「ああ、もう、何を選べばよろしいのかしら…!」
世界が今日終わってしまうかどうかはわからないけれど、いまのエリスの部屋が世界の縮図、あるいは神々の箱庭であったのならまさに今日が世界最後の日であるかのような様相を呈しているのだが、崩壊寸前かの如く部屋中に広げられた服はどれもこれもが明日の作戦を失敗に終わらせる姿を連想させていて、まずもって本題である水着の選出を前に、エリスは頭を抱えていた。
「明日のプールでは、私に注目してもらいますわよ……!」
どれもこれも可愛い。似合う自信もある。
モデルのような身長はないけれど、自慢の尻尾が映えるものばかりを買ってきた。
だが、明日の目的は可愛いだけじゃダメなのだ。
憧れのシオンさまに、私を見ていただかないと……!
「やっぱり、このシンプルな白のビキニ…いえ、あまりに定番がすぎて、シオンさまに興味を持っていただけないかも……」
そもそも、シオンさまは気まぐれで気を許さない。
みんなと居るのは好きだが、構われるのは嫌う。
まるでネコのよう(ネコなのだが)。
だからこそ──…
「…それなら、この鮮やかな赤のワンピースかしら?いえ、少し派手すぎるかしら…」
鏡に映る自分を見ながら、あれこれと想像を膨らませる。
シオンさまの冷たい視線を思い浮かべるたびに、どうすれば彼女の興味を引けるか頭がいっぱいになってしまう。
「はあ、シオンさま…!なぜそんなに塩対応なのです!?」
そう呟いてはみるものの、答えは当然返ってこない。
プールでどう振る舞えばいいのか。
いっそのこと自分が行かない方がよいのではないか。
どんどんネガティブな発想がエリスを包んでいく。
「…いえ!そんなことではダメですわ!とにかく、準備は完璧に!
シオンさま…、この夏は必ず、私を見ていただきますわよっ!」