慌てでオラスがシオンを抱きかかえてトイレに駆け込む。
「はぁ、キミたちはどこから来たんだい?」
レアリザスは集まってきていたネコたちを慣れた手つきで撫でていった。
「今日の任務、間に合うかな……」
──『しおんの!』より抜粋