それは小さな試験管だった。
「はい、これ飲めるかな? いい子いい子♪」
メイズは優しく微笑んで、私の前にかわいらしい色をしたそれをを差し出す。なんかキラキラした液体が揺れているんですけど…?
メイズはそんなこと気にしないように、って顔をしている。
「これ本当に飲めるもの、なのかな?」私は恐る恐る聞く。
だって、どう見ても飲み物のそれじゃない。
「もちろんよ! ママが作ったんだから大丈夫。味も安心よ」
メイズはまるで赤ちゃんをあやすように、私の頭を撫でてくる。
その手は驚くほど柔らかくて、心が溶けそうになる。
これが母性か、屈してしまう…とつぶやきそうになるのをぐっと耐え、折れかかった抵抗心に再び火を付ける。着火。
「まぁ…それなら、いいかな」
着火失敗。
一口飲むと、思ったよりも甘い。おかしいな、こんな色なのに?
いや、こんな色だからか。にしては自然な素敵な味だ。毎日でも飲みたいくらい。おいしすぎるお薬、危険だ。
「!!」
そこで気付いた。私は不安だったはずだ。なのに薬液の味を大胆に食レポしているではないか。
だんだん体がぽかぽかしてきて、なんだか心地よくなってくる。
「そうそう、その調子。ほら、ゆっくりね、無理しないで。」
メイズははさらに甘い声をかけてくる。まるで全てが問題ないかのように振る舞う。やさしいブランケットのようなぬくもりに包まれていると、なんだか自分が特別に大事にされているような気持ちになってくる。
「ところで、これは何に効くものなの?」
「ん? まだ内緒♪ いい子にしてたら教えてあげるね」
メイズはにっこりと微笑み、私の顔をじっと見つめた。