なのでプロブレムは、モノに向かって大声を出した。
「と、いうことでぇー? モノ、こっちむいてー! はい、スマーイル♪」
響く、ソフトな電子音。
現実とモノにとっては一秒以下。
だがプロブレムにとっては体感一分くらいの長い静止を経て、狙い通りのツーショットをプロブレムは手に入れた。
実に自分たちらしくて、いい写真。
特に見返り美人ならぬ見返りモノの顔がとてもいい。
この日、この時、この場所でツーショットを撮れば最強! という直感は確かだったと、プロブレムは自画自賛。
だが、画面を見ながらご満悦な彼女は、後ろからユラリと立ち上り始めた冷気には気づいていなかった。
「なにが『と、いうことでぇー?』なの、バカブレム」
声のトーンは直滑降。
うつむいているから目が隠れているところが空恐ろしい。
だけれどもプロブレムは、そんな状況をまだ知らない。
「えっ、なんとなく? そう言えばモノが振り向いてくれるって思ったから♪」
「説明もなしでいきなり?」
「でもさ、めっっちゃカワイイよ! ほら、み、て……」
「……バカブレム」
「す、すっごく良くない!? アングルもバッチリ♪」
「バカブレム」
ようやく振り返り、これはまずいとプロブレムは察する。
温かい空気と冷たい空気がぶつかったらどうなるんだっけ。
雨が降るくらいならマシだけど、雷にまでふったら大変だ。
そう思ってしまうくらいの温度差があった。
なのでプロブレムは一瞬で様々な言い訳を思い浮かべて……
やはり、その全部を投げ捨てた。
「ごーめーんーっ! すーっごくイイ写真が撮れたの! 私の勘があそこしかないって言ってたの! それにモノとここで! ツーショット撮りたかったの!」
両手をパンと合わせた泣き落とし。
理屈も理由もへったくれもない、清々しいまでのわがまま。
でもなんとか許してもらいたい。
だって二人のいい思い出にしたかったから。
そうしてプロブレムが頭を下げたまま一秒、二秒。
プロブレムにとっては十分くらいの時間が経った後で、頭の上から「はぁ」というため息が聞こえた。
「それ、早く私にも送って」
「モノぉおおおおおお!!」
「ああ、もうっ! ひっつくな、バカブレム!!」