偽証と捏造

Last-modified: 2025-01-15 (水) 18:38:08

「それで、さっきの話の続きなんだけどー」

「どの話が『さっきの』だ?」

ソナタは足を崩しながらトロイの方に体を向けた。
神域を終わらせる例の作戦まで残り時間は5分を切っていた。

「嘘つきと偽物、どっちが好きかって話?」

「残り4分21秒──、どういう趣旨だ?」

「趣旨なんてないよ、ただの雑談ー♪」

トロイは肩をすくめた。
世界が終わる数分前におしゃべりなんて不謹慎?と目で訴える。

ソナタは目を細めた。

「自分が──、という分にはどちらも好きだが、相手が──、という話ならどちらも苦手だな」

「それはそうー♪」

この神域は正直過ぎた。ウソや欺瞞に対して脆弱すぎた。
それゆえ、ソナタとトロイのアサインは最適であったし、神域はその正直さゆえに残り寿命を削っていた。

「得意どうかかって話なら、私は偽物かなー」

トロイは軽く笑った。

「ふふ、ならば今のトロイは偽物かもしれんな」

「さてねー?」

「あるいは、私が大嘘つきかもしれんぞ?」

「意外とお互い、嘘つきと偽物だったりしてねー♪」

「では、まずは本物を定義しなくてはな」

「真面目~」とトロイはクスクス笑う。

本物と定義するもの自体の正しさは誰が証明しうるのか。
ましてや神々と戦う我々ですが?と、語り合いながら、2人は迫りくる終焉に向けて、立ち上がった。

「でも、私は醜い真実より、小綺麗な嘘の方が好きだなー」

「ならば、最後の最後まで世界を騙そうとしようか」

これは、とある嘘つきと、偽物が世界を終わらせた一部始終である。


──『偽証と捏造』より抜粋